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世界最強ですが?それが何か?  作者: ブラウニー
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49話 深刻な問題発生

やっと更新できました。

「昔にそんな事があったのですか・・・・・・」


 シルヴィアの話を聞いてアイスは驚いていいのか呆れていいのか困惑していた。帝国の【十騎聖】と言えば大陸でも屈指の強者揃いと聞いている。それを十人纏めて打ち負かすソウマの強さに改めて驚愕していた。


「まあ確かに彼等も中々の実力者ではあるけれどそれも飽く迄も常識的な範囲内よね。規格外ソウマを相手にするには役者不足だったわけ」


「姉上や師匠マスターの常識の範囲内は大概の者の非常識ですよ・・・・・・・・」


 アイスは疲れたように肩を落とす。規格外ソウマ非常識シルヴィアと比べられては流石の【十騎聖】も哀れと言うしかない。


「人族にしては中々やるようだが姉者の話を聞く限りあまり期待できそうにないナ」


 もう一人の非常識ナーバが何やら期待を裏切られたのかガッカリとしている。


「まあ何でも今代の【十騎聖】は歴代でも最強の噂も聞いているわよ。少しは期待してもいいじゃなの?」


 シルヴィアはナーバを慰める為なのかそんなことを言いながらナーバの頭を撫でる。


「【十騎聖】の連中の中にも面白い奴が居るには居たんだぜ。少なくとも今のアイスじゃあちょっと厳しい奴も二人ほどいたな」


「姉上の言っていたガラと言う武人ですか?」


「それと息子のギドって奴だな。ギドもガラの爺さんから鍛えられているからな中々の武技を身に付けていたぜ。アイスとギドなら技量的にもトントンって所だな。ガラの爺さんはちょっと分が悪いな」


「それ程の実力者が人族にも居るのですね。存命の内に是非てお手合わせしてみたかったです」


 人族の寿命では当然その二人は普通に生きていても天寿を全うしているだろう。それを考えアイスは少し残念そうな顔をした。


「そう言えばあの時はあの後が少し大変だったわね。ギドがソウマに弟子入りしたいってエテルニタに帰るまで頼み続けていたから」


 当時を思い出しシルヴィアが可笑しそうに笑っている。ソウマはそれを睨みつける。


「笑い事じゃねえよ。俺は弟子は取らないって何度言っても聞きゃあしねえ」


「結局国を出る時に気絶させてその隙に帰ったものね」


 遂に堪えきれなくなって声に出して笑い始める。アイスはそれを聞いて剣を柄を弄りながらそわそわしている。アイス自身はソウマの弟子であるという気でいる。しかしそれをソウマ自身から認められたことは無い。やはり弟子と思っている以上それを師にも認めてもらいたいと思うのは当然の心境である。ソウマはそんなアイスの心境を正確に感じ取り頭を搔く。


「あ~取りあえず一応帝国に寄ってみるか?俺は別に素通りでも構わないんだが・・・・」


 どうやら誤魔化す事にしたようでそんな提案をする。しかし口にこそ出していないがソウマのアイスの普段の接し方は師弟と言うには十分である。日常の手合わせと問答は完全に稽古のそれである。シルヴィアはそれを知っているがあえて彼女もソウマの提案に合わせる。いずれソウマ自身が認めるまで待つつもりのようだ。


「私はどっちでもいいけどね」


「正直に言えば寄らない方が良いのではないですか?帝国は人族至上の国家です。師匠マスター以外は他種族ですので入れば要らぬトラブルになりませんか?」


「帝国はあまり好きじゃないけど帝国の料理は好きだな~」


「文句をつける奴がいれば全員黙らせればいいだけダ!」


「物騒な事は言わないの。どうするソウマ?」


「最終的な決定権は俺にあるのか?シャルはどうしたい?」


 問われたシャルロットは少し考える素振りをしてから・・・・。


「帝国の名物料理のアズックの丸焼きが食べたいな!」


 アズックとは巨大な鳥の魔獣で中々の強さを持つがその味も高級食材に数えられる程に美味である。それを様々な香草や香辛料で香り付けや味付けをして丸ごと焼き上げる名物料理である。それを聞いてナーバが涎を垂らす。


