24話 トラブルメーカー
「見えてきたぞ」
村に一日程宿泊してから再びアイアンガイスの王都を目指して旅を続けているソウマ達は窮奇に乗って同じように王都の手前まで来ていた。
「あ、本当だ!私にも見えるよ」
窮奇は今度は街道を進まず人の目が届かない道の外れを選んで移動をしていた。そして王都の手前の森の中でソウマ達を降ろしてシルヴィアの影に消える。
「煙がいっぱい出てる~」
窮奇から降りて森の外に出たソウマ達は前方にいくつもの煙を噴き上げる壁を視界に納める。それを見たシャルロットは妙に高揚して飛び跳ねている。
「あの煙はドワーフ達や他の職人達の工房から上がる煙でしょう」
アイスもそう言いながらシャルロットと同じく空にモウモウと上がる煙を見つめている。
「壁も高~い」
歩きつつ王都に近づきながらシャルロットは目の前にそびえ立つ巨大な石造りの壁を見上げる。外側から見る壁の大きさは王都の中の建物が全く見えないほど高く壁の中から上がる煙しか見えない程である。
「さすが職人が多く集うアイアンガイスの王都ですね。これほどの大きさの石造りの壁を作る事が出来るとは・・・・・・」
アイスも感心するように壁を見上げている。
「・・・・・・・ソウマ」
「・・・・・・・分かってる」
そんな二人とは裏腹にソウマとシルヴィアは先程から険しい顔で石造りの壁を・・・・・・・正確にはその中の王都を見つめている。
「なんだか知らねえが碌でもねえのが紛れてやがるな・・・・・・・」
「しかも相当に厄介な感じが肌で感じられるわ・・・・・・・・。できれば関わりたくない雰囲気ね」
そう言う二人の眼には王都全体を包むように禍々しいオーラのようなモノが渦巻いて見えている。
「あれ?」
「どうしたの、シャル?」
すると王都に歩きながら近づいている途中にシャルロットが突然歩みを止める。それを訝しんだシルヴィアがシャルロットに訊ねる。シャルロットは先程までの明るい表情とは打って変わり青ざめており体も少し震えている。
「なんだが良く分からないんだけどあの街には近づいちゃいけない気がするの。すごく嫌な感じがする」
どうやらソウマやシルヴィアが感じ取った不吉なモノをシャルロットも感じ取ったようだ。シャルロットは自らの体を抱き締める様に震えている。それをシルヴィアが優しく包み込むように抱きしめる。
「大丈夫?」
「う・・・うん」
シルヴィアの問いかけにシャルロットはそう返すが明らかに強がりで言っていることが分かる。
「私にもシャルの不安は分かります。何か王都に近づくごとに肌がピリピリして心に言い知れぬ不安が大きくなっていきます。なにか良くないモノがあの王都の中には居る。そんな気がしてなりません。それにしてもシャルのこの反応は少し過剰な気がしますが・・・・・・?」
「別に不思議な事ではないわ。シャルはハイエルフとしての感受性の高さに加えて【世界の寵愛者】としての影響で周りの精霊がシャルに警告を発しているのよ。シャル自身は精霊の姿も声も視ることも聴くこともできないけれどシャル自身の本能に近い部分はそれの影響を受けて余計に心が不安を感じているのでしょうね」
「しかしあの王都に一体何が・・・・・・・・」
アイスは険しい顔で王都を見つめている。その顔には冷や汗が張り付き心無しか脚も震えているように見える。
「それは私にもソウマに分からないわ。分かっていることはあの王都の中には何だか得体の知れないモノが居るという事よ」
シルヴィアも震えてこそいないもののシャルロットを抱く腕に少し力が入る。
「・・・・・・・」
シャルロットもそんなシルヴィアの様子を感じ取る。信頼する姉の心にある不安を感じ取ったシャルロットの心の不安は更に大きなものになり自らも一層強くシルヴィアを抱き締める。
「大丈夫だ」
すると不安が渦巻く三人の胸中にまるでストンと落ちる様にその言葉は三人の耳に入った。
「俺が居るから大丈夫だ」
ソウマは一人まるで不安も焦燥もまるで感じさせない、それどころか強い自信と確信に満ちている。強い自信とは守る自信。それは百年前とは違うという覚悟と自信である。三人を何があっても守り抜くという自信を今のソウマは持っている。二度と百年前の過ちを犯さないという決意に満ちた自信である。そして確信はいつも己が感じているものである。あそこに居るモノより己は強いという確信をソウマは何となしに感じ取っていた。それを自らの言葉に乗せて三人に届ける。
