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魔宝石物語  作者: かうる
魔女と獣人の騎士
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竜の谷

 今にも崩れそうな岩が遠く向こうまで連なっている。岩が細かい石に、石が砂に崩れていく。足元には深く暗い穴が河のようにどこまでも続いている。踏みしめた足元に不安を覚える。

 背後には大穴がぽっかりと空いてる。穴は人が一人入れる程度の大きさで、その穴の中から、カーン、カーンと何かを叩くような甲高い音が外まで聞こえてくる。


 その時、暴風が真上から吹き付けられた。同時に熱風。バッサバッサと鳥のような羽ばたきの音と共に、巨大な影が差した。

 暴風から目を腕で庇いながら上を見上げると、そこには蝙蝠のようなテカリがある2枚の翼を羽ばたかせる赤い巨体。太陽の光を反射して輝く血のように赤い鱗。鋭い爪をこちらに向け牙が鋭く光らせ、こちらを見下げている。


 ー赤き竜ー


 この大峡谷の主。その生態はすべて分かってはいないが、寿命は人間の数十倍。額にある第三の瞳と呼ばれる宝石には多量の魔力を蓄えている。口から吐き出されるブレスは焔を帯び、その熱でどんなものでも溶解させることができる。生まれたての竜は掌サイズらしいが、成体は人間の成人男性の5人分ほど。もっと大きい個体も中には存在するらしい。

 かつて赤き竜はこの国をもっと南に下がった南の砂漠に生息していたようだが、砂漠化が進むなか、食料を求めて北へ上がってきたようだ。そのせいで元々、この大峡谷に住かを構えていた青き竜が更に北へ居を移したそうだ。


 赤き竜の周りには2回り小さな翼を持つ魔物、ワイバーンが数匹飛び回っている。魔物たちは舌舐めずりしながら、上空を旋回する。


(……獲物は俺か……!)


 ジークフリードは剣の柄に手をかけ、力を込める。

 額には冷たい汗が流れる。


 なぜこうなったのか?とジークフリードはため息を吐いた。


 ※※※※※※※※※※


 事の起こりは一昨日。地図を見ながらアーリアとジークフリードはどういうルートで逃亡するか、を話し合っていた。


 アーリアが捕獲されジークフリードに連れ出されから2日。

 ジークフリードと初めに潜伏していた場所はなんと、首都を大幅に取り越していた。今の首都に遷都する前の旧都市エルーラ、その北に位置するカルメサ山の中腹にあった、旧砦跡だった。

 ジークフリードが夜中にアーリアを担いで駆け抜けた距離に驚愕した。同時に、事前にこんな場所に潜伏できる場所を確保していたことにも驚きを隠せない。

 ジークフリードの話によると、獣人の呪いを解くために、呪いを掛けた男の元を離反することは確実だったので、潜伏できる場所を時間を掛けて少しずつ準備しいたそうなのだ。他にもいくつか潜伏できる場所があるそうだ。


 陽が真上に差し掛かる。夏は確実に近づいている。真夏の空、までは言えないが、青く透き通る空には白い雲が綿の塊のようにいくつも浮かんでいる。空気が暑い。


 アーリアはマントの冷気を帯びる魔宝具に魔力を込めているので、マントの中は意外にも快適だった。

 その事実を知ったジークフリードにはとても羨ましがられた。声が戻った際には「ジークフリードに冷暖房完備のマントかローブを進呈する」と言ったら、とても喜んでいた。


 他にも道中、魔宝具について色々な話をしていたら、呪いが解け無事に旅が終わったら、ジークフリードはアーリアの顧客になってくれる、と約束してくれた。思いがけず顧客が増え、アーリアは喜んだ。


 魔宝具作成には、材料が必要だ。施す魔術にもよってピンからキリまであるが、材料の中には高価な物も多く、貴重な材料はなかなか手に入らない。材料は魔法雑貨店や市場等で買い付けることもできるが、それでは手に入らないモノもあり、自分自身で取りに行く技術者も多い。

