その行商人、東へ
side:Sistina
暖かい日差しが差し込む日が増え始め、漸く酪農王国にも春が訪れようとしていた。ライザタニアの国土は高山地帯が多くを占めている。山々の隙間に隠れるように盆地が点在し、そこでは牛や羊などが放牧されている。遊牧の民であった者たちにとっては、やはり酪農が一番肌に合うようで、遊牧民族からなる部族集団から国家という形を取るようになって百五十年余、ライザタニアの主要産業は未だ乳製品や精肉食品といった酪農品であった。
システィナの東の国境からライザタニア王都アウネローラに至るには、大小様々の山脈を越えて行かねばならない。特に、システィナとライザタニアとに跨る山脈地帯は前人未踏の地も多く、やはり人の手で整備された道を行くのが一番、危険も少ない。だが、国境周辺には軍事施設が多く、民間人が通るには関所や関門で身元を改められるのが通常だ。
どの国も国民一人ひとりに身分証を発行している。身分証の発行は各国の役所で行えるが、犯罪歴のある者や移民には厳しい審査がある。身分証には氏名、生年月日は勿論のこと、出身国、出身地、爵位、身分、職業等が記載される。その中でも国を跨いだ商売を行う商人の場合は、国からの許可を得て身分証にそれを記載する義務を負う。国からの許可を得ている商人は信頼度が高く、扱う商品も高価であり多岐に渡る為、取引先は自然と裕福な家庭ーー王侯貴族に絞られてくる。
侵略国家としての悪名を持つライザタニアと周辺諸国との交流は、近年、満足に為されてはいない。それでも、ライザタニアの酪農品ーー特に乳製品の品質は他国の追随を許さぬ程の逸品であり、美味なる乳製品を求めた他国の貴族たちは贔屓の商人を通して、ライザタニアの製品を輸入する事も少なくない。また、ライザタニアの貴族も、他国の美しい絹や宝石など様々な製品を求めて商人を呼びつける事もあり、慢性的に周辺諸国と戦時中にあるライザタニアであっても、他国から自国への商人の行き来だけは暗黙の内に認められていた。
ライザタニアの北ーーエステル帝国との国境付近には帝国を警戒し、帝国からの侵入を防ぐ為の軍事施設が点在する。軍事施設の近くには軍事施設の衣食住を支える為の軍事都市があり、街には武具や防具などの装備品を造る工房や魔宝具を造る工房、服飾店、飲食店、酒屋、宿屋、市場等のどの街にもある様々な施設が揃っていた。ライザタニアの軍事都市は一般的にその周囲を高い外壁に守られており、外側から内側に向かって低所得層から高所得層へと住む場所が区別されていた。中央区と云えば勿論、貴族官僚や高級将官の屋敷などの屋敷が建ち並ぶ地区だ。
その中の一つ、トアル高級将校の屋敷には本日、エステル帝国より商売に来たという行商人が招かれていた。その行商人は四人組であり、一人は猫毛のような柔らかな髪質の茶髪と琥珀色の瞳を持つ若い青年、二人目は漆黒の髪と同色の切れ長の瞳を持つ青年、三人目はその二人の小間使いだという十才前後の赤茶毛の少年、そして最後は四十代前後の御者であった。小間使いと御者は親子であり、ライザタニア特有の顔立ちを持っている。二人の青年は兄弟というにはあまり似ている点はない。しかし、その整った顔立ちや柔らかな物腰、立ち居振る舞いには似た雰囲気があり、憂の満ちた表情で『母親違いの義理の兄弟です』などと語られたなら、将校夫人たちは青年たちの心情を勝手に想像するようで、それ以上の詮索は行われなかった。
将校の屋敷ーーその一室に、色とりどりの商品が所狭しと並べられていた。その中を数人のご婦人たちが練り歩き、商品を一つひとつ手に取りながら楽しそうに眺めている。時折響く明るい笑い声。楽しげに交わされる会話。軍事施設の外に楽しみを見出せぬ貴族の令夫人にとって、こうして時を見て呼び寄せる行商人たちとの会話や真新しい宝飾品などを購入する行為は、何よりも楽しい時間であった。
