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世界最強ですが?それが何か?  作者: ブラウニー
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38話 作戦会議とそれぞれの決意

 ギルドでのギルド長との話を終えたソウマ達はその後すぐに王城の方まで招かれていた。王城では今回の事態に際して国の主だった者や依頼を受けた冒険者の何人かを王城の会議室に招き入れていた。


「此度の事態に急遽依頼を受けてくれた冒険者達よ、心から礼を述べたい」


 そう言って王城の主な者が集まる中で一人だけ椅子に座り一際豪奢な服に身を包み頭に王冠を乗せ威厳を放つ人物・・・・・・この国の王が冒険者達に向かって礼と共に頭を軽く下げる。そしてその視線は直ぐにソウマ達・・・・・・正確にはシルヴィアに注がれる。


「そしてシルヴィア殿、SS級の冒険者である貴女がこの国に今滞在していたのは私・・・・この国にとっては不幸な事態でありながらも幸運であると言わなければならぬ。これこそ神がまだ我々を見放していない証拠であると私は思う。本当に感謝したい」


 そう言って王は再び今度はシルヴィアに頭を下げる。


「神に感謝するのは正直複雑ですけれど礼は不要です。私達がこの国を訪れたのは理由あっての事です。ならば偶然とはいえこの国で過ごした者としてこの国の危機に立ち上がるのは当然です」


 シルヴィアは柔らかい笑顔で王の感謝の言葉に応える。偽装しているとはいえそのあまりに美しい笑顔に王や重臣達や集まった冒険者達は今現在自分達に迫る脅威すら忘れて見惚れてしまった。


「それで王よ、今後の方針を話して頂けますか?」


 ソウマ達以外の全員が放心して固まってしまったの見てシルヴィアは苦笑しながらもこれでは話が進まないので王に向かって正気に戻す為に言葉を掛ける。すると王ははっとして意識を取り戻す。


「う、うむ。状況の説明を・・・・・」


 そう言って王は自分以外の者達を正気に戻す為に一度咳払いをして正気を取り戻した後ろの部下の一人に声をかけて説明を促す。


「現在魔族の軍隊はこの国の約数十キロ先より迫っております。通常であれば大軍でその距離を来るのであれば数十日はかかると思われますが魔族の能力を考えれば恐らくは後二日もあればこの国の渓谷まで到着すると思われます」


「この国は竜王様の加護があるから今まで魔族の侵入を阻んで来れた筈だ。魔族もそれは分かっているはず。しかし今回は魔族は大軍を率いてこの国を目指しこの国は緊急依頼で我々冒険者を収集した。これはどういった理由があるのだ?」


 現状の説明に冒険者の一人が前に進み出て冒険者全員が抱えている疑問をぶつける。すると王の横から白の着物のような服装をした一人の女性が進み出てくる。


「それについては実は竜王殿御本人から数日前に巫女に直接説明していただいた」


 この国には【縁瞭王】ゼファルトスに仕える専属の巫女が存在する。この世界では神を初めてとした人・亜人種等以外を除いた超常存在等にはそれぞれ巫女が居る場合がある。この世界の主な巫女が所属する主な派閥は多種多様な権能・能力の神々をそれぞれ信仰する派閥。神の中には人族や亜人達に深く信仰を捧げられている神の多数いる為にその神を祀る神殿も数多く存在する。その各神殿ごとにその神に仕える巫女がいる。もう一つは【神竜王】ゼファルトスを頂点としたそれぞれの竜王や力有る竜を崇める神竜教というものがある。今王の横から進み出てきたのは神竜教の出身の【縁竜王】ウェントゥスに仕える巫女の様だ。


「数日前に【縁竜王】様の御社に伺いましたところで【縁竜王】様が直接人型の姿で顕現成されて私に直接言葉を賜われました」


「して【縁竜王】殿は何と・・・・?」


「はい。内容は数日中に魔族が大群でこの国押し寄せるという事、その際に【縁竜王】様御自身も敵を迎え撃たなくてはならずこの国の風の防壁を維持することが困難であるという事です」


「・・・・・・・・」


 その言葉に冒険者だけでなく王城の関係者達も沈痛な面持ちで押し黙る。【縁竜王】ウェントゥスはこの世界でも屈指の強大な存在である。その竜王が自らの力を他に割く余裕がない程の相手が今自分達のいる国に迫っているという事実とそれを擁する魔族にただ戦慄していたのだ。


