25話 お城に武器を捧げましょう
何とか更新できました。
「王様に武器を献上する?」
王都内に入ってからソウマが言ったように取りあえず宿を取った一行は現在、宿の一室に集まって話をしていた。
「そうだ」
「それが先程師匠が立ち聞きしていた職人達の会話の内容ですか?」
「ああ、何でも現在城で優れた武器を募集しているらしい。多分魔族に対する戦力増強の為だろうがそんなことは俺達には関係ない。重要なのは武器が優れていると認められれば王城に招かれることだ」
「献上する武器に何か条件などはあるのですか?」
アイスが挙手をしながら質問をする。
「聞いてた限りじゃそんな感じじゃなかったぞ。優れた武器なら自ら鍛った武器でもどこかしらで手に入れた武器でもとにかく優れていれば特に頓着しないみたいだぞ」
今度はシルヴィアが挙手をしながら口を開く。
「ちなみにソウマはお城に献上する武器にあてはあるの?まさか《聖王竜剣》を使うわけじゃないでしょ?」
「んなことする訳ないだろ。振りだとしてそんなことしたら《聖王竜剣》の奴どんだけ不機嫌になるか分かったもんじゃない。只でさえ普段はあんまり使ってやらないから機嫌が良くないのにこんな使い方したら完全にヘソでも曲げかねない」
「そう言えば以前にもソウマが呼んでもしばらく出てこなかったこともあったわよね」
ソウマの言葉にシルヴィアが過去にあったことを思い出したのか笑いを浮かべている。
「あれには本当に参ったぜ。格好つけて呼んでも何にも出てこなかった時の空気といったら・・・・・・・俺、しばらく恥ずかしくて顔を上げられなかった・・・・・・・・・」
ソウマも当時を思い出しているのかどこか遠い所を見ている目をしながら話す。
「まあ、という訳で俺の《聖王竜剣》は論外だ。後は・・・・・・・・・」
ソウマが何となしに視線をアイスの腰に有る剣に向ける。それに気が付いたアイスが咄嗟に自分の剣を手でしっかりと自分の胸に抱えるようにして抱く。
「いくら師匠のお言葉でも私の《アイスコフィン》をお貸しする分けにはいきません」
アイスが訴えかける様にソウマに懇願する。もしここでソウマがアイスに対して問答無用で《アイスコフィン》を貸す様に言えば律儀な彼女のことだから恐らく断れないだろう。それでなくても力付くで来られても自分では抵抗すらできないことも理解しているアイスはただ必死に懇願するばかりである。
「ああ、いやいや。勘違いすんなアイス。別にお前の剣を貸せって訳じゃない。偶々視線がそっちに向いただけだ。心配しなくてもちゃんと別のアテがあるよ」
アイスの視線にソウマが慌ててアイスの勘違いを否定する。
「本当ですか?」
アイスが不安そうにしながら確認する。
「本当だ!」
ソウマはそれに語尾を強くしながら言い切る。するとシルヴィアがクスクスと笑いながらこのやり取り見ていた。
「なんだよ?」
「ソウマったらアイスをあんまりイジメては駄目よ?それに武器の方も本当に心当たりがあるのかしら?」
ソウマに睨まれたシルヴィアは尚も可笑しそうに笑いながら冗談めかすようにソウマに問い返す。
「シルヴィア・・・・・・・お前分かってて聞いてるだろう?」
ソウマは逆に半眼でシルヴィアを睨み返す。それにシルヴィアは先ほど以上にクスクスと笑いながら自らの足元の影を拡げる。
「勿論よ。ソウマが最初にその話題を出した時には大体の察しが着いたわよ」
シルヴィアがそう言いながら自らの影から何かを取り出す。見ればそれは剣や槍など様々な武具の柄等だった。
「これは・・・・・一体!?」
アイスが自分達の足元から突然出現した無数の武具に少し驚く。そして直ぐにその出現した武具達に秘められた力を感じ取りそれ以上の驚きに包まれる。
「一本一本から凄まじい力を感じます。殆どの武器が聖剣や魔剣に匹敵する力を秘めているように思えますが・・・・・・」
「正解だアイス。今シルヴィアが取り出した武器は全部とは言わないが大体が伝説級の武器だ」
「これだけの武器を一体姉上は何処で手に入れたのですか?」
アイスが出現した武器達から視線を外さずにシルヴィアに訊ねる。どうやら一人の戦士としてこれだけの優れた武器の数々に少なからずの興味を引かれているようだ。