「まぁ!素敵な色ねぇ……」
甘栗色の長い髪を持つ将校夫人は白く透き通る絹織物を手に取ると、ほうと溜息を吐いた。青と金の糸で一針一針刺繍された花の模様もさる事ながら、まるで流れる清水に触れた時のようなその見事な手触りは、これまで見たどの絹よりも逸品であった。王都に住まう王侯貴族の姫君が纏う事の許された絹なのではないだろうか、そう夫人は予想した。
「これはお目が高い。これはドーアの刺繍糸で織られたものなのですよ」
「まぁ、南国ドーアの?」
「ええ」
背後より柔らかな茶髪を揺らして若い青年商人が歩み寄ってきた。茶髪の青年商人が絹を持つ夫人の真横を通ればフワリと甘い香りが立ちのぼり、夫人は胸を年甲斐もなくドキリと高鳴らせた。ライザタニアでは男性が香水をつける習慣がない。その為、将校夫人は夫にはない甘い香りを持つ青年商人に異国の風を感じたのだ。
「刺繍といえばエステルだと思われがちですが、今注目すべきはドーアのシルク糸で織られた絹です。この絹を織るのに使われた糸には南国特有の甘やかな香りが込められているのですよ。だから纏うだけでまるで砂漠のオアシスへ足を踏み入れたかのような心地を味わう事ができるのです」
「本当に素敵だわ……」
青年商人はにこやかな笑みを口元に浮かべると、うっとりと絹に目を細める。青年商人は絹の説明をしながら夫人に向かい合うと絹の下に手を差し込んで、絹を持つ夫人の手をそっと握った。ハッと夫人の顔が朱に染まる。夫人の表情には不快感はない。まるで恋する乙女のように顔を赤らめる夫人を青年商人の琥珀色の瞳が覗き込んだ。
「一度、羽織っでみられますか?」
「よろしくて?」
「勿論ですよ、奥様」
ポッと薔薇が咲いたように頬を赤らめる夫人。青年商人はニッコリと微笑むと絹をサァッと広げ、夫人の肩から身体全体をフワリと包み込んだ。そして、夫人の肩を押して鏡の前へ誘導すると、夫人の肩に手を置いたまま、耳元でそっと呟いてみせた。
「とてもお似合いですよ、奥様」
「そ、そうかしら?」
「ええ。まるでオアシスに咲く一輪の華のようです」
夫にも言われた事のないような甘い台詞を耳元で呟かれた夫人は、青年商人の甘い声音にーー耳元に触れる吐息に肌をフルリと震わせた。
泡立つ肌。艶めく声音。鏡の中に佇む自分と異国の青年。背徳に濡れる二人の男女。そう思わせる程の甘やかさを人妻である自分に感じさせる青年商人の仕草に、欲求を持て余している将校夫人は完全に堕ちていた。
「ここにある全ての絹を頂くわ」
妖艶な笑みを口元に浮かべると、夫人は肩に置かれた青年商人の手に己の手を重ねた。
一方、将校夫人と青年商人が背徳の世界を作り上げている時、絹織物の対角線上ではまた別の御夫人と黒髪の青年商人とが宝石箱を片手に語らっていた。
「こちらは何という宝石なの?」
「システィナの海で採れた真珠ですよ、奥様」
小麦のような髪を持つ若い夫人は、大粒の真珠と小さな真珠が三連になったピアスを指差した。すると、黒髪の青年商人はその涼やかな目元を上げた。
「真珠?」
「はい。システィナ西海岸ーー澄み渡る海の中で生まれた宝石です」
「海の中で?私、これまで一度も海を見た事がないの。海とはイネス湖よりも広いのですってね?」
「はい。海は湖よりも深く広く、そして何より空の蒼さを映したような美しさがございます」
ライザタニアは山々に囲まれた国だ。東西南北、どの地も大海には接していない。ライザタニアで生まれた者たちの中には国外に出る者は少なく、海を見る事なく生涯を終える者も少なくない。その為、物語や絵画でしか知る事のない海への憧れは強い。
