帝都混乱1
「これで本当に良かったのかな?キール」
「仕方がないよ、ラース。これはなるべくしてなった結果だよ」
窓の外に広がる息を飲む光景に、キリュース殿下とラティール殿下の二人の皇子は胸を痛めていた。先ほどの言葉からは『そう思いたい』という淡い願いが垣間見えた。
エステル帝国が誇る軍事力。その一翼を担う『空挺部隊』は飛竜を駆る騎士の集団だ。空挺部隊に配属された騎士は飛竜を駆り、剣や槍、弓や魔法を振るって敵を屠る強者の集まりだ。
その騎士たちが駆る飛竜。常時ならば頼もしい騎士の相棒たちだが、その飛竜は今、騎士の手を離れ暴走し、帝宮の空を地を好き勝手に駆け巡っている。
エステルの飛竜は卵から人間により飼育された竜たちばかり。飼主である騎士に従順で、決して人間を襲うことはない。
ーそれがどうだ……⁉︎ー
飛竜は人間から解放されたとばかりに自由に空を駆け回り、思いついては人間を襲っているではないか。瞳を赤く染め、鋭い爪を無造作に振るうそな様は、魔物と呼んでも差し支えないほどだ。今の飛竜の状態はとても精霊の化身ーー妖精族に属する竜族とは思えない。
不安そうに窓の外を見遣るラティール殿下の手をキリュース殿下はギュッと握った。
「大丈夫……大丈夫だ!こんな事で帝国は潰えたりしない」
「うん……」
「それにユリウス兄上が皇帝陛下の元へ赴いている。俺たちは兄上を信じて待とう」
双子の兄キリュース殿下の手をラティール殿下は握り返した。
「うん。僕たちは僕たちのするべき事をしなきゃね」
「その通りだ、ラース」
双子の皇子たちは天使のような微笑みを浮かべた。お互い顔を見合わせて、頷き合う。
「「まずは母上たちの下へ」」
二人の母上ーー側妃オリヴィエと、兄ユークリウス殿下の母君である皇后陛下エリーサ様へと奏上するのだ。
ーこれまでの事をー
ーそして、これからの事をー
「「次に宰相府、ブライス宰相を味方につけよう!」」
ブライス宰相閣下を味方につけるのは容易な事ではない。彼は精霊を信仰するこの国に於いて異質なほど現実主義者なのだ。双子の天使たちの身分が皇子だとしても、何の損得なしに肩入れしてくれる程のお人好しではない。
しかし、キリュース、ラティール両殿下には今回、勝算があった。
ー脅すネタならば山ほど持っているー
この双子の天使たちはその幼さと天使のような容姿から、大人たちから甘く見られがちだ。だが、二人の皇子はその甘さを突いて、貴族官僚たちの情報を集め持っていた。双子の小悪魔たちに弱味を握られていない貴族官僚はいないと言っても過言ではなかったのだ。
二人の皇子はそれらの情報を、自分たちが大人になってから使おうと思っていた。その時期が少し早まってしまったというだけだった。
幼い皇子たちには自分自身の身を守れる程の後ろ盾がない。しかし帝国の皇后陛下を、そして宰相閣下を味方につけられれば、双子の天使たちに敵はいない。
「さぁ行こう、ラース」
「あぁ行こう、キール」
「「これからが俺たち(僕たち)の戦いだ」」
お互いをキール、ラースと偽名で呼び合うエステル帝国第三皇子キリュース殿下、そして第四皇子ラティール殿下。
彼らは帝国の皇族ーー帝室の一員として、この国の未来を『正しく』歩もうとしていた。
『歪みを正し、あるべく姿へ戻す』
あの日、四人の皇子たちで未来について話し合ったのだ。
『精霊に依存せず、帝国の未来は人間の手で切り開く』
……と。
キリュース殿下とラティール殿下は手を固く繋いだままその部屋を後にした。
己で『未来』を掴む為に……。
※※※※※※※※※※
「それは帝国の皇太子ーー私の兄ユークリウスだ」
エヴィウス殿下の発言に、アーリアは「嗚呼」と唸って天を仰いだ。これまであった胸の疑問がスッと流れていくようだった。