「ソウマ・・・・・・・」
「ソウマ」
「師匠」
三人がソウマにゆっくりと顔を向ける。見ればいつのまにかシャルロットとアイスの体の震えと心の不安は霧散していた。ソウマの言葉に込められた力が二人の心に染み渡り心の奥底に沈み抱えていた恐怖と不安をいつのまにか拭い去っていた。ソウマの放った言葉にある力は目には見えなかったが確かに二人の心の奥の不安と恐怖という闇を跡形も無く吹き飛ばしたのだ。そしてそんな二人の様子を見て二人の心の不安が消えたことを理解したシルヴィアは安堵の表情を浮かべている。
「そうだよね!ソウマが居るんだもん。どんな事があっても全然大丈夫だよね」
「そうですね。師匠と出会って私もまだ日が浅いですがこれだけは私も確信が持てます。師匠よりも上の存在を私には想像できません。そんな師匠が大丈夫だと言ったのなら私も大丈夫なのだと確信できます」
二人の表情と雰囲気はつい先程までの不安と恐怖を浮かべていた様子とはまるで異なり、実に晴れ晴れとしたものに変わっていた。その顔には不安も恐怖も微塵も感じない。
「ソウマの御蔭で二人の不安は解消できたようね。やっぱり私じゃあ二人の心の支えになるには役不足だったみたいね」
そうしてシルヴィアが少し残念そうな言葉をこぼす。しかしその顔は言葉とは裏腹にどこか嬉しそうに微笑んでいる。
「そうじゃないんだよ、別にシルヴィア姉様が頼りにならないとかじゃなくて・・・・・・・」
するとそんなシルヴィアの言葉を聞いたシャルロットが慌ててシルヴィアの胸元から顔を上げて否定の言葉を捲し立てようとする。しかしシルヴィアはそんな様子のシャルロットを見て苦笑しながら優しくシャルロットの頭を撫でる。そして優しく言い聞かせるように話しかける。
「違うのよシャル、別に私はシャルが心配するようなことは気にしていないのよ。少し言い方が誤解させてしまったようだけれど私はシャルやアイスが元気になってとても嬉しいのよ」
「本当に?」
「本当よ。それに私もソウマが頼りになる男だって再確認できたからそれを含めて嬉しかったのよ」
それを聞いたシャルロットの顔が再びぱっと笑顔に変わる。
「良かった!シルヴィア姉様もとっても頼りになるのだけど私は出来ればシルヴィア姉様にも危ない目に会って欲しくないの。シルヴィア姉様はとっても強いしどんな怪我をしてもすぐに治ってしまうけどそれでもシルヴィア姉様が傷つく度に私は悲しいの・・・・・・・だから・・・・・」
シャルロットの言葉はシルヴィアがシャルロットを抱き締めたことで強制的に中断される。
「ありがとう、シャル。その気持ちはとっても嬉しいわ。でも私にとってはシャルが傷つくことの方が自分が傷つくことよりも何万倍も痛いし苦しい事なの。だから私は例えシャルがそう言っても私はシャルを絶対に守って見せるわ」
「シルヴィア姉様・・・・・・」
「私も師匠や姉上に比べれば遙かに微力ではあるけれど全力でシャルを護ります」
「そんな事ないよ。私はアイス姉様も頼りにしているよ」
「そうよ。私やソウマがもし万が一シャルの傍に居られない時は貴方がシャルを守ってね」
「この命に代えましても・・・・・・」
そう言われたアイスはその場に跪ずく。最近ではシャルロットに対する態度は普通に接することができるがこうして畏まってしまうと王国時の態度が出てしまうのである。
「お願いね。でもアイス、貴方の命を粗末にしては駄目よ。私は貴方も大事なのだから」
「そうだよ、アイス姉様が傷ついたら私も悲しいよ」
「・・・・・・・はい」
因みにこのやり取りの間中ソウマは・・・・・・・・。
「(俺ってばすっかり蚊帳の外・・・・・・・。というか誰も俺の心配はしてくれないのね・・・・・・)」
と、内心少しいじけていた。
「だってソウマは殺しても死にそうにないもの」
するとシルヴィアがソウマの内心を見透かすように笑いながら言う。
「お前がそれを言うかね・・・・・・・」
ソウマはそれになんとも言えなない表情で返す。
「まあなんにしてもあの街の中になにがあるのかは知らないが用がある以上入らない訳にはいかないからな。何が居ようと正面から食い破るだけだ」
