69話
お久しぶりです。自身の健康上の理由のため中々更新が難しくなってしまっていました。今後も正直更新がかなり不定期になりそうですが投稿自体は頑張りたいと思います。
「何故未だにほとんど初対面に近い俺に対して友と呼んでくれる?」
「言葉での説明は難しいな。それでも言葉にするなら勘だな。何となく最初から感じていたんだよ。そして最初に見た時に感覚的に分かった。こいつとは割と気が合いそうだとな」
現に、そうしてソウマは昔から友人関係を作ってきたことが多かった。シャルロットも感覚で人を視るがソウマ自身も割と感覚で人を判断していることが多い。シャルロットが人の本質を感じているのに対してソウマのは単に自分と馬が合う合わないの所で判断している違いはあるが。
「実は俺もそんな気がしていた。俺もこれまでそれなりの数の人や種族と相対してきた。様々な感情や思惑にも幼いころから晒されてきたからか何となくではあるが己にとっての相性的な者が見えてくる。あの謁見の間で出会いでお前達から感じた印象は様々だったがお前が一番俺にとって合いそうと感じたぞ」
皇帝は自らの手で揺らされていたグラスの酒を呷り空のグラスに再び酒を注ぐ。
「今現在の帝国において俺の持つ考えは限りなく異端に近い。力が全てという考え方は悪くは無いが武力だけが力という考え方は古い。何よりも人族こそが至上であるという考え方はこの帝国を衰退させる考えだ。そんな思想を昔から持っていた俺に真に心を許せるのはオラソだけだった。だがあいつはどこまで行っても俺の部下で心は許せても友にはなれなかった。だが、お前なら・・・・」
皇帝は注がれたグラスの酒に視線を投げる。
「お前はこの世界でも最上位に位置する武力を有する存在だ。お前はどんな奴にもどんな地位にもどんな存在にも屈さないし媚びない。お前はこの世のどんなモノにも影響されない。そんなお前だからこそ俺は真に心を許せる友と思える」
皇帝の独白を聞いたソウマは小さく笑う。
「お前の自我の強さは大したものだ。初めて俺達と会った瞬間に俺達がその場の誰よりも強いとほとんど確信しながらも皇帝としての自負を全く失っていなかった。たとえその結果自分が死んだとしてもその自負は小揺るぎもしないだろうと感じたよ。そして同時にある種の信頼も感じた。お前は俺達の目を見てそんな行為に出る気が無いと瞬時に悟っていたな。だから俺はお前を面白いと感じた」
そうしてソウマはグラスを皇帝に差し出す。
「身分も思想も立場も関係ないんじゃない。俺はそのすべてが気に入った。皇帝ではなくザナス・バイエル・ダナークという男が気に入った」
「ソウマ・カムイ・・・だったな」
皇帝は・・・・ザナスは不敵に笑みを浮かべると差し出されたグラスに自らのグラスを打ち合わせた。
「いつ帝国を発つ?」
「やることも取り合えずやったしな。明日明後日にも発つだろうな」
「先に聞いたが貴様らの旅の目的は見聞と食べ歩きだといったがあれは本当なのか?」
「本当だ。これも説明したが俺が封印されていた百年程度の間に世間様がどれだけ変わったのか確認したいんだよ。あと、シャルやナーバの食べ歩きだな」
ソウマの言葉を聞いたザナスは笑いを堪える様に口元を手で覆う。
「国どころが大陸を制圧できるほどの戦力を有した存在がただ大陸を闊歩するなんぞ・・・・・他の国の王たちが聞いたら卒倒しそうな事実だな」
「何もしてこなければ何もしないさ」
何でもないことのように言ってソウマは酒を飲みほした。
「そういえば・・・・・」
ザナスは再び自分のグラスに酒を注ぎながら話を切り出す。
「貴様が居た百年前あたりの帝国にあった記録を読んだ。当時の皇帝であった俺の曽祖父はよほど貴様が恐ろしかったの貴様に関連する事柄を詳細に調べていたぞ」
「へえ・・・(当時の【十騎聖】を全員ぶっ飛ばしたのを根に持ってたのか?)」
「その記録によると・・・ソウマ、貴様あの国と随分と揉めていたようではないか?いや、正確にはエテルニタ王国だったが・・・。あの国から一番疎まれていたのがお前だったと記録にある」
「そう・・・・だったか?」
ソウマは思い出そうとするように天井を見上げるがあまり印象に残っている感じではない。
「まあ貴様からすればほとんどの相手が何ほどのモノでもないだろうな」