「だが恐らく戦況は風の防壁が無いとはいえそう悪い事にはならないだろうよ」


 しかしそんな沈黙をアッサリと破るかのようにソウマが会議室の大きな机に乗せられた周辺の地図を指差しながら冷静に意見を述べる。


「ど、どういう事だ?」


「恐らく【縁竜王】はこの国の・・・・・正確には渓谷の上空で自らの敵を迎え撃つつもりだろう。魔族も恐らくその敵は【縁竜王】対策に連れて来たはずだから間違いなく【縁竜王】にぶつけてくる。だが逆にそれで懸念事項の一つが消える。魔族はほぼ全ての奴が飛行能力を備えていやがる。上空から直接渓谷を越えてこの国を攻められたら数で押しつぶされる可能性があるが魔族側も【縁竜王】と自軍の味方の戦いに巻き込まれる為に上空からは攻められない。だから必然地上からの侵入になる」


 そう言ってソウマは地図の上の渓谷を指差す。


「この地図を見る限り渓谷からこの国に侵入するには大まかに五ヵ所程の入り口が有る。他は小さく狭い道でそれこそ人一人がやっと通れる程度だから大軍も通れない為に魔族も恐らくは選択しないだろうさ。その為に斥候を放って下調べを済ませていたはずだ」


 ソウマは次々に地図を指差して意見を述べていく。


「つまり魔族の侵入を防ぐにはその入り口五ヵ所を同時に守る必要があると?」


「多分な。魔族は一カ所から入ることはしないはずだ。他の道よりも広いと言っても流石に全軍が一気に通り抜けられる程ではない。部隊を細く長く進軍させる事程危険な進軍はないからな。如何に魔族の連中が能力的に此方よりも上回るといっても地の利は此方にある。この国の兵士も正面からでなく奇襲や待ち伏せならば魔族相手にでも十分に勝機がある・・・・・だろ?」


 ソウマはそう言って問い掛ける様に一人の男に視線を投げる。その視線は王の横に立っている人物に向けられていた。鎧に身を包んだその男はその佇まいからそれなりの経験を積んだ騎士らしく鋭い眼光を覗かせている。


「・・・・・確かに貴殿の言われる通り我が国の基本戦術は奇襲・待ち伏せが多く、我が国の兵士の多くが斥候職に長けた者達が多い。正面からの戦いでは無くこの渓谷の地の利を生かした戦いならば十分に勝機はあるだろう」


 男・・・恐らくのこの国の兵士を預かる立場の男はソウマの言葉に肯定の言葉を返す。


「魔族の連中も馬鹿じゃなければそれは十分承知しているはずだ。だから全軍を一カ所に集めずに分散させてくるはずだ。そして分散させた部隊が適度な多さで通れ且つある程度の奇襲や待ち伏せに対処できるだけの戦力と広さを確保できる道となればこの五つしかない」


「それでは我々はそれぞれこの五ヵ所の入り口を死守すればいいという訳か?」


「そういう事だな」


「それでは戦力を五ヵ所に配置することにする。戦力の割り振りは・・・・・・シルヴィア殿の意見をお聞きしたいのだが・・・・・・」


 そう言ってこの国の参謀と思しき男がチラリとシルヴィアに視線を投げる。恐らくのこの場に人間(ソウマ達以外)が考える中では間違いなく最大戦力である。シルヴィア自身の意見次第で割り振る戦力が大きく変わる。何故なら・・・・・・・。


「私は一人で構わないわ。入り口の一カ所は私が受け持ちましょう」


 こう言う可能性を考えての事だった。


「さ、流石ですね。それでは他の場所は・・・・・・・」


 そう言って参謀が喋ろうとした時に・・・・。


「俺も一人でいい」


「私もダ」


 ソウマとナーバがそれぞれ先に自分の意見を述べて来た。


「え?しかし・・・・・・それは・・・・・・」


 言われた参謀の男は一瞬理解が及ばなかったがその言葉を理解すると同時に何とも言えない微妙な顔になる。それは参謀の男だけではなく周りのもの全員が同じような顔をしている。


「心配は要らないわ。ここに居るソウマとナーバは私の仲間よ。実力は私が保証するわ」


 シルヴィアが周りの者に助け舟を出す様に言う。


「しかし、そう言っても・・・・・・」


 それでもやはり周りの者の懐疑的な視線は消えない。それも当然と言えば当然と言える。シルヴィアの実力は実績に裏打ちされたものだ。実際に目にはしていなくともその実力は冒険者ランクにも表れている。冒険者ギルドのランクは実際の依頼の達成度やステータスの数値から判断されるので疑いの余地はない。


