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魔宝石物語  作者: かうる
魔女と塔の騎士団
191/491

塵も積もれば山となる

※東の塔の騎士団編※

 パチパチと爆ぜる篝火。その灯りを背に受け、青年は苦悩に満ちた顔に暗い影を落とす。


「ー星は落ち 月は満ちたー

 ー月の尖兵は彼の地を目指すー

 ー天を穿つ塔は闇夜に崩れ落つるー」


 呪文めいた言葉を紡ぐ唇が横一文字に閉じられた。すると、青年の背後に佇んでいた闇、その闇と同じ漆黒色の軍服を纏った男が口を開いた。


「殿下。月影に紛れ、獣たちが放たれました」

「そうか、これも予言通りという訳か……」


 それは予測の上の報告。だが、面白い訳はない。しかも、これから起こる事を予測すればこそ、憂いは晴れる事なく深まるばかり。いくら確定された未来であるとはいえ、予測の範囲を遥かに超越するであろう争乱を目の前には、苦渋の色が広がっていくようであった。


「彼方の勢力は?」

「間も無く、王宮を掌握なさるでしょう」

「現王陛下は?」

「病床にあるという情報のみでございます」


 青年「そうか」と呟いたきり頭を力なく擡げた。パチ、パチと爆ぜる暖炉の炎が青年の横顔を照らす。そう長くない間、瞑目していた青年はフッと瞳を開けると、徐に重い口を開いた。


「確定された未来などない。そうだろう?」

「はい」


 顔を上げた青年の表情は冷たく暗い。しかし、その瞳には、煮えたぎるマグマのような強い想いを滲ませていた。


「現王、貴族、神殿、巫女……そのような者たちにこの国の未来が振り回されるなど、あってはならない。しかも、それら全てが『作られた筋書モノ』ならば……!」


 青年は拳を痛いほど握ると、脚にぐっと力を込めて立ち上がった。そして空をーー空に浮かぶ満月を仰ぎ見た。


「貴方の思い通りになど、させはしませんよーー父上」



 ※※※※※※※※※※



 アーリアは歩けば埃の舞う通路を歩くと、ある部屋の前で立ち止まった。軽い足取りで自分の後を続くリュゼに外で待つように告げると、リュゼの顎が下がるのを確認した後、一人、扉を開けて部屋の中へと入り込んだ。

 明かりもない部屋だが何も見えない程暗い訳ではない。何故なら、部屋の中央には光源となる物があるからだ。薄ぼんやりした部屋の中、アーリアは魔術で明かりを灯した。

 闇から浮かび上がってきたのは、何もない部屋。ただ中央に設えた台の上には人間の頭部ほどある赤い宝玉がぽつんと置かれていて、宝玉を中心として石の床には一面、巨大な魔術方陣が描かれているのみ。

 アーリアは迷わず宝玉の前ーー魔術方陣の中央まで歩み行くと、そっと宝玉に手を翳した。すると、アーリアの魔力に呼応して淡い光を湛えていた宝玉が鮮やかに輝き始める。連動するように、足元の魔術方陣は中心から外側へと光を帯びていった。


「……さぁ、始めましょうか?」


 アーリアは誰にいう事なく呟くと、点検作業を開始した。



 ※※※



 『塵も積もれば山となる』と言うが、約2年半も放っておけば人の住まない建物でも埃や湿気などが溜まるものだ。


「あぁ、見なきゃ良かった!知らなきゃ良かった!なきゃ良かった!」

「あっはっはっはっ!」

「こんなの見ちゃったら、掃除しなきゃならないじゃない!」

「あっはっはっ!だよね〜〜」


 アーリアは約2年前に《結界》を配置して以来、足が遠退いていた『東の塔』へと訪れていた。それは、作動させたままの《結界》が上手く機能しているのかを見る動作確認の為だった。その為には直接、現地を訪れる必要があったのだ。

