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仮面の勇者  作者: トカゲ
3/11

2.オルソフィア・ルーン・エルトランド(中編)

日付的には問題ないはず……。

引き続き毎日投稿頑張ります。



「ーー様。起きてください、勇者様」


異世界生活2日目。

少し寒気を感じさせる風の音を鼓膜で捉えながら就寝した昨日とは打って変わって、暖かな日差しが窓から入ってくる。


「ん、うぅん……?」


メイド服姿の仏頂面をした女性に起こされ、私は寝ぼけ眼の状態で上半身をベットから起こす。


「お早うございます、勇者様。今はもうすぐ朝の鐘がなる時刻でございます。朝食の準備が整っていますので、宜しければ食堂に向かいませんか?」


「ぁ、ああ……そうですか、わかりました。お願いします」


「はい、ではこれから王族の方との食事ですので、最低限の身嗜みはしておきましょう。ーーヒスカ、勇者様を洗面台へお連れして」


「わかりました。……さあ、勇者様、こちらへどうぞ」


「はい」


私は促されるままにもう一人のメイドに手を引かれて、洗面台へと移動する。


パチャパチャ。


洗面器に溜められていた水に顔を付けながら、私はぼんやりと今後の予定について考えていた。

今後の予定とは、当然この国に残るか否かである。


鋼野、日応、梨紅の3人はこのままではこの国から脱退することを考えるだろう。

この国がお人好し国家ではないことは昨日の会談で分かりきっているのだ、誰も好き好んでこんな場所に居たいとは思わないだろうし……。

当然といえば当然と言えるだろう。


ならば、私はどうするべきだろうか?


あの3人が抜けるかもしれないのだ。

自分も抜けても文句は言われないかもしれない。

いや、仮に何か言われたとしても3人の金魚の糞の如く付き従っていれば、それなりに成功した形で抜け出せるかもしれない。


昨日見た感じでは、3人とも頭は良さそうであったし……。


しかし、折角私は王国側と露骨な敵対姿勢を避けて接したのだ。

今からいきなり3人の味方をするのは性急すぎる気がしないでも、ない。

ここはアウトとセーフの境目を探りつつ、今はまだ日和見的な態度出た方が何かと便利かもしれないな……。


と、そこまで考えて後ろで待っていたメイドさんからタオルを受け取る。


「ありがとうございます」


「いえ、お気になさらず……仕事ですので………」


仕事ですので、と。

そう言ったメイドさんの表情は仮面でも被っているかのように一ミリとして動いていない。

何なら瞬きもしていないのではないだろうか、と勘ぐってしまうほどに直立不動であった。


昨日、国王様から


『なにかと勝手が違い不便であることも多いだろう。勇者殿よ、貴殿に召使を二人ほど預けておく。好きに使ってくれて構わない』


と、言われ、こうして身の回りの世話をしてもらっている。

とは言っても、最初は部屋の中にまで入ってこようとしてきてかなり抵抗したのだが……。

2人が同時に、


『クビになる』


と言ってきて、仕方なく受け入れることにした。


こんな身近に女性がいた試しがあまりないので、部屋の中では常に緊張しっぱなしです。

ちなみに、朝私を起こした若干毒舌且つ饒舌な女性がクルエルで、目の前でビクビクしながら私にタオルを渡してきているのはクルエルも先ほど呼んでいた通り、ヒスカという名だ。


「勇者様、最低限の礼節をわきまえた所で……食堂で国王様とそのご息女様がお待ちになっております。急いで行った方が宜しいかと」


「わかりました、すぐ向かいます。タオル、ありがとうございました」


「いえ……仕事、ですから………」


やけにキツく当たってくる毒舌メイドに、やたらと仕事という言葉を強調するメイド。

こんなのが四六時中一緒にいられたら、気が休まる余裕もないな……。


はぁ……面倒くさい……。


私は、陰鬱とした気持ちでドアを開けた。





食堂に着くとクルエルの言っていた通り、2人の王族は既に着席しており、優雅な朝食を愉しんでいた。


「お食事中失礼します。遅れてすみません、今着きました。相席しても宜しいですか?」


この国のマナーのマの字も知らない私は、内心ビクビクと怯えながら、しかし外面では弱みを見せぬよう堂々とした佇まいでそう尋ねる。


「おぉ、キョウマ殿来ていただけたか……」


「……?」


「なに、遠慮する必要はない。ゆっくりとここで食事を取ってくれ給え」


ニコニコとした笑顔を浮かべ、そう鷹揚に頷く国王。


食卓の場には後ろで忙しそうにしているメイドと執事を除いて他に誰も見当たらない。

あれ……?他の勇者たちは?


そう思ったものの、いきなり質問するのもどうかと考えて、取り敢えずは国王の勧め通りに席に着く。


「勇者様、何か苦手な食べ物などはございますか?」


「いえ、特には……」


「では、好きな食べ物は?」


「あぁ……っと、あんまり食べ物に拘りはないので、適当に何かお願いします」


「かしこまりました」


執事然とした男性に質問を幾つかされ、私は応答する。


好きな食べ物とか言われても……ねぇ?

