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世界最強ですが?それが何か?  作者: ブラウニー
32/72

32話 魔神

 天を覆うと錯覚するほどの規格外の大きさの巨木が生えている谷に連れてこられたソウマ達はソウマ以外の全員がその雄大な偉容に圧倒されていた。


「話には聞いていたけれど・・・・・・・・・実際に見ると本当に大きわね・・・・・・・」


「ほわぁ~~~~~~~~」


「昔に長老から聞いたハイエルフの里にあるといわれる世界を支える巨木と言われる世界樹に匹敵する大きさかもしれませんね」


 三人は口々に感心と驚嘆を吐き出している。巨木の全長は濃い霧に覆われているのを考慮しても凄まじい大きさである。現在ソウマ達が乗っているウェントゥスも人から見れば十分に巨大な大きさであるが、目の前の雄大な巨木を前にしては大した違いはないようにすら感じてしまう。


『あの木の一番上で我らが主がお待ちです』


 そう言うとウェントゥスは霧に隠れた木の頂上部分まで上昇を始める。


師匠マスター、先程の念話の時に師匠マスターが呼んでいた時からまさかと思っていましたがこの先に待っているのは・・・・・・・・・」


 アイスが確認するようにソウマに問い掛ける。その言葉は若干震えている。


「ああ、今お前が考えているので間違いないぜ。この先で俺達を待っているのは【竜王】ゼファルトスだ」


 それを聞いてアイスは押し黙る。それも無理もないかもしれない。これからソウマ達が会うのはこの世界でも頂点に君臨する存在である。一説ではこの世界の誕生から存在していると噂されており、ハイエルフ等の古代種族でさえいつから存在するのか知りえないという程の太古から生きる存在である。その強さは神々ですら上回り、邪神達はゼファルトスを恐れて迂闊にこちら側に来ようとはしない。まさに生ける伝説にして誰もがしる最強の生物である。


「それって昔にソウマが話してくれたソウマが倒したっていう竜の王様のこと?」


「そうそう」


 そう、そんな誰もが認めるだろうこの世界の頂点に君臨する存在に唯一勝利した者がいる。それこそが・・・・・。


『まさか我々も我が王を上回る力を持つ存在がいるとは思いもしませんでしたよ。しかもそれが何と人族とは・・・・・・。いや、世の中なにが起こるか分からないものです』


「俺自身にとっても竜王のおっさんとの闘いは一番の印象深いモノだったぜ。正直自分が強くなってから一番死を感じたのはあの闘いだったわ」


 ソウマも当時を振り返るように言葉を出す。


「本当にこの先に竜王が待っているのですか・・・・・・・・」


 ソウマの言葉に確信を持ったのか、アイスがいつもの感情の見えない顔に冷汗をかいている。


『それほどに緊張せずとも心配はいりませんよ』


「そうだぜ。おっさんは意外と話せるからな」


「そうは言われましても・・・・・・・」


「まあ、無理な話よねぇ・・・・・・・」


 ソウマとウェントゥスの言葉にアイスが胡乱な顔で返し、シルヴィアが苦笑しながら同意する。ある意味で一国の王や他の種族に長に会う以上に緊張する相手である。


『そろそろ主が待つ頂上に到着します』


 遙か上空の霧や雲を突き抜けた先に樹の頂上はあり、その天辺には大きな台座のようなものが置かれていた。そしてそこに巨大な竜が横たわっている。


「大きい~~」


 シャルロットが感嘆の声を上げる。その竜はウェントゥスよりも更に巨大な体躯をしており、その体から感じられる力は更に遙かに大きい。全身を覆う白銀色の鱗はそのあまりに大きな力とは裏腹に清廉な程の美しさに思わず目を惹きつけられてしまう程である。そして縦長の瞳孔を持つ黄金に輝く瞳は気の遠くなるような年月を生きた者が持つ深みを讃えている。


「というかこんなに上空に来たのに息がまるで苦しくないわね?」


『この樹の周辺は常に最適な環境に保たれています。だから本来普通の人族などであれば何らかの対処をしなければいけないこのような上空でもなんの支障も感じはしないでしょう?』


