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世界最強ですが?それが何か?  作者: ブラウニー
23/72

23話 旅の途中2

 寒くなってきた~

「アイアンガイスってどんな国なのソウマ?」


 のんびりと歩きながらの道中シャルロットがソウマにそんなことを聞いてくる。


「ん~?あ~それはだな~」


 聞かれたソウマは空中で視線を彷徨わせながら考える素振りをする・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・アイス」


 そして観念したかのように隣にいるアイスに丸投げする。


「承りました。アイアンガイスというのは鍛冶技術で主に発展した国です。住民の約4割近くがドワーフ族出身の者が多い人種で構成された国で大陸の半数近い量の武具や金属品の生産量を誇る国でもあります」


「へえ~」


「今回の魔族との戦争においても特に各国から重要視されている国で複数の国家からの支援を受けているそうです。それが幸いしたのか意外と魔族からの侵攻は少ない国だそうです」


「まああの国は武具と一緒にそれを求めに来る冒険者や流れの武芸者や戦士が多く滞在する国だから襲うには少しリスクが高いわね」


「はい、帝国程ではありませんがアイアンガイスも強国として名高い国ですから噂によれば過去に何度かあった魔族からの侵攻も全く問題なく退けたそうです」


「ふ~ん、ちなみにその国に居る勇者はどんな奴なんだ?」


 ソウマの言葉にシルヴィアが呆れた顔をする。


「鎧がある国を聞いた時にラルクから聞いたんじゃないの?」


「いや~場所だけ聞けば十分だって言ってそこまで詳しく聞いてない」


 ソウマが頭を搔きながら苦笑いする。


「アイアンガイスにいる勇者は【拳】の勇者と言われています」


「【拳】の勇者ってことはその勇者は徒手空拳で戦うのか?」


「そうよ、元の世界ではなにかそういったえ~と確か東の言葉と同じ言葉で~ブジュツ?ていうのをやっていたらしくてこの大陸の拳や脚での戦い方とは少し変わっていたわね」


「というと?」


「こちらの世界での拳や脚での戦い方の主な戦法は籠手や脚甲に魔法や気を込めて相手に直接打ち込むものでしょ。その勇者もその方法を使っていたのだけれどそれだけじゃなくてなんていうのか体の使い方が上手い?っていうのかしら不思議な足運びをするのよ」


「不思議な足運び?」


 シャルロットがシルヴィアの言葉に不思議そうな顔をする。


「それってどんなのシルヴィア姉様?」


「なんていうのかあれは生物の反応の隙間に滑り込む感じの動きね。例えば瞬きの瞬間とか例えば視線が一瞬逸れた瞬間とか例えば意識の一瞬の隙間とか」


「意識の隙間?」


 シャルロットはまたも不思議そうな顔をする。


「同じ所をずっと見続けていると他のモノに対して視野や意識が向かなくなる時があるでしょ?」


「あるある」


 シャルロットが頷く」


「それと同じで戦いで相手と対峙した瞬間は意識が対峙した相手に全て向かう者が多いの、その時に相手の気を引く動作等をして相手の意識を別の所に誘導した瞬間に間合いを詰めるみたいなやり方だったわね。あの足運びは少しよく分からなかったけれど」


「それは視線誘導の動きと縮地だな」


 シルヴィアの話を聞き終えたソウマが言う。


「知っているのですか師匠マスター?」


「まあ説明よりまず実際にやってみせる方が手っ取り早いな。アイスちょっとそこに立ってみ」


 ソウマは立ち止まりアイスをその場に止め自分はアイスから十メートル程度の距離を取る。


「反応出来たらしてみ」


「?」


 アイスが一瞬訝しむがソウマが言う以上無意味な事はすまいと思いすぐさま気を引き締める。


「よーく視とけよー」


「は、い!」


 ソウマがそういった瞬間ソウマはまさにアイスの目と鼻の先に居た。


「ひゃっ!」


 それに驚いたアイスは思わず普段言わないような言葉を漏らしてしまった。


「今のは師匠マスターが一瞬で私の目の前に表れました。超高速で移動したのですか?」


「いいえ違うわアイス、純粋な身体能力による移動ではないわ。シャル今のソウマの動き貴方にも見えたでしょ?」


「うん、ソウマがアイス姉様の目の前に行くところがハッキリと見えたよ」


「シャルにも見えていた?」


 アイスはさらに困惑する。シャルロットの身体能力やそれに伴う動体視力などは普通の人間と大差ないものだ。そのシャルロットにハッキリ見えていたのに自分にはまるで見えていなかった事実にアイスは驚愕を露わにする。