「あの地では紅珊瑚も有名ですが、私は真珠の方が好きですね。この雪のような白い雫はまるで人魚が流した涙のようでしょう?」
「ええ。幼い頃に読んだ絵本に載っていたわ」
そこで黒髪の青年商人はハハッと小さな笑い声を上げた。夫人がふと顔を上げれば、そこには少し照れたように微笑む青年商人の顔が間近にあり、思わず夫人はドキドキと胸を高鳴らせた。
「ああ、申し訳ない。柄にも無く幼い頃に読んだ『人間の王子に恋心を抱いたまま泡と消えた人魚姫』の物語を思い出してしまいました」
「まぁ……」
硬派な青年商人が照れる仕草に、つられたようにポッと頬を赤らめる夫人。当初、黒髪の青年商人は茶髪の青年商人よりも取っつきにくい雰囲気を放っていただけに、硬い表情をふっと緩めた青年商人の姿には、夫人の目も釘付けになっていた。誰にでも見せる訳ではない微笑みを引き出せたように感じた夫人は、その胸を次第に高鳴らせていった。
ーシャラー
「ほら、奥様の白い肌にとてもお似合いですよ」
「ーー!」
黒髪の青年商人は真珠のピアスを手に取ると、夫人の背に回って、その耳元にピアスを当てた。耳元に感じる黒髪の青年商人の手の温もり。切れ長の瞳が間近から自分の顔を覗き込む。
「……これを頂くわ」
「ありがとうございます、奥様」
淡い笑顔を向けられた婦人は益々頬を上気させた。
※※※
「兄ちゃんたちさ……ホントに騎士なんだよね?」
その日の晩、貴族街にある高級宿に四人組の商人たちの姿があった。商人には不釣り合いに思える高級宿だが、貴族相手の高級品を扱う商人にとっては下町に宿を取る方がオカシな事だとされていた。商人にとって自分たちの扱う商品は宝。下手に下町の通りや裏道を通れば、漏れなく不逞な輩に襲われて商品を奪われる事になるだろう。だからこそ、貴族相手の商売を行う商人たちは貴族と並んでも遜色ない服装を纏い、貴族街にある高級宿に寝泊まりする事が普通であり、また、その宿泊費を負担するのも取り引きのある貴族である事が多かった。
この宿を紹介し薦めたのは昼間、高級絹を大量購入した貴族将校の奥方である。あの後、茶髪の青年商人と『背徳の恋物語』に燃え上がった奥様は、夫である貴族将校が長期の基地勤務で屋敷に帰って来ない事を良い事に、青年商人に対して『夜のお誘い』まで行っていたのだ。聞けば、この辺りの軍事都市では良くある事だそうで、あの屋敷に集まっていた御夫人たちは皆、『何時ものこと』だと言って、素知らぬ顔をしていたのは余談である。
高級宿の裏口から馬車ごと敷地へ入ると指定された小屋に馬車を停め、宿屋の職員から馬車小屋と部屋の鍵を受け取った四人の商人は、食事の前に馬と商品の確認に取り掛かっていた。年長の男は馬から馬具を外すと、赤茶毛の少年は馬に水と干し草を与えた。
「「は?」」
馬車の中で商品の整理と売り上げの確認をしていた茶髪と黒髪の青年たちは、少年の言葉に首を捻った。
「何さ?リンク。変な顔しちゃって」
「リンク、お前は何を疑っているんだ?」
茶髪の青年リュゼはニヤニヤした笑みを浮かべ、黒髪の青年ナイルはムスッと怪訝な表情を浮かべた。
「だってさ。あの将校の奥さんたち、兄ちゃんたちにメロメロだったじゃん。兄ちゃんたちもいつもと口調も顔つきも違ってたし。そーゆーやり方って、どこで覚えてくんの?」
そう。この不思議な四人組の商人とは、リンクたちライザタニアからの移民親子と騎士ナイルと護衛騎士リュゼという異色の組み合わせだったのだ。
未だシスティナとライザタニアとの争乱止まぬ中、国境を跨ぐ行為は危険極まりない。だからこそ、偽装工作として行商人を装っていた。