「確かに・・・・・息も苦しくはないし、寒さもほとんど感じません」


『・・・・・・・・・・来たか・・・・・・・・』


 すると台座に横たわっている竜の視線が此方に向くのと同時にソウマ達の脳内に先程の思念と同じ声が届く。


「久しぶりだな。竜王のおっさんよ」


『ああ、久しいな盟友(とも)よ。我の時間感覚からすれば大した年数ではないが主ら人種の感覚では久しいというのが正しいだろうな』


 ソウマが少し嬉しそうに横たわる巨大な竜に向かって言葉を投げかける。すると竜も横たわったままで視線をソウマに合わせながらその視線にソウマと同じ嬉しさを籠めて向けている。


『お主が人間の魔術師の罠に堕ちたと聞いた時は耳を疑ったぞ』


 次いで竜・・・・ゼファルトスは少しからかう様にソウマに言葉をかける。それにソウマは少しバツが悪そうな顔をする。


「それについては言い訳のしようもないな。あれは俺の完全な認識の甘さが招いた結果だ」


『まあ積もる話は降りてから話そうではないか・・・・・・。ウェントゥス』


『はっ』


 ゼファルトスに声をかけられたウェントゥスがゆっくりとゼファルトスの横たわる台座に降下してゆく。そして台座に着地するとソウマ達が降り易いように身を伏せて体勢を低くする。


『急な申し出に良く来てくれた』


 ゼファルトスがそう言うと同時にその体が白銀の光に包まれる。その光は徐々に収束を続けてやがてソウマ達と同じくらいの大きさになる。


「・・・・・ふむ」


 光が消えた時にそこに現れたのは一人の初老の男性だった。頭髪や顎に蓄えられた髭は白銀色に輝き、その瞳は黄金色に輝いている。


「へえ、その姿は初めてみるな。竜王のおっさん、人型に成れたんだな」


 ソウマはその姿を見て感心したような顔になる。


「我もこの姿をとるのは実に数百年振りではあるな。竜の姿では威圧感を与えてしまうからな。他種族の者と話す場合は此方の姿の方が話がしやすかろう」


「そうかもな」


 ソウマとゼファルトスが会話をしているとシルヴィアがゼファルトスの前に進み出る。その後ろにはシャルロットよアイスも控えている。


「お久しぶりでございます、真なる竜【神竜王】ゼファルトス様。といっても最初の出会いは私が幼かったゆえに私自身は憶えてはおりませんがこうして改めてお会いできたことを光栄に思います」


 シルヴィアはゼファルトスの前で完璧な礼節を取り挨拶をする。


「あ?シルヴィアって昔におっさんに会ったことがあるのか?」


「あるといっても私が生まれたばかりの頃だから実は全然覚えていないのだけれどね」


「それは仕方がなかろうよ、吸血鬼の王族の姫よ。あの時はお主は完全に赤子であった。お主の父である王が類いまれなる才を持って生まれたお主を是非我に見せたいと我を呼んだ。我もお主の誕生は感じておったゆえに興味もあり少しお邪魔しただけのことよ。主が覚えておらぬのも無理からぬこと」


