万聖節前夜 前の土日のこと。
「斯くも愚かな~」前提。
上記作品、エンド2のつくし達七人がそれぞれの年嵩能力者の養子になって約一年ごのハロウィン話。
「ただいま、あざみお姉さん。」
「腹減った~。
ただいま、あざみお姉ちゃん。」
「こんにちは、なの。」
「こんにちはです。」
「お邪魔します、ディスティアさん。」
「あー、紅碧と羽羅は来なかったか。」
十月の末の日曜日。
ディスティア或いは、あざみ、かつて、縹と養い子に名乗った女性のマンション。
一年ほど前に同じ能力者の子どもを引き取り、同居している露草色の銀髪をした二十代半ばの年若い(?)女性である。
他に生き残った五人の子どもの能力者も、それぞれ同じく年嵩の能力者達に、引き取られた。
ちなみに、上から、つくし、改め、京護。
カランコエ、改め、修護。
そっくりな双子で、見分け方は、ゴツイヘッドホン付きなのが修護である。
次が幼稚園児の男女双子。
銀髪をツインテールにしているのが、女の子のリラ。
銀髪を三つ編みにしているのが、男の子のキラ。
ちなみに、この2人と羽羅を引き取り、母親役をやっているのが中学生ぐらいの外見のジュリである。
最後が、黒髪の大和撫子な高校生。
そして、助けてくれたリンデンに惚れている茉莉花である。
だから、引き取り先は、紅碧と同じオネエな九十九神の月森久遠なのであった。
五人は五人とも、微妙なデザインの差はあれど、同じ学園の制服を来ていた。
色々と取引の結果、数少なく能力者が何の遠慮もなく通える時乃学園の制服。
幼等部から大学部までのマンモス学園。
……と言っても、高等部までは五クラスまでのちょっと大きな学校レベルではあるのだが。
一応、幼等部は三学年各三クラス、初等部六学年各三クラス、中等部三学年各四クラスではあるのだが。
その五人を迎え入れたのは、目元に濃いクマが鎮座するディスティアである。
おまけに、エプロンをしているのだが、それもよれていた。
午後も三時近いころ。
時乃学園に通う先ほど上げた五人が、訪れたのは、ディスティアにとある依頼をされたからである。
ちなみに、昨日の土曜日一日と今日の午後にかかるまで、高等部まで合同の音楽祭で、紅碧と羽羅は五年生六年生のそれぞれの実行委員会に在籍している関係で、いないようだ。
「とりあえず、おやつ用意してる。
食べたら、手伝いよろしく!!」
奥に行くと、ダイニングテーブルで、ディスティアの年長弟2人が、荒熱の取れたクッキーやトリュフチョコをひたすら、ラッピングしていた。
ちなみに、弟の年下の方で大学生のほうが、白髪で一年前のあの時も出陣していたラビこと、アルトである。
傭兵隊の1人を装備ごとビーチボール大に圧縮&血を絞り無邪気とも取れる言動をしていた青年。
もう1人の方も、一年前のあの時は後方支援班の担当していた青年で社会人である。
紅い髪と喧嘩慣れというか殴りなれていそうなそう言う彼は、一応、現役の暴走族幹部であり、会社員でもあるのだ。
裄瀬衛伴、或いは、五人にはエヴァお兄さんで通っている。
ちなみに、子どもの保護者組がいないのは急に入った裏稼業の依頼の為、遅れるようだ。
「テレビの前のテーブルに乗っかってるからね。」
「あ、来たな。
食べる前に、手を洗え。」
ラビが指したプレーンなカップ蒸しパンと抹茶味、苺ミルク味、オレンジ味と水出し紅茶と牛乳が並んでいる。
一応、三つづつは幼児双子のために、小ぶりなもののようだ。
茉莉花が、レシピを聞いていたりとほのぼのとしている。
その後、幼児双子が、クッキーの型抜きを担当し。
焼きあがったクッキーを個別に乾燥剤を入れて、五枚とトリュフチョコ三個組でラッピングするのは、修護と京護。
スタンダートなトリュフチョコと南瓜風味のトリュフチョコをひたすら作るのが、茉莉花。
現役の暴走族メンバーと元も含め幹部組みのみと言っても、五代も重ねればそれこそ人数も多くなる。
暴走族というよりは、正確には、自警団の予備みたいなもんではあるのだけども。
その為の準備。
昨今、人数が減ったといっても、それでも数百個のクッキーとトリュフチョコの箱。
抹茶、カボチャミルク、ナッツなどの種々様々なパウンドケーキを数十本。
アップルパイ、カボチャ&カスタードパイ、サツマイモと紫芋のパイ、カボチャ&ミ-トパイ。
パイ生地も、スタンダートから抹茶風味からチョコ、黒糖風味などバラエティに富んでいる。
オーブンの片方を占拠して焼いていた丸鳥のロ-ストチキン照り焼きとハーブソルト風味各一個。
丸パン、野菜たっぷりのコンソメスープ。
そんなので夕食をとり、ひたすらに、作っていく。
勿論、幼児双子はそうそうに眠ったし、入れ替わりに子ども組の親が来たりと、その日遅くまで明かりがついていたと言う。
これは、余談だけれど、数日後の万聖節前夜宴暴走の日。
パウンドケーキとパイをディスティア自ら切り分けてもらう為、幹部組が「トリックオアトリート」と言いにたまり場でもある喫茶店で、集まり始めた頃。
毎年ではないが、それなりに入れ代わりがある為に、デモンストレーションも含めて、ラビが悪乗りをした。
化粧と衣装両方ともガッツリとした緋牡丹が、「トリックオアトリート」の後に「どれ切る?」と言わせず、抱きついてラビの後頭部から見ればキスしているようにしか見えない位置でしばらく静止して。
振り返り目で語る。
一応、唇の横であるのだが、このガッツリ女装版のラビは、ディスティアの弟であるとは知られてはいない。
―「姉さんにイタズラしたら、俺と敵対だから覚悟してよね。」と。
それに嫉妬したのか、京護と修護がディスティアに抱きついて、「トリックアンドトリ-ト」と言って、それぞれ首筋と髪にキスをした。
まぁ、興味があるのならば、キスの意味で調べると面白いのかもしれない。
また、同じ店の片隅で、茉莉花は「トリックオアトリ-ト」と言って、黒髪のリンデン……イライアスにお菓子を貰った後に同じ台詞を言われて大いに慌てた。
そんな彼女を膝の上に抱き上げて、おでこと服の上からとは言え、鎖骨にキスをした。
元々、女性好きで遊んでいたイライアス。
だけど、もう恋をしないと思っていたところに茉莉花からの純粋で若く真っ直ぐな恋愛的な意味での好意を向けられてほだされた。
自分の愛情が、重いことも自覚しているから、逃げるのなら今の内、と言う意味を込めておでこと鎖骨なのだろう。
「…………イライアスさん、ずるいです。」
真っ赤になって、顔を覆ってしまった茉莉花は悪くないと思う。
例えば、そんなハロウィン。
次は、十年前クリスマスか、ネタ次第でこの後のクリスマス予定。
もしくは、「斯くも愚かな~」の別サイド。
ありがとうございました。