「私もそれを食べたイ」


「これは決定ね」


 シルヴィアはそんな二人を見て笑う。


「そうですね」


 アイスもどこか諦めたように苦笑する。


「それでは一応幻惑魔術で姿を人族に偽装しますか?」


 シルヴィア達は一応自らの正体と美貌を隠すために幻惑系の魔術で自分達の姿を普通の人族に偽造している。余計な騒動を招かない為の一応の処置と言える。


「別にいいんじゃないの?」


 しかしシルヴィアはそのアイスの提案をさらりと流す。


「今更隠した所で騒動に巻き込まれるのは避けられないと思うのよ」


 チラリとシルヴィアがソウマの方を意味有り気に見つめる。


「それに正直言うと幻惑魔術をかけている間は色々な意味で気を張ってないといけないから意外と疲れるのよね」


 シルヴィアのように魔術に対する高い抵抗力を持つ者は支援系でも魔術が通りにくい。その為にシルヴィアは幻惑魔術をかけられる時に意図的に自らの魔力と魔術に抵抗する無意識を防衛本能を意図的に無理矢理抑え込んでいるのだ。無意識で行なう行為を意識的に抑え込むことがどれだけ大変かは言うまでもない。


「それにナーバも恐らく魔術がかからないわ。この子は私みたいに器用な真似は出来ないだろうし。多分シャルも大分成長しているから駄目だと思うわ」


 ナーバも最高位の竜族として高い魔術抵抗により並の魔術をほとんど無効化してしまう。おまけにナーバはシルヴィア程器用で無い為に問答無用で無効化するだろう。シャルロットも最近では更に自身の魔力が高まっているのもあり魔術抵抗もそれに合わせて上がっている。ラルク自身が魔術を行使するならばともかく魔術の施された魔道具程度では役には立たない。


「確かにそうですね。それならばそれなりの覚悟をして入国することにします」


 アイスはどこか諦めたように肩を落とす。アイスならば魔術がかかるかもしれないが彼女一人だけが姿を偽装したところで意味はあまりないだろう。


「細かい事は気にしない気にしない」


「細かくない気がします・・・・・・・」


 ソウマの実に適当な表情と言葉にアイスが胡乱な眼差しを向ける。


「まあまあ入ろうじゃないの」


 シルヴィアが先を促す様に歩き出した。


 ※※※※


 やはりと言うか予想通りというべきか帝国王都領内に入った時からソウマ達は周囲の人達からの視線を集めまくっていた。


「まあ予想の範囲内だなぁ」


 ソウマ達の一団がソウマ以外が人族では無い事も要因ではあるが大概の要因がシルヴィア達の際立った容姿が原因だった。それぞれが吸血鬼やエルフ・ハイエルフや竜人と種族は異なるが異性・同姓問わず思わず振り返ってしまう程の容姿をしている四人である。特にシルヴィアの正に美しさそのものを形にしたかのような美貌は人族こそを至上を考える帝国人すらそんなことは関係ないかのようにシルヴィアに心を奪われている。


「さすが姉上というべきでしょうか・・・・・・・」


 アイスは道行く人々を呆れ半分感心半分で見つめている。街を歩く者にはシルヴィアに見惚れたまま歩く為に家屋や店先の障害物などに衝突している。また女性連れの男性などは自らもシルヴィアの美貌に見惚れながらも同姓であるがゆえに男性よりも早く正気に戻り連れの男性がシルヴィアに見惚れているのを発見して理不尽にも鉄拳をお見舞いされている。


