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仮面の勇者  作者: トカゲ
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5.印刻魔法《ルーン・マジック》

すいません、遅くなりました。

昨日の分です。



特に奇妙だと思った点は、この仮面には目の覗き口が存在していないところだった。


屋台の仮面は、なんだかんだ言ってその日限りのお遊びアイテムみたいなものなので、口が開いていないことが多いのだが、だからと言って目の部分まで開いていない物はない。

だって、そうしないと仮面被ったときに目の前が見えないじゃないか。


だからこそ、目の部分が塞がっているなどというのは、仮面としてはあるまじき姿なのだが……。


「これ、変わった仮面ですね?ちょっと付けてみても良いですか?」


「どうぞ」


「ありがとうございます」


オルソフィア姫もこの仮面の形状が変だと思ったのか、私から仮面を受け取ると、眺めたり天に透かしてみたりとしながら色んな角度で仮面を見ていた。


「これ……やっぱり、目が塞がってますね?これじゃあ、前が見えないんじゃないですか?」


それな!


と、大声が返したいところではあるが、私とオルソフィア姫はそこまで軽い口調で言えるほど親密な仲ではない。

私は静かに頷きを返すことで、肯定する。


「ちょっと被ってみましょうか?」


えい、とかわいい掛け声をかけて彼女は仮面を被る。


まだ、効果の分からない未知の神装だというのに……結構アグレッシブなお姫様だなぁ。


と、そんな風に思っていると、仮面は確かに変化した。

(私から見て)右側の目元にあった朱色の紋章が、橙色に変色したのだ。


もしかして、これがこの神装の能力?

人によって被ったときの仮面の文様が変わるだけとか、それ誰得の能力?

少なくとも魔王と戦うのに使える能力だとは思えないな。


なんて、思考をしているとオルソフィア姫から驚愕の声が上がる。


「わー!すごいですね、これ!」


「どうしたんですか、オルソフィア姫」


「これ、使用者に合わせて仮面の表面が透けるようになってるんですよ!」


ん?透ける?

言葉だけじゃよく理解できないな……。


オルソフィア姫も言葉がよく伝わっていないと感じたのか、私に仮面を手渡してきた。


「ちょっと試してみてください!」


「……わかりました」


オルソフィア姫に言われて、私は仮面を装着する。


最初は何か阻害物が私の顔を覆った感覚があったが、すぐにその違和感をなくなる。

まるで顔と仮面が一体化したような……それこそ仮面そのものが元から私の体の一部であったかのような感覚に襲われる。


「どうですか、その仮面は!?何だかつけ心地良くないですか?」


「これは、確かに……」


仮面なんて息苦しいだけのものだと思っていた。

だけど……。

これを付けた後ならば、仮面も嫌いにはなれないな……。


後、なんでこれが覗き口がないのかが理解できた。

これはどうやら装着すると同時に面自体が透けるようだ。


意味わからないって?

うーん、と言ってもこれ以上の説明はし辛いな……。

より具体的に言うなら、エヴ○に乗ってるときにコクピットから風景が透けて見えるようになっている感じ、とでも言えば理解されるだろうか?


とりあえず、そんな感じで私の仮面は屋台の仮面とは比べ物にならないくらいに高性能であるのだ。


「どうやら、その仮面を気に入ったみたいですね」


「えぇ、なんかつけ心地も良いですし……これからは日常的につけようかなぁ」


「え!そ、それは困ります!」


「……え?なんで、ですか?」


「……だって、キョウマ様の綺麗な顔立ちが見れなくなってしまうじゃないですか………」


「え?なんですって?」


先ほどまでハキハキとした口調で話していたのに、いきなりゴニョゴニョと発言をボカしてきたので、私はオルソフィア姫がなにを言ったのか聞き取ることが出来なかった。


「べ、別にっ、なんでもないですっ!それよりも、今後仮面は顔につけるのはダメです!付けたかったら側頭部にしてくださいっ」


「わかりました……」


やはり聞き返したことが失礼に当たったのか、オルソフィア姫は少し苛立ったようにそう言い捨てると、私の仮面を真横にずらした。

仮面は、真正面を向いている私とは違い、そっぽを向いたような形になってなんだか拗ねた表情を浮かべているように見える。


ーーー相変わらず、仮面は橙色のままだった。







「お待たせしました、姫様」


「ありがとうございます、クルエル」


しばらくオルソフィア姫と雑談をしていると、クルエルが私の魔法適性を調べられるという器具を持ってやってきた。


クルエルはオルソフィア姫と会話した後、私の仮面を見て、


「これがキョウマ様の神装ですか………なんとも面妖な」


と、ぼそりと呟くとオルソフィア姫の二、三歩手前に立った。


いや、面妖なのはわかってるけど、何も本人に聞こえるように言わなくても良いんじゃないですか?

なんですか、嫌味ですか?


そう言いたくなるのをぐっと堪えて私はオルソフィア姫の講習に耳を傾ける。


「この器具にはその人の魔法の適性を色で教えてくれる物です。赤ならば火、青ならば水、土ならば茶色、風ならば緑、と言った具合です。他にも色はありますが……とりあえずは調べてみてからにしましょう」


「わかりました」


「では、ここに手を置いてください」


オルソフィア姫に促され、私は白い板のような物に手を置く。

すると、微量ではあるが何か自分の中にある力が吸い取られるような感覚に襲われた。


「キョウマ様、そんなに緊張する必要はありません。これは人の魔力を吸うことで検査するものです。今、キョウマ様が感じられている感覚は、自身の身体から魔力が抜けていっているものです。なので、力を抜いてリラックスした状態で待ってください。すぐに済みますから」


そう言われ、私は知らずに持ち上がっていた肩を静かに下げると、大きく深呼吸をした。


そして、しばらくの間器具に魔力を吸われていると、じわじわと変色を始めた。


「後、もう少しですね……」


そんなオルソフィア姫の呟くを聞きながら、私は年甲斐もなくワクワクした気持ちで待っていた。


何が出るかな?

やっぱ、ここは王道の火とか風?

いやいや、サポート役の水も捨てがたいし、土とかで渋くてカッコ良いなぁ。

変化球で光とか闇が出てきても面白いのかもしれない。


なんてことを想像していると、器具が一際大きく輝いて変色を止めた。

そこにはーーー


「橙色、ですか………」


オルソフィア姫が被っていたときの仮面の文様と同じ、白い器具が橙色に染まっている姿があった。







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