『塔の騎士団』副団長アーネストから命令を受けた騎士ナイルは、護衛騎士リュゼを伴ってライザタニア入りを果たした。商人としてのノウハウもなく、ライザタニアの地理に詳しくない騎士たちをフォローするのは、リンクたち移民親子だった。彼らもまた、アーネスト副団長から依頼を受けていたのだ。
ライザタニア出身のリンクの父親はライザタニアの地理に詳しく、ライザタニア語にも堪能な為、騎士二人の案内役を務めている。リンクは父親をフォローする役割を担い、子どもという見た目を利用して、大人たちからの視線を和らげる役割を果たしていた。
実のところ、本来の役割分担では『商人親子とその護衛二人』という設定だったのだが、いつの間にか『義兄弟商人とその小間使いたち』となっていたという経緯があった。
「はぁ〜〜やっぱり、容姿が良いってのはそれだけでトクなんだな?」
『女は顔の良い男に弱い』。齢11才にして何かの悟りを開きかけているリンクは、どこか納得したような顔で何度も頷いた。
彼らの最終目的はアルカードから囚われた魔女の救出である為、行商人とは表の顔だ。だから、商品を売るのは義務でも何でもない。怪しまれずに旅をする為の偽装でしかないのだから。ならば何故このような事になったかと云えば、それは、関所でトアル将校に出会ってしまったからだった。
トアル将校はリュゼたち行商人の素性に怪しんだ訳ではなく、軍事都市で自分の帰りを待つ家族の為に目新しい海外の商品を贈りたいと考えたのだ。
商品を売り込まぬ行商人ほど怪しい者はいない。そう考えたリュゼたちは、商人らしく商品を売り込む事にした。すると、将校はリュゼのオベンチャラにコロコロと乗せられ、遂にはリュゼたちに軍事都市にある自宅へと直接商品を届けるように申し付けたのだ。
「何処でって言われても……色んな場所で、かなァ⁇」
「あれは貴族社会に於ける処世術の応用だ。システィナ社交界はあの奥方以上の化け物ぞろいだからな」
リュゼはトアル犯罪組織で培った手口の一つを使っただけに他ならず、ナイルは幼い頃から貴族社会で培った処世術を披露しただけに他ならない。リュゼは完全に狙って夫人を籠絡していたが、ナイルは狙ってやっていた訳ではない。社交界に於ける通常動作でご婦人方との遣り取りを『対処』していただけなのだ。リンクとしては狙ってやっていたリュゼよりも、通常運転として対処していたナイルの方に、強い驚きを持った。
「マジで?はぁ、社交界っておっかねートコロなんだな?」
ナイルはリンクの言葉は溜息混じりに「否定はできんな」と呟くと、ファイル片手に馬車から飛び降りた。
「ハハハ!ナイル様もリュゼ様も、騎士にしておくには惜しいですね?」
リンクの父親ーーバイセンはリンクの頭を撫でながら二人の騎士に笑みを向けた。まだ四十代に入ったばかりのバイセンは二人の騎士と遜色ない程の肉体の持ち主。『塔の魔女』に怪我を治して貰ってからというもの仕事の大工作業に精を出し、一日一日、筋力を回復させていったという筋肉は、騎士をも唸らせる物だった。
元々、ライザタニアの民はシスティナの民よりも身体が大きくて丈夫だと言われている。バイセンの少し浅黒い肌はライザタニアではよく見られるもの。ライザタニア入りをしてから此処まで怪しまれずに来れたのは、彼ら親子の存在が大きかった。
「貴方こそ、ただの大工職人にしておくのは惜しい。その身体ならば、剣でも槍でも振るえるだろう」
「とんでもない!金槌を振るうので精一杯ですよ」
バイセンが振るう金槌なら、それだけで敵を昏倒させる事も可能だろう。そう思えど、ナイルはそれ以上の追求をやめた。
「んで、どーすんの?師匠」
「何の事?」
