ープロローグー
桜舞う春の季節
生暖かい風が頬を霞め
髪の毛には桜の花弁が落ちる
本日4月11日は、私立竜胆高等学校の入学式
様々な想いが交錯し、新入生達は校門をくぐり抜けていく
ただ一人を除いて
「貴様ぁ!!なんだその格好は!」
竜胆高校教頭、防人関戸、短めの黒髪に立派なスーツを着こなしているが、体格がゴツく、とても先生にはみえないこの男の罵声が
校門をくぐり抜け歩いてる生徒にまで聞こえた
「ただの服装ですけど何か」
少し長めの襟足、前髪は目に掛からないくらいの長さ、黒髪に、整った顔立ち、上にはパーカーを羽織り、チャックを開けた隙間からみえる白いシャツには『勉強不足』の文字
下には指定外制服のスラックス
防人が怒るのも無理はない格好をした少年は防人を下から見つめ言った
「只の服装だと…?ここは高校だ!中学とは違うんだ、貴様はどこの中学だ」
「フッ」
防人の罵声を前に
口元をニヤつかせ笑う少年
その突如
「よく聞いてくれた!ありがとう教頭先生!俺の母校は霧裂!霧裂中の高杉我紅だ!以後、お見知り置きを」
少年こと我紅は、防人とその他周囲の新入生に見せつけるかのように手を広げ高らかに自己紹介をした
「おい霧裂中の高杉って…」
「あの高杉か…やっぱりきたな」
「高杉我紅だってよ」
周囲の生徒は口々に我紅の名前を呟き我紅を見る
「ほう、お前があの高杉か、だがしかし!ここは天下の竜胆!貴様とてここではルールに従ってもらう!」
防人は我紅を指差し、怒声をあげる
「あぁ、もちろんそのつもりだ」
「は?」
「「「「は!?」」」
防人だけでなく、周囲の生徒までもが同じ発言をした
「じゃ先生、ちゃんと後で制服着るからよ、今日だけ頼むわ、じゃっ」
呆気にとられてる防人と新入生達を置いて
我紅は校内へ歩いていく
防人はただ見送ることしかできなかった
ーーーーーー
ガラガラ
我紅が自分の教室をみつけ
扉をあけると
そこには40名ほどの新入生が椅子に座らず各々仲の良い者と戯れていたが、我紅が入った途端視線が我紅に向けられる
「おっ我紅!こっちこっち!」
この中の一人が我紅の名前を呼ぶ
「おお!京夜!」
視線は次第になくなり
京夜と呼ばれた少年の所に我紅は歩いていく
ガッ
「……どけよ」
我紅の前に足を伸ばし我紅の進行を妨げる少年
「よーあんた霧裂中の高杉じゃねぇか」
「だったらなんだ」
「ちょいとねー……オラァ!」
少年は我紅に殴りかかる
ドゴーン!
突如として机や椅子が吹き飛び
その中に男は倒れていた
「物騒な挨拶ご苦労さん、フワァ!ねみ」
我紅は一瞬で男を吹き飛ばし、京夜と呼ばれた少年の元へ向かった
「我紅流石だな、初日から敵増やすのうまいねー」
「あ?なにが?」
京夜にそういわれ
後ろを振りかえると、二人以外の生徒がこちらに殺意を向けて立っていた
「はいはいなるほどね、京夜、眠気覚ましに俺にやらせろよ」
「元々俺への殺意じゃねぇだろって」
「ハハ、違いねぇ」
その言葉と同時に
他の生徒達は無言で向かってくる
「よっしゃ!楽しくなってきたぁ!」
ドーン!!
唐突に教室の扉が砕け、さっきまで殺意むき出しだった生徒と、我紅達は、扉のほうをみる
「入学初日から"授業"するとは中々気合いの入った餓鬼共だな……だが、"座れ」
扉から入ってきた黒髪ロングのスーツを着た美女は
教室の全員を見渡しそう呟くと
我紅、京夜を含めた生徒達が一斉に床に倒れた
「な……んだ…これ」
「くっ……」
「よしそのまま….っ!」
倒れた生徒は動けなかったが
我紅と京夜は朧気ではあるが立っていた
「ほう、中々見処のあるやつもいるようだ
さて、"戻れ」
そう呟くとみな身体が楽になったかのように起き上がる
「一々説明してる暇はないのでな、聞きたいことは明日以降にしてくれたまえ、さぁ体育館へ行くぞ」
何が起こったかわからない一同だが
取り敢えずはこの先生らしき美女に着いていくことにした
ーーーーーー
長い入学式が終わると各々の教室に戻る
そして生徒全員が、席に着いた
「入学式ご苦労、今日から君達も竜胆高校の一員だ、誇りをもって学業に励むように!さて、先程のことだが、みなこの高校の本質を知らない者はいないかね?」
誰もなにも言わなかった
恐怖ではない、ただみな知っているからだ
だが一人を除いては
「すんません、俺京夜についてこの高校きたんでわかんねぇっす」
こいつバカか、と言わんばかりに生徒全員が我紅をみる
「ということは"魂"も知らないのか?」
「たましい?んなの知ってるよ!俺の熱いたましいは燃え盛ってるからよ!」
「ハァ…高杉、後で私の所へこい」
「俺なんか間違ってたか?」
「我紅に説明してなかったね、取り敢えず先生に教わってきなよ」
仕方ない、そうい言わんばかりに我紅は納得した
こうして、入学式も終わりHRも終わって
波乱の1日が幕を開けた
そして始まる
竜胆高校、またの名を「私立竜王学園」創立以来
かつてない伝説を刻む第147期生の奇跡の三年間が…
時は2147年
タイムリミットは1095日
ヤンキーとは、己の信念に突き進むが如く
ヤンキーとは、拳で語るべし
ヤンキーとは、常にツッパルべし
ヤンキーとは、悪事に手を染めるなかれ
ヤンキーとは、"漢"であるべし
都会の中心に位置する高校
私立竜胆高等学校では毎日のように喧嘩が行われていた
だがそれは、決して不良達が暴れているのではない
授業の一貫であり、それがこの高校、竜胆高校の形態である
竜胆高校という名前ではあるが
周りからの呼び名は
「私立竜王学園」
そこに新たな新入生が入学してくる
様々な個性をもった者が集う
そんな中
一人の少年は異彩を放っていた