「それにしてやっぱりラルクの言った通りソウマの行く先々では色んな事が起こるわねぇ」
シルヴィアは実に可笑しそうに笑いながらエテルニタ王国でラルクがソウマに言った言葉を思い出していた。
ーーソウマは面倒を起こさない為に皆の正体を隠すと言いましたが私はそんなことをしても無意味だと思いますがねぇ・・・・ーー
ーー無意味ってなんだよ?ーー
ーーどうせソウマが一緒ならそんな余計な気を回さなくても面倒事の方からソウマ達の方にやってくるよーー
ーーなんだそりゃ?ーー
ーーソウマは本人が望む望まざるとも危険や面倒の方からソウマに引き寄せられるからね。多分なにもしなくても結局そういう事態に巻き込まれるハメになるよーー
ーーそれには私も同感ね。多分旅の行く先々で色んな出来事に遭遇する事になるでしょうねーー
ーーお前ら俺を一体なんだと思ってんだーー
ーーだってソウマだしーー
ーーだってソウマだものーー
「そう言えばラルクの野郎確かにそんなこと言ってたな・・・・・・・。釈然としなかったが今となってはあんまり否定できなくなってきたな・・・・・・・」
ソウマもシルヴィアと同じ事を思い出したのか此方はウンザリしたような顔をしている。
「まあラルクの言っていたことはともかくとしても入らない訳にはいかないのだから入りましょ」
「そうだな」
「行こう!」
「分かりました」
四人はそう言ってアイアンガイスの王都に向かって歩みを進める。すると王都に近づくにつれて一通りも段々と増えてゆく。
「さすが王都だけあり先日泊まった村の時以上に道を行き交う商人達が多いですね」
アイスが周りを行く人々を眺めながらその中に商人が多くいることに気付き興味深そうに観察している。
「村で出会った商人の荷物を見ていて思ったけれどやっぱりアイアンガイスの武器の質は中々悪くはないわね。しかも数は少ないけど多少なりとも魔力を帯びた武器もあるわ。中々腕の良い職人が居るようね」
シルヴィアの言う通り商人達の運ぶ荷物の中からは僅かではあるが魔力が立ち昇っているものがある。
「魔力を帯びるのってすごいの?」
シャルロットがいつものように感じた疑問を素直に口にする。
「本来魔力を宿していない物質に魔力を宿らせるのは大変難しいのですよシャル」
アイスがシャルロットの質問に答える。ついでに自らの剣を引く抜く。
「私の《氷結剣アイスコフィン》もそうですが師匠の《聖王竜剣》も元から強い魔力を宿している物質を使用して造られているからこれほど強い魔力を宿しています。しかしその他の魔力を宿していない物質で武器を造った場合は魔力は決して宿りません。幾つかの例外を除いてはですが」
「いくつかの例外?」
「一つはその武器が長い年月を経て精霊等を宿した場合です。私の《氷結剣アイスコフィン》同様に精霊を宿した武具は強い魔力を帯びることが出来ます。二つ目は強い魔力を持つ者が長い間愛用する事により自然と魔力を帯びるようになる。三つめは優れた職人が武具を作成した場合にその武具に魔力が宿る場合です。今回の場合この三つめが該当するようです」
「優れた職人は時に無意識に作成する物質に魔力を浸透させることがあるのよ。それが作成段階で上手い具合で物質に魔力が馴染んだらその物質は魔力を宿すの」
「まあエルダードワーフの連中やラルクはそれを意図的に行えるらしいがな」
ソウマが手を頭の後ろで組んで歩きながらポツリとこぼす。
「彼等エルダードワーフやラルクと現代のドワーフや他の職人を比べたら可哀想と言うものよ、ソウマ。エルダードワーフやラルクは今は失われた古の技術と知識を受け継ぐ上位種族だもの」
「まあそりゃあ確かに言えてるわな。そもそもラルクなんて歳が幾つかすら定かじゃねえからな」
ソウマの言葉にシャルロットが首を傾げる。
「あれ?ラルクの歳って前にステータスで見たけど1100歳位じゃなかったっけ?」
「シャルの言う通り、前にラルクのステータスには1142歳って表示されていたわね。でもねシャル、あのラルクの事だから自分のステータスを多少弄る位簡単にやっていても不思議じゃないわよ」
「それじゃあラルクはステータスの表示とは強さが違うのかな?」
