番外編① シルヴィアの近況
G.W終了皆さま有意義に過ごせましたか~
「(最近、妹が増えた)」
シルヴィアはふと一人そんな事を考える。ソウマ達と旅に出て暫くが経った。最初はソウマとの二人旅のつもりだった旅にシャルロットが加わりその後にアイスが加わった。ソウマとの二人きりの旅も十分に魅力的なモノではあったが愛しい妹と先が楽しみな可愛い子が一緒の旅はそれ以上に楽しみだった。
「(今の所の結果は予想以上に楽しい旅ね)」
アイスもシルヴィアを姉と慕い純粋な尊敬と好意を向けてきてくれている。シャルロットがアイスを好いている事以上にシルヴィアもアイスの事が好きになっていた。元々シルヴィアはアイスのように純粋な者が好きだ。アイスはそういった意味でもシルヴィアにとって非常に好ましい人物だった。
「(アイスのソウマに対する感情も自覚までもう少しね)」
アイス自身は今だ自覚していないようだがシルヴィアはアイスの奥底にあるソウマに対する感情にも気が付いている。シルヴィアはソウマにそういった対象の女性が増えることについてはそれなりに容認している。当然シルヴィアが許した相手のみ限定ではあるがソウマの周りに女性が増えることはシルヴィアにとっても悪い状況ではない。これはシルヴィアの育った環境が要因ではある。シルヴィアはソウマに出会い人族の世界に来るまでは吸血鬼の世界で王族として過ごしてきた。大抵の種族の王族や貴族は複数の女性を娶ることは至極当たり前のことだ。それ以外にもシルヴィアはある過去の事情で自分にとって身近な存在が増えることを望んでいる。
「(今の所ソウマにあまりその気はないようだけれど・・・・・・・・)」
ソウマは本命と言える相手はシルヴィアとシャルロットだけである。更に言うなら明確に異性として行動を起こしているのはシルヴィアに対してのみである。シャルロットにたいしては異性と言うよりは妹といった感情の方がいまだに強いようだ。アイスに対しては弟子としての(ソウマはいまだに認めていないが)しか見ていないようだ。
「(それでも私はソウマに私が大切に想う娘達を同じように大切に想ってもらいたい・・・・・)」
シルヴィアとしても愛する男性が自分だけを見てくれている状況は幸せな事だ。シルヴィアも女である以上それは偽らざる本心である。しかしそれと同じ位に自分の可愛い妹達の気持ちも叶って欲しいのも本心である。
「(勿論それはソウマ次第ではあることなのだけれど、それでも・・・・・・)」
シルヴィアもこれが自分の我儘であることも自覚している。ソウマが望まなければ実現不可能なことなのも自覚している。それでも尚シルヴィアは自らの我儘を優先してしまう。
「(それでもソウマなら、きっと・・・・・・)」
それでも心の中では自分の愛する男なら全てを受け入れることができると信じているのだ。
※※※※
「(最近、妹が増えた)」
シルヴィアは再びそんなことを考えた。四人での旅が続き更に時間が経過して暫く。ソウマ達四人の旅にまた新しい仲間が増えた。
ナーバ、【神竜王】ゼファルトスの孫娘竜である。最初の印象こそ乱暴者という感じだったがその後の戦いを経てその印象も大分変化した。
「(それでも随分とやんちゃな印象は変わらなけれど)」
最初の行動にしても敬愛する祖父竜であるゼファルトスを思う余りの行動であった。実際は感情表現が素直なだけの根が純粋な娘であった。
「(なによりも初見でシャルを気に入ってくれたことが大きいわね。シャルもすぐにナーバを気に入ったし)」
シャルロットは幼いころから色々なモノに好かれやすい。特に精霊や妖精、竜族に好かれている。だからナーバがシャルロットをすぐに気に入ったのも納得ができた。
「(シャルの方も相手の心根を見抜くことに無意識で長けているのよね。あの娘、悪人には絶対に懐かないもの。自分が純粋な所為か純粋な相手を気に良りやすいのよね)」
そういった意味でもシャルロットとナーバは相性が良かったのかもしれない。シルヴィア自身もナーバの事は気に入っている。ナーバもシルヴィアのことを自身より強い強者としてだけでなく純粋な好意で慕ってくれていることが分かる。
「(最初はどうなることかと思ったけれど思った以上に良い感じに収まったわ)」
※※※※
「(最近妹達が可愛い・・・・・・)」
ある日、シルヴィアはふとそんな事を考える。
「(シャルは勿論だけれどアイスもナーバも凄く可愛い!)」