「そう言って頂ければ恐縮です」


 次いでゼファルトスはシルヴィアの後ろに控えるシャルロットとアイスに視線を向ける。


「シャ、シャルロット・ウトピーアです」


「・・・・・・アイスクル・グラシオです」


 それを受けた二人は先程のウェントゥスの時以上に緊張した面持ちで挨拶をする。


「うむ、そう緊張しなくてもよい。我はゼファルトス、竜を束ねる者でもあるが同時にソウマの盟友ともでもある。主等がそれほど畏まることもなるまい」


 そう言われて二人は少しは緊張が和らいだのか少しだけ体の力を抜く。


「それで話って何なんだ?わざわざこんな所まで呼んだってことは重要な話なんだろ?」


「うむ、そうだな」


 ゼファルトスが手を翳すと樹である台座はそこから椅子とテーブルがせり出してきた。


「座ってくれ」


 そう促されてソウマ達は椅子に座る。ゼファルトスもソウマ達の対面に椅子を出現させて座る。


「わざわざここまで来てもらったのは、ここならば万が一にも他の者に聞かれる心配がないからだ」


「確かにここは貴方の力が満ちている言わば聖域です。ここに力尽くで介入するのは神々にも不可能でしょう。つまりそれほど重要な話なのですか?」


「時にソウマ。お主、魔族と最近揉めているな」


「それがどうかしたのか?」


「実は我の話には魔族が関係していることも含まれているのだ」


「魔族が?」


「お主、魔族共の目的が人間界の侵略以外にあることを気付いているか?・・・・・・・・む?」


 すると話の途中でゼファルトスが突然あらぬ方向に視線を向ける。


「・・・・うむ、・・・・いいだろう、主も聞いておいた方が良かろう」


 そうゼファルトスが虚空の何者かに向かって何かの許可を出す。すると突然ソウマ達の真横に光の環が出現する。その環を通って一人の人物が現れる。


「ラルク様!」

 

 その人物を見たアイスが驚きの声を上げる。光の環を通って現れた人物はエテルニタ王国に居るはずのラルクだった。


「ゼファルトス殿、突然の訪問のお願いを許可していただきまことにありがとうございます」


「気にすることは無い、主にも聞いてもらった方が良いと思っていた」


 ゼファルトスに挨拶したラルクは次にソウマ達に向き直る。


「久しぶりだね、ソウマ。シルヴィアやアイスも元気そうだ。姫様もお元気そうで何よりです」


「そういうお前も相変わらずだな。わざわざ転移魔法まで使って来るなんてな」


「僕自身としても気になる内容の話の様だったのでね。さすがにここに来るにはゼファルトス殿の許可がなければいくら僕でも転移できないからね。先に了解を取ったのさ」


「積もる話もあるかもしれんが先に此方の話を済ませておきたい」


「これは失礼、僕の方もそれが本命ですのでお願いします」


 そう言うとラルクもテーブルに近づいて現れた自分の分の椅子に座る。


「では大賢者殿が来る直前にしていた話から入ろうか」


「魔族の目的が侵略以外にあるって所か?」


「そうだ。お前達は魔族の行動になにか違和感などを感じなかったか?」


「確かにあいつらの行動ややり方は不自然な部分が多い。侵略行為と言うにはあまりにも先が無いやり方をして、殲滅行為と言うには逆にやり方が悠長だ。まるで他にやることがあるのを誤魔化す為にやっているように感じるな」


「それについては私も師匠マスターに同意です。アグアラグでも魔族のやり方は不自然に過ぎます。戦争という前提のやり方としてはまるで目的が見えません。純粋に自分の種族以外への憎悪による殲滅行為にしては魔族の将軍にそれほどの感情を見出せませんでした」


「そうね、アイアンガイスで会った魔王もそれほどの悪感情を発している風には感じなかったわ。どちらかというと目的達成までの余興程度の感覚だったと思うわ」


 ソウマ・アイス・シルヴィアがそれぞれ自分の意見を述べる。ゼファルトスはそれに頷きながら話し始める。


「今主等が言った通り魔族の真の目的は人間界の侵略や殲滅などといったものではない。奴等の真の目的は・・・・・・」


「魔神の復活」


「「「!」」」


 ゼファルトスの言葉を先読みするようにラルクが先に言葉を発する。それにゼファルトス・シルヴィア・アイスが驚愕の顔で反応する。


「知っておったのか、大賢者よ」


「推測でしかなかったのですがここ数年でそれがほぼ確信に変わりつつありました。そして今完全に確信に変わりました」


「あれってお伽話じゃなかったの!?」


「私もそう思っていました」


「魔神って何だ?」


「私も知らない?」


 驚愕に包まれるラルク達とは裏腹に話に着いて行けていないソウマとシャルロットが疑問符を浮かべながら訊ねる。


「ああ、ソウマは一応人族ですから知らないのも無理はない。姫様もハイエルフといっても人族の国出身ですからこちらも知らないでしょうね。魔神といのはかなり昔のお伽話に登場する存在です。もっともあまりにも古い時代の話なので今ではエルフや吸血鬼のような長命種のみに僅かばかり伝わる程度ですけどね」