「さすがに能力ステータスは弄れないだろ。ラルクが言うにはその表示部分が一番複雑な仕組みになっているらしいからな。それに俺もシルヴィアもラルクもあんなステータスの表示なんか初めからあんまり当てにはしてないしな」
「それじゃあどうしてラルクは自分の歳だけわざわざ嘘を付いたのかな?」
「別に本当に歳を偽っているかどうかは分かんねーが多分間違いないと思うぜ?」
ソウマの言葉に今度はシルヴィアが首を傾げる。
「その根拠は?」
「あいつは偶に世界の出来事そのもの俯瞰して視ているフシがある。あれは竜王のおっさんや最古の神の連中に感じる雰囲気と同じものだ。あれは相当に長い年月を生きた生命体だけが纏える独特の世界を視る時の雰囲気だ。正直たかだか1000歳程度のラルクが纏える雰囲気じゃねえ」
「それじゃあどうしてそれを隠すのかしら?」
シルヴィアの疑問にソウマは肩を竦めて見せる。
「それはさすがに本人に聞かないと分からないな。でも別に俺は無理に聞こうとも思わないがな。ラルクの事だからなんか訳があるんだろうし話さなきゃいけない時はあいつから話すだろうさ」
そう言ってソウマは何でもない事のように言う。シルヴィアもそれに同意するように小さく笑う。
「そうね、それにラルクがたとえ隠し事をしていたとしても私達の害になることだけはしないって絶対に言えるもの」
「うん、ラルクはちょっと不思議な所が多いけどお父様や国の皆の為にいつも頑張ってるもの」
「ラルク様は確かに独りでいる時は何か企んでいるような気がする人物ですがそれも常に王族や王国の為であることは私も十分承知しています」
シルヴィアもシャルロットもアイスもラルクに対する信頼を言葉にする。しかしそれを聞いたソウマは複雑な顔をしている。
「お前らソレ褒めてんのか?」
思わずそう尋ねてしまう。
「褒めてるわよ」
「褒めてるよ」
「褒めています」
三人は同時にソウマに肯定の意を返す。「はっくしょんっ」とどこかの王国でハイエルフが一人くしゃみをしたのがソウマには聞こえた気がした。
「まあ話が多少それたが要するに今の技術では魔力を帯びた武具を造るのはそれだけ凄いことだと覚えておけば言い訳だよシャル」
結局ソウマそれ以上の追及はあえて避けて取りあえず簡単に結論だけ述べる。
「分かった。つまりあの街の職人さん達は凄いってことだね!」
シャルロットもどうやらそう納得したようだ。
「とりあえずここでこうしていても日が暮れてしまうわよ。何にしても王都に入りましょう」
シルヴィアのその言葉にソウマ達は頷いて王都の入り口のある門を目指して歩くことにした。
※※※※
それからしばらく後にソウマ達は無事に王都の中に入ることができた。前回のアグアラグ王国の時のように門番の者にギルドカードを見せて全員のパーティー登録を確認してもらい入門を許可された。そして前回と同じく門番がソウマの空気弾を額に喰らっていたがとにかく無事にソウマ達はアイアンガイスの王都に入ることができた。
「これからどうする?」
ソウマが今後の方針をと思い皆に訊ねる。
「ソウマはなにか考えがあるの?」
逆にシルヴィアがソウマに何か考えが有るのかと問い返す。それにソウマは肩を竦める。
「な~んも考えてない。そもそも俺は前と同じで勇者の顔すら知らないからな」
「さすがにカエデ殿の時のような偶然を期待するのは無理がるでしょうね」
「そもそもこの国の勇者さんは何をしているのかな?」
「あ?楓と同じで国の騎士団なり何なりに所属してんじゃないのか?」
ソウマの疑問にシルヴィアが答える。
「召喚した国の勇者によって違う所もあるわね。大体がソウマの言うように国の騎士団なりに所属しているけれど中には違う勇者も居るの。召喚された国を拠点にしながら冒険者稼業で腕を磨く者や騎士団等には所属せずに独立した戦力として国を護る勇者等がいるのよ。なかには前に話したように召喚した国を完全に無視して各国を巡りながら旅を続ける勇者も居るけれどね」
「この国の勇者はどうなんだ?」
「この国の勇者は楓と同じでちゃんと国に従っている類いの勇者らしいから多分居るとすれば王城でしょうね」
「王城か・・・・・・・」
ソウマは顎に手を当てて考える仕草をする。
「どうするのソウマ?なんなら私が勇者さんに会えるようにこの国の王様にお願いしてみようか?」
そんなソウマを見てシャルロットがソウマの服の裾を掴みながら上目遣いで提案する。