「シルヴィア姉様綺麗だもんね~」


 シャルロットが自慢げに自らの姉の美貌を誇る。


「姉者の美しさに勝るものなどないナ」


 ナーバが頷きながら腕を組む。


「同じ女としても嫉妬すら沸きませんね」


 アイスも二人に同意する。しかし補足ではあるがシルヴィア以外の彼女達が決して注目を集めていない訳ではない。彼女達の美貌も十分に人々を魅了しているのだ。


「おいおい、兄ちゃん。良い雌連れてるじゃねえかよぉ」


 だとすれば当然こういった輩にも定番のように遭遇する。


「この国で人族以外を連れ歩くなんて随分と度胸があるじゃねえか。そいつらはオメエの奴隷かなんかか?どうだい?その雌達を今晩俺達に貸さねえか?礼は弾むぜぇ」


 男達の代表格と思われる男がソウマに向かってそう提案してくる。その後ろでは他の男達が実に下卑た笑みを浮かべて女性陣の体を舐めるように見回している。シルヴィアがさり気無くシャルロットを男達の視線から庇う様に位置をずらす。


「貸す?何でお前らに女を貸さなきゃいけないんだ?というかそれ以前にこいつらは物じゃないよ。そしてお前らに渡すなんて論外だ」


 ソウマは男の提案をばっさりと切り捨てる。


「テメッッボッ!」


 ソウマに怒り任せに掴みかかろうとした男は突然後ろに弾け飛んだ。


「何だ!テメエ!何しやがった!」


 仲間の男が叫び声を上げる。


「が!」

「あべッ!」

「どぐッ!」


 しかし何か行動を起こす前に次々と最初の男と同じように後方に吹き飛んでいく。


「相手の力量を測れもしないゴロツキが誰彼構わず絡むとこうなるぜ」


 ソウマが自らの親指を手で弾きながら呆れたように言う。どうやら指を弾いた空気弾で男達の額を正確に射抜いて吹き飛ばしたようだ。


「王都に入って早々に厄介ごとに巻き込まれたな」


「地方の村や街はそこまで酷くなかったけれどね」


「恐らく帝国軍に仕官を求めてやってきた流れ者でしょう」


 帝国軍は実力至上のお国柄の通りに腕っぷしさえあれば大抵の人間が軍に入ることが出来る。その際に人格や素行はあまり考慮されない。しかも帝国軍になったということはその強さは皇帝に認められたと同じことである。帝国兵は帝国領内でかなり優遇されるのだ。


