外の世界[前]
気付くと滝のほとりにいた。
「ここどこ」
『お、起きたか』
頭から直接聞こえるような声が聞こえた。
「誰」
『そこまで警戒せんで良い。
妾は今お主の体に憑いている霊じゃ。
まぁ俗に言う守護霊じゃな』
今凄いこと言ったよね。
守護霊て、あれだよね。
護ってくれるあれ。
なら何で今聞こえてるんだろう?
まさか、ボク死んじゃった。
「ボク死んじゃったんだ」
『む、お主はまだ死んどらんよ。
妾がお主に憑依して、逃げたのだからな』
「どうやって逃げれたの」
『転移魔法じゃ』
「なんで、ボク魔力無いんだよ」
『む、あるぞ。
封印さてただけじゃ』
え、封印。
『ぷっ顔に出ておるぞ』
な、
『まぁ良い。
で、なぜお主に魔力が封印されたかと言うとじゃ。
弱く魔力が高い者が現れると、強くなろうと魔物が喰いに集まるのじゃ。
じゃからの、お腹にいる赤子は自分の母上を守ろうとして自ら封印の手段を取るんじゃよ』
『それで妾は一時的にお主に憑依をして、無理に封印と言う名の鍵をこじ開けることに成功したんじゃ』
それは凄いことだよね。
この人は何者、守護霊って言ってたけど封印のこととか詳しいよね。
「あの~誰でしょうか?」
『うむ、まだ自己紹介がまだじゃったな。
妾の名はリリー・ブラド。
ブラディームーン帝国最後の帝王にして夜の支配者じゃった者じゃ』
え、ブラドって魔者のみで作られた帝国の帝王家で吸血鬼なんじゃあ。
「なぜですか?
そんなお方がなぜ私に」
『そう堅くなるな。
ただたんにお主が純粋で暇しないじゃろうと思っての。
変な反乱軍と名乗る者共が国を滅ぼしてから、ここ二百年暇での、ちょっと暇潰しじゃ』
そうなんだ。
「あの~ところで、今ボク凄く違和感があるんですけどわかりますか?」
なんかね、スースーするんだよね。
『じゃから敬語はやめい。
そっそれはじゃな。』
なんで気まずそうにするの?
『う、うむ。
まぁなんじゃ封印を解放した副産物と言うかじゃな……』
「言って、早く」
起きてから体に違和感がしっぱなしなんだよ。
股はスースーするし、声は高いし、胸部なんて少しふっくらしていたりしてこれじゃあ女の子みたい。
『えーとのぉ
封印を解いたさい。あまりにも力が強すぎて体の構造が変わったんじゃ。
じゃからのぉ、お、おなごになったわけじゃ』
え、おなご。
おなごって女の子のことだよね。
ということは、僕は女の子になったのか。
『む
泣かぬのか?』
「昔から女の子見たいって言われてたからね」
本当に昔から……。
「そう言えば、過去にこんなことになっちゃった人はいるの?」
『まぁその辺んは長話になるじゃろうし
ほれそこの水にでも足を浸けて涼みながら聞いておれ』
言われるがままに水に足を浸けてみるとなんとも言えない心地よく冷えた水を感じる。
そよ風が体を包み込み、
深緑のはが風にあおられカサカサと音が木々の間をこだます
初めての屋敷の外、初めての外の世界。
あまりの気持ちよさに心が安らぐのがわかる。
『どうじゃ気持ちよかろう?』
「うん、本でしか見れなかった世界がやっと見れた」
屋敷で絵本や図鑑でしか見たこともない草原や木々が今ボクの目の前に広がっているんだ。
初めての自然に目を輝かせていると頭の中で笑う声が聞こえた。
『くくく、とんだ箱入り娘だったのだ?
木々を見て目を輝かせてる者などお主が初めてじゃ』
むー、なんか酷いこと言われた。
『わかっとる、じゃから頬を膨らませんでよい』
「そう言えば過去にボクと同じことになった人がいるって言ってたけど誰なの?」
足をバシャバシャしながら疑問に思ったことを聞いてみた。
リリーは死んでいるから肉体はないけど、聞いたとき狼狽えていたのがわかった。