「成る程。そなたの兄上の結論は分かったが、そなたは……?」
「私も兄と同じく、精霊女王を帝国に縛り付けるつもりはありません」
「それで……?」
「兄は、精霊女王の解放を望んでおります。そして今頃兄は皇帝陛下の説得に望んでいる筈です」
「女王を捕らえているのは皇帝であるから、か?」
「はい。それもありますが……」
「ふむ……?人間の世界は複雑よのぉ……」
エヴィウス殿下の話には嘘がないように思えた。嘘が無いからといって、そこに真実が入っているかは分からない。しかし、状況だけ聞けば悪にも思える皇帝陛下の行動だが、その実、私利私欲を理由に精霊女王を縛っている訳ではないのだろう。その事がエヴィウス殿下の言動からは読み取れるから、話を受け取る方は如何ともしがたくなる。皇帝陛下を諸悪の根源と決めつけ断罪するだけならば、話はもう少し簡単だっただろう。しかし現状を鑑みるとそう簡単にはいかない現状だ。
ー全てはエステル帝国の繁栄の為ー
エステルは政治に精霊如何が絡んでいるのだ。それはシスティナの政治体制とはまるで違うのではないのだろうか。そう、政治に疎いアーリアにでも推測する事ができた。
人間の世界の在り方ーー特に政治に疎いリュシュタールも、エヴィウス殿下の言い分に対して一応の理解を示してはいるが、納得はしていない様子。首を捻って思案している。
「……だがな。このままでは近からずこの国は滅びるぞ?」
『国は滅びる』という言葉にエヴィウス殿下の顔にサッと影が疾る。苦悩するエヴィウス殿下は絞り出すように声を出した。
「分かっては、おります……」
「精霊女王が好きでエステルに滞在しておるならまだしも、無理矢理囚われておるならば精霊の気も乱れるだろうて。気の乱れは人間の世界にも影響が現れる。遅かれ早かれその時は近づいておる」
帝王ギルバートを愛し、生涯側に寄り添っていたという千年前の精霊女王の時とは状況が全く異なる、とリュシュタールは言う。そうハッキリと言われて尚、エヴィウス殿下の表情は硬い。
皇帝陛下の意思は帝国の意思だ。それを覆す事は皇太子あってもーーましてや第二皇子には難しい事なのだと理解できた。
「状況は分かった。ーーでは、私は行くとしよう」
事もなげにリュシュタールは言い放つとそこらを飛んで遊び回っていた小竜を呼び寄せた。リュシュタールは『聞くことは聞いた』とばかりにスッキリした顔をしている。
アーリアはリュシュタールのこの発言と行動にある程度の予測をしていた。だから、納得しつつも肩を竦めて苦笑するに留まったが、隣のエヴィウス殿下は状況について行けず呆気にとられている。アーリアは半眼で二人の様子を見比べると、エヴィウス殿下の代わりとばかりに声を上げた。
「リュシュタール様はこれから何処へ向かわれるのですか?」
アーリアは答えの分かっている質問をした。そして帰ってきた答えは予想通りのものだった。
「先ほども言ったであろう?精霊女王を解放して差し上げたい、と」
「では、これからエステルの帝宮へと向かわれるのですね?」
「そうなるな」
「でしたら、私もお連れください」
アーリアの申し出にリュシュタールは驚く事はない。リュシュタールには予測の範囲内であったのだろう。
「ふむ、良かろう」
「ありがとうございます」
この会話に否を唱える者がいた。未だ困惑途中にいたエヴィウス殿下だ。
「お待ちください!」
「何を待つ?」
「……!」
「そなたには悪いが、妖精族には人間の政治や思惑など関係がないのだよ」
エヴィウス殿下がここに来て初めて焦りの表情を見せていた。しかしアーリアにはこのリュシュタールの態度も想定の範囲内だった。
妖精族エルフのリュシュタールに、人間の作った法律や掟、ましてや政治的要因など関係がない。それは精霊に善悪がないのとそっくり同じコトなのだ。