 そしてそのようにして手間隙を掛けられ造られる魔宝具は総じて高額だ。日用品の使い捨て魔宝具なら、材料も安価な物で造ることが出来て施す魔術も簡単なので、魔宝具職人の中でも低いレベルの者でも作り出すことができる。造れる職人が多いので、容易に大量生産ができるのだ。だから日用品魔宝具の売買だけでは、魔宝具技術は食べていけないのが現実だった。

 アーリアは魔宝具の中でも、自ら創造し製作してオリジナルの魔宝具を生み出すことを研究している魔導士の一人だ。造り出す魔宝具のレベルは高く、そしてその分高価な物が多い。だから、市民層には簡単に手に入れられる値段の物が少なく、顧客はどうしても高所得層になってしまう。しかし、アーリアが引きこもりで人付き合いが下手なせいで、なかなか顧客を作ることが難しかった。

 そんな中での私に船だ。ジークフリードは元騎士ということもあり、元に戻ることができれば、他にも魔宝具を購入してくれるであろう人を幾人か紹介してくれるそうだ。

未来に希望を見出す事も出来て、この旅も益々頑張れそうだ。


「……アーリアの話を聞くと、アーリアの師匠は面倒な事はしない性格の持ち主のようだ。なら、まだ元の屋敷付近におられる可能性が高い。彼はいざとなれば《転移》が使えるのだから、下手な移動も意味がないだろう」


 ジークフリードの考えにアーリアが頷く。

 アーリアのカンが全く当てにならないので、アーリアが考えを話し、その話を聞いたジークフリードがこの後の逃亡ルートを考える、という事になったのだ。


「ここから南の都サティまで行くルートは2つ。こう大きく左回りに西の港町を通って海岸沿いを下るルートと、逆に大きく右回りに東の塔のある都を通って山脈沿いに下るルート。このどちらかになる。馬鹿正直に来た道を真っ直ぐ戻ることも可能だが……こちらはリスクが高いだろう。まぁ、どのルートも楽な旅とは言いにくいが……。どちらかというと左回りの方が楽だな」


 ここは首都オーセンより北東へ100ライン。隣国とこの国とを隔てる大渓谷の少し手前に位置する。

 アーリアは地図を見てある場所を指差す。そこは、この国の北東にある隣国との境界になっている大峡谷。赤き竜が住むと言われる場所だ。


「ここに、何かあるのか?」


 アーリアはこっくりと頷いて、右手でジークフリードの腕を触る。


『……ジークさん、竜と闘ったことありますか?』

「騎士だった頃に一度、接したことはあるが……」


 アーリアの瞳がキラキラと輝いた。

 その瞳はとても美しいが、ジークフリードは嫌な予感が背中を駆け抜けた。


『私、ここに行きたいです!』


 ※※※※※※※※※※


 ジークフリードは真上から吹き付けられる焔の息をかわし、岩の影に隠れる。そこで白いマントに付いている留め金に魔力を込める。留め金には赤い宝石が嵌め込まれている。自分の魔力に反応して輝き出す。

 このマントはアーリアの物だ。アーリアに無理矢理着せられた物だが、このマントには様々な細工が施されていて、全て少量の魔力で起動するそうだ。


「アーリア!! まだかかりそうか!?」


 岩の陰から背後の穴の中に向かって、声を張り上げる。

 穴の中からトンカチとミノを持ったアーリアがひょっこりと顔を出す。そして何かを叫んだ。聞こえはしないが、口の形を見ると『まだ』と読める。そして、またすぐに穴の中へ姿を消した。

 ジークフリードは深い溜め息を吐いた。

 ここは大峡谷と呼ばれ、赤き竜の生息地。できれば速足で通りすぎたい場所だった。いや、元々来る気もなかった。

 確かに、ジークフリードは赤き竜のと対峙したことはある。だがそれは団体一1部隊30人ーでだ。獣人にされる前に所属していた騎士団の一員として、間違って人里に降りてきた竜を追い払ったのだ。間違っても自分たちから危険を侵してまで竜の巣窟へ行って接触した訳ではない。レベル上げと称して自ら赴く者もいるのは確かだ。ただ、今回のように素材アイテムを採りに、というのは初めて聞いた。