シャルロット、幼いころからその成長を常に見守り続けた今や何にも代えがたいシルヴィアにとっての宝物である。ソウマと会ったばかりのシルヴィアは世界の全てを・・・・・それこそ一部を除き同胞すら憎んでいた。憎んで憎んでソウマに出会わなければそれこそゼファルトスにでも滅ぼされていたかもしれない程にシルヴィアは荒れていた時期があった。そんなシルヴィアもソウマに出会い他者を愛する気持ちを知った。しかしそれでもシルヴィアはソウマ以外を塵芥程度にしか思っていなかった。そんなシルヴィアが今の性格にまで落ち着いたのがシャルロットとの出会いだった。ソウマとの出会いで異性を愛する事を知ったシルヴィアはシャルロットに出会い他者と世界を愛することを知ったのだ。
「(シャルの御かげ私の心は救われた・・・・・・・)」
だからこそシルヴィアはシャルロットに振りりかかるあらゆる暗雲を振り払うと決意している。彼女の瞳を曇らすものを己の全てを使って排除する。シルヴィアはそれ程の愛情をシャルロットに注いでいる。。シャルロットもシルヴィアに心からの親愛と信頼を寄せてくれている。
「(ソウマとシャルの心が有る限り私は私でいられる)」
シルヴィアが心から信頼し頼る事の出来る存在であるソウマとシルヴィアが心から愛情を注ぎ慕ってくれるシャルロットが居ることが確かに自分を支えているとシルヴィアは自覚している。
「(それに・・・・・・・・)」
今回ソウマの旅に付いてきたのは自分やシャルロットだけではない。アイスクル・グラシオというエルフの少女も今回の旅についてきた。彼女はまだまだエルフとしては若輩ではあるが自身の強さの研鑽の為に故郷の里を飛び出してエテルニタ王国まで来た。そんなアイスもソウマの強さに触れることでソウマの力に心酔し師事を請う為にこの旅についてきた。元々彼女はエテルニタ王国の騎士団団長としてシャルロットの身辺警護を担っていた。シャルロットもそんなアイスのことを気に入っていたのでシルヴィアも同じように親しくしていた。
「(少し不器用な所もあるけれど先が楽しみな子で見ていて楽しいわ)」
アイスもシルヴィアの事をシャルロットと同じく姉と慕い接してくれる。シルヴィアは基本的に損得無しな好意に対しては素直な好意を返す質である。最近ではアイスにもシャルロット同様の愛情を向けているつもりである。
「(シャルに対しては過保護に接してアイスには成長を促す様な接し方をしてるけれど)」
意外と自分の事を客観的に見ているシルヴィア。
「(そして・・・・・・・)」
更にもう一人の同行者が増えた。神竜王の孫竜のナーバである。彼女はソウマやシルヴィアの強さを認め尊敬しシルヴィアの事は姉と慕っている。その裏表のない性格にシャルロットは勿論シルヴィアもアイスも直ぐに好意を抱いた。少し直情的で感情的ではあるが素直であるから自分が認めた相手の意見は素直に聞き入れることが出来る。また気に入った相手に抱き着いて匂いを嗅ぐと言う癖がるようで定期的にシルヴィアやシャルロット匂いを嗅いでいた。最近ではアイスの匂いも嗅ぐようになった。嗅ぎ方にも種類がありシャルロットやアイスの場合はナーバが抱きかかえるようにして髪や首筋に顔を埋めて匂いを嗅ぐ。シルヴィアの場合はシルヴィアがナーバを抱きかかえるようにしてシルヴィアの胸元に埋めて匂いを嗅ぐ。/・・・・・・ちなみに以前ナーバにソウマの匂いは化が無いのかと聞いた。するとナーバは少し考え込んだ後に顔を赤くして「そんな事で出来ン!」といって去って行った。それを思い返すとシルヴィアは自然と笑みが浮かんでくる。
「(ナーバ自身初めての自分の感情に戸惑っているという感じかしら?)」
シルヴィアはナーバのその感情を促すことくらいはしようとするかもしれないが本人の自覚が出来るまで見守ることに決めている。同じ旅の同行者にして可愛い妹分を温かく見守るつもりだ。
「(こういうことは本人が自覚するのが一番だから・・・・)」
ナーバ自身の実力も折り紙つきである。何しろかの【神竜王】ゼファルトスの孫竜である。その実力は世界でも有数の実力である。
「(素の身体能力は恐らく私以上、経験不足さえ補い条件次第では私やラルクでも危ないかもしれない・・・・。それに彼女はまだまだ長命種としては若輩、これから身体能力もまだまだ成長途上。私もうかうかしていられないわね。シャルもアイスも成長を見せている・・・・)」
シルヴィアは姉として妹達に負けていられないとばかりに心の中で決意を固める。
