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世界最強ですが?それが何か?  作者: ブラウニー
29/72

29話 撤退

『貴様が本当にあの男なのか?』


 ディザイアはいまだに信じられないように問い返す。


「信じる信じないはお前さんの自由だ。別にお前に信じてもらわなくても俺は俺のやりたいようにやるだけだからな」


 ソウマは先程とは違い好戦的な表情でディザイアを見つめている。


「あら?どうしたのソウマったら、急にやる気をだしたりなんかして・・・・」


 ソウマのそんな様子にシルヴィアが不思議そうな表情で尋ねる。


「やっと百年前の報復をする相手が見つかったんだよ。やる気にもなるだろうさ」


「そう言えばソウマ自分を閉じ込めた相手は絶対見つけ出すって言ってたね」


 シャルロットが顎に指を当てながら思い出す様に口にする。


「ああ、最初は俺を封印するのに協力した邪神共にお仕置きしてやろうって考えたんだ。ガラルドの野郎は俺がトドメを差してやったが邪神連中は誰が俺の封印に協力したのかは分からないからな。正直ガラルドやっただけじゃあ不完全燃焼だったんだが・・・・・・・」


 そう言ってソウマは嬉しそうに笑ってディザイアの方を見る。


「丁度いい感じに俺の憤りをぶつけられる対象が見つかった。今までは魔族何て無視して諸国漫遊する気満々だったんだが個人的に魔族に報復する理由が今出来た」


『偽物・・・・・・と言いたい所だが、その強さ・・・・・そして伝説の吸血姫を連れている。残念ながら本物と断定せざるおえないようだな。我々魔族にとって非常に恐ろしい事実ではあるがな』


 ソウマが一歩踏み出す。それと合わせるようにディザイアが一歩後ずさる。


「おいおい、どうした?まさか今更俺の素性を知って怖気づいたのかよ」


『正直に言わせてもらえばその通りだ』


「なぬ!」


 ディザイアの返答にソウマは思わず前のめりに倒れそうになる。ソウマ的にどうやらここまで素直に言われるとは思わなかったようだ。


『私も馬鹿ではないのだよ。君相手にこの体で・・・・勝てるとは万に一つも考えてはいないよ』


 その言葉にソウマは目を細める。


「・・・・・へえ、その言い方だと自分の本来の体なら俺に勝てるって聞こえるけどなぁ?」


『さあ・・・・・どうだろうね?取りあえず今は退かせてもらうよ。君達がここに来た以上はこれ以上この国に介入しても仕方がないだろうからね』


「・・・・・・まあそれならそれでも別にいいが、だったらその勇者君の体は解放していけよ」


『別に構わないよ。この国に用が無くなった以上この勇者の体にも用は無い。それに正直私もこの体の制御をし過ぎていると私自身の本来の仕事にも支障が出始めているのでね』


「だったら早く勇者の人に体を返してあげてよ!人の体を勝手に使ったら駄目だよ!」


 シルヴィアの後ろで見守っていたシャルロットが突然捲し立てるようにディザイアに言う。


『可愛らしいお嬢さん。幻術かな?姿を変えているようだがその清廉な魔力、身の回りに漂う夥しい精霊や神々の光・・・・・・そして伝説の男に吸血姫と共にいるとなれば十中八九君の正体はエテルニタ王国のハイエルフにして【至宝の美姫】【世界の寵愛者】と言われるシャルロット姫殿下ですかな』


 そう言ってディザイアは恭しく礼をする。


「・・・・・・・」


 シャルロットはそれを見て自身にかけていた姿を偽装する隠蔽用の術を解く。髪や瞳などの容姿が変化して

元に戻る。


『いやはや、かの有名な吸血姫には及ばずとも流石は【至宝の美姫】と言われる御方だ。噂通り大変可憐な容姿をしておられる』


 シャルロットの元の容姿を見てディザイアが相好を崩して褒めたたえる。


「貴方に褒められても嬉しくありません!」


 しかしシャルロットはその言葉に嫌そうに表情を歪めて言い返す。


『その後ろに控えるお嬢さんも負けず劣らず美しい。君達三人を目に出来ただけでもここに居た甲斐があったかもしれないな』


「御託はいいからさっさと勇者に体を返して消えろこの野郎!でないと勇者の体ごとお前をぶちのめすぞ!」


 ソウマが苛立った様にディザイアを睨みつけながら怒鳴りつける。


『脅しのつもりかな?君達はこの勇者を助けたいのではないのかな?であるならば下手な脅しは効果がないことなどわかりきっている。それに勘違いしていないかな、私はこの場を退いてあげる・・・・・・のだよ。私がその気になればこの体を人質に取ることも可能だという事もお忘れなく』