「ああ、そういえば酷く鬱陶しい連中がいたな。俺以上にシルヴィアの奴が嫌っていたな。ただシャルやアウロのおっさんの手前あいつら殲滅しなかったからな」
「あの国も当時から帝国の【十騎聖】に並ぶほどの戦力を抱えていたはずだ。あまり表に出てくることは無いがな。・・・・まあ、それでもお前等相手では十把一絡げであろうがな」
「そういえばちょっかいかけられることはあったがそいつらと闘りあったことはなかったな。それだからか知らんがあいつら妙に強気に出てくることがあったな」
「恐らくはお前らが特に手を出してこないのは自国の戦力を恐れているからだとでも思っていたのではないか?」
「そうだったのか?俺自身はあまり気にしていなかったらなぁ・・・」
「もしあの国に行くのなら恐らくはまた妙なちょっかいをかけられると思うがお前等なら心配はいらんだろうな。むしろ俺としてはあまりやりすぎないように頼むところだがな。あの国も大きな国である以上国そのもの機能に支障が出れば他の諸国にも少なくない影響が出るからな」
「前向きに善処するよ」
テーブルに出されたお菓子をつまみながらソウマはまるで真剣味の無い表情で答える。
「当てにならん男だな」
そう言いながらもザナスはまるで気にしていない風に笑って酒を飲む。
「まあいい。次に帝国に来るときはすぐに俺のところに来いよ。面白い話をゆっくり聞いたい。お前のことだから普通では体験できんような事の話も聞けるだろう」
ソウマはグラスの酒を飲みほして立ち上がる。
「面白いかはさておいて話をするのはやぶさかじゃない。なら次はもっと旨い酒とつまみを用意しておいてくれよ」
「当然だ。特上の酒と料理を用意しておこう。何なら次はお前の仲間達も一緒に席を設けよう」
「そりょいい。うちの食いしん坊共と旨い飯さえ用意すりゃあすぐ来るさ。世話好き共も食いしん坊が来りゃあ付いてくる」
そう言いながらザナスに背を向けて手を振りながら部屋を後にしていった。
※※※※
ソウマ達は帝都のとある宿に部屋を取っていた。
「・・・・お帰りなさい」
ソウマが静かに自分の部屋の扉を開けると部屋の中ではシルヴィアが寝具に腰かけてソウマを待っていた。
「皇帝のところに行っていたのね」
「分かるのか?」
「何となく最初に見た時からあの皇帝はソウマと仲良くできそうだと思っていたの」
「明日の朝ここを発つ。あのエルフの奴らも一緒にここを出て里に帰るらしい。奴隷にされていたエルフ達もここにいるよりも澄んだ魔力の濃い隠里の方が心身共に回復が早いだろうよ」
「そうね。特にあの孤児院のエルフの女の子の母親は里の旦那さんの力添えも必要でしょう」
「シャルも気にしていたからな」
「・・・・・・正直にいって少し甘く見ていたわ」
シルヴィアが倒れこむように寝具に寝そべり天井を見上げる。
「以前に一度だけ魔神の胎動を感じた。凄まじい力の片鱗も感じた。それでもどこか楽観的に見ている部分があったのが正直な所だった。でも闘技場で奴の切れ端を見てそれも吹き飛んだ。あれは私がどうにかできる存在ではないとね。あの切れ端は私やナーバでもその気になれば倒すのは難しくなかった。でも・・・・・・その後ろにある魔神の全体像を感じとってもいた」
シルヴィアはソウマの方に腕を伸ばしてた。
「・・・・・・・」
ソウマは何も言わずその手を取る。
「本音を言うとね。多分ナーバもだけれど私は貴方がいなかったらあの場からシャルとアイスを抱えて逃げていたはずよ。ともかく一目散に遠くまでね。それほどまでに生物としての隔たりを感じた。あれは間違いなくこの世界の規格外、超越した何かだわ。自惚れでなく自分がこの世界の上位者だからこそ理解できる。あそこには届かない。そう思わされた」
するとソウマはシルヴィアの手を力強く握りしめた。
「不安も理解できる。恐怖も感じて当然だ。アレは強い。存在規模の強度は間違いなく竜王のおっさん並だ。大昔におっさんも苦労させられたのも納得だろうさ。だがね。俺も負けるつもりはない。勝てるかは分からん。でも闘る。勝つか負けるかじゃなくて闘るしかないなら戦うだけだ。そしてそうする以上俺は負けるつもりで戦うつもりは一切無い」
その言葉にシルヴィアは不安そうな顔から少しだけ安心したような表情に変わる。
「ソウマらしいわね」