「どういった魔術を使ったのですか師匠マスター?」


「別に魔術なんか使ってねえよ。これは対象の意識の隙間を縫う技だ」


「先ほども姉上が言っていましたが意識の隙間とは?」


「生き物って奴は視界の中に対象を収めていてもその全てを把握しているわけじゃない。視界で認識できる情報の量に脳の理解や処理が追い付かないからだ。だから脳は視覚の情報の中で優先度の低い情報をわざと認識しないんだ。ようは見えているのに見えない状態になるんだよ」


「見えているのに見えない状態ですか?」


「だから今お前は俺に視覚から得られる情報のほとんどを向けた。つまりお前の脳は俺という存在のみを認識していた状態だった。そこに俺がお前の意識と視覚の認識を逸らす動きないしをする。今お前は俺に意識を割いている時に最初に動いた右手に一瞬意識が逸れただろ?」


「はい、師匠マスターの挙動を全て見逃さないように注意していたので」


「つまりその時点でお前の視覚情報は俺のその動きにほとんど意識を持ってかれていたんだ。そんで俺はその一瞬をついてお前の目の前に現れたってわけだ」


「なるほど」


「そして秘密はもう一つこの特殊な足運びだ。アイスもう一度同じ所に立ってみろ」


 言われてアイスは同じ場所に立つ。


「今度はさっきと少し違うと思うぞ」


「え?あ!」


「どうだ?」


 アイスは先程同じように突然目の前に現れたソウマに驚きこそしたが先ほどよりも驚愕は少なかった。


「先程は師匠マスターが瞬間移動したかのように感じましたが今のは良く分かりませんでしたが師匠マスターがまるで地面を滑るように移動するようでした」


「私にはさっきと同じに見えたけど?」


「私にもー」


 見学中のシルヴィアとシャルロットがお互い首を傾げながら顔を見合わせる。


「傍から見ればそう見えるだろうな、これは目の前で対峙している相手に一番効果がでる歩法だからな。まあ簡単な種明かしをするとこれは動きの予備動作を無くす方法だ」


「予備動作を?」


「ああ、戦いにおいては相手の動きや目線の先などを読んで先手を取るがこれはそれを防ぐ為に動きにそういった最初の動作を省いたものなんだ。人って奴は相手の動きに反応して此方も動く場合が多い、それは反射であり本能だ。だったらこっちが相手に動いたと認識されない動きで動けば相手も反応できないってのがこの技の理屈なわけだ」


「なるほど」


「んでこの歩法を東の言葉で縮地って言ってこれとさっきの視線誘導の技を合わせたのが《抜き足》って言う技だ」


「へえ~凄い技ね。私も覚えようかしら」


「やめとけやめとけ、これはあんまりお前向きじゃない。ていうかあんまりこの世界では小技くらいにしかならないよ。ありゃ本来一回限りの騙し討ちの技みたいなもんだし魔術には思考加速や思考拡大の魔術があるからそれ使えば簡単に見破れるしな」



「そうなんだ」


「結局こういう技のほとんどは多分勇者みたいな【召喚者】や【渡界者】がこっちの世界に残した技術なんだろうがそれらは基本的に普通の人間を想定して作られたものだ。しかも魔術も特殊能力もなんにもないような世界の人間の生み出した技術だからな大抵の技術は通用しねえよ。そりゃ中にはモノ本の本物が居るがそのレベルの技術を身に付けられるのはほんの一握りだ」


「じゃあソウマはその一握りの中に居るの?」


 シャルロットの純粋な質問、それはどこか期待がこもった様な瞳だった。


「まあ・・・・・・そうだな」


 ソウマはそんなシャルロットの瞳から逃れるように顔を逸らして言葉を出す。自慢や強がりではなく単に照れているだけのようだ。するとそれを聞いたシャルロットが嬉しそうにソウマの腕にしがみ付いてくる。


