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仮面の勇者  作者: トカゲ
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9.ラウス・エクエス(前編)

◇は、他者視点です。

次話の投稿は、12月9日になります。

投稿が遅れてすいません。



オルソフィア姫よりも年上……中学生ぐらいだろうか?

ボブカットにした艶やかなエメラルドの髪と目が特徴的な女の子である。

しかし、そんな綺麗な髪よりも私は別の部位に目がいっていた。


そう少女、騎士団長ラウス・エクエスは大分際どい服装をしていたのだ。


上は半袖のシャツでそこまでだが……。

そして、下はブルマも真っ青の丈の短いハーフパンツ。

白い太ももを大胆に出し、ほとんど下着同然の面積しかない。


しかも上も上で、年相応の膨らみかけの胸が体操座りという姿勢で少し圧迫されてしまい、ささやかながらの自己主張をしてしまっている。


うぅむ、まさに男殺しの姿勢と言える……。


と、私がそう思って眺めていると、先ほどまで静かにしていたラウスが口を開けた。


「……足、好きなの?」


「…………」


うん、どうやらジロジロと見つめすぎたようだ。

私は即刻頭を下げた。





「姫には、キョウマを鍛えろ、って言われた、けど……?」


私が頭を下げた後、さして興味があるわけでもなさそうな顔で、


「そう」


と一言で謝罪を受け取った彼女は、早速本題へと入った。


「ええ、私は平和な国から来ましたから……あまり実戦経験とかが無いわけなんです」


「そう……平和なとこ、ね」


地球はこの世界と比べてそこまで殺伐とした世界では無い。

とりわけ日本は他国と比べても随分と治安の良い場所なので、喧嘩は勿論の事、人をグーで殴ったことすら私にはない。


だから、私には人の殴り方すらわからないのだ。


そのような旨を話すと、暫く黙していたラウスは徐に顔を上げると、抑揚のない声で言った。


「……じゃ、殴り合い、しよっか?」


「……へ?」


「殴り合い、しよ?いいよ、ね?」


こうして私はラウスと殴り合いをすることになった。





ブオンッ!


「……ゴハッ!」


「遅い!もっと、速く!」


「……うぇっ、ゴホッゴホッ……ずみま゛ぜん……」


22回目のトライ。


「行くよ?」


ラウスの掛け声と共に、私は身構える。


ブオンッ!


……来た!


ラウスが振り上げた拳の音を聞き、私はそう判断して魔力を体外に展開。

そのまま勢いよく振り下ろされる彼女の拳を全身全霊をかけて躱そうとする。


しかし……。


「あまいっ!」


グォンッ!


と、拳が急旋回をしたかと思うと、私の鳩尾にクリーンヒット!


「〜〜〜〜〜ッ!?」


今までの腹パンとは比べ物にならないくらいのどデカイ衝撃を喰らった私は、生まれたての馬のように足腰をガクブルさせて地面に膝をつく。


「……休憩。そこで、休んでて」


「……は、い」


「飲み物、取ってくる」


私がピクピクと痙攣しながら地面に倒れるのを見たラウスは、半ば呆れ気味にそう言うと、食事室に飲み物を取りに行った。


というか、このやりとりも既に10回以上行われていた。



『強く、なりたいんだったら、反応して』


そんな発言をラウスから聞いた後、彼女は突如として私に拳を振り上げてきた。


騎士団長の拳を避けること。

これが最初の訓練のようだ。


ラウスの拳は、女の子らしい柔らかくて小さなものなのだが、攻撃をする際にのみその姿は豹変する。

あれはもう鉄球と呼んでも過言ではない硬さだ。


一回だけ私が避けたときに、たまたま拳が壁にぶち当たったことがあったのだが、その拳は止まることなくそのまま壁を抉ってしまった。


『あっ……やっちゃった』


そんなことを言いながら、オロオロするラウス。

見た目は中学生ぐらい女の子にしか見えないので、その光景はなかなかにほんわかするものであるはずだが、その女の子が壁に穴を開けたとあっては笑うに笑えない光景である。


というか、その光景を見てから彼女の拳に対するトラウマが出来、今では彼女の手を過剰に怖がるようになってしまった。


もし、女の子の手が怖くて触れなくなったりしたら、ラウスには責任を取ってほしい、と本気でそう思うぐらいには恐ろしい光景だったのだ。


あれから22回。

一向に私の反射神経は上がったことを感じさせず、未だに私はこうして地べたに寝転がってしまっている。


折角本気で教えてくれるであろうラウスには申し訳ない戦績だけが、増えていく。





いつも、一人だった。


私は生まれたときからいつも一人だった。

別に両親は死んでいるわけではない。


むしろ二人とも私を産んだ後に三人ぐらい子供を作るぐらい元気である。

なのに、私の相手をしない。


それどころか、私のことを化け物みたいに見てくる。


兄や姉、それにその後にできた弟や妹にも似たような態度を取られて、家庭内で気まずかった私は、仕方ないから外に遊びに出かけた。


でも……。


それでも、私は一人だった。


みんな、遊んでくれない。

他のみんなは楽しそうに遊ぶのに、なぜか私とは遊んでくれない。


ねぇ、なんで?なんで、遊んでくれないの?


そう問いかけたい気持ちに襲われるものも、みんな、誰も答えてくれない。


仕方ないから、村を出ることにした。


その後、私は色んな村を転々として、やがて王都に着いた。

そこは今まで私が訪れた村の中で一番大きかった。


色んな人種が居て、色んな物があって……。


ここなら、私を受け入れてくれる。

そう思って王都に入ったら……。



「ぐおっ……!ッーて!何するんだ、馬鹿力!」


……私の異常性は更に目立つようになった。


握手をするだけで相手の手を握りつぶしてしまう。

ちょっと肩を叩いただけで脱臼させてしまう。

少しぶつかっただけで相手の骨を折ってしまう……。


端的な話、私は力加減ができない子だったのだ。


実際、村にいた頃もたくさんの人を傷つけた。


別にわざとじゃない。

こちらとしてはそっと触っただけのつもりだった。


けど、現実はそうはならない。

色んな人から恐れられて、泊まる宿も見つけられなくて……。


そんなときに、私を雇ってくれる人がいた。

それは……。


『君……とても力が強いんだそうだね?だったら、騎士団に入る気はないかい?』


当時の近衛騎士団団長だった。






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