エルフは見た目が人間に似ているだけに誤解を受け易いが、彼らは人間ではない。全く異なる理屈や信念を持ち、独自の生態系を確立している。人間同士であっても国が違えば価値観や死生観、考え方や意見、味覚でさえも変わるのだ。それが種族が違えばどうなるか、考えずとも分かるだろう。
「私は精霊女王の下へと赴く。そしてその場で女王のご意思をお聞きしよう。エステルに留まる事が女王のご意思でないのなら、私は女王をそこから解放しようぞ」
そこに其方ら人間の意思や思惑、まして政治など関係はない。そう続くであろう言葉に、人間であるエヴィウス殿下は押し黙るしかなかった。
「……エヴィウス殿下。私はリュシュタール様と共に帝宮へ参ります。エヴィウス殿下、殿下はどうなさいますか?」
アーリアはエヴィウス殿下に意思を問うた。貴方は『どうしたいのか』と。
ユークリウス殿下の思惑はエヴィウス殿下から伝えられた。ならばアーリアもユークリウス殿下の思惑に付き合うのが役目だと考えていた。
だが、エヴィウス殿下自身の思惑は未だ知れなかった。エヴィウス殿下は兄殿下の思惑を語ったが、一つとして『どうありたいか』『どうしたいのか』という自分の意思を語ってはいない。精霊女王を縛り付ける気はないとは言っていたが、言うなれば『ただそれだけ』だったのだ。
アーリアは先日、エヴィウス殿下から皇帝陛下の派閥ーーその差し金とも知れぬ発言を聞いていた。第二皇子がシスティナの姫を娶るという話だ。
しかし先日、飛竜の上から帝国により滅ぼされた国々を見ながら語ったエヴィウス殿下の想いは、現在のエステル帝国の在り方に疑問を呈するものだった。
真逆の言葉。真逆の想い。
アーリアはそこにエヴィウス殿下の苦悩や葛藤ーー『想い』あるように思えてならなかった。
エヴィウス殿下はアーリアからの視線を真っ直ぐに受け、ほんの束の間、思案していた。しかし一度目を伏せ、再度開いた時にはもう、その瞳に強い意志がこもっていた。
「私も同行させて頂きたい。よろしいでしょうか?リュシュタール様」
「うむ。一人も二人も関係がないのでな。私は構わぬよ」
「ありがとう存じます」
エヴィウス殿下はカイトに目配せすると、他の騎士たちを呼びに行かせた。それを横目で見ながら、アーリアはリュシュタールに瑣末な事を聞いた。
「ところでリュシュタール様、どのようにして帝宮まで行かれるのですか?」
「ここに来た時と同じく『精霊の路』を開き、そこを行くが?」
「『精霊の路』とは人間も通れる路なのですか?」
「ちと荒れとるが、ま、私についておれば、大丈夫だろうて」
リュシュタールは「大丈夫、大丈夫」と、軽い調子でアーリアの肩を数度叩いた。
精霊が通り抜ける路とは人間の作った地上の路ではなく、精霊の気で満ちた空間と空間とを繋いだ特殊な路だという。
「ーーああ!僕、それ通ったコトあるよ」
それまで黙って様子を見ていたリュゼが突然、素っ頓狂な声を上げた。
「すごい!それっていつ?」
「この国に来た時だよ。あーーその時、子猫ちゃ……姫は意識がなかったから知らないか……」
「あの時に……」
リュゼはエヴィウス殿下の視線を受けて、言葉を濁しながら話した。
アーリアが『北の塔』から湖へ突き落とされ、川を流された先でエステルの騎士に捕らえられた『その後』の話だ。その時に移動手段として大山から帝都まで『精霊の路』を通ったと、後にアーリアはリュゼから聞かされていた。
ここでアーリアの頭にふと疑問が浮かんだ。
「じゃあ何で……?」
何故、今回の大山調査には飛竜が用いられたのだろうか。飛竜を使うよりも帝都から大山まで『精霊の路』を通って来た方が速いのではないか、と。
「エヴィウス殿下、何故、今回の大山調査に『精霊の路』を使わなかったのですか?」