「帝国内での帝国兵の粗暴な振る舞いは良く耳にします。かなり民たちに横暴な行為を働いているそうです」


 アイスは不快感をあらわに憤る。


「なんだか昔以上に酷い国になっているわねぇ」


「確かの国は師匠マスター達が居た時代に結んだ和平の条約を当時の皇帝が崩御すると即座に撤回したのですよね」


「そうね。同時にソウマの不在が囁かれたのとほぼ同時期だからそれも関係しているんでしょうね」


「まあ、取りあえずどうするよ?当初の目的通り飯に行くか?」


「アズック~♪」

「アズック~♪」


 シャルロットとナーバがそれに同意する様に両手を上げてバンザイする。


「待ってください」


 しかしそれを止めるようにアイスが片手を上げて静止する。


「どうしたのアイス?」


 シルヴィアがアイスの神妙な雰囲気に疑問を浮べて訊ねる。出鼻を挫かれた形のシャルロットとナーバが両手を上げた状態で固まっている。


「今調べたのですが深刻な問題が発生しています。いえ、むしろ当然と言えば当然の事態が起こっていると言えるかもしれません」


「何だよ?」


 ソウマも困惑顔でアイスに訊ねる。アイスは神妙な顔で現在自分達の置かれた深刻な事態を口にする。


「お金が・・・・・・・・有りません」


「!」


 四人の表情が驚愕で塗りつぶされた。


 ※※※※


 ソウマ達は現在、冒険者ギルドの建物の前に来ていた。


「まさか金が無くなっていたとは・・・・・・・」


 ソウマは予想外の事態に深刻な表情で冒険者ギルドの建物を見つめている。


「何故それが予想できないんですか・・・・・・・」


 アイスは呆れた表情でソウマを見つめている。


「まああれだけ毎回大量に食べていれば路銀は底を尽くわよねえ・・・」


 シルヴィアは忍び笑いを溢している。


「ご飯美味しいもんねー」


 シャルロットは暢気に笑っている。


「はあ」


 アイスは更に溜息を溢す。元々ソウマ達が旅立つ際にラルクから十分なだけの額の金は預かっていた。それを全てアイスが預かるという形を取っていたのだが・・・・・・。


「まさかこれ程に食費がかさむとは・・・・・・」


 定期的にラルクの使い魔から路銀の受け渡しがなされていたのだが今回ついにその供給額に消費額が追い付かなくなったのだ。


「人は食い物の代価に妙な物を要求するのだナ」


 原因の一翼を担った存在ナーバが貨幣を齧りながら不思議そうに眺めている。


「人族程ではありませんが我々エルフも通貨の概念はあります。ある意味でいえば物々交換よりも簡潔で分かりやすい仕組みと言えますよ」


 元々シルヴィアは通常の食事を必要とせずアイスは小食でシャルロットは大変良く食べソウマも意外と食べる。しかしそれに見合うだけの額は送られていたのだ。しかしそこに更なる大食漢であるナーバが加わったことにより遂に食費が予算超過を迎えてしまったのだ。


「これ以上ラルク様にお金の額を上げて頂くこともできませんし・・・・・・」


 ソウマ達の旅は名目上シャルロットにより御忍びの各地の視察と言う形を取っている。当然そのお金は視察の為の必要経費として国の国庫から捻出されている。それは国民の税から賄われるわけなので国民の負担の為にもこれ以上の予算の引き上げは現状(ラルクの機嫌的にも)出来ない。


「まあ他に頼ることが出来ない以上自分達で金銭を得るしかないわね。私の私物を売れればいいのだけれど・・」


「姉上の持ち物は高価過ぎて逆に売り捌ける所が限定されすぎます。それに入手経路などの問題でまた別の騒動を呼び込みかねません。何せ伝説級の武器や素材を使用した物ばかりですからね」


 高価過ぎるのも考えものである。


「だから冒険者ギルドで適当に依頼をこなして金を手に入れようとしてんじゃねえか」


 ソウマ・シルヴィア・アイスは冒険者登録を済ませている(シャルロットは身分証明の為の簡易的なモノの為に正式には冒険者では無い)。その為冒険者ギルドで依頼を受けて収入を得ようと考えたのだ。


「さて帝国のギルドはどんな依頼があるかね」


 ソウマはそのまま冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。


「・・・・・・・・」


 建物の中にいる者達の視線が一斉にソウマ達に集中する。新顔であるソウマ達に興味を惹かれて視線を向けた後にシルヴィア達に視線を向けて感嘆の声を上げる。中には飲んでいた酒をそのまま溢してしまった冒険者もいる。


「ほ・・本日はどのようなご用件でしょうか?」


 そんな視線など意に介さずソウマ達は真っ直ぐに受付まで歩いて行く。受付は初めて見る顔のソウマ達に最初の常套文句を口にする。若干シルヴィアを見て顔を赤くしている。


「依頼を受けたいんだ」


 ソウマは簡潔に用件を告げる。


「どのような種類のご依頼でしょうか?」


「今すぐにでも開始できる系の依頼で今あるやつを全て見せてくれ。ランクは関係なしでいい。あ、ちなみに俺はCランクだから」


「・・・・・・・畏まりました」


 ソウマの言葉に受付嬢はしばし逡巡する。一応冒険者の規則的には下のランクの者が上のランクの仕事を受ける事に禁止事項は無い。受ける者は信用も仲間も己の命すら自己責任で守らねばならない。しかし明らかに無理と分るランクの者に高ランクの依頼を任せるのも躊躇われるのだ。


「・・・・・・・」


 受付嬢は依頼の書かれた紙束を持ったまま悩む素振りを見せる。


「あ!」


「良いから良いから」


 そんな受付嬢からソウマは一瞬で依頼書を奪い取る。受付嬢が一瞬ソウマに視線を流した瞬間に滑り込むように受付嬢の意識の隙間に手を差し込んだ。その何気ない風に行われた高等技術を気付いたものがシルヴィア達以外にこの場に何人いるか・・・・・。