私はまだこの国に来て1日も経っていないのだ。

何が好きかなんて知るはずがない。


と、そこまで考えて、色々と注文をつけるのも面倒なので、おまかせで注文する。


「ーーお待たせしました」


テーブルの上に置かれたのは、洋風のハンバーグのようなものに野菜を添えたものと、主食として白パンがジャムをつけられた状態できた。

食器はナイフとフォークしか置かれておらず、私のような生粋の日本人からすればどういう風に手をつければ良いのか見当がつかない料理であった。


「勇者様、こちらの食器はこの様にお使いください」


困惑している私の姿を見かねてか、左手にフォークを、右手にナイフを持って食べる仕草をするクルエル。

その態度は、やれやれと言った感じで、明らかに勇者へ向けての態度ではない。


しかしまぁ、私からすれば変に畏まられるよりもこういう風に大胆に教えてくれた方が気が楽ということもあるし、特に気にすることではないな。


私は、クルエルに「教えてくれてありがとうございます」と伝えてからナイフとフォークを受け取り、静かに料理を食べ始める。


「如何ですかな?勇者殿」


「えっ、と……はい、美味しいです」


「そうか、それは良かった……まだ、おかわりはたくさんあるのでな。遠慮なく注文してくれ」


「わかりました」


味は……まぁ、見た目通りと言った感じだ。

そこまで感激するほどのものでもなければ、逆にマズイという訳でもない。

そこそこな感じ。

一応、インスタントな食品よりは美味いのではないだろうか?とは思うものの、私自身そこまで食に通じている訳でもないので、特に言うことはない。


しばらく食べていると、先に食事を開始していたヴェルディオール国王が食べ終わった様なので、そろそろ気にかかっていた質問をすることにした。


「所で国王様。突然でなんですが、他の勇者3人はどうしたんですか?それと、昨日と打って変わってオルソフィア姫の機嫌が芳しくない様ですが……」


「……ああ、彼奴らか………」


この場にいない勇者3人と、機嫌が悪いというよりも正確には元気がない状態でちょびちょびと食べているオルソフィア姫について聞いた。

すると、ヴェルディオール国王の眉が一瞬歪んだかと思うと、悩ましげなため息を吐きながら答えた。


「どうやら私は、他の勇者3人からは嫌われたみたいでな……。こうして食事の席を設けたのだが……きっぱりと断られてしまってなぁ。実を言うと、快く引き受けてくれたのは貴殿だけなのだ」


そう言って、また一つ溜息を吐く。


「それと、娘の様子が変だと言っていたな……?これもまぁ、先ほどの勇者関連なのだが……。女勇者2人を起こしに行ったらしいのだが………どうも冷たい態度を取られたらしくてなぁ……それがショックだった様だ」


「そうですか……」


「うむ、だからな?貴殿が素直に食事に応じてくれているのは私的にはとても有難いことだと思っておる。……周りの頭がかたい貴族共は『これが当たり前!』だのとほざいておったがな」


そう言って、気分を落ち着けるためか、紅茶に口をつけてまた深い溜息を吐いた。


「えーと……それでは、結局の所昨日の話の続きは出来ない、ということですか?」


「うむ、まぁ端的に言うとその様なものだな。娘もこの様子だし……他の勇者3人が落ち着くまではしばらくの間待機するしかないだろうなぁ………」


「どうにも頭の痛い話だが……」と、そう言って締めくくると、彼は娘を引き連れて席を立とうとした。


…………。


「……国王様」


「ん?どうした?」


「オルソフィア姫は、私達勇者の指南役なんですよね?」


「ああ、まぁ……確かにそうは言ったがなぁ………あれは、あくまでただの役付けであって娘はそんな人にものを教えられるほど大層な人材ではないぞ?」


「いえ、それでも私のような世界の常識に疎い者からすれば充分な物知りのはずです。……どうか、オルソフィア姫を貸していただけませんか?」


「………」


私の物言いに深く熟考するヴェルディオール王。

おそらく彼からすれば、私もまた信用できない異世界人の一人でしかないのだろう。

他の勇者3人は明確な敵対行為を示しておきながら、私一人だけが王国肯定派にまわるとは、普通の感性ならば到底思えないからだ。


ヴェルディオール国王は、私の側仕えであるクルエルに二、三言何かを告げると、鷹揚に頷いた。


「ふむ……では、貴殿の助けになるよう娘は置いておくとしよう。フィア、しっかりと彼の役に立つのだぞ?」


「はい……」


「………では、後は任せたぞ?」


「承知しました」


クルエルにそう言って、ヴェルディオール国王はその場を後にした。

場には、今にも泣きそうな顔をしているオルソフィア姫と、明らかに私を監視するように言われたメイド、クルエルだけが残っていた。






ブクマ、ポイントなどをしていただけると幸いです。

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