「トボケちゃってさ!師匠、あの奥さんに誘われてたじゃん」
自称弟子のリンクにジト目で見上げられた他称師匠のリュゼは、アハハと乾いた笑い声を上げた。
「見てたの?」
「ばっちし!あの奥さん、めちゃくちゃイヤラシイ目つきだったよ?」
「アハハハハ!」
「なに笑って誤魔化してんのさ?師匠。大人ってヤラシイなぁ!師匠はあんな年増の奥様が好みなワケ?」
「そんなワケないでしょ?僕は若くて可愛い女の子が好みだよ」
「だよな?安心しーー……」
「ま、お誘いには乗るケドね」
「ええッ⁉︎」
ヤラシイ大人リュゼの言葉に未だ大人に夢見るリンクは目を剥いて驚いた。リュゼに色目を使って『夜のお誘い』をかけてきたのはどう見ても四十代の奥様だったのだ。11歳のリンクから見れば父親世代の女性などオバサンにしか見えない。貴族のご婦人である為、平民よりも美しく若々しい容姿を伴ってはいるが、四十代は四十代でしかなく、二十代のリュゼが四十代の奥様を相手にするなど、リンクにはとても考えられなかったのだ。
その手の話に敏感な年頃リンク。リンクにとって男女の夜の営みとは、トアル雑誌やワルガキ同士の会話でしか見聞きしておらず、完全に『未知の世界』であった。下町育ちの為にその手の話には事欠かなかったリンクだが、全く興味がないワケではない。『いつかは俺も……!』との思いもあるが、その相手となる人物は、出来る事なら『若くて可愛い娘が良い』と、心の中は夢と希望で一杯だ。
そんなリンクからすれば、年増の、それも人妻に手を出そうとする師匠リュゼを、『不潔だ』と罵るなどとんでもなく、逆に『なんてスゲー男なんだ⁉︎』となる。
「アハハ、面白い顔!」
「ブッーー⁉︎ な、な、な、何すんだ⁉︎」
ポカンと口を開けて様々な妄想を頭に廻らせていたリンクの鼻をリュゼはギュムッと掴むと、ニヤニヤと楽しげな笑みを浮かべた。
「大丈夫。僕はこう見えて一筋だから」
そう言って手をヒラヒラ振るリュゼ。訳も分からず首を傾けたリンクに対し、ナイルは溜息を吐きながらフォローを入れる。
「リュゼ殿は情報収集をするつもりだろう」
「え……?」
「あのご婦人からライザタニアの内情を聞き出すつもりなのだ」
ライザタニア入りを果たしてから七日。未だリュゼだちはライザタニアの国内情勢にそれほど詳しくはなかった。拐われた魔女を救い出す為には先ず、魔女が拐われた先を突き止めねばならず、それは余程簡単な事ではなかった。
「このような話、お前にはまだ早かったな?」
「そ、そんなコト、ねぇーよ!」
閨の中では情報が引き出し易い。侯爵家の貴族として生を受け、騎士として騎士道精神を培ってきたナイルだが、諜報活動としてリュゼが行おうとしている不貞行為に否を唱える事はない。もう間も無く三十路を迎えるナイルは、二十近くも年下のリンクの頭をポンポンと叩くとソッと溜息を吐いた。そして、未だ複雑そうな表情を見せる息子リンクの顔を見ながら、父親バイセンも何とも云えぬ複雑な笑みを浮かべた。
お読みくださりまして、ありがとうございます!
ブックマーク登録、感想、評価など、ありがとうございます(*'▽'*) とても嬉しいです‼︎
『その行商人、東へ』をお送りしました。
行商人に扮したリュゼたちはエステル経由でライザタニア入りを果たしています。
人付き合いの得意なリュゼは口先三寸で行商人に成り切り、侯爵子息たるナイルはその身に染み付いた社交性を活かして行商人に扮しています。そんな二人の年長者たちに感心してやまないリンク。
リュゼを師匠と仰ぐリンクにとって、何でも小器用に熟すリュゼには憧れを持って接しています。(※色んな意味で)
次話、『割り切れぬモノ』も是非ご覧ください!