 そう言ってディザイアが嫌らしく笑いを漏らす。それにソウマは睨みつけるようにディザイアを見る。


「勘違いしてるのはお前だ馬鹿野郎が、俺は別に勇者を助けたいわけじゃあない」


『何?』


 ソウマの言葉に今度はディザイアが驚愕する。


「驚くことかよ?そもそも俺達はこの国には俺の鎧を持つ勇者君の様子を見に来ただけだからな。その目的さえ果たせれば適当にこの国を観光して直ぐに出ていくつもりだったんだ。それをお前等魔族が余計な手出しをしてきやがったからこうなったんだ。まあその御かげで俺の目的(優先順位は低いけど)の一つは確信が持てたがな」


『勇者を見捨てるというのか?』


「場合によってはな。俺は別に正義の味方でもなければましてやこの国の味方でもない。そりゃ助けられる命なら出来るだけ助けるし目の前の厄介ごとも出来る範囲で協力してやってもいいがそれでも俺自身の護りたいものとは優劣は比べられんからな」


 そう言ってソウマは一瞬だけチラリと後ろのシャルロット達に視線を向ける。


「もしお前がその体を人質に取った場合、確かに現状俺達にはその体からお前を追い出す手段は無い。だがなもしお前がそれで俺の護るべきものに危害を加えるという可能性が塵一つでも出た場合は即座にその体を俺が切り捨てるぞ」


『・・・・・・・本気・・・・・だな』


 ソウマの表情にディザイアは笑みを消す。ソウマの表情とその気迫はソウマの言葉に嘘や偽りが一切ない事を見るもの全てに理解させるには十分な程の迫力を見せていた。・・・・・・・・・まあそれでももしシャルロットが勇者を助けたいと言えば助けようとするのだろうが即座に切り捨てると言った言葉にも嘘は無いのである。


「それにお前自身もそれは悪手なんじゃないのか?それだけの同調率でしかも本来の肉体の性能以上の能力も発揮している。である以上その体がやられた場合の影響はお前自身も全く無いわけじゃないだろう?」


『・・・・・・・・・』


 ソウマの言葉にディザイアは押し黙る。


「図星だろ?」


 ソウマの言う通り対象の体を乗っ取る系の技や術はその精度が上がれば上がる程に術者本人の負担や負債が大きくなっていく。つまり乗っ取った対象の影響がそのまま術者本人に反映されるのである。それは敵の実力にも左右され敵が自身や操っている肉体よりも劣っている場合は大したことはないが、敵が自身と同等かもしくはそれ以上の場合は術者に返る影響も大きくなる。ましてやディザイアの勇者の肉体との同調率はかなりの領域で行われている。この状態でもしソウマが勇者の体を切り捨てた場合、ディザイア自身に返る影響も無視できない程のモノになるだろう。


『どうやらここでこれ以上の駆け引きをしても不利になるのは私の方のようだな。では本当に退くとしよう、また会おう。吸血姫殿、そして世界最強殿』


 ディザイアがそう言うと同時にカイトの体は崩れ落ちてその体から何かが抜け出ていくのをソウマとシルヴィアは感じた。


「どうやら消えたようね」


「ああ、勇者にかけた術を完全に解いていったようだな。これだと術を逆探知しての居所を探ることもできねえ」


 ソウマとシルヴィアは倒れたカイトの体を見つめてそう結論付ける。カイトは眠っているかのように穏やかな呼吸で目を閉じている。


「終わった・・・・・・・・のか?」


 すると瓦礫の向こうから今まで身を潜めていたのかカウルスが恐る恐るといった感じで様子を見る為に顔を出してくる。


「終わったぜ。勇者も元に戻ったし今の魔族の言葉を信じるならこれ以上この国にちょっかいを掛けることも無いだろうさ。まあ侵攻自体は変わらず・・・・・・いや、いままでの振りじゃなくて本気でしてくるだろうがな」


「そうか・・・・・・・終わったのか」


 ソウマの言葉にカウルスは静かにカイトの元に歩み寄りその呼吸を確かめると一度安堵する。


「ではカイトは?」


「それも心配ない。体そのものは少々操られた時の影響で無理が来てるが術そのものは完全に解除された状態だ。解け方も特に問題は見受けられなかったから精神の方もほとんど影響はないだろうさ」