「う~ん」
ソウマは再び考え込む。確かにシャルロットの言う通りに彼女が己の身分を明かしてこの国の王に掛け合えば恐らくは簡単に勇者に会うこともできるだろう。しかしソウマの心には別の事が引っかかっていた。
「ソウマ?」
悩むソウマを見てシャルロットが少し心配そうな眼差しを向ける。それに気付いたソウマは優しく微笑んだ後にシャルロットの頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ。ただ少し気になることがあってな・・・・・・」
「気になる事とはもしや先ほどの・・・・・・」
アイスが言っているのは王都に入る前に全員が感じた不気味な雰囲気のことだ。
「ああ、アレの出所が気になってな・・・・・・」
ソウマはそう言いながら周囲に視線を巡らす。王都の街並みは職人の街と言われるだけあり作業着を着た者や仕事道具や材料を抱えて急ぎながらどこかに向かおうとする者などで溢れている。工房等が多いせいか街の中は壁の外よりも気温が少し高いのか皆汗を流しながら仕事に精を出している。その様子からは先程ソウマ達が感じたような雰囲気が出ていたとは思えないほど街全体が穏やかで活気づいている。
「確かに王都の外から感じた様子では王都全体を包むようにあの禍々しいオーラが出ている感じだったからどこから出ているかは分からなかったわね。しかも今は身を隠しているのかそれとも別の理由なのかそんな感覚は全く感じないわね」
シルヴィアもソウマと同じく視線を周囲に巡らして王都に入る前に感じた禍々しいオーラの出所を探っていたが分からなかったようでそう言って首を振る。しかしソウマは一カ所に向かって鋭い視線を向けている。
「ソウマは何か思い当たる所が有るの?」
「これは俺の完全な勘なんだけどな。多分のあのオーラの出所は王城だと思うんだよ」
「王城ですか?しかも勘とはまた曖昧な結論ですね師匠」
「ああ完全に根拠も理由もなんにも無い勘だからな。俺にも実はなんでそう思ったかわからないんだなこれがよ。でもなぜか確信が持てるんだよ。あのオーラは城から出てる」
そう言ってソウマはもう一度断言する。言葉通り根拠も理由も無いのだろうが何故かその言葉には他者を納得させるだけの自信と圧力がこもっていた。
「ソウマのこういう時の勘は結構馬鹿にできないわよアイス」
「そうなのですか姉上?」
「ソウマは闘いの最中やそれが近い時なんかはまるで未来予知に近い領域の直観とか虫の知らせを発揮する時があるのよ。多分今回のソウマの勘はそれだと思うから間違いないと思うわ」
「すごいソウマ!そんなこともできたんだね!」
シャルロットが尊敬するようにソウマを見る。
「師匠の非常識さ加減にも大分慣れたし理解したつもりでしたがまだまだ師匠の底の深さは測れませんね」
アイスも頷きながらシャルロットと同じく尊敬の眼差しを向けている。
「お前らあんまり持ち上げてくれるなよな。もし違う場合に俺が凄まじく居た堪れないからよ。それに仮に俺の勘が当たってたと仮定してどうやって王城に入るかだな・・・・・・・・」
「やっぱりシャルの身分を明かして直接王城に入れてもらうしかないんじゃないの?」
シルヴィアが最初にシャルロットが提案した案をもう一度提案する。しかしソウマはそれでも首を傾げたままである。
「う~ん最終的にはその案でもいいと思うがそれじゃあ面白くないよなあ・・・・・・」
「面白くないかどうかなんだ・・・・・・」
シャルロットが思わずこぼれたソウマの本音を聞いて苦笑する。
「シャルの身分を明かして王城に入るのは簡単だ。しかしそれだとこちらの素性もある程度向こうに知られちまう。俺はともかくアイスやシャル・・・・・特にシルヴィアの素性が向こうに漏れると下手に警戒させちまうかもしれない。なるべくなら俺達の正体がバレずに潜入出来るのが理想だ」
「なんで?堂々と妨害すればいいじゃない?」
ソウマの思惑にシルヴィアが疑問を返す。ここにきてシルヴィアもあまり自重するつもりはもうあまりないようだ。しかしソウマは・・・・・・・・。
「だからそれじゃあ面白くないだろって。どうせ今回も魔族絡みだろうからな。前回折角の記念すべき最初の旅行先であるアグアラグ王国での滞在に水を差されたから今回は逆に嫌がらせしてやろうと思ってんだよ」