 だが、それがいけなかった。アーリアは見てはならない物を見る羽目になってしまったのだ。


「酷いほこりっ……!」

「そりゃそーでしょ?普段、誰も出入りしてなくても……いや、してないからかな?埃ってのは溜まるもんだよ。それにしてもココは湿気も酷いよね〜〜」


 更には「廃墟や古城なんかも同じような匂いするよね?」と追加で言われ、アーリアはガックリと項垂れた。アーリア自身、獣人たちに捕まった際に連れて行かれた古い貴族の屋敷も、似たような匂いがしていた事を思い出していたのだ。

 考えてみれば当たり前の事だった。

 民家も、人間ヒトの住んでいる建物よりも住んでいない建物の方が傷みやすいと聞いた事がある。建物を長持ちさせるには、人間ヒトの手による定期的な手入れが必要なのだ。

 この『東の塔』は約2年半もの間、誰一人として塔内に立ち入ってはいない。人為的に入場できなくしていたのだ。『東の塔の魔女』ーーつまりアーリア本人の施した封印魔術によって。


「だって、塔内ココ人間ヒトを入れる訳にはいなかったんだもん!」


 アーリアが『東の塔』を中心に国境を守るように施した《結界》。《結界》は『東の塔』のみならず、国境に点在する砦を点と点で繋ぎ合わせ、人間ヒトの通れる全ての地域に渡る大規模なもの。その《結界》は単発で発動する通常の結界魔術ではない。連続発動を可能にする為に、アーリアが基礎から構築した特別な魔術なのだ。魔力を多量に含んだ宝玉を中央に添え、英霊の力、精霊の力を複数使用して、術者本人がその場におらずとも連続稼働するように設定してある特殊なものだった。

 戦争の過激さが増した当時、アーリアは結界魔術の構築式を他人に解読される事を恐れた。その為にこの塔内への出入りを一切禁止したのだ。現在、この『東の塔へ』には封印魔術を施しており、アーリアが許可した者しか入る事は出来ない。塔の正門の前には『関係者以外立入禁止』の張り紙をして、扉を固く施錠してあるのは、アーリアなりの親切設計だったのだ。


「そんなトコロに僕を連れて来ちゃって、ホントに良かったの?」


 リュゼはニヤニヤした意地悪な笑顔でアーリアを見た。アーリアはパチクリと瞬きした後、にっこり笑った。


「リュゼなら大丈夫だよ」

「そんなに僕のコト、信じてくれちゃってるんだ?」

「勿論!」

「僕がアーリアを裏切るカモ?とは思わないんだ?」

「思わないよ」

「もし、僕が裏切ったらどーするの?」

「大丈夫だよ。リュゼはそんな事しないから」


 リュゼからの意地悪な問い掛けに対して、アーリアはその全てに笑顔全開で応えた。その笑顔は本物で、『リュゼを心から信頼しているよ』と顔に書いてあるようにすら見える。

 リュゼはアーリアからの淀みない答えに満足して益々笑みを深めると、いきなりアーリアに抱きついた。


「わっ!」

「そんな子猫ちゃんが大好きだよ!」

「う、うん。私もリュゼのコト、好きだよ?」


 ぎゅうっと抱きしめられたアーリアはおずおずとリュゼの背に手を添えた。

 一見、相思相愛にも見える二人だが、その想いは一方通行だ。『親愛』と『情愛』。どちらも『愛』には違いないが、本質的には違うその二つ。

 リュゼにはアーリアと自分の『好き』の種類が違う事に気付いていたが、それを敢えて無視した。


 ー要はさ、最後にコチラを向いて貰えれば良いんだよね?ー


 『今の人生は余生みたいなもの』と捉えているリュゼは、気長にアーリアと付き合っていく覚悟を決めた。そうしたら驚くほど自分の心が軽くなったのだ。


「リュゼ、苦しいよ。それに……少し恥ずかしい」

「ふふふ。いーじゃない!ココには誰もいないんだしさ」

「そぅ、だけど……」


 リュゼに抱き込まれたアーリアは困惑気味だった。

 帰国直後の『あの出来事』。アルヴァンド公爵の仲裁で喧嘩の仲直り(?)をしてからというもの、リュゼからのらスキンシップが増えた気がするのだ。しかも、以前よりも自分の心臓がドキドキする事が増えた気もしていた。今も、リュゼの胸の中は『暖かくて居心地が良い』と感じてしまっている自分がいて、それを自覚すると更に困惑してしまうのだ。