「えっへへへへ~、やっぱりソウマは凄いね」


「まあ今から行く国の勇者君がそこまでの使い手かは会ったことが無い俺には判断付かないがそこんとこどうなんだシルヴィア?」


「ん~そうはいっても私もブジュツにはあんまり詳しくないし~」


「実際手合わせした時の感想でいいんだよ」


「そう言われても当時は突然目の前に表れてびっくりしたから思わず一撃で吹き飛ばしちゃったもの」


「あ~」


 シルヴィアの言葉にソウマが何とも言えないような顔になる。


「その後からは何となく近づいてくる感覚も掴んだからなんでもなかったわ」


「まあ吸血鬼の超感覚からすれば縮地も視線誘導も大した誤差にならないか。この技は基本は一対一で有効な技だから乱戦じゃあまり役に立たないしそういった意味じゃ一騎打ちを好む魔族相手には案外有効かもな。一回限りならだけど」


「私も東の大陸のブジュツというものに少し興味が湧いてきました。以前にも見る機会があった師匠マスターやカエデ殿が使っていた《居合》という技術もそのブジュツというものなのですか?」


「まあそうだな。正確には武術じゃなくて剣術だけどな。まあ人が人を倒すために編み出した技術であるという点で同じではあるがな」


「あの技もいつか教えて頂きたいのですが・・・・・」


「別に隠すようなもんでもないしなんなら今から教えてやってもいいぞ?」


「是非に!お願いします」


「お、おおう」


 アイスのあまりの剣幕と勢いに思わず後ずさるソウマ。それほどにアイスの食い付きが凄まじいものだった。


「あ、それなら私も習いたいかも」


 それを聞いたシルヴィアも自分も習いたいと言い出す。


「だからやめとけってシルヴィア。こういう技はお前には向いてないよ」


「ええ~!なんでよ?」


「さっきも言ったがこういう技術は普通の人間を想定して創られた技術だ。しかもこういう技術は大体が弱者が強者を倒すために想定されたものだ」


「弱者が強者を?」


 ソウマの言葉にシルヴィアが疑問顔になる。


「そう、本来ブジュツとは力や体格に劣る女子供や歳を取った者が自分以上の力と体格を持つ相手に対して勝つ為に生み出されたものだ。つまり先天的な弱者の為の技術なんだよ」


「だからシルヴィア姉様には向かないの?」


「そうだ。シルヴィアは生まれついての強者だ。生来に授かった身体能力や特殊能力は余計な小細工を弄する必要性を持たないものなんだ」


「そうかしら?」


 この言葉に当の本人であるシルヴィアが疑問符を浮かべる。


「お前に合った最も効率の良い戦闘スタイルは言い方は悪いが『ただ本能に任せて力一杯闘う』が一番適しているんだよ」


「なんかそれは乙女として納得しずらいわね」


「しょうがないだろ。本当の事なんだから」


「でもでもそれを言ったらソウマもそうなんじゃないの?だってソウマはシルヴィア姉様よりも強いんだから」


 するとシャルロットが自ら感じた疑問を素直に口にする。


「俺は最初から強かったわけじゃない。前に言っただろ?最初の頃はそこらの魔獣にすら勝てなかったって」


「それが私には信じられません・・・・・・」


 アイスが何とも言えない顔をしている。


「だから俺は強くなる為にそれこそ色んなことをした。学べるものは学び、試せることは試し、使えるものは全て使った。そうして俺は今の俺になった。シルヴィアは生まれてから強くなる為の事を何かしらしてきたか?」


「・・・・・・・特に、無いわね。しいて言うならラルクとの血を使った協力技の練習位かしら?昔から特に何かしたという記憶は無いわ。《影獣(オンブラ・ベスティア)》や影を使った技何かも自然と覚えたし出来るようになっていたわね」


「だろ?本当の強者ってのは生まれた時から強者なんだ。生まれ持った強者に必要なものは自身の力を自覚し、それを存分に振るう傲慢さだ。確かに自分よりも弱い者からも学べることは多い。それを真摯に受け止めてどんな相手でも敬意を払うのは大事な事だがシルヴィアのような存在はなによりも強者である自覚こそが大事なのさ」


「それじゃあシルヴィア姉様にはブジュツっていうのは必要ないってこと?」


「全く必要ないとは言わないが進んで身に付ける必要もないだろうな。相手が使ってくる時の為に知識として知っておくのは悪い事じゃない。知っているのと知らないのでは反応や対処に明確な差が出るからな」


「なるほど・・・・・」


 シルヴィアは納得したように頷いていた。


「まあそういうことでシルヴィアは俺がアイスに技を教えるのを見ているだけでいいと思うぞ。それだけでお前には十分収穫になるだろうぜ」


「了解」


 言われてシルヴィアは大人しく引き下がった。意外とシルヴィアはこういう場合は素直である。というよりもソウマとシャルロットに対してのみ素直であるというべきであるかもしれない。