「私もお父様に小話程度にしか聞いていないけれど、確かかなり大昔に神や竜も含む全種族と相当に永く激しい争いを続けた凶悪な神の一柱だって」


「私はそこまで詳しい内容ではありませんが・・・・・・・・かなりの大昔に大変に邪悪な悪神がいた程度のものですが・・・・・・・実在したのですか?私はてっきり親が子供を躾ける時に聞かせる類いのものだと思っていましたが・・・・」


「実際私もそんなものね」


 アイスの困惑しながらの疑問にシルヴィアも同意する。それにゼファルトスは神妙な顔付きで答える。


「うむ、実際にかなりの昔になる。一万年以上も前の話だ・・・・・・・・まだこの地上にこれ程生命体が充実していないほどの昔だ。その頃はまだ人族も数が少なく、むしろ亜人種の方が数が多かった位だ」


「一万年以上前・・・・・・・納得ね。私達王族級の吸血鬼ロイヤルヴァンパイアそこまで生存している個体は数える程しかいない。しかもその全員が存在はしていても眠りについてて死んでいるのと変わらないからその話もほとんど伝わらなかったのでしょうね」


 そう言ってシルヴィアは少し昔を思い出す様な顔になる。その顔が若干苦い顔なのはどうやら祖先の者にあまりいい思い出が無いようだ。


「だが実際に魔神は存在したのだ。魔神は強かった、当時存在していたほとんどの種族との全面闘争を繰り返しながらも逆に我々の側が魔神に押されていた程だった」


「それ程なのか・・・・・・・当時おっさんも居たんだろ?」


「ああ、だが当時の我はまだ若く力は有っても思慮が足りなかった。血気に逸りここを飛び出して魔神との戦闘に明け暮れていたのだ。そしてそれを諫める為に他の竜族の長達が我を止めに来た。その時に竜の里が魔神に襲われ壊滅状態になった。里は我を連れ戻す為に戦力を欠き魔神に蹂躙されてしまった。その後我は里を護る為にほとんど前線には出られなかったのだ」


「魔神側は魔神一人だったのか?」


「嫌、種族の中には魔神のあまりの強大さに恐れ、または心酔して従ったものがいた。そしてその者らは魔神の力で新たな力や姿を獲得した。その末裔が現在の魔族達なのだ。だからこそ魔族は自分達の祖に等しい魔神を復活させようとしているのだ。それ以外にも魔神に協力する邪神も何柱か存在していた」


「復活させるってことは当時は魔神は倒しきれなかったのか?」


「そうだ。魔神との戦いから数年が経過して徐々に戦力を削られていた神々や我等竜族は最後の手段に出た」


「最後の手段?」


「うむ、全種族の最高戦力を結集し魔神に総攻撃を仕掛けて力を削いで封印する作戦だ。しかしその時既に強力な神達の大半は魔神に消滅させられるか大きな傷を負わされて戦線復帰は作戦参加は不可能だった。それゆえに我もその時ばかりは里の護りを放棄して作戦に参加した。その時魔神と正面から戦えるのが我一人だったからしょうがなかった。それに魔神さえ押さえてしまえば後は魔神の力に頼るか恐怖していた烏合の衆だ。向こうの陣営も強力な個体の邪神などは倒していたから何とでもなったのだ」


「しかし封印って・・・・・・・、魔神はおっさんでも倒せなかったのか?」


 ソウマが純粋な疑問を込めてゼファルトスに問う。


「無理・・・・・・とは言わんが難しかっただろうな。魔神は驚異的な力に加えて高い復元機能も備えていた。例え塵も残さず消し去ったとしてもそこに自らが存在していたという情報から自らを復元する程の凄まじいものだ。力そのものは我の方が優れていたが我では奴を殺しきることはできなかった。それではいずれ消耗し殺されてしまう。ゆえに短期決戦を挑み出来るだけ魔神の力を削いでから封印するという手段を取ったのだ」