 よく考えれば、高価な素材などは誰かが採ってくるから、店頭に並ぶのだ。タダで手に入る物ではない。だが、まさか自分がこのような理由でこの危険な場所に訪れるとは思ってもいなかった。今は逃亡中なのだ。しかもか弱い女性を守っての二人旅。

 そんな“か弱い女性”からこの場所に行きたい、と言われるとは夢にも思わなかった。


 あのとき、アーリアはこの旅で初めて生き生きした瞳でジークフリードを見上げた。


『竜の住む大峡谷には『竜の涙』と呼ばれる水晶の群生地があるんです!!『竜の涙』には邪悪な力を払い除ける力があるんです!』

「それでその『竜の涙』を採りに行きたい、と?」

『はい!アイテムショップで買うと、とっても高いんです!』

「……それは解ったが……。わざわざ危険な場所に、しかも逃亡中に行かなくても……」

『大丈夫ですよ!何年か前にもお師様と採りに行ったことがあるんです!場所も分かりますし!ジークさんも、竜と闘ったことあるんですよね?』

「えッ……ま、まぁ……」

『赤き竜への対策もありますし!』


 ジークフリードの胸ぐらを掴みそうな勢いでアーリアはまくし立てる。ジークフリードはアーリアに何を言ってもダメそうな雰囲気を感じ取った。しかも今更「一人で戦ったこと無いから行きたくない」とも言えぬ雰囲気もあった。これはテコでも譲りそうにない。

 ジークフリードはアーリアのキラキラとした瞳を見て、うっと押し黙る。そして深い溜め息を吐いて、諦めた。もう付き合うしかない、と。


「わかった」

『やった!』

「だが、大峡谷に行く前にきちんと対策を練ろう。そして俺がどのように対処すればいいのか、きちんと教えてくれ」

『もちろんです!』


 アーリアは喜び勇んで採掘の準備をしたのだった。


 赤き竜の対策として、アーリアのマントを借り受けた。このマントに魔導士の粋がこもっていた。

 まず、防塵、防腐は勿論、冷暖房完備、盗難防止、火災防止、重力軽減、飛翔補助……など、様々な術が施されているそうだ。師匠が施した術もいくつかあるそうで、本人が判っていないものもあるらしい。

 それを聞いてジークフリードは目眩がした。

 このように複数の魔術が込められた魔宝具は見たこともない。せいぜい1つのアイテムに2つ、3つまでの物がほとんどで、3つの魔術が込められた物はすでに高級品だ。3つ以上魔術をアイテムに込められる魔宝具職人もまれで、それこそ最高ランクの術者に限られる。それを考えるとこのマントは異常だった。たしかに魔術を込めた宝石がいくつも付いているから、施す魔術を重複していないかもしれない。それを置いても、このマントは既に国宝級と言っても差し支えないだろう。

 可笑しいのは、このマントを平然と身につけているアーリアだ。このマントを特別な物として扱ってなどいないのだ。


 以前、アーリアが師匠とこの大峡谷で『竜の涙』の採掘に訪れた時、このマントに付属する火災防止の機能が役にたったらしい。それを思い出したアーリアがこのマントをジークフリードに被せたのだ。


『このマントを羽織っていれば多分大丈夫です!とりあえず燃えませんから』

「……焔の息を吹き掛けられても……」

『大丈夫ですよ!私も初めは焦りましたけど、何とかなりましたから!師匠も笑って見てましたし……!」


 というアーリアの経験談ー有無を言わせぬ言葉ーにしばらく絶句したのは今朝方のこと。


 ジークフリードは覚悟を決めて岩から飛び出ると、岩場を蹴って走り出す。それに赤き竜とワイバーンが翼を羽ばたかせて追ってきた。

 とりあえずアーリアが採掘を終えるまで逃げ回ればいいのだ。

 アーリアはこの後の逃げ方も用意してある、と言っていた。

 今はそれを信じるしかない。


(俺の鬣が燃えたら、どうしてくれる!?)