「さて・・・・・・」


 ソウマ達は当惑する受付嬢を余所にソウマ達は丸テーブルに座って手に入れた依頼書を読む。


「どんな依頼があるのソウマ?」


「まあほとんどが近隣の村等に出没する魔獣・魔物の討伐や薬や武具に必要な素材の納品以来だな。後は護衛の依頼やらが・・・・・・・・一応冒険者側を名指しでの依頼なんかもあるみたいだな」


「手っ取り早く一番報酬額が多いものを選んだら?」


「あっ!シルヴィア姉様指名の依頼もあるよ?」


「なぬ!」


 言われて全員がその依頼書を見る。


「・・・・・・・・依頼内容が怪しすぎるだろ」


 依頼書には依頼者は帝国の貴族で依頼内容は屋敷に来た時に説明すると書いてあり、報酬もその結果次第というものだった。


「どう捉えても下心と下種な考えしか伝わりませんね」


 アイスが心底呆れたような顔になる。不老長寿と最高の美女を同時に手に入れたいと言う邪な考えが透けて見えてしまっている。


「これは論外として他の依頼には・・・・・森に住みついた地竜の討伐と同時に竜の素材の納品以来だな」


 ソウマがそう言った瞬間にアイスがナーバを思わず見てしまう。同じ竜族として想う所が有るのではないか、或いは憤慨してこの場で暴れ出すのではないかと少し危惧してしまった。


「知能の低い個体はこれだから駄目だナ」


「え?」


 予想外のナーバのセリフにアイスは思わず気の抜けた声を出す。


「アイス心配は要らないゾ。我等竜族は強者を重んじル。戦えぬ個体や幼い個体を狙うような卑劣な真似をするのならともかく普通に挑んでくる者に特に思う所は無いゾ。それに知能の低い個体が自ら他種族の生活圏に踏み入り狩られるのも自らの招いた事態ダ」


「たとえ下位の竜とはいえそのちからは他の生き物にとっては十分に脅威足り得るわ。ソレに挑む以上冒険者側も命を賭ける必要がある。竜族は命を賭けて挑む者に対して怒りを表すことはないのよ。全ては食うか食われるか殺るか殺られるかの野生の掟だけよ」


「まあ狩られる竜なんてほとんどが知性の無い野生種だけだけどな。知性の有る固有種は他の生物に狩られる程弱い個体なんかいねえからな」


「そうですか」


 ナーバ・シルヴィア・ソウマの説明にアイスは納得を見せる。


「討伐報酬か納品報酬かのどちらかだけでも十分な額が得られる依頼ではあるな」


「何なら私の竜鱗でも売るカ?」


「いやお前の鱗は逆に加工できねえよ」


 知性の無い野生種の地竜と固有種である真竜王の血族であるナーバではそもそも格が違い過ぎる。仮に発見されても並の者では加工できずに飾り物にしかならない。当然入手経路を巡っても大騒動確実である。


「ナーバ、貴女他の竜を食べたことがあるの?」


「もちろんあるゾ。昔は狩りの練習にお爺様に良くやらされたからナ。同じ竜族だけあって竜の肉は魔力の質も量も多いし肉も大きいから食い応えがあるナ」


 ナーバが腕を組んで頷きながら竜肉の感想を述べている姿を見てアイスがまた微妙な顔をしている。それにシルヴィアが苦笑しながらアイスの肩に手を置く。


「別に野生では珍しい事ではないでしょう?海の生き物だって厳密には同じ魚を食べているのだし陸でも同じ種族でも種類が違えば食い合いをするしね」


「そうですね」


 今でこそ人の姿を取っているナーバだが本来の姿は自然界の頂点に君臨する竜である。ソウマやアイス達とは違い本質は人種ではなく獣よりである。同じ竜という括りとはいえ野生種と固有種ではもはや種族が違うと言っていいのでナーバ的には自分と同じ竜と言う以上の仲間意識や同族意識はあまり持っていないようだ。