「なるほど・・・・・・・・」


 言われてソウマは納得したような言葉を出しながら何か考え込むような仕草になる。


「そして作戦が決行され、魔神は神々の力が結集された封印によって二度と出られぬ氷の中に封印されたのだ」


「ふ~ん、・・・・・・・・・・氷?」


 考え事をしながらの生返事を返したソウマは気になる単語を聞いて思はず訝しんだ声を出す。見れば他の皆も思わずといった顔でゼファルトスを見ている。


「ゼファルトス様・・・・・・もしやその魔神を封印したという術とは・・・・・・・」


 シルヴィアが恐る恐るゼファルトスに確認する。


「うむ、《氷結地獄コキュートス》という魔法だ」


 実に聞き覚えのある魔法の名前に全員が驚きの顔になる。


「そうだ、お前達の知っての通りそこにおるソウマが百年程前に封印された魔法だ。元々この禁忌魔法は魔神の奴めを封印する為に神々が作り出したものだったのだ」


「なるほど・・・・・・納得できました。元々《氷結地獄コキュートス》は最初から神を封印する為に生み出された魔法だと伝わっていました。そこに少し疑問があったんです。《氷結地獄コキュートス》は数ある禁忌魔法の中でもこれだけは神の力を借りなくては絶対に行使が不可能なんです。しかしこれが理由なら納得ですね。これは最初から神が自ら同じ神を封印する為に作った神専用の禁忌魔法。それが長い年月を経ることによって多少変化して伝わったのでしょう」


 ラルクが頷きながら得心が得られたような顔をしている。


「それが今魔族の手によって解かれようとしているということですか?」


 話を飲み込めたアイスがゼファルトスに訊ねる。


「そうなのだ」


 ゼファルトスがその疑問に首肯して答える。しかしそれにソウマが更に疑問顔をして訊ねる。


「ていうかそれって破れるもんなのか?神の奴らの封印は並大抵じゃないから一万年程度じゃ劣化なんかしないだろうが」


 しかしこのソウマの質問に対しラルクとシルヴィアがジト目でソウマを睨んでおり、ゼファルトスは溜息をつきながらやれやれといった感じに首を振っている。


「ソウマよ、今の言葉はその封印を内側から無理矢理破った者の言う言葉ではないぞ?」


「あ」


 ゼファルトスのその言葉にようやくシルヴィアとラルクの視線の意味を理解したソウマは此方も気まずそうにする。


「つっても俺の封印されたのは魔神って奴が封印された《氷結地獄(コキュートス)》よりも大分規模が小さいんだろ?その封印は聞いた感じじゃ神々が総出でかけたもんなんだろ?俺のは精々が六柱分の封印だから・・・・・」


「でもその六柱って最上級邪神のはずよね?」


「うっ!?」


「しかも《氷結地獄(コキュートス)》の中でも最上級のもので封印されていました。そもそも《氷結地獄(コキュートス)》は外側からよりもむしろ内側からの方が破るのは難しいと文献に記されていました。だからこそ魔神も一万年以上も封印が破れず閉じ込められているのでしょう。それより弱いとはいえソウマは内側から無理やり出てきましたね・・・・・・」


「うううっ!?」


 続けざまのシルヴィアとラルクの言葉の槍にソウマは滅多刺しにされる。その場に椅子からずり落ちそうになるソウマ。


「そ、それよりも魔族の奴らはどうやって魔神の封印を解くつもりなんだ?内側から程じゃなくても外側から封印をどうにかするのも相当に厄介なんだろうが」


「そうですね。以前に僕が《氷結地獄(コキュートス)》から姫様を救出できた理由も殆どが封印の効力がソウマに向いていたことと姫様がソウマの鎧の《四精の鎧エレメンタル・マスター》に包まれていたのが大きな要因です。あれの御かげで外部からの無理な干渉も姫様に影響が出ることはなかったし鎧が姫様の生命を維持してくれていたから時間を掛けてゆっくりと救い出すことができました。この二つの要素がなければ姫様は今だに氷の中でしょうね」


