深夜の泥棒(ショートショート27)
玄関のドアの開く音が聞こえた。
――もしかして?
玄関のドアには内カギをかけてあったので、侵入者が何者かはおおかた予想がついた。
――どうしよう。
考える間もなく、侵入者の足音がリビングへと近づいてくる。
マンションの間取りは、ダイニングキッチンと寝室の二部屋だけ。リビングを抜けたら、今私のいる寝室しかない。
――とにかく隠れなきゃ。
私はとっさにベッドの下にもぐりこんだ。
ギィー。
ドアのきしむ音がして、リビングの明かりが寝室に射し込んできた。
ズボンの膝から下が見える。
大きな足だった。背丈は一メートル八十センチは超えているかも……。
かなりの大男のようだ。
視界から男の足が消え、クローゼットを開ける音がした。クローゼットには衣類ばかりで、たいしたものは入っていないはずだ。
――早く出ていって。
私はベッドの下の一番奥でちぢこまり、ブルブル震えながらひたすら願っていた。
男が寝室を出ていく気配がある。
それからガサガサと、リビングで物音が聞こえていたが、すぐに静かになった。
――どこへ?
男が外に出たようすはないのだ。
水の音が聞こえた。
洗面所の方からでシャワーの音もする。
――今しかない。
このチャンスをのがしたら、あとは男が外に出ていくのを待つしかなくなる。
私はベッドの下からはい出した。
寝室を出ると、リビングを忍び足で抜け、なんとか玄関から逃げ出した。
――ふうー。
私は無事、盗みに入ったマンションから脱出したのだった。