「この武器は全部ソウマと一緒に旅をしていた時に手に入れた物なのよ」
「師匠と?」
「ソウマがエテルニタ王国に来て間もない頃に私とも出会ったの。それからしばらく私とソウマはエテルニタ王国を今回の旅と同じように当時既にソウマと知り合いだったラルクに任せて旅をしていたのよ」
「当時のエテルニタ王国に来たばかりの頃の俺はまだ竜王のおっさんやシルヴィアには会ってなかったんだよ。世界をあてもなく放浪している時にラルクに会って誘われるままにエテルニタ王国に行ったわけだ」
「それ私もソウマに聞いたよ。その後しばらくソウマは王国を拠点にしながら色々な所に行ったんでしょ?」
「ああ〝約束″の事も有ったからな。それも含めてラルクにもカリがあったから王国にしばらく居座る気だったんだ。まあここまで馴染むとは実は考えてなかったがな」
「えっへへ~~~♪」
ソウマがそう言うとシャルロットがおもむろにソウマの隣に腰を降ろす。そしてソウマの顔を見上げながら満面の笑みを見せる。ソウマもそんなシャルロットの頭を優しく撫でる。
「まあそんでその時にシルヴィアと出会ったり竜王のおっさんの所に行ったりと色んな所に行ったわけだ。んでその武器はその時に貰ったり見つけたりしたものだ」
「シルヴィア姉様の影の中は本当に色んなものが一杯入るね~」
「しかしよくこれだけの数と質の武器を集めたものです」
シャルロットとアイスは感心しながらも影から出ている武器を眺めたり触ったりしている。
「二人とも気を付けてね。命に関わる程ではないけどソウマの《聖王竜剣》程じゃないけど触れたら何らかの影響を及ぼす武器も中にはあるから無暗矢鱈に触らない方がいいわよ」
「え!」
シャルロットが柄に触れようと伸ばしていた手をシルヴィアの言葉を聞いて咄嗟に引っ込める。
「しかし久々に見たが本当に懐かしい物が多いなぁ。このは何処で手に入れた物だっけ?」
ソウマがそう言いながら影から出ている剣の一本を引き抜く。その剣は見た目こそ通常の長剣に見えるが薄っすらと紅い光を帯びており見た目以上に切れ味が鋭そうに見える。
「それは《紅炎剣》の試作品の一つよソウマ。【炎竜】ブラストロスの住処に行った時に洞窟の中に住んでいたドワーフに貰ったものでしょ」
「おお!そうだったな」
シルヴィアの言葉に納得しながらソウマは手にした《紅炎剣》(試作品)を2・3回程軽く素振りをする。その際《紅炎剣》(試作品)から赤い燐光が散っている。
「本当に試作品なのですか?私の《アイスコフィン》同等かそれ以上の力を感じますが・・・・・・・・」
「本物は文字通り伝説にもある武器だ。遙か太古にドワーフ達の祖先が打ったものを目指してこの試作品は作られたんだ。しかも素材は【炎竜】ブラストロスの牙と鱗を使って作られているからな。試作品とはいえ相当な力が有るのは確かだ」
「本物は持っていないのですか?」
アイスはソウマの《紅炎剣》(試作品)を見つめながらどこか期待するような眼差しでソウマとシルヴィアを見る。自身の魔力性質とは真逆の属性の剣とはいえ伝説にまで謳われる魔剣《紅炎剣》を見てみたいという欲求は剣士としてはある意味当然なのかもしれない。
「本物は俺も見たことがないな。洞窟のドワーフも本物が無いから口伝のみで伝わっている情報からこの試作品を作ったみたいだしな。確かシルヴィアは本物見たことがあるんじゃなかったか?」
「千年前位にね。確かどこかの人族の王国の一つが吸血鬼王国を侵略しようとして攻めてきた時に当時の人族の勇者が持っていたわね」
「大昔にも勇者っていたんだね。その人も異世界の人だったのかな?」
「勇者は別に異世界の者が名乗るものではないのですシャル。異世界の者以外でも神や精霊の祝福や加護を持つ者は勇者と言われることがあるのです。勿論全てではありません。祝福や加護持ちの中でも戦闘能力に特化したものが勇者、それ以外が聖女や聖人と呼ばれています」
「まあ悪い言い方すると自分達や国にとって都合の良い者を勇者や聖女・聖人と言ってるのかもな」
「いくらなんでもそれは言い方が乱暴でしょうよ」
ソウマの言い分にシルヴィアが苦笑する。
「当時姉上は《紅炎剣》を持つ勇者と戦ったのですか?」