「・・・・・・・・・・・ちょっと待て」


 ラルクの話を聞いていたソウマが気になる部分に思わず反応する。


「何ですソウマ?」


「外部からの無理な干渉ってお前!それで俺の方に影響が出たらどうするんだよ!」


「出てないからいいんじゃないですか?」


 ラルクはまるで問題が有るか?と言わんばかりにキョトンとした顔で聞き返す。


「この野郎抜け抜けと~~~~」


「それはそれとして・・・・・・。魔族はどうやって封印を解くつもりなのですか?」


 シルヴィアがいまだに拳を震わせているソウマを丸っと無視してゼファルトスに話を促す。


「実はそれについては良く分かっておらぬ」


「あ?じゃあなんで魔族の目的が魔神の復活だって思ったんだよ?」


 ゼファルトスの回答にソウマが怪訝な顔で問い返す。


「それには封印の中の魔神の力が増大しているからだ」


「とは?」


「我は常に思考の一部を魔神の封印の監視に当てておる。封印になにか変化などがあればすぐに気付けるようにな。その封印内の魔神の力がここ数年で活性化しておるのだ。方法は分からぬがな」


「まさか魔族は魔神の力を増大させ外側からではなく内側から魔神に封印を破らせるつもりなのではないですか?」


 アイスが自らの意見をゼファルトスに述べる。先程まで少々ゼファルトスの雰囲気に委縮してアイスだったがソウマやシルヴィアやラルクの雰囲気に助けられてなんとか普段通りの様子を取り戻していた。


「分からぬ。そうかもしれぬし別になにか方法や思惑があるのかもしれぬ。恐らくは魔族以外にも邪神も何柱かは協力しておるだろう。そうでなくてはとてもこのような大それたことは出来ぬだろうからな。それに此度の四体の魔族の王達も中々に侮れぬ能力を持っている。単純な強さだけを見て油断していい存在ではない」


「確かにアイアンガイスで会った魔王の一人は何か隠し玉を持っている感じの奴だったな」


 ゼファルトスの言葉にソウマはアイアンガイスでのことを思い出しながら感想を漏らす。


「ていうか竜王のおっさんが直接魔族に牽制なりなんなりかければよかったんじゃないのか?」


 ソウマが感じた疑問をそのままゼファルトスに訊ねる。


「それが出来れば苦労は無い」


 しかしゼファルトスはソウマの言葉に溜息をつきながら俯いてしまう。


「何でだよ?」


「先も言ったであろう。此度の魔神復活の企てには邪神も複数係わっておる。その邪神の共がこの世界の各所で顕現の兆しを見せておる」


「それはゼファルトス殿をこの場所に釘付けにする為ですね」


 ラルクがゼファルトスの話を聞いて自らの考えを述べる。


「うむ、間違いなかろうな。儂がここから動けば各地で邪神が無差別に顕現して地上を荒らすだろうな」


「ていうかそんな一度に神って出てこれるか?」


「通常は不可能だね。ガラルドが以前邪神を召喚した時でさえ一万人近い人の魂が必要だった。恐らく今回魔神復活に加担している邪神の強さは全てガラルドが召喚した邪神と同等かそれ以上だろうね。本来それ程の邪神を召喚するにはガラルドがやったようにそれこそ国一個分クラスの生贄が必要になる。しかも複数体となるとその数はとても賄えるものじゃあないね。もしかしたら魔族ないし邪神達はなんらかの方法か手段を見つけたのかもね」


「或いは・・・・・・それも魔神の復活に関係するのかもしれないわね」


 ソウマの感じた疑問にラルクが否定的な答えを返す。そしてシルヴィアもラルクの考えに自らの考えも加える。


「流石におっさんも一度に色んな場所で邪神に暴れられた対処できないか。おっさんならその気になればこの世界のどこからでも攻撃はできるが流石に邪神を一度に複数同時に倒せるわけじゃあねえからな」


「うむ、我が邪神を退ける間に相当数の生命が犠牲になる。我は出来るだけそれは避けたいのだ」


「それで?結局おっさんは俺に何をさせたいんだ?」


「うむ、聞いての通り我は今ここから迂闊に動けぬ。ゆえにお主には独自に魔神の復活の阻止ないし阻害を頼みたかったのだが・・・・・・・、謀らずもお主は既に魔族と事を構えている。このまま魔族がお主に関わる限り自ずと魔神の復活は阻止できよう」