「嫌がらせ・・・・・・・ですか?」
「どうせ相手の計画か作戦が上手き行きそうになる直前に台無しにしてやろうとかそんなのでしょう?」
「ふっ、良い読みだぜシルヴィア」
シルヴィアの指摘にソウマが意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「意外と根に持ちますね師匠」
アイスは若干呆れたような顔をしている。
「当然だ!初っ端から人の旅の出鼻を見事に挫かれた恨みは半端なことじゃ許せないな。それに厄介事が向こうからやってくるなら上等じゃないかよ。だったら俺はその厄介事をとことん楽しんでやるぜ」
「どんな開き直りかたよ・・・・・・まったく・・・・」
ソウマは力強く拳を握りしめて宣言するように言い切る。シルヴィアはそんな子供のような真っ直ぐな目をしたソウマの様子を見て額に手を当てて首を振っている。
「まあソウマの基本方針は理解したけれどもそれで?どうするのソウマ。肝心の王城に入る良い案を思いつかないとこのままこの国をふらふらするだけになっちゃうわよ?楓の時のような場合を期待するのは虫が良すぎるしそれとしてもシャルの王族としての身分や私の冒険者としての私の名前を使うのは目立ちすぎるわね」
「う~ん、なにかいい方法はないものか・・・・・・・・」
ソウマは再び腕を組んで試案を始める。しかしあまり上手くいかないのかその顔の眉間にはどんどん皺が深くなっていく。
「・・・・・・・・・何も思いつかないようですね」
「まあソウマは元々あんまり考えて行動する方じゃないからね」
悩むソウマの姿をアイスとシルヴィアが他人事のように眺めている。そんな二人にソウマが不満げな瞳を向ける
「お前らも何か考えてくれよな」
思わず抗議の声を向けてしまう。
「そうは言われても・・・・・・・ねえ?」
「現状では師匠の希望を全て達成した条件の解決策は難しいと思います。やはりここはシャルか姉上の名前を使うしかないと思いまずが・・・・・・・」
ソウマの抗議にシルヴィアとアイスは素っ気ない素振りで返す。元から今ソウマが思案している理由はソウマの超個人的な私情が理由である。二人の態度も使用が無いと言えるだろう。
「私も、私も考える!」
するとそれを見たシャルロットが自分もと声を上げる。
「シャルはいいや」
ソウマは即答で返す。
「なんでよーーー!」
シャルロットが猛然と吠えた。しかしソウマは何処吹く風で思案に耽っている。するとソウマが突然思案を中断して顔を上げる。どうやら何事かに聞き耳を立てているようだ。
「ソウマ?」
シルヴィアが訝しみ声を掛ける。どうやらソウマは自分の後ろの二人の男の会話を聞いているようだ。会話中の男たちは二人ともドワーフのようで低い背に不釣り合いな程逞しい筋肉を付けた体を作業着に包んでいる。腰に巻いたホルダーベルトに金槌やその他の道具を二人とも身に付けている所から仕事の合間の休憩中の鍛冶職人のようだ。
「・・・・・・・・・」
ソウマはその二人の会話に熱心に聞き入っている。そして休憩を終えたのか二人のドワーフは去って行った。
「どうしたのソウマ?さっきの二人のドワーフが何か面白い話でもしていたの?」
ソウマが聞き終わった頃合いを見計らってシルヴィアが声を掛ける。するとソウマはニヤリと笑い・・・。
「良い案が浮かんだぜ」
「え?」
「正体を隠したまま城に入る方法が見つかったぜ」
「本当ですか師匠」
突然何か思いついたのかソウマが嬉しそうに笑う。
「ああ、これならバッチリだぜ!」
「どんな方法なのソウマ?」
堪らずシャルロットがソウマに詰め寄る。
「後で説明してやる。とりあえず今からどっか宿を取って一旦落ち着こうぜ」
そう言ってソウマはさっさと歩き始めてしまう。
「?」
「?」
シャルロットとアイスは訳が分からず頭に疑問符を浮かべている。
「うふふふふふふ・・・・・・」
シルヴィアはいつものようにソウマの考えが分かるのか此方も面白そうに笑っている。二人はますます疑問に支配されるがシルヴィアもソウマを追いかけだしたので慌てて自分達もソウマを追いかけた。
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