捨てられる前〔前〕
嵐の夜、一つの屋敷で豪華なローブを羽織った男性がドアの前を行ったり来たりと忙しなく歩いてた。
そんな男性をメイドは見かねて
「旦那様少し落ち着いて下さい」
と何度も言っている。
しかし男性はそのたびに、
「はじめての我が子が産まれるというときに落ち着いていられるか」
と言い返すばかり。
そうこうしていると屋敷中に元気な産声が鳴り響く。
さっきまで忙しなかった男性はドアを開け中に飛び込んだ。
ドアの先には汗まみれの女性が居た、そして女性の腕の中には女性の乳を飲む赤子が居た。
「おつかれ」
男性は微笑みながら最愛の女性に近づき言った。
女性の方も微笑みながら「疲れたわ
」と答えた。
「ところであなた。この子の名前考えた?」
女性は最愛の男性にまだ決まっていない我が子の名前を聞いた。
「リリィはどうだ。
リリィは花の名前で遠い西の国に生えている白く優雅で高貴な花なんだ」
「そうですね。良い名前です。
でもこの子は男の子ですよ?」
「リリィの名前にふさわしい子供になるように育てよう」
「それは名案ですね」
そう言いながら二人の顔は近づきキスをした。ーーー八年後ーーー
ボクの名前はリリィ、白く腰まで長い髪が自慢なんだよ。
よく友達に女の子見たいってからかわれるんだ。
今日、ボクはやっと八歳の誕生日を迎えたんだ。
普通魔力は八歳で安定して機械で測れるようになるんだって。
だからとても楽しみなんだ♪
あ~魔力の量て多めが良いな~
なに属性を持ってるんだろう?
いろんなことに思いを膨らませながら
いつもと変わらない朝ごはんを食べていると、お父様が怖い顔で入って来た。
「リリィ、朝食が食べ終わったら私の書斎に来なさい」
そう言うとお父様はボクの返事を待たずに出って行っちゃった。
朝ごはんを食べ終え書斎へ行く途中
一人の男の子がこっちに向かって走って来る。
「お姉様、ついに来ましたね。
僕、お姉様の結果を楽しみにしています」
「うん、ボクも楽しみなんだ。
あとボク 一応男なんだからお姉様じゃあなくてお兄様なんだよ」
こちらに走って来た男の子、ユグドラシルはいつもボクのことをお兄様じゃあなくてお姉様って呼ぶんだ。
ひどくない?
「ははは、お姉様はどうみても女の子見たいだし仕方ありませんよ」
むー
「怒ってほっぺたを膨らませても可愛いだけです」
「可愛い言うな。
ボクは男だよ」
「ハイハイ。
お姉様は男だよ」
「だ~か~ら~、お姉様じゃあ無い」
「ハイハイ、じゃあ頑張ってね。
お 姉 様」
「あっ、 もうどっか行っちゃった」
なんかユグドラシルと話しているといつの間にか書斎の扉の目の前にまで来ちゃった。
いつもは普通に入って来れた部屋が今日は重々しく感じる。
ドアをノックしようとうすると中からお父様が出て来て手招きをしてきた。
お父様の書斎はいつもと違う感じがしてまるで別の場所のような気がする。
いつもは太陽の光が入って来て明るいのに今日はカーテンで閉められ薄暗くてなんだか不気味。
そんな部屋の真ん中に、いつもは大きな机が置かれていたそこに意味のわからない文字で書かれた魔方陣が刻まれていた。
「リリィ、この陳の真ん中に入って」
お父様はいつもどおり優しく微笑みながら指示した。
ボクは言われるがままに魔方陣の真ん中に入って行った。
あ~緊張する~
なんでこう緊張するんだろう。
そういえばみんなはどんな感じなんだろう。