「ええ、というよりもその勇者は私と戦うためにわざわざ《紅炎剣》を探し出したみたいなの。私達吸血鬼は殆どの傷は瞬時に塞がる。特に私達王族級は他の吸血鬼と比べても段違いの能力を持つ。その再生能力を上回る為に用意したのでしょうね」
「その武器はシルヴィア姉様には効くの?」
「一応有効だということは確かね。確かに私達は高い再生能力を持つけれど肉体そのものを焼失させられると傷口が焼けているから再生が始まらないの。特に《紅炎剣》の炎は傷口に残り続ける。高い魔力抵抗を持つ王族級の吸血鬼でもさすがに《紅炎剣》の炎はそう簡単に消せないわ。吸血鬼の種族特性上炎に対する耐性だけは他と比べる低いから《紅炎剣》はある意味で光属性の武器以上に私達に有効な武器ね」
「シルヴィア姉様怪我しなかった?」
話を聞いていたシャルロットが心配そうな眼差しでシルヴィアに問い掛ける。
「大丈夫よシャル」
シルヴィアは安心させるようにシャルロットの頭を優しく撫でる。
「確かに《紅炎剣》は私に有効な武器ではあったけど使い手である勇者の方が剣を使いこなせる程の実力ではなかったから結局私は傷一つ付くことはなかったわ」
「よかった~」
シルヴィアの説明を聞いてシャルロットは安堵した後すぐにシルヴィアに撫でられている頭に意識を集中させて気持ちよさそうに目を細める。
「その後勇者の亡骸から誰が《紅炎剣》を回収したのかは知らないけれどいつのまにか剣は無くなっていたわ」
「それでは《紅炎剣》は今もどこにあるのか分からないのですか?」
「そうなるわね。吸血鬼王国に攻め込んできた国もとっくの昔に滅んでいるしその国から《紅炎剣》が持ち出されたりどこかの国に譲られたという話も聞かないから今はどこにあるのか・・・・・・」
「そうですか・・・・・・・本物を見てみたかったのですが残念です」
「旅を続けていればもしかしたら出会う機会もあるかもしれないわよ。ソウマは不思議とそういう縁も持っているから」
「そうですか、ならそれに期待するとします」
「なんだか無駄に期待を寄せられている気もするが・・・・・・あまり保証はしないからな」
シルヴィアとアイスの実に他力本願な話にソウマはため息を付く。
「それじゃあこれは何?なんだかすごく綺麗な感じがするけれど・・・・・・・」
今度はシャルロットが自分の前にある槍を指差している。その槍の周囲は他の部分と違い常に聖浄な雰囲気を醸し出している。まるでその槍の周囲だけ神殿の中に居るかのような空間を創り出していた。
「これはだな・・・・・・・・・・・あ~・・・・・・・シルヴィア」
しばらく考えたソウマだがやはり思いだせなかったのか結局シルヴィアに訊ねる。
「これは教会の高司祭の一人が邪神教に堕ちて邪神を召喚しようとした時に儀式を阻止する為に教会の人間が貸してくれたものじゃない」
「それを何故姉上が未だに所持しているのですか・・・・・・・」
「結局一度も使わない内にソウマが召喚された邪神ごと司祭もその工房も纏めて吹飛ばしちゃったから返しそびれちゃったの」
「返せとは言われなかったのですか?」
「この槍は一度投擲して使用すると二度と使えなくなるらしいの。その代りその一度だけ凄まじい威力を発揮する聖なる槍らしいのよ。教会も当時邪神が召喚されたことは確認していたはずだからその邪神が倒されたからにはその槍は既に使用済み判断したようで返せとは言われなかったわ」
「それは結局無断拝借では・・・・・・・・」
「向こうが返せと言わなかったんだから返さなくてもいいだろうさ。しかももう百年以上経ってるんだから時効だって」
あっけらかんとソウマが言い切る。その顔はまるで罪悪感など無いというような清々しい顔をしている。
「私もそうだけどソウマは基本的に教会はあまり好きじゃないからね」
「そうなの?」
「私は種族上言わずもがなね。基本的に教会の者は吸血鬼は討伐の対象として見ているから私なんて教会に行ったら教会総出で討伐しようとするでしょうね。ソウマの場合は・・・・・・」
「自分達が神の信徒だかなんだか言って高慢ちきに振る舞う連中が多いしそれでなくても利己と利益に凝り固まった豚みたいな奴も所属していることもあるからな。今はどうか知らないが俺は昔にそんな連中を嫌って程見てきた。王国の偉い奴らもそうだが何時の時代も権力や人の集まる所には得てしてそういう奴も出やすいもんさ」
