03 待ち合わせ
僕はメールを読み終えた後、雪代さんにメッセージを送った。彼女の連絡先は、ダブルデートの待ち合わせのために使ったグループチャットからゲットできた。
ちなみにスマホには『以前の』やりとりがしっかりと残っている。塔也とリンちゃんのこと、そして雪代さんと久しぶりに再会すること。つまり、塔也や雪代さんもこのやりとりを、今だって見ようと思えば見れるはずなんだ。
――いや、もう見ているかもしれない。
それでもなお、何故こんなことになっているのか。塔也と雪代さんが付き合っていて、リンちゃんはそれを受け入れられずに泣いている。
雪代さんの認識はどうなっているのか。果たして彼女の中で塔也は、ただの友人か、それとも恋人なのか。そしてリンちゃんとは、まだ友達なのか。
雪代さんとは、僕らが通っていた中学校の近くの公園で会うことになった。『塔也のことについて話がある。会って話がしたい』と伝えてある。
そもそも、彼女が僕の呼び出しに応えてくれるのか不安はあった。しかし、どうやら『塔也のこと』というのが関心を引いたらしい。あっさりと承諾された。
僕は制服姿のまま自転車に跨がり、約束の公園に着くと、隅にあったベンチに座って彼女を待った。公園は閑散としていた。人っ子一人いない。最近では遊具の大部分も危険だとかで撤去されていて、随分と殺風景だ。物寂しい空気がある。
ややあって、公園の入口に制服姿の雪代さんが見えた。立ち上がって手を振る。制服姿の彼女は小走りに近づいてきた。
「呼び出してごめん。塾とか大丈夫だった?」
「ええ、塾は六時からだから」
ダブルデートの時とは様子が違う。僕に対しても微笑みかけてくれる。
「そっか、忙しいのにごめん。あのさ……時間もそんなにないだろうし、早速本題なんだけど」
「うん、いいよ」
「塔也のことで。あいつとは最近会った?」
「昨日、塾の前に少し。一昨日は塾終わりに会ったよ。どうかした?」
「雪代さんって、塔也と付き合い始めてどの位になるんだっけ?」
「どうしたの、今さら?」
怪訝そうな顔で僕を見る。
「中学のときからだよ。成馬くんも知ってるでしょ?」
「ああ……」
相槌を打ったものの、それは僕の知る事実ではない。それに、僕のことを『成馬くん』と呼ぶのにも違和感を覚える。この期に及んで、遊園地で倒れてからこっち、ずっと夢を見てるんじゃないかという疑念が首をもたげてくる。
――けれども、僕の体に残る青の体温が迷いを払拭してくれる。夢ではない。
僕は言葉を継ぐ。
「それから、こないだ『三人』で行った遊園地でのことなんだけどさ」
「それがどうしたの」
三人という人数に、雪代さんは疑問を抱かない。
「あの時さ、ほら僕、倒れたじゃん? お礼がまだだったっていうのも用件の一つでさ」
「お礼? ああ……」
「人工呼吸で助けてくれたんだよね、『ヒメちゃん』が」
「そうだけど……お礼を言われるようなことじゃないから。私もあの時は気が動転してて……逆に悪かったかなって」
少し気まずそうに彼女は言う。
人工呼吸をしたという彼女の薄い唇に、僕は一瞬だけ目を奪われた。
「じゃあさ、『遠藤さん』とは塾で話したりする?」
「遠藤さんって……鈴のこと? どうしたの成馬くん、さっきから妙なことばっかり……鈴と知り合いだったっけ? ああでも、同じ学校だもんね」
「……そうだよ。あのさ」
「うん?」
「ヒメちゃんは塔也と付き合っている。そして遊園地には僕と三人で行った。遠藤さんとは友達だけど、遊園地では一緒じゃなかった。……それで間違いないんだね」
「……何が言いたいの。ねえ、さっきから成馬くんの言ってること何にも分からないよ? 大体、塔也くんのことって聞いたから私は――」
「嘘だ。君は分かるはずだ」
「――何、それ」
「ヒメちゃん。いや、雪代さん」
猿江さんの言葉が、僕の背を押す。
「君は記憶を操るシンカク――ネクロアだね?」