「そんじゃあまあ、道すがら教えていこうかね」


「はい!」


 ソウマの言葉にアイスは力強く頷いた。


 ※※※※


「これが俺の《絶影》だ。やり方はさっき教えたとおりだ。後はお前自身が何度も素振りをして練習して自分の技にしろ」


「・・・・・・・・」


「?。どうした。何か気になったことがあるのか?」


 技の説明と実際のやり方を教え終えた後、なにやら思案顔をしているアイスにソウマが尋ねる。


「別に何か気になったことはないのですが嫌に技の内容がサッパリしていましたので・・・・・・・」


 アイスの言う通りソウマが道すがらアイスに技を教えると言ってからまだ一時間程度しか経っていない。アイスとしてはこれからじっくり時間を掛けて習うものだと思っていただけに少々拍子抜けしていた。


「まあこの技自体に難しい説明は必要ない。そもそも俺達の使う剣は《絶影》を使うのには適していないからあまりこだわってもしょうがないんだ」


「そうなのですか?」


「この技は本来、あの楓が持っていたような反りがある・・・・・片刃の剣で行うのが正しい使い方だ。しかしそれはこの世界じゃ中々手に入らないし今更慣れない得物を使っても良い事は無い。だから今持っている剣でこの技を使うしかないわけだがさっきも言ったが俺達の剣はこの技を使うには適してない」


 するとソウマは鞘に入った騎士剣を腰ために構える。そして一気に振り切る。辺りに風を切り裂く澄んだ音が響き渡る。


「・・・・・・・・・・」


 その美しい所作にアイスを始めシルヴィアやシャルロットも見惚れている。


「この技の胆は剣を鞘から抜くときの抜刀の鞘走りによる加速こそが最大のポイントだ。そしてそれは俺やお前の使う真っ直ぐな剣では圧倒的に不利になる。だったらどうすればいいか?答えは自分自身の身体能力で無理矢理成功させるしかない」


 そう言ってソウマは再び剣を鞘に納める。


「その為には自分の感覚と体にそのタイミングを覚えさせるしかない。こればかりは俺が教えられるものじゃない。お前がお前自身に最も合った体の使い方で習得するしかないんだ」


「わかりました」


「この技を習得できれば接近戦でかなり有利に立てる場合が多いからな。覚えといて損は無いぞ」


「はい!精進します!」


 言われたアイスは実に生真面目に頷いた。


「ねえねえ」


「どうしたのシャル?」


「話は全然変わっちゃうんだけど今から行く国にはドワーフの人達が一杯居るんでしょ?」


「そうよ」


「私ドワーフってあまり見たことがないんだけどどんな感じなの?」


「そう言えばエテルニタ王国には様々な種族が住んでいるけどドワーフはあまり居ないわね」


「恐らく殆どのドワーフは自らの里を出た後は最終的にアイアンガイスに落ち着く場合が多いからでしょう。エテルニタ王国にもドワーフの鍛冶師が居る事には居ますが普段のシャルが目にする機会は中々訪れないでしょう」


「うん、お城でも城下でもそういう人たちって見たことないから・・・・・・・」


「それじゃあアイアンガイスに着く前に説明しておきましょうか。シャルはドワーフがどんな種族か知っている?」


 問われたシャルは右手の人差し指を顎に当てて考える。


「うーんと・・・・鍛冶仕事が得意な人達だよね?ソウマの剣やアイス姉様の剣もその人達が作ったんでしょ?」


 そう答えたシャルロットの答えにシルヴィアが笑顔で頷く。


「それが基本的に誰もが知るドワーフという種族の最大の特徴で正解よ。もっと正確に言うのならドワーフというのは大地と密接な関係築く種族なの」


「大地と?」


 シャルロットが首を傾げる。


「シャルもハイエルフだから分かると思うけれど貴方達エルフやハイエルフは自然の森や植物やそれに宿る精霊と密接な関係を築いている」


「うん、私も時々森に入ると花や木から話掛けられているような感じがする時があるよ」


 シャルロットの言葉にアイスが同意するように頷く。


「私達エルフもハイエルフの方々程ではありませんがそれでも私達エルフも自然を尊び自然と共生して来たのでなんとなくシャルの言わんとする感覚が理解できます」


「それと同じでドワーフも大地の恵みとそれに宿る精霊と共生しているの。ドワーフ達は普段は山奥の山岳地帯なんかに集落を構える種族で大地の精霊の声を聴くことで良質な鉱物を発掘することができるの」