「それは……」
エヴィウス殿下は困ったように眉根を寄せた後「あぁ!」と決して小さくない声で嘆いた。アーリアだけなら適当に誤魔化せたのだろうが、その背後にリュシュタールがいるので誤魔化しが効かないと思ったのだろう。大きく息を吸ったかと思うと溜息のように大きく息を吐き出した。そして苛立ちげに前髪をくしゃりと掻き上げた。
「『精霊の路』を開けられる者は『精霊に愛されし者』だけーーそれも訓練を積んだ一握りの者だけだからだよ」
「……私とリュゼはこの国に来る時にその路を通りましたよ?」
あの時、アーリアを捕らえに来たのは近衛騎士だった。どこの団に所属した騎士かは知らない。だが、その中にヒースが紛れていた事だけは確かだ。ヒースはユークリウス殿下の命を受けて諜報活動をしていたと言っていた。
ー団長自ら諜報活動?ー
アーリアは首をひねった。ヒースは近衛第8騎士団団長。彼は大勢の部下を持つ。諜報活動なら、団長自ら動くより部下に任せた方が得策なのではないだろうか。
「『精霊に愛されし者』って、その……帝室に繋がる血を持つ者ですか?」
「一概には『そうだ』とも言いきれないけどね。ほら、君みたいな例外もいるだろう?」
エヴィウス殿下はアーリアの持つ『精霊の瞳』を指差した。
「エバンスも『精霊の路』を開く事ができるの?」
「さて、どうだろうね?」
守秘義務とでも言いたげにエヴィウス殿下は唇に人差し指を当てた。
「今回の調査では使われなかった。それは……?」
アーリアの小さな呟きに、エヴィウス殿下は眉を下げ、困ったように苦笑をした。
「ーー使えなかったのだろう?」
アーリアとエヴィウス殿下の会話を聞いていたリュシュタールが徐にに言葉を挟んだ。リュシュタールの周りには小竜がキュゥキュゥと嬉しそうな声を上げて飛び回っている。
「先ほどそなたに『精霊の気が乱れておる』と言ったがの、『精霊の路』の中も勿論大荒れじゃ。脆弱な人間など、中へ入ったは良いが出られんかもしれんぞ?」
リュシュタールの黄金の瞳がそっと細められた。アーリアはリュシュタールの言葉に唖然とし、エヴィウス殿下は小さな溜息を落とした。
「そんな所をこれから通るんですか⁉︎」
「私がそなたの手を離さねば大丈夫だろうて」
リュシュタールは幼子にする様にアーリアの手を取りクイッと引いた。
「あ〜〜皆んな仲良くお手手を繋ぐのね〜〜」
リュゼはどこか嫌そうに「なーるほど」と声を上げた。オンナノコと手を繋ぐなら『喜んで!』だが、男同士で手を繋がねばならないのは苦行以外の何者でもない。とでも言いたげだ。
「成る程。手を繋いで……」
リュシュタールの事だ。路の途中でアーリアたちを放り出す事はないだろう。
リュシュタールはアーリアの手をそっと離すと作業に取り掛かった。
「危険だから使えなかった、か。私はてっきり……」
「てっきり……?」
『アリア姫』がユークリウス殿下の下から離され、ユルグ大山の青竜調査に赴かねばならなかった理由。アーリアはそれをここ毎日考えていた。だから『精霊の路』の存在を知った時、いくつかの理由を思い浮かんだのだ。
一つはアリア姫をこっそりシスティナ国へと逃がすこと。
一つはアリア姫を大山で人知れず殺すこと。
わざわざユークリウス殿下からアリア姫を引き離したのだ。これくらいの理由でなければ納得できない。
『システィナ国の姫アリア』の存在は今やエステル帝国にとって諸刃の剣となっている。使いようによっては毒にも薬にもなる存在となってしまったのだ。
アーリアーー『東の塔の魔女』が攫われた当初の目的は『戦争を起こすこと』だった。しかしアーリアが『システィナの姫』と成ってからは、狙われる理由や敵の目的が変化したように思えたのだ。
「……何でもありません」