「そうか・・・・・良かった・・・・・」


 それを聞いてカウルスが再び安堵する。どうやら意識を失っているいるらしいカイトが再び目覚めた時に操られているのではないかと危惧していたようだ。しかしその心配もソウマの言葉を聞いて完全な安堵に変わる。


「これは!一体何があったのだ!」


 そしてソウマの踵落としで気絶していた王も気絶から目覚める。そして自身の部屋とその周りの城の惨状を見て驚きの声を上げて狼狽える。


「父上、どうやら私は己の賭けに勝ったようです」


「何、だと!?」


 息子の言葉に王は更に動揺を見せる。脳天に不意の一撃を喰らい意識を失って目覚めてみれば意識を失う前以上に廃墟と化した自らの居城と服こそ破れているが全くの無傷のソウマと意識を失い倒れているカイト、そして先の息子の言葉に嫌が応にも事態がどういった状況になったのかを理解するには十分だった。


「・・・・・・・どうやら、そのようだな・・・・・・」


「父上・・・・・・」


「もう、何も言うなカウルスよ。私は弱い為政者だ。お前のように誇りだけを抱いて生きていける程強い人間ではない。だからこそ私には私の考えがあって魔族に協力していたのだ。だがそれもここまでだ、天運はお前に味方したようだ」


 そうして一度空を仰ぎ見て溜息を付く。そして溜息を付いた後に降ろした顔は最初のどこか焦燥めいた表情は意外な程に晴れやかになっていた。それは憑き物が落ちたかのような表情だった。


「では父上、これからこの国が誇りを取り戻す為に共に協力していきましょう」


 そのカウルスの提案に王はゆっくりと首を振る。


「それはお前だけでやるのだ。私は一度心が折れた者だ。それに誇りを取り戻すにはキッカケが要る。国民の殆どは何も知らなかったとはいえ職人の中には武器の生産状況に疑問を持っている者もいる。地下牢にはそれに気が付いた何人かの職人や関係者も何人か閉じ込められているはずだ」


「俺等が入れられていたのとは更に違う牢か」


 どうやらこの城は複数の地下牢が存在するようだ。


「貴方方はそんな事までしていたのですか!」


 王の言葉にカウルスが憤ったように叫ぶ。自身の国の予想以上の酷い惨状に叫ばずにはいられなかったようだ。


「でもでも、殺していないんでしょ?この国の人達もそこまで酷いわけじゃあ・・・・・・・」


「殺した方が面倒だからさ」


「え?」


 シャルロットがカウルスを慰める為に言おうとした言葉をソウマが否定するように遮る。


「こういうのは下手に始末する方が後々面倒事が多い。むしろ生きている方が何かあった時の保険に出来るからな。大方牢に閉じ込めた者の行方は他国に何らかの理由で行かせたとかそんなんだろ。もしかしたら偶に返していたのかもな、勿論口封じか人質なりかして戻ってこさせるかそのまま過ごさせるか・・・・・・」


 ソウマも口に出していてあまり面白くないのかそのまま黙ってしまう。


「概ねその男の言う通りだ。だからこそ・・・・・だ。お前はそのことを全て公表して地下牢の者も全て開放するのだ。そして全ての罪を私や臣達にあるとしてお前自らが裁くのだ」


「しかし!」


「そうしなければ民達は納得しない。お前はともかく私がこれ以上王位についていれば遠からずこの国は瓦解するだろう。それを防ぐにはお前が私を断罪するしかないのだ。でなければこの国の王族の信頼は二度と回復できないだろう」


「・・・・・・・・・!」


 カウルスは唇を噛みしめる。頭では王の言う事が分かっているのだろうが心が納得できないでいる。


「(やれやれこいつは中々のお人好しだな・・・・・・)」


 ソウマは内心で苦笑しながらもこういう人物は嫌いではないと思っていた。


「やるのだ息子よ。お前は誇りを取り戻すと言った・・・・・・。誇りには時に犠牲が必要になる場合があるだろう。特に一度失った誇りを取り戻す時にはな。だからこそやらねばならない。お前は今からこの国の王なのだから・・・・・・」