「結局のところ俺はただの求道者の技術屋だ。新しい玩具や発見を探す子供なんだよ。生き残るだけなら逃げるのも有りだが俺は自分の限界が知りたいだけだからな。 それでも自殺願望は持ってるつもりはないからな。闘る以上は勝つつもりでやるよ」
「そこは絶対勝つから安心しろじゃないの?」
「物語じゃないんだ。思いや決意で敵に勝てるほど優しい世界じゃない。どんなに祈ったところで願ったところで負ける相手に負ける。だがそれでも勝つ気でやるのが俺だ。そうして俺は今まで生き残って強くなった」
「そうね・・・・・。貴方はいつもそうやって私に信じられない光景を見せてきた。今までもこれからも、それは変わらない。なら私はどんな結果もソウマと共に・・・・・・」
そういったシルヴィアの唇をソウマがそっと塞いだ。
「まあ、男としては女の不安を解消するのも甲斐性てな」
「・・・・零点」
シルヴィアが苦笑しながらソウマの腹部に軽く拳を打ち込む。
「手厳しいな」
ソウマも同じく苦笑で返す。
「じゃあ他の子の面倒も見てあげて」
「仕方ないな」
シルヴィアが笑い、ソウマがため息を吐いた。そして二人が視線を部屋の扉にやれば。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
三者三様の視線が部屋を覗き込んでいた。
「ソウマ~私も怖かったけど頑張ったよ!私も褒めて~」
「私も正直恐ろしかっタ。だがソウマや姉者のお陰で立ち向かうことが出来たゾ!私も褒めるべきダ!」
「わ、私はシャルが行こうと強引に・・・・・いえ、恐ろしくなかったのかと言われればそういうわけでもなく・・・・・」
視線で入室許可を受けた三人(主に二人)が部屋に突撃してくる。アイスだけは顔を赤く染めているのだが。
「そうだな。今日はシャルのお陰で助かった。シャルの力がなかったら多くの人が命を落としてたかもしれない」
ソウマは自分の前に座り込んだシャルロットの頭を優しく撫でる。
「ナーバも以前の恐怖に屈していた自分を乗り越えて見事に戦意示して見せたな」
「そうだロ!」
ソウマの褒めの言葉にナーバは満足そうに胸を逸らす。それと同時に部屋着として来ていたシャツのボタンが弾け飛んだ。
「(弾けた・・・・)だがな、もう少し自分の力の掌握を向上させないといけないな。なんだかんだと上手くいったが下手すりゃこの帝都ごと木っ端微塵だったぞ。俺たちは別に問題なかったがそれだとこの街に住んでる人が困ることになってた」
「むう・・・・」
上げてから直ぐ下げるソウマの言葉にナーバは唇を尖らせて不満そうにする。だが事実だけに文句も言えない状態のようだ。
「まあまあ、ソウマ。ナーバが成長を見せたのは確かなのだからいいじゃない」
「ま、確かにな」
シルヴィアが笑いながらナーバを招き寄せて胸元を整える。そうして彼女の頭を撫でてあげる。ソウマもシルヴィアの撫でている反対方向の頭を撫でる。
「ンフ~~♪」
二人に撫でられたナーバは先ほどの不満顔など最初からなかったかのようにご機嫌な顔になる。
「私も~」
それを見て羨ましくなったシャルロットもナーバの隣に座る。ソウマとシルヴィアはそれを見て苦笑しながらシャルロットの頭も撫でてやる。
「・・・・・」
「アイスもよくやったわね」
「いえ、私は闘技場では何もできませんでした。恐怖していたのもそうですがもし手を出せば師匠達の足手まといでしかなかったのが分かっていたので・・・・・」
「それでいい」
「え?」
アイスの言葉にソウマは言葉を被せる。それにアイスはハッとして顔を上げる。
「お前は自身の力量を正確に把握しているからこそ動かなかった。恐怖を感じながらもお前もナーバのように恐怖に屈しなかったからこそお前は動かなかった。それでいいんだ。己の力量を正しく判断し時には何もしないという選択も必要だ」
「そう、貴女は己の恐怖を自覚しながらもそれでも貴女はシャルの傍から離れず万が一に己の命を捨ててシャルを守ろうとする覚悟を持っていた。それでいいの」
「・・・・・・」
ソウマとシルヴィアは立ち上がりアイスの前まで歩いていく。そしてソウマとシルヴィアはアイスの頭を優しく撫でた。
「ナーバとの試合も内容は合格だ。お前は間違いなく強くなってる」
「自信を持ちなさい。貴女は弱さを克服する強さがある」
「・・・・・・はい」
アイスはぎこちなくはあるが頬を僅かに染めて小さくしかし微笑ましく笑顔を作った。