「失礼ですが貴方方のギルドカードを見せて頂いてもよろしいですか?」


 そう言った男の反応は当然といえるだろう。表面上の能力しか表示化されず身に付けた特殊能力や技なども表示されないステータスをソウマ達はそれ程重要視していないが普通の者はステータスを基本にすることが常識化している。


「俺のを見せるのは別に構わない。それからこいつは実は自分の里から出てきたばかりでな、実は世間の常識にそれ程明るくないんだ。当然冒険者登録もしていないからギルドカードも持っていない」


 そう言いながらソウマは自らのギルドカードからステータスを表示させる。ギルドカードから光が発せられて周りの皆に見える様に文字が浮かび上がる。


 ソウマ・カムイ 種族:人間  年齢:17歳  称号:【竜殺し】


 MAG:A

 STR:S

 VIT:S

 DEX:B

 AGI:A

 INT:B

 LUC:A


「これは凄い!Aランク冒険者と遜色ない程だ!」


 表示されたソウマのステータスの見て誰かが感嘆の声を上げる。このステータスはラルクの細工である程度・・・・常識的な表記になるようにしてある。ソウマの実力考えれば逆に低く表示される方が不自然な為にそこそこに高い表示にしているのだ。


「このナーバの方も俺以上の実力が有ると思ってもいいぞ」


 ソウマはそう言ってナーバを指差す。ナーバは内心で少し不満を表している。ソウマの実力は自分よりも遙かに高い、そんなソウマが自身の実力を低く偽るのはナーバの常識的に納得しかねるようだ。


「失礼だがそこの彼女の実力を証明できるものがあるかい?」


 冒険者の男が少し疑わし気な視線で問い掛ける。この戦いには比喩では無くこの国と同時にそこに住む全ての住民の命が掛かっているのだ。魔族の侵略は略奪ではなく虐殺だ。何を目的にこの国を攻めるのかは分からないが住民は間違いなく皆殺しの憂き目に遭うのは必定である。であるならば万が一にもこの国に魔族の侵入を許すわけにはいかない。


「じゃあ・・・・・・今からこの場の者に彼女が威圧を行う」


 ソウマは一瞬考えてから慌ててそう言う。ソウマが横目で見ればナーバが冒険者の男の言葉に拳を握ってムッとしたのを見たからだ。


「威圧か・・・・・いいだろう」


 周りの者もそれで納得を示す。


「それじゃあナーバ、いいか?(手加減しろよ!)」


「良いゾ(不満顔)」


 周りの者が身構えたのを確認したナーバは周囲に向かって三割程度での威圧を放つ。


「ぬお!」


 周囲の者がその威圧に何人かが思わず膝を着いてしまう。如何に全力ではなくしかも殺威でもない只の威圧ではあるがそれでも竜族の長クラスの者が放つ威圧である。この世界において圧倒的とも言える絶対者の威圧に本能的に畏怖してしまい膝を屈してしまったのだ。


「納得してくれたかい?」


 ソウマが手で威圧を止めるようにナーバに指示を出し周りの者の呼吸や状態が落ち着くのを待ってからそう問いかける。


「あ、ああ。了解した」


 そう言って見る周囲の者達の目には先程のような疑わし気な視線ではなくどこか畏怖を含んだ視線に変わっている。


「それでは作戦をソウマ殿・シルヴィア殿・ナーバ殿に三カ所を防衛してもらい我々は残りの二カ所を・・・・・」


「お待ち下さい」


 会議の言葉を遮るように静かなしかし不思議と良く通る声が会議室に響いた。


「会議を中断したことをお許しください」


 そう言ってアイスがソウマ達の前に進み出る。


「失礼ですが貴女は?」


「申し遅れました。私はここにいるソウマ殿の旅の同行者のアイスクル・グラシオと申します」


「まさか!あのエテルニタ王国の【氷の騎士団長】か!」


 エテルニタ王国は良くも悪くも有名な国である。世界最高の魔術・魔法の使い手である【大魔導士】ラルク・カイザードだけでなく伝説の吸血鬼の王族たる【吸血姫】シルヴァラント・ヴァルキュリオを擁するエテルニタ王国は密かに大陸最強の国家と呼ばれている。当然その国に所属する騎士団をまとめる立場たる騎士団長もそれなりに注目を集めているのである。