 ーどうしよう?なんだか凄くドキドキしてきたー


「リュ、リュゼ。やっぱり離れて」

「えぇ〜〜もう?」

「そ、掃除しなきゃならないし」

「塔は逃げていかないよ?」

「陽が暮れちゃうよ」

「手伝ってあげるから、大丈夫だよ」

「ありがとう。でも……」

「でも……?」

「やっぱり、もう離れて」


 そう言って両手でリュゼの胸を押したアーリア。仕方なく手を離したリュゼは、真っ赤な顔をして何とも言えない表情で俯いているアーリアを見て、リュゼは満足したようにほくそ笑んだ。


 ーなんだその顔。可愛いなぁオイー


 リュゼはまたまた箍が外れそうになった理性アタマを「いかんいかん」と降り、冷静さを保つ努力した。


「んじゃ、掃除しよっか?」

「う、うん……」

「っと、その前に……」


 そう言うや否や、リュゼはアーリアの目元に滲んでいた涙をペロっと舐めた。


「〜〜〜〜⁉︎」

「あははは!あ、いた、あた、いたいよ、アーリア」


 真っ赤になってポカポカ叩き始めたアーリアにリュゼは慌てて後退した。バックステップで壁まで後退ると、そのまま扉のノブに手をかけた。


「僕は、掃除用具でも探してくるよ〜〜」


 そのままリュゼは言い逃げして、扉の向こうに去って行った。



 ※※※



 掃除にはまず換気が必要だ。アーリアは窓という窓を開けてみる所から始めた。まずは最上階から掃除を始める事に決めたアーリアは、一番大きなテラス窓から開け放った。その途端、外界から突風が入り混み、室内の埃が舞い上がってしまった。


「うわっ!ーーあれ?ひょっとして、開けない方が良かったの?」


 埃を吸ってしまいコホコホと咳をしたアーリアは、布巾マスクの必要性にこの時気付いた。


「まぁ、いっか。結界を範囲指定で張って……」


 アーリアは風に舞い上がる髪を押さえながら、『東の塔』をすっぽり包む《結界》を張った。これで窓を開けていても外敵が塔の中に入り込む事はない。

 この外敵とは自分とリュゼ以外の全てのモノだ。それは人間然り、虫然り、鳥然り、動物然り……である。こんな所に蛇や百足ムカデなど入り込もうものならば、アーリアはパニックを起こして塔ごと火の海にし兼ねない。……とその時、急にゾクリと背中に寒気が走り、アーリアは両腕をさすった。


「え?いないよね?」


 アーリアは辺りをキョロキョロ見渡して奴らの気配を探った。


「私も、リュゼについていけば良かった……」


 そう言ってから、アーリアは一人でいる事に不安を覚える自身の心を不快に感じた。


 アーリアはリュゼに会う前ーーいや、ジークフリードと旅する前は一人暮らしをして、魔宝具職人マギクラフトとして生計を立てて暮らしていた。顧客も少しずつ増え、リピーターも増え始め、独立してから二年経って漸く仕事も軌道に乗り始めていた。親代わりの師匠の元からも離れ、自分一人でも暮らしていけるようになっていたのだ。

 あの当時も師匠と兄弟子たちに囲まれた賑やかな生活に戻りたいと思った事は一度や二度ではないが、それでも何とか一人でも前を向いて暮らしていたのだ。

 それが今はリュゼが隣に居ないと不安になるのだ。それほどまでに、リュゼが自分の側に居ることが『当たり前』になってしまっていた。


「はぁ……どうするの?私……」


 アーリアはその場にしゃがみこむと、膝の間に顔を埋めた。

 いつの間にこんなに弱くなったのだろうか。そう考え始めたが、基本的に何も変わってないのだと早々に結論が出た。

 ここへ来る前に師匠の屋敷へ寄ってきたが、相変わらず兄弟子は自分に甘く、姉弟子は甘々だった。師匠も「困った子だね?」と言いながらもアーリアの想いに否定する事はなかった。