 一方その頃アーリアはジークフリードの気持ちも知らずに、大穴の奥にある地底湖に面して自生する水晶を見て大興奮。地道にミノとトンカチを使って採掘していた。カーン、カーンと地底湖が広がる洞窟の奥の方まで音が反響する。


『大っ漁~‼︎』

 これだけあったら、呪術の浄化にもきっと役立つはず。

 アーリアは魔術が使えない分、魔宝具や魔力の宿る宝石をその助けにしようと考えていたのだ。半分は。

 もう半分は魔宝具職人としての欲だ。良質な宝石が取り放題なのだ。独り立ちしてからこのように一人で採取に来れていなかったので、幸運としか言いようがない。不幸中の幸いだった。

 ジークフリードは大分渋っていたが、今のアーリアに反省も後悔もなかった。

 以前、師匠たちと来たときは、アーリア自身が竜を惹き付ける役だったのだ。あの時もなんとかなったので、元騎士のジークフリードならば大丈夫だろう。多分。

 あの時は竜への対策も教えられずに師匠から囮を命じられ、師匠の悪口を散々言いながら竜から逃げ回った苦い記憶が甦る。後からマントに付属する火災防止があるから大丈夫だったと聞いてキレた記憶もある。今思い出しても、なんて鬼畜な師匠なんだ、とアーリアは思った。

 それに比べればアーリアはジークフリードに対策を施したので、大分マシだ、と自身を評価していた。

 ジークフリードにしてみれば、この師匠にしてこの弟子あり、どっちもどっちだということなのだが……。


(ジークさんは元騎士団所属の騎士だし、体育会系だから大丈夫!)


 根拠のない理屈だが、アーリアはジークフリードのことを勝手に信頼しかけていた。

 ジークフリードの過去など全く知らない。獣人になる前のこと、獣人にされてからのこと等、知らないことは沢山あるが、ジークフリードが話したがらないのに聞く必要は感じられなかった。

 人間、触れられたくない過去の一つや二つくらいあるものだ。勿論、ジークフリードが話してくれるなら、しっかりと受け止める気持ちはある。

 アーリアはそう考えながらトンカチを振り下ろした。


 外ではジークフリードが苦戦していた。

 アーリアにはとりあえず逃げ回れ、と聞いていた。要約すると『地底湖のある大穴から距離を取って、竜たちを惹き付けろ』ということだろう。 

 岩から岩へ跳び移り、赤き竜から一定の距離を取る。常にアーリアがいる大穴が見える場所を選んで逃げ回れば、赤き竜やワイバーンは獲物を捕らえようと追ってくる。

 驚いたのはアーリアのマントの効果だ。

 頭上や背中を焔の息がまとわりついても、身体には全くダメージがないのだ。勿論、マントが焦げることもない。また、岩から岩へ跳び移る時はマントの浮遊機能や重力軽減が働いて、いつもより遥かに簡単に体重移動ができた。


 そこで、ふと思い出した。アーリアはなぜ、このようにぶっ飛んだ機能満載のマントを羽織っていて、何もない所で転んでいるのか、と。

 時には自身の左足に右足を引っかけて転んでいる。

 いくら体術が苦手と言っても、限度がないか?とジークフリードが首を傾げる出来事がこの数日に何度もあった。

 まだ数日の付き合いだが、ジークフリードはアーリアを観察して、様々なことを知ることができた。

 魔法や魔術が好きなこと。

 魔宝具職人として研究心が高いこと。

 体術や剣術が苦手なこと。

 困っている人をほっとけないお人好しであること。

 一生懸命だがどうも空回っていること。

 等、様々なことが分かった。アーリア自身に嫌味な部分は感じられず、感情に極端な裏表もない。嘘をつくのも苦手なようだ。

 ジークフリードは獣人となる前は嘘とプライドが交錯する世界にいたが、獣人になってからは更に人間性を疑う者たちに沢山出会ってきた。獣人になる期間が長くなるにつれ、自身の心もどんどん猜疑心で黒く塗りつぶされていくようだった。