 アイスクル・グラシオ 種族:エルフ  年齢:56歳  称号:【氷の騎士団長】


 MAG:S

 STR:B⁺

 VIT:A⁻

 DEX:A

 AGI:S

 INT:A

 LUC:B


 アイスが自らのステータスを表示すると会議室は再び驚愕の声が挙がる。


「私も防衛は一人で行いたいと思うのですがお許しいただけないでしょうか?」


 アイスもそう提案してくる。


「我々としても本当にそれでよいのであれば非常に助かります・・・・・・・」


 防衛ヵ所が少なくなれば今迄【縁竜王】に頼りきりだったともいえる自国の少ない戦力を一カ所の侵入経路と万が一侵入を許した場合の国の防衛にも回せる。それにA級以上の冒険者が戦う多くの場合は周りに近づくことは避けた方が良い。半端な実力の者が加勢をしようとしても邪魔にしかならないからだ。故にA級・S級の冒険者や勇者は大体が単独行動を旨として行動している。そういった意味でもソウマ達が一人で防衛をするのは当然と言える。


師匠マスターもお許しいただけますか?」


 アイスはソウマにもそう尋ねる。


「お前がそう決めたのならそうしたらいい。お前も一端の戦士なら自分の戦場には自分で責任を持て」


 ソウマは特に考えることなくアイスにそう返す。


「はい!」


 アイスはそう言われていつもの無表情の中に確かな決意を秘めて頷く。


「それでは改めてそれぞれがどこの侵入経路を防衛するかを決めたいと思いますが・・・・一応はお一人で防衛することになる皆様の意見を聞きたいと思いますが・・・・・・」


 参謀の男はそう言って意見を求めるようにソウマ達に視線を投げかける。


「う~ん」


 ソウマは腕を組んで地図を見つめながらしばし考える。


「俺がここでシルヴィアがここ、ナーバがここを護ってアイスがここだな」


 そうしてソウマは淡々と地図を指差しながら自分だけでなくシルヴィア達の場所も決めてしまう。


「ほ、他の方々の場所も勝手に決めていいのですか!?」


 参謀の男はソウマの行動に引き攣った顔をしている。


「私はそれでいいわよ」


「私も師匠マスターに従います」


「私も問題無イ」


 しかし三人はソウマの決定にあっさりと肯定の意を返す。


「・・・・・・御三方がよろしいのでしたら私共からは特に言う事はありません」


 その後ソウマ達以外の防衛ヵ所と侵入された際の対策等を話し合ってから一度解散という形になった。魔族軍の到着は早くとも二日後ということでその後は各々の準備も含めての期間を設ける為に解散となった。そして現在ソウマ達は王城の客間と思しき部屋にそれぞれ個室をあてがわれていた。冒険者全員に英気を養ってもらおうと王城で細やかではあるが宴会を設けると言われたのだが多くの冒険者がそれを辞退して思い思いに城を後にして街へと下りていった。


「結構いい部屋ね」


 シルヴィアがソウマの部屋を訪れて周りを見回しながらそう感想を漏らす。シルヴィアに続く様にシャルロットやアイスやナーバも続いて入ってくる。


「他の冒険者の人はどうしてお城から帰って行ったのかな?」


 シャルロットがソウマの座るベッドの横に座りながら中に視線を向けながら疑問を口にする。


「そりゃ思い残すことがないようにだろうさ。実際に死ぬかもしれない事態に臨むんだから遣り残したことを済ませに行ったんだろうさ」


「やり残したこと?美味しいもの食べるとか?」


「シャルは良い子ね~~♪」


 純粋なシャルロットの答えにシルヴィアがほっこりしながら微笑んでシャルロットの頭を撫でる。


「なんだ、つまり子孫を残しに行ったのカ」


 ナーバが身も蓋もないことを言ってしまう。相変わらず生々しい発言をさらりと言ってのける。


「そんな身も蓋も無い・・・・・・」


 アイスが無表情の中に若干の呆れを含んだ顔をしている。


「ともかく、魔族との戦闘での方針はある程度決まったわけだけれど、シャルはどうするの?」


 シルヴィアがシャルロットの頭を今だに撫でながらソウマに自分達が戦闘中のシャルロットの動向を訊ねる。普通に考えるのならばソウマかシルヴィアがシャルロットを護りながら戦う事である。ソウマとシルヴィアなら敵と戦いながらでもシャルロットを護ることは十分に可能である。ナーバは戦闘に夢中になり過ぎる恐れがあるしアイスでは残念だがシャルロットを護りながら戦闘するにはまだ実力が十分ではない。