「そういえば昔にソウマ、一度だけ教会から異端者認定されたこともあったわね」
「教会の支部の一つの一番偉い野郎をぶちのめしたら次の日にはそうなってたな」
「なんでそんなことしたの?」
シャルロットが尋ねる。ソウマはあまりそういった理不尽に力を振るう性格ではないから不思議に思ったのだろう。
「あの野郎シルヴィアの捕獲命令を出してやがったのさ。討伐じゃなくて捕獲の時点で目的が明白だっつーの」
ソウマは当時のことを思い出しているのか怒りを滲ませている。
「うふふふふふ♪」
シルヴィアは嬉しそうに笑っている。
「もう一つ気になるのですが姉上はそんな聖遺物級の武器を自身の影に収納していて大丈夫なのですか?」
「まあ直接手に持つのならともかく影に収納しているだけなら少し背中がむず痒くなる程度よ」
「聖遺物級を己の一部である影に納めてその程度の影響ですか・・・・・・・・」
アイスが何とも言えないような顔をしている。
「ともかくこれはさずがに出せないな。一回しか使えないし教会が今も憶えてるかは知らないがバレたら面倒だからな」
「他に何かないかしら・・・・・・・・・」
シルヴィアが影から出ている武器を眺めて物色する。
「これはどうかしら?」
シルヴィアが徐に一本の剣を引き抜く。
「それは?」
「とある集落が魔物に襲われている時に偶々私とソウマが通りかかって集落を襲う魔物を片付けたらお礼にってくれた物なの」
そう言ってシルヴィアはアイスに自分が持っている武器を見せる。それは一見すると普通のどこにでもある剣に見える代物だった。特に目立つような模様や装飾は見当たらず武器屋や鍛冶屋に行けばその店の最低金額で店の隅に置いてある剣の束の内の一本にしか見えない。しかしアイスの目には普通の見た目をした剣とは似ても似つかないようなモノが剣自体に見えていた。
「まるで凡庸な外見の剣の筈ですが・・・・・・・・・その剣自体から立ち昇る不思議なオーラは一体・・・・・・」
アイスの目にはシルヴィアが今手にしている剣から彼女には理解ができない不思議なエネルギーのようなものが出ているのが見えていた。
「魔力のようですが魔力とは少し違うような?さりとて神等の祝福を受けているようには見えません。一体これはなんなのですか?」
アイスの言う通りシルヴィアの持つ剣から発せられる力はこの世界では酷く異質に見える。一番近い力はアイスが感じている通り神の力や教会の聖なる力に近いモノがあるがそれとは違う力であることはシルヴィアが触っているにも関わらずなんの効果も及ぼしていないことからも間違いのだろう。
「ああ、それは駄目だシルヴィア。それはしまっておいてくれ」
するとソウマがシルヴィアが手に持っている剣を見た途端に困ったような顔をして剣をしまうように言う。
「なんで?ソウマはあの剣が何か知っているの?」
「そう言えばこの剣はソウマがどこからか持ってきたのを私の影にしまっておいたのだったわね。当時も何処から拾ってきたのか教えてくれなかったけれど今だに教えてくれないの?」
シルヴィアが首を傾げながらソウマに問い返す。しかし剣はソウマに言われた通りに影にしまう。
「出来れば私も知りたいです師匠。その剣から感じる力は今まで感じたこともないものでした。あれはもしかして・・・・・・・・・」
「悪いが今はまだ言えない。当時も少し事情があったんだが今となっては大分事情も変わって更に話せない。いつか時期が来れば必ず話すから少し待ってくれないか?」
ソウマはいつもの自信に満ちた態度と表情とは違い三人の様子を伺う様にしている。その様子は自身に非が有るのを認めている態度である。しかし同時にどうしても話すわけにはいかないというある種の決意のようなモノも秘められている。
「いいわ。ソウマが話せないなら無理に聞くことはしないわ。それに私はソウマを信頼しているからその話せないことが私達に害になることではないはずだから」
「うん。ソウマは絶対そんなことしない」
「私も師匠がそう言われるのでしたら従います」
三人はソウマの言葉に直ぐに了解の返答を返す。三人ともソウマに対する絶大な信頼を寄せている証拠である。