 そう言ってカウルスを見つめる王の顔は息子に最後の教育を授ける父の顔をしていた。


「・・・・・・・・わかりました、父上」


 そしてカウルスはしばらく逡巡したのちに頷いた。


 ※※※※


 その後はトントン拍子に事が進んだ。あの後そのまま王を拘束したカウルスとソウマ達は王と共謀して魔族に協力していた者達を捕えた。仲には家族や親しい者を人質に取られて無理矢理協力させられていた者もいたが、そこは王自身の供述で簡単に判別できた(当然自分は無理矢理協力させられていただけだと主張した者もいた)。地下牢に捕えられていた者も全て解放されてその日のうちに全国民へと王国側が行ってきたことを告白した。そして集められた国民の前でカウルス自らが前国王であり実父である王を処刑して見せた。王子であるカウルスも幽閉されていた事実は同じく王国の地下牢に入れられていた者の証言により確かなものになり、その王子自らが王を断罪するとう形を国民に示して見せたのだ。これにより一応国民側の王国への不信は最小限に抑えられた形になる。一部納得いっていない者もいるようだが・・・・・・・・。


「・・・・・・・・・」


「シャル、いつまで落ち込んでいるの?元気を出して」


 そう言ってシルヴィアはシャルロットを優しく抱きしめる。シャルロットの目元は少し赤くなっており泣いていたことが分かる。


「・・・・・・・うん」


 それにシャルロットは薄笑いで返す。


「シャル、他に方法がなかったのです。ああせねば遠からずこの国は王国への信を失った国民と王国側の不和により瓦解していたでしょう。それを防ぐには王国側が自身の罪を認めてそれを自らの過ちとして断罪するという強い姿勢を示すという方法しかなかったのです」


「うん、分かってる。・・・・・・・わかってるんだ・・・・・・」


 アイスが優しく諭す様に言い聞かせる。それでもシャルロットの顔は晴れることは無い。


「それでもね・・・・・・子供が親を・・・・・・・お父さんを自分で殺しちゃうなんて・・・・・・とても悲しい事だなって・・・・・・」


 そういって再びシャルロットの目尻に透明の雫が浮かび上がる。それは最上級の宝石のようにポロポロと彼女の瞳から零れ落ちる。


「泣かないでシャル、貴方が泣いてしまうと私の胸が張り裂けてしまいそうになってしまうわ」


 シルヴィアはまるで自身の痛みでもあるかのように悲痛そうな顔をしてシャルロットを抱き締める。


「シャル、世の中には綺麗事だけでは絶対にまかり通らない事情ってのも必ず存在する。お前は少し他人にも感情移入し過ぎる傾向がある。だから余計にそう感じるのかもしれないがお前のその感情はこの世の常識で考えたらやっぱり綺麗事なんだよ」


 ソウマは静かに、しかし強い口調で涙を流すシャルロットに言い聞かせるように語り掛ける。


「・・・・・・・・・・ソウマ」


 シャルロットはそれに悲しそうな表情を見せる。シルヴィアやアイスもソウマの言わんとすることが理解できる為に苦々しい顔をしながらも押し黙っている。


「それでもな・・・・・・・・・」


 しかしソウマはそう言った後にシャルロットの頭に手を置いて優しく撫でる。


「お前のその気持ちは大事にしろ。確かにこの世は綺麗ごとだけじゃ駄目だ。優しさだけでは誰も救えない。この世界の多くの者がそんな常識を受け入れているのが現状と言える。それでもお前の優しさそのものを否定することは誰にも出来ない。優しさだけでは確かに全員は救えない、だが優しさで救える人間も少なからずいるはずなんだ。こんな世界にあってもお前自身の優しさで救える人間は必ずいるはずだ。お前の優しさだけで救えない人間もいるかもしれない、それでもお前はその気持ちを忘れるな。シャルがその気持ちを持ち続ける限りは俺もシルヴィアもアイスも力を貸すからな」


「・・・うん」


 言われてシャルロットは少しだけ笑う。


「今回は少し手遅れだっただけの話だ。それで納得しろってわけじゃあないがそれでシャルが何時までも悲しむ必要は無い。それにそれだと自分の父親を処刑してまでの覚悟を見せた王子の野郎の決意に水を差してしまうぞ」


「うん・・・・・・そうだね。・・・・そうだよね!うん、もう悲しむのは止めた!そう思ったら急にお腹が空いてきちゃった。シルヴィア姉様、アイス姉様、ご飯食べに行こうよ」


