10.ラウス・エクエス(後編)
すいません、暫くの間更新を中止します。
何だか、内容が煮詰まったので……。
次の展開が書けるようになるまでは、サイキックの方の第二部を考えるか、もしくは新連載をするか……。
どちらにせよ、少し時間をおきます。
たびたび投稿がなくなってすいません。
◇
当時の私は、行く当てなんてなかったので、騎士団長の言葉に二つ返事で承諾すると、王城に連れて行ってもらうことになった。
『じゃ、身体検査始めるから、ちょっと待っといてね?』
そう言って、騎士団長は様々な器具を取り出すと、私の身体につけ始めた。
変なチューブのような物を口に入れられたりもして、何だかモルモットみたいで気分は良くなかった。
暫く計測していると、測り終えたらしい騎士団長の驚愕の表情を浮かべながら、こういった。
『いやー、君凄くいいね!どうだい?良かったらすぐにでも近衛騎士団の団員にしてあげるよ?』
『え……団員?』
『そう、団員』
人との接触に飢えていた私は、団員というチームの枠組みという言葉に憧れた。
私にとって、生まれてから何をしても手に入らなかった団体への加入。
もしかしたら、ここに入れば仲間が出来るかもしれない。
そう思って、私は了承した。
なのに……。
◇
あれから既に3年が経過していた。
入ってから死に物狂いに鍛錬を重ねたおかげもあって、私は騎士団長の位を手に入れたけど……。
結局、何も変わらなかった。
何をしても恐れられ、何をしても人は近付かない。
実を言えば、王からの命令以外で他人と話したのは、キョウマという勇者で2年ぶりだった。
ここに居ても、全然人は話しかけてこないし、前騎士団長は私の出世と共に降格されていたので、今ではもう顔を合わせていない。
だから、正直に言うとキョウマのように私とちゃんと話してくれる人というのは、本当に何年ぶりかのことで、私としてはとても嬉しかった。
できれば友達とかになりたいな……って思うぐらいに。
でも、それも望み薄だろう。
彼は、勇者だ。
勇者の立ち位置は国によって異なり、非常に不安定な地位が課せられていることが多いが……。
少なくともこの国では公爵家と同等程度に扱うという話を小耳に挟んだ記憶がある。
つまり勇者というのはこうしての同じ地位にあるというわけだ。
それに対して私は騎士団長と雖も元平民。
本来ならば話しかけることすら叶わない身の上なのだ。
だから今の距離感がベスト……。
それに、さっきの訓練で相当彼の体をズタボロにしてしまった。
おかげで彼はさぞかし私を憎んでいるだろう。
以前にも、しつこく絡む貴族を似たような目に合わせて怯えられたことがある。
おそらくキョウマもそう思っているだろう。
……と、私はそう思って訓練所の扉を開けるとーーー
◇
「あ、授業再開するんですか?」
「……うん」
まだ授業受ける気あるのか、多少驚いてしまう。
しかも、彼には私に対する恐れがない。
え、もしかしてーーー
「ーーーマゾ?」
「へ?」
「……いえ、なんでも…………」
そういえば聞いたことがある。
マゾと呼ばれる性癖を持った人々は、人に蹴られることや殴られることに快感を覚える、と……。
あんなに蹴られたのに、それでもこんな笑顔を作れるなんて……やっぱりキョウマはマゾなんだ!
そう思いながら私は実習を進めた。
私を拒まない存在がいることに、少しばかりの喜びを……私は、得た。