 たしかに時には嘘をつくことも必要だ。必要だが、それは気持ちの良いものではない。アーリアは嘘を言わないし、嘘をつかない。それは生きる上ではとても難しいことだ、とジークフリードは理解している。


 アーリアはジークフリードの聞かれたくないことは聞いてこない。


 ジークフリードはこの数日で、アーリアに対する好感度が少しずつ高まっているのを感じた。 


(アーリアなら、俺の過去を打ち明けても大丈夫だろうか……)


 ジークフリードが大穴のある岩山の向かい側へ跳び移ると、向かいの大穴からアーリアがひょっこりと顔を出した。アーリアはジークフリードに向かって大きく手を降ってきた。撤退の合図だ。

 ジークフリードは首にかけていた笛を口に咥えた。向かい側では、アーリアも同じように笛を咥えていいる。

 二人は大きく息を吸って、笛の中に力一杯息を送り込んだ。


 ピーーーーーーッ!!


 甲高い笛の音が辺り一体に響き渡る。


 ギャーギャーと耳を劈くような鳴き声を挙げて、赤き竜とワイバーンがジークフリードの周りから離れて飛び去っていく。

 ジークフリードが岩を跳び渡ってアーリアの元へと着地すると、アーリアに笛を差し出して尋ねた。


「この笛は……?」

『この笛を吹くと竜を含む魔物と呼ばれるモノたちが嫌う音が鳴るんですよ!音は魔力を含んでいるので使用者の見える範囲にいる魔物には一定時間、効果があるんです』

「……こんな魔宝具モノがあるなら、初めから使っておけば良かったんじゃないのか?」

『残念ながら、これには使用限界があって、一日に一回だけしか使用できないんです』

「…………」

『あのぅ……す、すみません』


 ジークフリードの態度と目つきになんとなく微妙な空気を感じ取って、アーリアは素直に謝った。やっぱり竜に追いかけ回されるのはキツかったか?と少し反省した。


「いや、大丈夫だ。それより魔宝具とは本当に便利なものだな」


 ジークフリードは自分の着ていたマントを脱いで、アーリアに被せた。


『ええ!とても便利です。 “正しく使えば” 人の助けになります』


 “正しく使えば”という言葉に含みを感じながら、ジークフリードは頷いた。

 そう。魔法も魔術も魔宝具も……突き詰めればどんなモノも、“正しく使えば”人の助けになる。要は使う人次第、ということだ。

 ジークフリードは苦笑してアーリアの頭を撫でた。


「そうだな!正しく使えれば助けになるな!このマントも……」

『……え!?な、な、な、なん……!す、すみませんね!全く使いこなせてなくて!』


 含みある言葉とニヤニヤ笑う獅子の口元から、ジークフリードの言わんとする意味がようやく解ったのか、アーリアが真っ赤にむくれてジークフリードにくいかかる。アーリアのその顔にジークフリードは笑いが込み上げた。


「はは!俺はお前が自分の魔宝具を使いこなせてないなんて、一言もいってないぞ?」

『……!?……!!』


 その怒り方がジークフリードにはあまりにも可愛らしく映ったが、これ以上からかうのも謀られて、むくれるアーリアをひょいっと抱き上げた。


「とりあえず、こんな危ない場所からはとっとと離脱だ」


 アーリアはジークフリードの首もとの毛に顔を埋もれさせられた。お日様の臭いのする柔らかい鬣を鼻先に感じながら、ジークフリードへの文句を飲み込んだ。



読んでくださって、ありがとうございます!


旅の寄り道です。

主人公が鈍臭いので、なかなか進みません……

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