第一話 「ちょっと怖がりなだけ」
とっても、怖い。
私は、一昔前にこの世界に生まれて伸び伸びと生きてきた。しかし、常々思うのです。
私は。
この世界に。
生まれるべきではなかった、と。
村の周りに森があり、その向こうに恐ろしい生き物たちが住まう山があります。この名もない村で生まれた人たちは10を超える頃には森に入り、狩りをして暮らして生きていくのです。私も、本来はそうすべきだと、分かってはいるのです。でも、どうしても。私には森に入るなんてこと、出来ないのです。
幸いなことに、私は産んでくれた人や、育ててくれた人に恵まれていたようで、言ってくれるのです。
『出来ると思った時にすれば良いんだよ』
『怖いまますること無い』
『自信が出てきたら、一緒に行こう』
と。私は、その言葉に安堵しながらも、焦りを感じて、昼は街で出来ることをしながら、夜、皆が寝静まった頃に弓を引く。こんなことじゃあ、いけないことくらい、私には分かっているのです。唐突に寂しくなり、怖くなる。笑顔を心がけて馬鹿みたいに振る舞うのです。
それでも。
『逃げてるだけじゃない』
『出来るくせにやらねぇなんてタダの穀潰しじゃねぇか』
『何もしないのに守られて、恥ずかしくないのかしら』
村の人か、私の心の中に住まう誰かが言ったのか。私は、その言葉に何も言い返せない。心中では考えてるのに、それを、言い返せない。その度に、震えて泣いてしまう。
私は、怖くて、逃げ続けるのだ。
狩りから。
人から。
外の世界から。