「(私もソウマと稽古しようかしら・・・・・・。でも何だか恥ずかしいわね)」
シルヴィアは普段、アイスやナーバしているソウマとの稽古に自分も参加しようかと思案する。しかしすぐに考えを改める。幼いころの育ちの所為でシルヴィアは人前でそういう行為を見せる事に抵抗があるのだ。
「(それでも少しでもソウマの剣技に近づけるように研鑽は続けないとね。ソウマ曰く私の場合は実戦あるのみらしいのだけれどね)」
ソウマはシルヴィアのような生来の強者には訓練は必要が無く、実戦の中でこそ成長できるということを普段から言っている。本来、技術とは弱者が強者に勝つ為の工夫である。生まれた時から強い者には基本敵に必要ないものなのだ。生まれ持っての強者は実戦の中で自分の能力と力の使い方を把握する。
「(それでも学ぶことは悪い事ではないとも言っていた)」
シルヴィアの剣術の基礎は故郷に居る時に身に付けたものだがその後はソウマを見ながら見様見真似で覚えた。ソウマは一度のシルヴィアに剣を教えておらず曰く生来の強者たるシルヴィアは誰かに教わって下手な癖が付くよりも方法だけを知って後は自分の能力に合わせて動いた方が一番良いらしい。何故ならシルヴィアやナーバのような生まれついての上位者は元々自分の最も効率の良い動きを選び取る能力にも自然と長けるからである。
「(ナーバの普段のソウマとの稽古はそれを伸ばして自覚させることが主な目的。そして私にはそれが既に身に付いている・・・・)」
ナーバの現在最も大きな欠点は実戦経験の少なさだとシルヴィアもソウマも考えている。恐らく生まれた頃から生まれ故郷である竜たちの谷から出たことがなく、戦闘相手は専らゼファルトスや他の竜王達などだったのだろう。確かにゼファルトスや竜王達はこの世界でも最強クラスの戦闘相手である。しかし同じ相手とばかり戦っていても得られる経験値は自ずと限られてくる。
「(つまりナーバは同じ竜との戦闘に慣れ過ぎていた。人型での戦闘こそ慣れてはいたけれど私やソウマのように自分の能力を正面から受け止めることのできる同種族以外の相手との戦闘経験が皆無だった。ソウマとの訓練はそこも補うためのものなのでしょうね)」
それを補えればナーバの戦闘能力は飛躍的に伸びるはずである。
「(ソウマ自身は否定しているけれどソウマはあれど面倒見のいい性格だからアイスにしろナーバにしろちゃんと成長させるでしょう)」
そう考えながらもシルヴィアも自らの研鑽の為の方策を考えていく。
「(そして気になるのは魔族達のこと・・・・・・・)」
ゼファルトスから聞かされた魔族共の暗躍とその目的である魔神の復活。
「(魔神・・・・・・・話には聞いたことがあったけれどあれ程凄まじいものだとは・・・・・・・)」
少し前に封印から漏れ出た程度ではあるが魔神の存在に触れる機会が有った。それはシルヴィアの想像を超える凄まじい存在だった。間違いなくかつて見た事が有る全力を見せた【神竜王】ゼファルトスを彷彿とさせる存在感をシルヴィアは魔神の残滓から感じ取った。
「(魔神の復活・・・・・正直最初ゼファルトス様に聞かされた時はあまり興味の沸かない事だったけれどなるべくならば阻止した方が良いのかもしれないわね)」
しかし魔神の封印の仕組みも復活のさせ方や阻止の仕方も知らない。もし下手に手を出してそれが封印を解く切っ掛けになってしまってはそれこそ取り返しがつかない。
「(それにソウマの勘では下手に此方からの手出しもしない方が良いらしいわね。ソウマの勘は莫大な戦闘経験から来る直観力。時にそれは未来予測すらしているのではないかと思わせる程。・・・・・まあそれが良い方向に転ぶとも限らないのだけれど・・・・・・)」
ソウマが無意識にでも魔神との戦いを渇望していた場合、このまま放置すれば魔神が復活するとソウマの勘が告げているだけかもしれないのだ。
「(・・・・・・・深く考えるのはやめましょう。もし魔神が復活したとしてもソウマが何とかするでしょう)」
しかしシルヴィアは深く考えることを止める。それはソウマの戦闘能力に対する絶大な信頼から来る思考の放棄だった。例え如何なる相手であろうと己の愛する漢は打倒するに違いないという信頼に他ならない。
「(それよりも今はシャルをどうやって喜ばせるかとソウマにどうやって愛してもらうかを考えることにしましょう)」
そう考えてシルヴィアは思考の海から意識を浮かび上がらせた。