事ここに至っては、もうその理由を考える必要もない。かぶりを振ったアーリアにエヴィウス殿下は怪しげな笑みを浮かべ、アーリアの耳元で囁いた。
「アリア……もしかして、システィナにこっそり逃がして貰えたかも知れない、とでも考えた?」
「……!」
「そんな上手くは行かないよ。君の行動は常に皇帝陛下から見張られている。仮にそんな計画があったとしても、君をそう簡単に帝国から逃がすには至らなかっただろうね」
「……それも、そうですね」
「それにね。アリア姫を殺せば、さすがにシスティナも黙ってはいないよ」
エヴィウス殿下の暴露は続く。
皇帝陛下の影たちはどの省どの部署どの場所にも存在する。近衛騎士の中にも当然、複数人紛れ込んでいる。
皇帝の目を掻い潜り、アリア姫を見つからぬように逃す事はとても容易な事ではない。まして、アリア姫を殺せばエステルとシスティナの外交関係や外交問題が激化する事は必至。それをエステル帝国は望んではいない。……と。
「第二皇子がシスティナの姫を娶る事には大賛成だよ。実に妙案だと思うよね?ーーアリア、今からでも兄上をやめて私の所へ来るかい?」
エヴィウス殿下は唇に弧を描くと妖艶な笑みを浮かべ、アーリアの手をーーその指先をそっと取ると、その口元へと近づけた。
アーリアはエヴィウス殿下のよく分からぬ迫力に負けぬまい、と満面の笑みを浮かべた。
「ご遠慮しますわ、エヴィウス殿下。私はユークリウス殿下の婚約者ですから」
「ふふふ。何ともつれない言葉だね」
アーリアを最初に保護したのはユークリウス殿下だ。囮とされ、駒とされ、どれだけ危険な目に遭わされたとしても、アーリアにはユークリウス殿下を恨む気持ちも、今更、彼を裏切る気持ちもなかった。
ー恩知らずになりたくないだけかも知れない、けど……ー
ユークリウス殿下の持つ思惑、その想いは未だ計り知れない。だが、ユークリウス殿下は『エステル帝国の未来』を想っている事だけは確かなのだ。そして、エステル帝国とシスティナ国との間に争いを起こしたくはない、という想いも。
初めにアーリアを助けたのがエヴィウス殿下なら、迷わずエヴィウス殿下の助けとなっただろう。でも、ユークリウス殿下でなければ……
ー私はこれほど頑張れなかったー
アーリアがエヴィウス殿下の手から逃れようとしたとき、エヴィウス殿下はすかさずその手を掴み、軽く引いて、アーリアの白い指先に唇を落とした。そして妖艶な笑みを浮かべると、蕩けるような菖蒲色の瞳でアーリアの虹色の瞳を覗き込んだ。
その柔らかな感触にーー今はそんな甘い状況を作っている時間でないにも関わらず、アーリアは年頃の乙女心からか無意識に胸を高鳴らせてしまった。顔には一気に血が上り、耳まで真っ赤に染まっていく。
「ーーッ!エバンス!」
「ふふふ。ーーではアリア姫。帝宮までは私に案内させてくださいね」
エヴィウス殿下は有無を言わさずアーリアの手を引いた。リュゼは「ホントに皇子ってヤツは」「全く面白くないよね!」などとブツブツ文句を零しながらその後に続く。
アーリアの目の前にはリュシュタールが開けた空間の歪みーー『精霊の路』がアーリアたちを迎え入れようと大きな口を開けていた。
「さぁ路は開いた。雛鳥たちよ、私の後についておいで」
眩しいほどの笑顔を待って、リュシュタールはアーリアに向けてその手を伸ばした。
お読み頂きまして、ありがとうございます!
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帝都混乱1をお送りしました。
リュシュタールの安定のマイペースっぷりにエヴィウス殿下も押されています。
エヴィウス殿下とアーリアの攻防。
押しに弱いアーリアにしては頑張った方ですが、最後にはやはりエヴィウス殿下の方が一枚上手でした。
次話も是非、ご覧ください!