「ああ、もしその剣がそんな代物なら俺が見つけた時点で破壊しているさ」
「それじゃあ他の武器を選ばないと・・・・・・・・」
結局その後もシルヴィアの影のありとあらゆる武器を全員で吟味を続けた。途中武器に封印された太古の邪精やら邪神やらが復活しかけたり鞘から抜いた瞬間発動する類いの武器が抜けそうになったりと多少の問題はあったもののなんとか武器を選ぶことが出来た。
「これがいいな」
「それがいいわね。それなら下手に渡してもこの世界の戦力均衡は崩れないしかと言ってまるで役に立たない訳でもない。これなら王様に献上しても高い評価を受けられるでしょうね」
「私もそれが良いと思います。その武器から感じる力は名の有る鍛冶師が打ったと言えば十分通る程度の力しかありません」
ソウマの選択にシルヴィアとアイスが同意する。シルヴィアはともかくアイスも本来なら十分すぎる程の力を持った武器の筈なのにその評価は極めて淡泊である。どうやら献上用の武器を探すうちに完全に武器の質の基準が麻痺してしまったようである。
「この武器に名前は有ったかしら?」
「名前は無い。それは辺境の誰にも知られていない場所に住む名も無い鍛冶師が打った名も無い武器だ。あの鍛冶師は自分の満足いく武器を作る事だけを目的に生きていた偏屈屋だったからな。偶々出会った時に偶々今までで一番良い出来の武器が出来たから貰っただけだ」
「へえ」
「そんな方が居たのですね。私も里にも似たような人物が居ましたね」
シルヴィアはそう言いながらソウマの手にある武器・・・・・・・・一本の片手剣を見つめる。その片手剣は確かに銘こそ無いがその力は十分に歴史に刻むに値する力を秘めている。例え勇者の全力の一撃であろうと耐えられるであろうこの武器も悲しいかなソウマとシルヴィアからすれば少々頑丈な程度の武器でしかない。アイスですら本来自身の愛剣にも劣らない筈の剣をこの扱いである。もう十分にソウマ達の基準に染まった証拠である。
「むにゃむにゃ~にへ~」
因みにシャルロットは日が変わったあたりで限界が来たのか現在はシルヴィアの膝枕で気持ちよさそうに寝ている。時折よだれを垂らしながら笑い声が漏れている。なにかよほど楽しいのか嬉しいのか分からない夢を見ているようだ。シルヴィアはそんなシャルロットの頭を優しく撫でながら口元のよだれを偶に拭っている。当然自分のドレスの裾にもシャルロットのよだれが垂れているがシルヴィアはまるで気にしていないようだ。
「さてさて、お姫様も気持ちよさそうに寝ているし俺達も武器選びも終わったから寝るとするかね。王城に武器を持っていくのはしばらくの期間やってるそうだから今日明日慌てて持っていく必要も無いからな」
「そうね。しばらくは折角来たこの街を見てみたいわ」
「私も姉上に同感です。この職人の聖地とも言われるアイアンガイスの王都。私も是非にも巡ってみたいです。良い職人が居れば我がエテルニタ王国に招いて騎士団の面々の装備強化に役立てたいです」
アイスが真面目顔でそんな事を言う。さすがに王国の騎士団を任さられているだけに考え方がそっちの方面に向くことが多いようだ。しかしそんなアイスにシルヴィアがクスクスと笑いを溢している。
「どうかしましたか、姉上?」
「そんな心配をしなくてもエテルニタ王国にいる職人達はこの国の職人以上の腕前の者ばかりよ」
「そうなのですか?私はこの国に来るのは初めてですので良く分かりませんが・・・・・・・」
「貴方は普段からあまり国を出ることが無いからあまり知らないのね」
「確かに姉上の言う通り私は自分の里とエテルニタ王国以外の場所をあまり知りません。他の国に行くことがあってもそれは王や王子の護衛で他国に行くくらいなのであまり国そのものを見て回る余裕も無く・・・・・」
「エテルニタ王国に居る職人の殆どはラルクやアウロ王の名声を頼ってきた者が多いのよ。あの国は他種族にも差別なく受け入れているから辺境の職人なんかがよく流れてくるのよ。それと昔の旅の時に出会ったソウマを慕ってエテルニタ王国に来たエルダードワーフも居るもの」
「そうなのですか!?」
シルヴィアの言葉にアイスは驚愕を露わにする。ある意味でハイエルフ以上に伝説の種族として語られるエルダードワーフが自らの住む国に居るというのだ。