「リュゼは、いつまで一緒にいてくれるかな?」


 リュゼはアルヴァンド宰相閣下に依頼され、国から任命された『東の塔の魔女』の専属護衛だ。

 当初は専属護衛とは名目上であって、その本質は『何となく面白そうだから』という理由でアーリアについて来たリュゼ。エステル帝国へ行く前は『飽きるまでは側にいる』と言っていたリュゼ。そして今は、アーリアをあるじと定め、自らアーリアの専属護衛を願い出たリュゼ。リュゼは今、彼の意思で自分アーリアの側にいる。


「私、もう、一人ぼっちになるのは嫌だな……」


 自分でもどうかと思うほど、アーリアはリュゼに依存していた。リュゼを信頼し、大切な人間ヒトだと認識していた。


 ー失いたくないー

 ー共にいたいー

 ー側にいてほしい……ー


「あぁ〜もぉ〜〜」


 膝に顔を埋めながら叫んだ声はぐぐもっていて、外に漏れるほどの大きさではなかった。


 ーなんて浅ましい心ー


 まるで人間ヒトのようだ。『人間ヒトと寄り添って生きたい』と考えるなど、自分には過ぎた願いだ。贅沢な願いだ。強欲な願いだ。


 ーどこまで望んでも良いのだろうか?ー

 ーどこまで許されるだろうか?ー

 ーどこまで願っても良いのだろうか?ー


「リュゼ……」


 暫くの間、膝に顔を埋めて悶々と考え込んでいたアーリアは、チャリッという小さな音に、もたげていた首を上げた。

 左腕に嵌る金の腕輪が目に入る。そしてそれまでの気分から一転し、げっそりした気分に陥った。


「ユリウス。結局最後まで外してくれなかった……」


 ユークリウス殿下に嵌められた金の腕輪は、エステル帝国流の『婚約の証』。婚約者から受け取った腕輪ソレを身につける行為には、婚約者からの好意おもいを受け取るーーつまり『婚姻関係を結ぶ』という意味があるらしい。そんな腕輪モノを勝手に付けられた挙句、本人ユークリウス以外外せないときている。嫌がらせ以外のナニモノでもない婚約腕輪ソレに、アーリアは深い溜息しか出なかった。

 アーリアがシスティナへ帰国する際にユークリウス殿下に腕輪を外してくれるように頼んだのだが、『婚約解消すると言った覚えはない』、『後々、必要となるから嵌めておけ』と言われた挙句、『日常生活に不便はない』等と口八丁手八丁でのらりくらりと躱され、結局、外してはもらえなかったのだ。


帝国皇太子ユリウスの嫁にはなれないって言ったのにっ!」


 アーリアは「よしっ!」と言って立ち上がる。ユークリウス殿下の傍若無人ぶりを考えていたら、それまでの悶々としていた気持ちが吹き飛んでいた。


 ーユリウスの魔法は素晴らしかったなぁ……ー


「魔法か……あ!《洗浄》でこのほこり、何とかなるんじゃない?」


 生活魔法(=生活魔術)とはシスティナ国に浸透している魔術だ。その中でも《洗浄》は汚れを落とす魔術で、食器や服などを洗う時に使われている。《洗浄》と《乾燥》はセットになっていて、見た目に反してズボラな師匠などは、風呂に入るのが面倒な時などにも使っていた。


「部屋まるごと《洗浄》……そんな事できるかな?」


 魔術《洗浄》とは水洗いのようなものだ。意識せずに使っている魔術だが水の精霊魔法が基盤になっている事は分かる。だが《洗浄》した後、その汚れ成分は何処に分解され何処に消えて行くのか等、生活魔法の存在が当たり前過ぎて、これまでのアーリアは考えた事もなかった。