「我々エルフもどの植物がどの環境のどの辺りに群生しているかを森の精霊に教えてもらい分かるようなものですね」


「そうね。そうして発掘した良質な鉱石を使い優れた武具等を創り出すことができるの」


「そう言えば俺が聞いた話なんだが」


 するとシルヴィアの話を聞いていたソウマが唐突に話を切り出す。


「ドワーフって種族は金属や鉱石の声も聴くことができるらしいんだよ」


「金属や鉱石の声を聴く?」


「お前らエルフやハイエルフが植物の声を聴くようにあいつらドワーフも金属や鉱石の声を聴くことができるらしいんだ。良く理解できなかったがそれが優れた武具を創る秘訣らしいぜ?」


「ということよ。分かった、シャル?」


「うん、ドワーフがどんな人達かは分かった。見た目はどうなの?人族と同じ見た目なの?それともエルフみたいな見た目なの?」


 更なる疑問をシャルロットは言葉にする。


「ドワーフは全員が背が普通の人族と比べても低いわね。大体子供程度の背格好位しかない身長とは不釣り合いな程逞しい体をしているわ。これは鍛冶をするのに最適な体に進化したものらしいの。それと男の人は皆沢山の顎髭を伸ばしているわね」


「んんん??????」


 シルヴィアの説明を聞いたシャルロットだがいまいちドワーフの見た目を想像できないようだ。それを見たソウマが溜息をついてシャルロットに言う。


「シャル、別に難しく考えることはないぜ。ようはドワーフ・・・・・それも男の見た目は全員が背の低い顎鬚をたっぷり蓄えた全身筋骨隆々のおっさんてことだよ」


「・・・・・・うえ~~?」


 ソウマの実に雑な説明を聞いて再び考え始めたシャルロットは想像がついたのか途端に顔を顰めた。


「ソウマ、変な言い方をしてシャルを混乱させないの!シャルも安心しなさい。ドワーフはシャルが今想像したような嫌な顔をするような見た目の種族じゃないから」


「・・・・・・わかった」


 シルヴィアに言われたシャルロットはまたしばらく考えてとりあえずシルヴィアを信じることにしたのか素直に頷いた。


「因みに一応言っておくが・・・・・・・・」


 話が纏まった所でソウマは再び口を開く。


「俺の剣を造ったのはドワーフじゃなくてエルダードワーフだぞ」


「エルダードワーフって何?」


 当然シャルロットがそう質問してくる。


「・・・・・・・・まあドワーフの上位種族?所謂エルフで言う所のハイエルフみたいな位置づけだ。ドワーフ以上に優れた鍛冶技術と知識を持っている種族だ。ドワーフにも扱えない特殊な金属や鉱石も扱えるしドワーフには今はもう失われたような古の技術も継承している奴らだな」


「へえ~」


「そろそろこの辺りの道も人通りが無くなるからキューちゃんに乗って移動しましょうか」


 言うと同時にシルヴィアは自らの影から窮奇を呼び出す。


「そうするか。さすがにいつまで経っても徒歩じゃ時間が掛かり過ぎるからな」


「同感です。このまま歩いていては宿泊施設のある町や村に着く前に日が落ちてしまいます」


「私は野宿も楽しいけどね♪」


「確かに野宿でも構わないが宿泊できるならそれにこしたことはないわ」


「今から窮奇に乗って移動すればアイアンガイス王国の王都の手前にある村に着けるはずです」


「それじゃあ今日はそこに泊まるか」


 全員が窮奇の背中に乗ると窮奇は一度喉を鳴らしてから走り出す。その速度は空を飛行するほどではないが周りの景色が物凄い速度で後ろに流れてゆく。


「速い速~い♪」


 窮奇の速度が増す度にシャルロットが嬉しそうに声を出して窮奇の上でハシャいでいる。


「シャル、窮奇の上でそんなに暴れては危ないですよ」


 そんなシャルロットを見かねてアイスが注意を促す。


「大丈~夫。ね♪キューちゃん」


 アイスの言葉にシャルロットは更に嬉しそうに窮奇に抱き着く。どうやらアイスも言葉だけでそれほど心配をしていなようで窮奇に抱き着くシャルロットを苦笑しながら微笑ましく見ている。事実窮奇の背中は不思議な程揺れていない。飛行する時のように風魔術によって風圧や音は制御されている。そして背中は先程から窮奇の走る動きに合わせるように背中の部分が動いて走る際の動きの揺れをほとんど感じさせなくなっている。窮奇自身元々がシルヴィアの影から生み出された存在故か自身の肉体を自在に変えることが可能なようだ。