「何を驚いているのよ。貴方の剣を造ったの誰だと思っているの?ラルクとエルダードワーフの面々よ」
「そうだったのですか・・・・・・・・・」
「そうよ。本来貴方の剣だって伝説に名を残しても何らおかしくない名品なのだからね」
言われてアイスは改めて自らの腰にある愛剣の柄を強く握りしめる。
「まあそれでもこの国の職人の腕が良いのは間違いないし武器も他国と比べても格段に優れているのは確実だから見て回るのは面白いと思うわよ」
「そうですね。では私も純粋に観光を楽しむことにします」
「それでいいのよ。貴方はどこに行っても真面目すぎるのよ。少しは旅の醍醐味を満喫しないとね」
「はい」
「話が纏まったならそろそろ寝るぞ」
そうして各自も自室にそれぞれ帰っていく。寝ているシャルロットはシルヴィアが背負っている。この宿ではシルヴィア・シャルロット・アイスが相部屋でソウマのみ一人部屋である(それについていつもの如く一悶着あったのは言うまでもない)。
「おやすみソウマ」
「おやすみなさい師匠」
「むにゃむにゃ~~~」
「おやすみ」
※※※※
それからソウマ達は数日の間アイアンガイスの王都で思い思いの過ごし方をしていた。その間のアレコレのトラブルは割愛する。今日は早朝からソウマ以外のメンバーが宿の下にある兼用の食堂に集合していた。
「あれ?ソウマは何処行ったの?」
朝食を口にしながらシャルロットが辺りを見渡してソウマの姿を探す。
「師匠でしたら城に行っています」
「お城に?」
「ほら、例の王城に武器を献上するっていう話の奴よシャル」
「ああ、そう言えばそんな話を最初にしてたっけ」
「私達もここ数日で十分この国を満喫したからそろそろいいだろうってソウマが今朝お城に剣を持って行ったのよ」
「この国のご飯あんまり美味しくない」
シャルロットが憮然と言い放つ。
「この国の人達は皆職人が多いのでどうしても料理の味が大味になってしまいますからね。女性にはあまり受けが良くないかもしれません」
「この国の用事が済んだら次は出来るだけ料理の美味しい国に行きましょうか。別に勇者に会いに行くのも急ぐ用事でもないし」
「さんせ~~い」
「シャル、お行儀が悪いですよ」
シルヴィアの言葉にシャルロットが椅子から立ち上がり同意する。それにたいしてアイスが注意する。最近ではこの三人のこのやり取りが定番になりつつある状況である。
「そろそろソウマもお城に剣を提出して戻ってくる頃だから私達も散歩がてらお城までソウマを迎えに行きましょう」
「は~い」
「はい」
三人が朝食を終えてソウマを迎えに城まで歩いている途中。
「そこのお前達!止まれ!」
大通りの途中で突然怒鳴るように呼び止められる。
「?」
シルヴィア達は最初それが自分達に向けられたものだと分からずに周囲を見回す。
「そこのお前達だ。女三人組のお前達!」
そう言われて三人はようやくその怒鳴り声が自分達に向けられていることに気付く。
「私達に何か?」
すると三人の前に数人の鎧で武装した兵士達がやってくる。どうやらこの国の兵士のようだ。兵士全員の顔は緊張と警戒に包まれている。どう見ても話し合いやお茶を誘いに来た様子ではなさそうである。
「貴様らは今日城に武器を献上したというソウマ・カムイの連れの者だな。ちなみに惚けても無駄だぞ。街民達の証言から貴様等が数日間この街に滞在していることは分かっている」
「惚けるつもりなど最初からありません。私は何の要件かと聞いているのです」
「・・・・・・・!」
顔はヴェールで見えずともシルヴィアから発せられる覇気に兵士達は思わず気圧される。
「き、貴様等には・・・・・・・・・」
それでも一人の兵士が意を決して自らの使命を果たそうとする。
「王国転覆の容疑が掛けられている!お、おとなしく城までご同行願おうか!」
「・・・・・・・・・・・・(×3)」
しばし三人は先程兵士が発した言葉を脳内で反芻している。どうやら理解が及ばなかったらしい。しかしやがて言葉が脳に浸透し・・・・・・・・。
「・・・・・・はい?(×3)」
三人揃って理解不能という意味を込めて同じ言葉を発した。
出来れば今年中にもう一話更新したいなぁ・・・・・・・