「私は竜王さんの所に行くよ」


 しかし答えはソウマではなくシルヴィアの下から聞こえてくる。


「シャル・・・・・・・?」


 シルヴィアが困惑とも驚愕ともつかない声で最愛の少女の名を呼ぶ。


「・・・・・・・どうしてだ?」


 ソウマが問い詰めるでもなく飽く迄も確認するように穏やかにシャルロットに問い返す。


「なんでかわ・・・・・・・実は良く分からないの・・・・・・・。でも、なんでかそうしなきゃいけない気がするの・・・・・・。誰か・・・・・私を呼んでる。救けを・・・・・・ずっと・・・・・私を呼んでる・・・・そんな気がする。ごめんね・・・・・私にもよく分からないんだ」


 シャルロットは自分でも分からないらしくそれでも懸命に自分が今感じている感情をソウマ達に伝えようとしている。


「・・・・・・・分かった。シャルの好きにするといい」


「ソウマ!」

師匠マスター!」


 ソウマの言葉にシルヴィアとアイスが驚愕の声をあげる。


「シャルも子供じゃない。自分の運命を決める権利がある。そこに俺達の意見を挟む余地はない」


「でもっ・・・・・」


「シルヴィア、お前なら別に傍に居なくてもシャルを護る方法くらいあるだろうが」


「それは・・・・そうだけど・・・・・」


「シャルも俺達の仲間だ。ただ護られるだけの存在じゃない。シャルにはシャルの役割が有る。なら俺達に出来ることはシャルの役割を無事やり遂げることが出来る様に手を貸してやることだ。いつまでも過保護でいることはそれを邪魔する行為だぞ」


「分かってる・・・・・・・分かってるの・・・・・・でも・・・・・・」


 そう言ってシルヴィアはシャルロットを抱き締める。


「・・・・・・・・(俺の所為かもしれないな・・・・)」


 ソウマは無言ではあったが内心で苦虫を噛み潰したよう気持ちだった。昔のシルヴィアはここまで過保護ではなかった。百年前にソウマが封印される前は確かに過保護ではあったが普通に目を離すこともあったしシャルロットが遠出をする用事の場合は自分の使い魔を付けるだけにするなどここまで手元に置きたがらなかった。恐らくそれには自身が関係しているとソウマは思っている。シルヴィアの中でソウマとシャルロットは心の拠り所だった。その片方であるソウマが封印によりいなくなってしまった所為でその心の天秤が全てシャルロットに向かった結果こうなったようである。ましてやシャルロットもソウマ程ではないが封印されていたのだ、それもシルヴィアの目の前で起こった出来事だから余計にシルヴィアはシャルロットに対して過保護になっているのであろう。


「姉様・・・・・・・大丈夫だよ」


 するとシャルロットがシルヴィアに正面から向き直り彼女の体を抱き締めてその豊満な胸元に顔を思いっきり埋める。そして慈しむように懇願するようにあくまでも穏やかに優しく大好きな姉に語り掛ける。


「お願い・・・・・・私を信じて・・・・・。私も姉様達みたいに戦いたいの・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」


 二人はしばし無言で見つめ合う。姉はどこまでも優しくそれでいて心から心配そうにしながら。妹はそんな姉の気持ちを心から嬉しく感じながらもそれでも信じて欲しい強い決意を覗かせている。そしてやがて折れたのは姉の方で・・・・・・。


「これだけは約束して・・・・・・・・・・」


「何?」


「なるべくならあまり危ない事はしないようにしてね。それが出来ないならウェントゥス殿の傍を離れないようにお願いね。一応私の《影獣(オンブラ・ベスティア)》も付けておくから本当に危なくなったらそれに乗ってすぐに逃げて」