「まだまだ学ばないといけませんね」


 アイスは神妙に頷いている。


「種族が違えば常識や考え方は違う。当然の事だ。ゆっくり覚えていけ」


「はい」


 ソウマの言葉にアイスは穏やかな笑顔で首肯した。

 因みに竜には大まかに二種に大別される事がありナーバの様に知能が有り固有の能力等を持つ個体を固有種と言い《息吹ブレス》等の竜族の基本能力しか持たず知能の低い野生の獣同然の個体を野生種と言う。


「まあ報酬的にも魅力的だからな。この地竜討伐の依頼は一応候補の一つという事にしておこうか。他に何かめぼしい様な依頼はあるか?」


 机の上に広げられた依頼書を皆で読んで適当な依頼を見繕って行く。


「納品依頼に霊薬の原料になる霊草の納品があります」


 アイスが一枚の依頼書を取り出す。


「なんの霊薬だ?」


「エリクシールのようです」


「それはまた高価な薬だな」


「エリクシ―ルって何だっけ?」


 シャルロットが首を傾げながら疑問を口にする。シルヴィアが苦笑しながらシャルロットの頭を撫でる。


「エリクシールは最上級の回復薬の一つ前の回復薬ね。それでも一口飲めば大抵の傷を負っていても死ぬ前ならば瞬時に回復させることが出来る薬よ」


 それを聞いてシャルロットは感心したような顔になる。


「凄い薬があるんだねー!」


「その更に上にあるのが最上級回復薬のエリクサーよ。これは一口飲めば傷どころかどんな病や呪いすらも回復させてしまうの」


「そんな便利なものがあるんだね」


 更に感心するシャルロットを見てアイスも苦笑する。


「ですがそう利便性ばかりでもないんですよシャル。エリクシールは一度服用すると次は二十四時間経過しなければ服用しても効果が表れません。更にエリクサーは生涯で一度しか服用の効果が出ないのです」


「便利な事だけじゃないんだね」


「それでもエリクサーとエリクシールの需要が途絶えることはありません。特にエリクシ―ルは冒険者等のいざという時に切り札として大金を払い所持する者も当然います。また、大抵の王族はエリクシ―ルとエリクサーを常に携帯して何かあればすぐさま服用できるような準備をしているそうです」


「あれ?でも私見たことがないし持ったことがないよ?」


「当たり前でしょう。そんなものなんかなくてもエテルニタ王国うちにはラルクが居るじゃない。ラルクの回復魔術はそこ等の聖女や治癒師なんて足元にも及ばないわ。エリクサーやエリクシ―ルと同じ程度の回復術くらい当然のように使うわよ」


「そう言えば昔から病気とか怪我をしてもラルクが術をかけてくれれば直ぐに治ったね」


「一応免疫力や教訓にする為に小さい怪我や軽い病気は敢えて治さなかったけれどね」


「話が逸れたがその霊草はこの辺に生えてるもんなのか?」


「一応帝国領内にある危険区域指定されている山脈の頂上付近に生息しているそうです」


「危険区域はどの程度危険なのかしら?」


「一応依頼を受けられる最低ランクがBでギルドの指定する適正ランクがA以上だそうです」


「それなりという事かしらね」


「私の記憶が確かならばあの山脈周辺はオーガの変異種や魔術を行使するような個体の魔獣もいくらか居たと思います」


「報酬も悪くねえな。出来高だがエリクシ―ル一つ分の霊草を持ち帰るごとに金貨三十五枚だとよ」


「エリクシ―ルは末端価格で軽く金貨四十枚から五十枚程度していたはずですから妥当な報酬ではないでしょうか」


「これにするかな・・・・・・」


 ソウマが依頼書を見つめながら思案する。ランクについては問題はない。ソウマとアイスの冒険者ランクは依頼の最低ランクにも届いていないがランクSSのシルヴィアが居る。シルヴィアが依頼を受理しソウマ達の同行を許可すればソウマ達も依頼を受けることができる。自らの力量が足りずに死んだとしてもそれは完全に自己責任である。仮にそれをせずに低ランク冒険者が高ランク冒険者の依頼のおこぼれを得ようとする方法も実は納品系の依頼ならば可能である。しかし大抵の場合は力量不足で非道目に会うのが常識である。