「んふふふふ~♪」


 とうとうシャルロットはよほど気分が良いのか鼻歌まで歌いだした。窮奇もそんなシャルロットの為に自分の翼をシャルロットが寄りかかれるように彼女の横に持ってきている。


「キューちゃんは偉いわね~」


 そんなシャルロットの様子愛おしそうに見つめながらシルヴィアが窮奇の頭を優しく撫でる。窮奇もシルヴィアに褒められて嬉しそうに喉を鳴らす。


「か~か~(眠)」


 そんな時ソウマは窮奇の尻の方でイビキをかきながら気持ちよさそうに寝ていた。そして窮奇がソウマの体が体から落ちないように自らの尻尾を巻きつけてソウマの体を支えている。どこまでも献身的な獣である。


 ※※※※


「少し先に村が見えるし人も少し見えるから窮奇から降りて歩きましょう」


 一時間ほど窮奇が走った所でシルヴィアの優れた視力に前方の視界に村とその周辺の人が見え始めた為に窮奇を停止させる。


「有り難うキューちゃん。またお願いするわね」


 シルヴィアが優しく窮奇の頭を撫でた後額に優しくキスをする。すると窮奇はシルヴィアの頬を一舐めすると影の中に消えていった。


「さて歩いて村に向かうとしますかね」


 窮奇の背中で寝ていたソウマが大きなあくびをしながら体を伸ばしてそう口にする。


「日が沈む前に村に着けましたね。宿の部屋を確保できれば良いのですが・・・」


「まあ駄目なら駄目で野宿するさ」


 懸念事項を口にするアイスにソウマが何でもない事のように楽観的な言葉を口にする。


「なんにしても村に入ってから考えましょう」


「そうだな。どっちにしろ一度村に入らないと新しく食料の補充もできないからな」


 そう言いながらソウマ達は村に向かって歩き出す。


 ※※※※


 ソウマ達が歩き出してしばらくしてチラホラと道行く人の姿が見え始める。


「やっぱりこの国周辺は武具を売り歩く商人が多いな」


 ソウマの言う通り道行く人のほとんどは王都から調達した武具等を各地に売り捌く行商人の姿が多い。そうしてすれ違ったりソウマ達と同じ方向に歩く人々の大半がソウマ達の一行・・・・・主に女性陣に熱い視線を送っている。シルヴィアは顔をヴェールで覆っているが相変わらず歩く仕草だけで人々の視線を集めている。そしてシャルロットもアイスも言わずもがなの分かりやすい美貌で人々の視線を集めている。そしてこれも相変わらずそんな女性陣を伴うソウマに嫉妬と羨望の視線が突き刺さる。


「(う~ん、開き直ったとはいえやはりこの手の視線は慣れん)」


 ソウマは相変わらずの視線に内心で呆れと諦めの境地を開いていた。しかし女性陣の方はそもそも視線そのものをまるで気にしていないのか笑いながら談笑している。シルヴィアは自分達(主にシャルロット)に向けられる視線に下卑たような視線以外は特に気にしていないし行動を起こさないなら特に此方も動かない。アイスもこのような視線には慣れているのかいつもの無表情で流している。シャルロットにいたってはそもそも自分に向けられる視線の意味に気付いていない。周りの人間が自分達を見るのは何故なのか内心で首を傾げている程である。


「村が見えたぞ」


 ソウマ達の前方に夕日の沈みかけた中に村の明かりが見える。


「さあ、腹が減ったぜ。宿の前に飯だ、飯!」


「ご飯!ご飯!」


 ソウマの言葉にシャルロットも嬉しそうに飛び上がる。


「ソウマもシャルもご飯のことになると途端に元気になるわね」


「いいではないですか姉上。二人が食事をする風景は見ていて楽しいです」


「それは同感ね」


 シルヴィアとアイスはそんな二人を見ながら呆れながらもどこか自分達も嬉しそうに微笑んでいた。

皆さんも寒さ対策はしっかりと~

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