 納得した様子を見せたシャルロットは次の瞬間にはすぐに満面の笑みを取り戻して勢いよく立ち上がる。そしてお腹を押さえて空腹を訴える。


「そうそう、シャルはそう言っている方がずっとシャルらしいわ」


「はい、安心しますね」


「ちょっと二人とも、それだとまるで私が食いしん坊みたいじゃない」


「あら、違ったかしら?」


「私はずっとそう思っていました」


「もう~なによそれ~」


 笑顔になったシャルロットに釣られる様にシルヴィアとアイスも笑顔になり、三人で和気藹々と言いながあ部屋を出ていく。ソウマはそんな様子を見て溜息を付きながら苦笑する。


「やれやれ、まあある意味あの切り替えの早さもシャルの取り柄の一つではあるな」


 ソウマもそう言いながら三人の後を追う様に部屋を出た。


 ※※※※


 王都で観光を楽しみつつ数日の間過ごしたソウマ達はそろそろ別の国に居どうしようかと思っていた時。


「王城からの使い?」


 出立の準備をしていたソウマ達の宿を王城からの使いと言う兵士がやってきた。


「なんの用なんだ?約束が違うじゃないか」


 ソウマはそう言いながら嫌そうな顔で用件を尋ねる。


「はっ、それについては新国王も重々承知しておられるのですが・・・・・・我が国の勇者殿たっての要望でございまして・・・・・」


「勇者の?」


 ソウマは王城での一件の後に新国王となるカウルスに褒賞の代わりに自分達のことは他の者には伏せて貰えるように頼んだのだ。自分達は飽く迄もこの国に旅行者として訪れただけだと。だから以降は王国側もソウマ達に関わりを持たないようにと言っておいたはずなのだが・・・・・・・。


「勇者が俺達に一体何の用なんだ?」


「それは私には何とも・・・・・・・。ただ貴方方をお城にお呼びしたいと・・・・・・」


「ふむ・・・・」


 ソウマは腕を組んで考える仕草をする。ソウマの目的の一つに自分の鎧を持つ勇者を自分の目で見るという目的があるがそれについては間接的ではあるものの達成はできた。


「(操られていた状態とはいえ、あの状態でもある程度の実力を察することは出来た。勇者の性根についても問題ないだろうな。仮にも俺の鎧が《緋炎プロミネンス》を使うのに力を貸している位だからそれなりに気に入られている証拠だし、実力もあるってことだ。つまり俺がこれ以上勇者を接触する必要は無いわけだが・・・・・・・・)」


「いいじゃない、ソウマ。行きましょうよ」


 ソウマが内心で結論を下して断りを入れようとした時、シルヴィアがソウマの肩に手を置いてソウマの内心を見透かしたように言葉を掛ける。


「あ?」


「なにか向こうにも訳があるんでしょう?どうせ私達は今日明日にでもこの国を出るんだから多少の事は大目にみましょうよ」


「う~ん」


「ね?」


 尚も考えるソウマにシルヴィアが笑顔で催促する。ヴェールを取り払った状態の素顔の笑顔の破壊力に兵士は完全に放心してしまっていた。


「まあいいか」


 その笑顔に折れたのかソウマは城に行くことを決めたようだ。


「行くのは今からでいいのか?・・・・・・・ん?おい、しっかりしろ!」


 なおも放心状態だった兵士をソウマが頬を少し強く叩いて正気に戻す。


「はっ!私は一体・・・・・」


「まあ気にするな。それよりも城に行くのは今からでいいのか?」


 一瞬何が起こっていたのか分からなかった兵士だがソウマの言葉に自身の職務を思い出す。


「あ、はい。今からでも全く問題ありません。外に馬車を待機させてあります。よろしいのでしたらこのまま馬車で城までお連れします」


「それじゃあそれで行こう」


 元々ソウマ達の荷物の殆どはシルヴィアの影の中に収納してある。身に付けている物と言えば少々の金銭の入った袋と剣などの装備品位である。ゆえに元々ソウマ達は準備にほとんど時間を必要としない。