 ゼファルトスは何故か自信満々といった感じで言い切る。


「ゼファルトス殿は良くお分かりですね。仰る通りソウマのトラブル体質はもはや呪いか宿命の類です。いや、才能と言い換えてもいい。ソウマがこのまま旅を続けていれば必ずやゼファルトス殿の目的も果たされましょう」


「そうね、ソウマは望む望まるに関わらず自然とそういった事に巻き込まれる傾向にあるからこのまま旅を続けているだけでその内魔族もソウマを無視できない障害と認識するでしょうね。実際にアイアンガイスで出会った魔王も既にソウマを相当警戒していたようだしね」


 ゼファルトスの妙な自信にラルクやシルヴィアも此方も妙に自信満々に補足説明のように言葉を並べる。


「・・・・・・・納得いかねえ・・・・・」


 それにソウマは憮然とした顔で不貞腐れてしまう。


「うむ、だからソウマは今まで通り普通に旅を続けてもらっても構わぬ。ただ魔族の連中の目的だけでも知ってもらいたかったのでここまで来てもらったのだ。知らずに関わるのと知って関わるのでは自ずと対応も変わってくるからな」


 するとソウマの服の裾を先程から周囲を物珍しそうに眺めていたシャルロットが数回引く。


「どうしたシャル?」


「ソウマはその魔神って人とは闘わないの?」


 これはシャルロットの純粋な疑問なのだろう。ソウマは自身をより高めてくれる存在を求めている。だから強敵や珍しい技や武器を使う者を見るとその顔は喜色に染まる。だから今回も魔神という未知の強敵の存在にソウマが興味を示すと思ったのだろう。


「・・・・・・・ふむ」


 しかしソウマはそんなシャルロットを見つめた後、その頭に手を載せて優しく撫でる。


「確かにシャルの思う通り魔神って奴には多少ないし興味はある。実際に見てみたいし闘ってみたいって欲求も無いといえば嘘になるだろうさ。だかな・・・・・・・それをするには俺自身というよりも周りの危険が大きすぎる。万が一にも俺が負ければこの世界がめちゃくちゃになってしまうかもしれないしお前達の誰かが傷つくかもしれない。そんな代償を背負う位なら俺はそこまで無理して魔神を起こそうとは思わないな。魔族が魔神を復活させるなら邪魔するし向かってくるなら叩き潰すだけだ」


 それを聞いたシャルロットは笑顔になる。


「うん♪ソウマがそう決めたならそれで良いと思うよ」


「それじゃあ俺達の基本方針はこれまで通り旅を続ける。その過程で魔族が関わっていると思しき事案があればできるだけ邪魔するように・・・・・・と、大雑把にはこれでいいかおっさん?」


「うむ、それで構わぬだろうさ。魔族もなにやら考えが有るようだがとりあえずは我の存在やソウマ達の存在が計画を遅らせている以上は魔神の復活もそう簡単には行かぬだろう。その間にできるだけ我も魔族の狙いを・・・・・・・・・」


 するとゼファルトスが突如話を止めて何処かを見つめて押し黙る。


「どうしましたゼファルトス殿?」


「しまった・・・・・・・・帰って来おったか・・・・・・・。こうならぬ為にあやつには用事を出して居らぬ内に話を済ませようと思っておったのだが・・・・・・」


 そう言って目元を手で覆って天を仰ぐ。


「・・・・・何かが高速でここに近づいてくるな?しかも結構強いな・・・・・・」


 ソウマが視線を自分の足元に向けながら呟く。


「この気配は間違いなく竜ね。しかもこの気配は・・・・・・・・」


 シルヴィアも近づいてくる気配に気付き思わずゼファルトスの方を見る。何故なら近づいてくる気配はゼファルトスに非常に近いモノがあったからだ。


「我の・・・・・・・・孫だ」


「やっと会えたナ!人間メ!」


 ゼファルトスがそう言うと同時に雲を突き破り現れたのは背中に竜の翼を生やした竜の鱗を持つ女性だった。

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