「まーいっか!部屋まるごと《洗浄》で綺麗になるなら、話は早いよね?」


 この時、アーリアはあまり考えずに生活魔術を発動させた。


「範囲指定は、えっと、部屋まるごと全部!《洗浄》!」


 アーリアの足元を中心に魔術方陣が展開され、魔術は発動した。その途端……


 ードバァッ!!ー


「きゃぁあ〜〜〜〜⁉︎」


 大量の水が魔術方陣から溢れ出し、その水は部屋の壁や床、天井を洗浄していった。ーーそう、部屋の中心にいたアーリアごと。


「なんだぁ⁉︎」


 その慌てた声は部屋の外から聞こえてきた。


「どーしたの⁉︎ 今の声……それに今の魔術……⁇」


 バケツと箒、それに木のモップを手にしたリュゼが慌てた様子で室内へ入ってきた。そして悲鳴を上げたアーリアを見るなり、持っていた掃除道具から手を離して爆笑し出したのだ。


「アッハッハッハ!ナニ、それ〜〜!」


 アーリアは頭の上から足の先までずぶ濡れになっていた。滴る水が髪を伝い、頬を伝い、ポタポタと雫が床へと伝い落ちる。


「どーしたらそーなるの⁉︎ あはははッ!」

「……」

「濡れ鼠ならぬ濡れ子猫ちゃんじゃん?あはははーー!」

「……」


 ビッショリと張り付く髪に衣服。

 水溜りのできている部屋。


 アーリアは腹を抱えて爆笑しているリュゼを半眼になって見てから、深〜〜い溜息を吐いた。


「えっ⁉︎ なになに?部屋全体に《洗浄》を使ったって?」

「う、ん……」

「アーリアって意外にズボラなんだね?いや、大胆なのかな?うぷぷぷ」

「うぅっ……」


 アーリアはこの時、この生活魔法が部屋掃除に使われない理由を理解した。そして《洗浄》と《乾燥》がセットになっている理由を。

 このように広い場所に《洗浄》をかければ分解洗浄した後行き場のなくなった水は溢れかえる。何より、範囲指定した部屋の中にある『全てのモノ』に対して《洗浄》は効果を現す。

 アーリアはこの部屋には小さな卓と椅子程度しか置いていなかった為、何も気にせずに《洗浄》をかけた。しかし、この部屋に居た自分までもがその範囲に含まれているとは、思いもよらなかったのだ。

 生活魔法とはいえ、魔術構成をよく考えぬまま魔術を行使するなど魔導士としては『情けない』としか言えない。


「それにしてもさ。すっごく洗脳的な眺め〜〜」

「ーーーー⁉︎」


 ヒューと口笛を吹いてニヤついた笑みを浮かべるリュゼ。アーリアはリュゼの目線から、今の自分の姿がどうなっているのかに漸く思い至った。

 水によって素肌に張り付く衣服。透ける素肌……。


「〜〜〜〜⁉︎」

「あはははは!何で僕を叩くのさっ……いた、くはないけどさ……!あははははっ!」


 八つ当たりだとアーリアには分かっていた。それでも、八つ当たりせざるを得ない気分だったのだ。一方リュゼは、それがアーリアの八つ当たりだと分かっていたが、素直に受け入れた。


「あ〜〜はいはい!ちょっ〜とだけ残念だけど《乾燥》!」

「わっぷ……」


 リュゼはアーリアに《乾燥》魔術をかけた。アーリアの濡れた身体が瞬間的に乾いていく。体内の水分が蒸発する事がないのが、この生活魔法の不思議なところだ。

 リュゼは乾いてボサボサになったアーリアの髪を撫でつけ、手櫛で丁寧に梳きながら、左手をアーリアの頬に添えた。


「掃除、やり直しだね?」

「……ハイ。」


 満面の笑みのリュゼ。対してアーリアは、その肩をガックリと下げた。



お読み頂きまして、ありがとうございます!

ブックマーク登録、感想、評価など、本当に嬉しいです!ありがとうございます!!


新章★スタート!

東の塔の騎士団編『塵も積もれば山となる』をお送りしました。

アーリアとリュゼの二人は夜会終了後に休暇を取り、里帰りをしていました。

この話はその後の話になります。


次話、新キャラ登場です。

よろしければ是非ご覧ください!

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