 こうしてソウマ達は勇者が待っているという城に馬車に乗って向かって行った。


 ※※※※


 城に着いたソウマ達はそのまますぐに城内の中央付近にある練兵場に案内された。そこには新国王となったカウルスと勇者であるカイトが待っていた。


「やあ、すまない。本来なら君達との約束を守り、君達との接触はするべきではなかったのだけれど・・・・・」


 ソウマ達の姿を確認するとカウルスは真っ先に謝罪の言葉を口にする。そして次に頭を下げようとしたところで横にいたカイトが静止をする。


「カウルス、それについては君に非は無いよ。これは僕の個人的なわがままだからね。・・・・だから今回の事はもし責めるなら彼やこの国ではなくて僕個人にお願いしたい」


 そう言ってカイトが今度は自らが頭を下げてくる。


「おいおい、一国の王や勇者が一個人にそんなにへりくだったらまずいだろう?」


 ソウマはそんな二人のやり取りを苦笑と共に言葉をかける。


「君達は我が国や勇者を救ってくれた英雄だ。その相応の態度を礼節を尽くすのは当然さ」


「だから前にも言ったがそれは飽く迄も結果論だ。俺達は最初からこの国を救う気が有ったわけでもないし勇者君を助ける気が有ったわけでもない。ただ俺は喧嘩を売られたから買っただけだ」


「それは十分承知しているさ、しかし結果としてこの国や勇者は救われた。君は飽く迄も結果論と言うがこの世の中では案外その結果論が大事な場合がある。それにどちらにしろ君達でなければこの国は救えなかっただろうと思っている」


 そう言って今度はカイトが止める間もなくカウルスが頭を下げる。そこにあるのは純粋な感謝の念のみだった。


「だから感謝は要らない。それにいくらなんでも一冒険者に一国の王が軽々しく頭を下げるもんじゃないぜ」


 ソウマの言葉に今度はカウルスとカイトの二人ともが苦笑を浮かべる。


「何だよ?」


 ソウマはそんな二人の様子を訝しむ。


「いや、謙遜もそこまで行くと逆に笑えて来ると思ってね」


「そうですよ、大陸唯一のSS級冒険者のシルヴィア様を仲間に連れ、更には【至宝】とまで言われるエテルニタ王国のシャルロット姫に各国にその実力を轟かせる【氷の騎士団長】と名高いアイス殿まで一緒にいらっしゃる。しかも本人も自分で言うのは何ですが操られている状態の勇者である私の力を全く歯牙にもかけない実力をお持ちだ。それを一冒険者などとと謙遜するにも程がありますよ」


「んむぅ・・・・・・・・・・」


 ソウマはカイトの言葉に押し黙る。あの戦闘の折にソウマ達の素性はある程度既に明かされており多少はソウマも自覚があるのかカイトの言う言葉に反論しようとはしなかった。


「それにしてもやっぱりお前あの操られている時意識あったのか?」


 ソウマが気になった事をカイトに訊ねる。


「ええ、はっきりとしたものではありませんがね。敢えて言うのなら夢を見ているような感覚でしょうか?意識を妙な浮遊感が包みながら自身の体が自分以外の意思で動いているのをまるで俯瞰するように眺めている状態でした。ただはっきりしていたのは自分の体と意識の周りをなにかおぞましいモノが包んでいる感覚でした。僕はそれに意識のみでしたが必死に抵抗していましたがまるで無駄でした・・・・・・・・。むしろ僕の抵抗を嘲笑うかのようにおぞましさは増すばかり、正直あの時の僕は一刻も早く誰かに殺してもらう事ばかり考えていましたよ。それが今もこうして生きている、それだけで僕にとっては望外の結果ですよ」


「それについては気にしない方がいいだろう。お前を操っていた奴の実力は恐らく今のお前さんの頭三つ分は上だろうさ、お前ら風に分かりやすく言うとお前のステータスがAないしSのお前さんと違い多分奴さんはステータスが軒並み余裕でS、部分的にはSSもあるかもな。今のようやくSに届くかどうかのお前じゃ逆立ちしてもどうにもならんさ」


「そこまではっきりと言われると落ち込めばいいのか、言いう通り気にしない方がいいのか悩みます」


 ソウマに言われてカイトがなんとも複雑そうな顔して唸る。


「まあいいさ、それよりも本題を言ってくれ。どうして今日に限って俺達を・・・・・・というより俺を城に呼んだんだ?」


「そうですね。いつまでもお手を煩わすのも心苦しいので単刀直入に用件を言わせてもらいます」


「どうぞ、だいだいの事は予想がついているけどな」


「それは話が早くて助かります。しかしここは敢えて僕の口から言わせてもらいます。ソウマ殿・・・・・・どうかこの場で僕と立ち会ってください」


 そう言ってカイトはソウマの目を真っ直ぐに見つめながら切り出したのだった。

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