師匠マスターがよろしいのならば私は構いません」


「私も問題ないわ。シャルは私が護るから心配しないでね」


「美味いものを喰う為なら私もやるゾ!」


 力量的にもこの一団なら全くの問題にならない。アイスもAランク冒険者以上の実力を有しているしナーバにいたっては彼女に勝てる存在等ソウマやシルヴィア等を入れてもこの世界で一握りである。シルヴィアは言わずもがなだしソウマにいたっては完全にランク詐欺である。


「どうしたのシャル?」


 するとシルヴィアが怪訝な声を上げる。見ればシャルロットが真剣な表情で一枚の依頼書をじっと見つめていた。


「何か気になる依頼内容があったの?」


 シルヴィアもシャルロットの横から顔を覗かせて依頼書を覗き込む。


「孤児院からの依頼書・・・・・・?」


「コジインとは何ダ?」


「戦争や事故などで親を失った幼い子供等を保護・養育する施設のことです」


「ふむ・・・・・」


「その依頼が気になるのか?」


「・・・・・・・うん。何だが知らないけど気になるの・・・・・」


 シャルロット自身も何故自分がこんなにもこの依頼書が気になるのかが良く分かっていないようだ。ソウマはシャルロットが見つめている依頼書を手に取りその内容を読む。


「なになに・・・・・・・・。依頼内容は・・・・孤児院の雑用・手伝い等、別途で用件の変更の可能性ありと・・・・。報酬は・・・・応相談・・・・・・?何だか変な依頼内容だなぁ・・・」


 ソウマは依頼内容を見ながら怪訝な顔をする。


「確かに妙な依頼内容ですね。シャルはこれが気になるようですがでうしましょうか・・・・・」


「私は皆に任せル」


「それじゃあこれを受けるか」


「いいの、ソウマ?」


「別にそんな切羽詰まって金を稼がなきゃいけない訳じゃないしその気になればすぐに金は作れるしな」


「そうね、それよりも今はシャルの直感を確かめる方が優先だわ」


 ソウマやシルヴィアがこういうには実は訳がある。シャルロットは昔からこういった事に妙な直観を見せることがある。戦闘におけるソウマの相手の動きや行動などを先読みする直感では無く物事の良し悪しや自分や周りの者にとって重要な分岐や出来事になることが多い事に対する探知能力のようなものである。昔からシャルロットのそういった直感はある種未来予知や未来予測のように働き大体は物事を良い方向に向かわせる。当然良い結果を手繰り寄せるだけの能力がシャルロットや周りの者に必要になる。


「シャルの直感は悪い事ならもっと別の反応があるからな。単純に気になるって言うならなにか重要なことなのかもしれないしな。まあ、何にとって重要かは終わってみないと分からないがな」


 そう言ってソウマは立ち上がりその依頼書を持って受付まで歩いて行く。依頼には特にランクの指定も書かれておらずソウマが受けても問題は無い。


「これを受けたい」


「これ・・・・・ですか?」


 受付嬢は少し意外な顔をしている。こんな内容も報酬も曖昧で且つ孤児院からの依頼は誰も敬遠し受けたがらなかった。それが突然来た初めて見る集団が受けると言い始めたのだ。彼女でなくとも驚くだろう。


「孤児院の場所を教えてくれ。依頼内容は孤児院の関係者か責任者に直接聞けばいいんだろ?」


「え?・・・・ええ、そうです。今から地図を渡しますのでそちらで孤児院の院長様から依頼内容の説明があるそうです」


「了解」


 ソウマは受付嬢から孤児院の地図を受け取ると仲間たちの元に戻っていく。


「それじゃあ行きますか」


「うん、ありがとうソウマ」


「依頼を受けるのも久しぶりかしらねー」


「帝国に孤児院があるのは正直驚きですね」


「シャルの頼みなら断れないナ」


 このメンバーで最初の依頼クエストは孤児院に向かう事になったのだった。

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