「・・・・・うん、約束する」


「・・・・・・馬鹿」


 シャルロットは笑顔でそれに答える。


「(どうせ無理する癖に・・・・)」


 そんなシャルロットにシルヴィアは悲しそうにそれでも心から誇らしい自らの妹をもう一度力強く抱きしめる。


『ウェントゥス、話は聞いていたな』


『はい』


 ソウマはそんな二人のやり取りを見届けると念話でウェントゥスに語り掛ける。ウェントゥスも心得ているように返答を返す。


『シャルの事を頼んだぞ』


『はい、彼女の存在は恐らく私にとっても僥倖をもたらすでしょう。彼女の身の安全は私の命に代えましても・・・・』


『私からも頼むぞ、ウェントゥス』


 二人の会話にナーバも参加してくる。


『姫様も万が一にも心配はないと思いますが油断成されぬよう・・・・・・・』


『分かっていル』


 その後アイスとナーバはそれぞれの宛がわれた部屋へと帰って行った。シャルロットはいつの間にかソウマの膝を枕に安らかな寝息を立てていた。シルヴィアはそんなソウマの腕に腕を絡ませ肩に頭を預けて一緒に座っている。


「ねえ、ソウマ。どうしてアイスを一人で、それもあの場所に・・・・・行かせたの?」


「んあ?」


「ちゃんと分かってたんでしょ?今回の戦い、それも一人での防衛はアイスの手に余るって事」


「・・・・・・・・まあな」


 ソウマは事戦闘に関しては百戦錬磨の直観が働く。それはある種未来予知や未来観測に近い程の精度を誇る場合がある。その直感がソウマに告げたのだ。この敵は強い、少なくともソウマがある程度そう感じる程の存在が敵に存在しているという事実だ。そして恐らくその敵はソウマ・シルヴィア・ナーバ・アイスの全ての場所に来るだろうことも、だが・・・・・・・・。


「だからこそだ、ここらでアイスにも壁を越えてもらおうと思ってるからな」


「・・・・・・・・・」


「だからそんな心配そうな顔するなって。信じてやれよ」


「・・・・・・・・うん」


 ソウマに頭を撫でられてシルヴィアは心配そうな顔をしながらもどうにか笑顔を浮かべた。


「アイツに今必要なのは死線を越えることだ。それも極限の状況でのな。それが出来ないなら俺達の旅にはこれ以上付いてこれないだろう」


 ただソウマ達に付いて旅を続けるだけなら簡単だ。ソウマ達に戦闘の全てを任せてアイス自身はシャルロットの身辺の警護でもしていればいいのだから。だがアイス自身はそれを望まない。彼女は戦士であり本人もそれを自覚し誇りにしている。ソウマ達もそれは十分理解している。故にこその今回の試練をソウマは与えることを決めたのだ。


「分かってるの・・・・・・・それでもね。大切な妹達が傷つくのは心が痛いの・・・・・・・」


 そう言ってシルヴィアは一層強くソウマの腕に抱き着く。


「昔の・・・・・・ソウマに出会う前の私ならこんな事考えなかった。私、ソウマやシャル達と出会って心が弱くなったのかも・・・・・」


「・・・・・・そうかもな。守る者ができた者は弱点が増える。それは弱さであり付け入る隙でもある。事実俺も百年前に似たような事でやられたわけだからな」


 ソウマは静かにシルヴィアの問いの自身の意見を交えて答える。


「・・・・・・・・だが同時に強くなるきっかけでも有ると思う。まあ強くなるきっかけはそれぞれ異なるから一概にそうとも言えんが・・・・・・・。アイツらの存在は確実にお前に新しい強さを与えてくれると思うぞ」


「・・・うん、ありがとうソウマ」


「油断するなよシルヴィア。今回の敵は多分お前にとっても油断ならない相手のはずだ」


「うん、大丈夫。それは私も感じるわ。何だかここ数日肌がピリピリするもの」


 シルヴィアもソウマ程でないにしろ戦いの中で培った直観が今回の戦いは油断ならないものだと警告していた。


「ナーバは大丈夫かしら?」


「ナーバは心配いらないだろう。あいつは戦闘経験こそ少ないが最強の戦闘種族として天性の直観を持っている。シルヴィアみたいな最初から殺す気のない者相手ならともかく殺気全開の相手に油断や力量を見誤ることはまず有り得ないだろうな」


「ソウマは大丈夫?」


 シルヴィアは上目使いでソウマを見つめる。言葉だけは心配しながらもその顔はどこか嬉しそうに微笑んでいる。


「決まってんだろう」


 それにソウマは唇の端を上げて不敵に微笑む。


「俺がなんて呼ばれてるか知ってるだろう?」


 それにシルヴィアはより一層楽しそうにソウマにしがみ付く。


「世界最強♪」


 ヴェント国攻防戦が始まろうとしていた。

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