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ナルカミ様が呼んだから ――僕、異世界で女神見習い始めました――  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第3章 流星にかけた願い

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07 シングルダイニング

 随分と時間が経っていたらしい。

 僕が色々と考えていると、キッチンから青がひょこっと顔を出した。

「ナル、できた。持っていって」

「お、早いなサンキュー」

 さてさて、部屋に上がるのが初めてというなら、女の子の手料理だって当然の如く初めてだ。部屋の雰囲気を見ていると、青は家事スキルも意外と高そうだし、結構期待大である。キッチンにはガスコンロのようなものもあって、考え事をしている間にも何かを焼く音と、香ばしい匂いが漂ってきていた。

 うきうきである。


 ――さて、結果から言えば一品一品、とても美味しかった。

 スープ、サラダ、メインディッシュに主食のパン。更にはデザートまであって、まさにフルコースで僕を歓待してくれたのだ。ありがたい。文句なんてつけようがない。

 ないんだけども。言いたくはないんだけれども、だ。


 まず温かいスープの具は一種類のみ――例のパンの耳だ。

 サラダは葉っぱ一枚プラスアルファ――例のパンの耳だ。

 メインディッシュはバターで炒めた――例のパンの耳だ。

 主食のパン。こいつはストレートに――例のパンの耳だ。

 デザートはシロップたっぷりかけた――例のパンの耳だ。


 パンの耳パンの耳パンの耳! 何回言えばいいんだよパンの耳!

 十回ゲームじゃないんだからさ……。

 タダ飯にあやかってる身でさすがに文句は言いませんけれどもですよ。炭水化物じゃん、ほとんど。栄養バランスが振り切っている。レーダーチャートを作ったら栄養士さんもびっくりだよ。ステータスが尖り過ぎてる。

 何気なく訊ねてみたところ、いつもこんな感じのメニューらしい。節約の方法を間違っているとしか言い様がない。味のバリエーションをつけようとしているのは素晴らしいんだけども。

 それでも感謝の心と、それを表すのは大切だ。

「ごちそうさまでした」

「おそまつ」

 だから言葉のチョイス。いちいち捻りをきかせてくるよなぁ……。

 いやまあ、ごちそうさまでしたと言うしかない。だって食べている最中に、

「ナルのためにご飯作るの楽しかった。いつも一人だから」

 なんて笑顔で言われたからには、無粋な突っ込みも引っ込もうというものだ。

 ヨーヨーと普段会うことはないという。町中では物騒だという理由もあるが、彼のほうが避けている節があるそうだ。使い魔と主人の境界線をはっきりと引いておきたいというスタンスなのだろうか。

 青は僕との間にそんな壁を作ろうという気配はなく、だからこそ僕もおおっぴらに甘えられるのだが。

「なんかさ、青とは最近会ったって気がしないんだよな」

「どういうこと?」

「いや、十年来の友達みたいな、そんな感じ」

「友達。うん、友達」

 青は真顔のまま、細かく首を縦に振る。しかしその仕草はどこか満足そうだった。


 二人して仲良く洗い物を終えたところで、

「ナル、シャワーを先にどうぞ」

「ん? うん……いいのか?」

「お客様」

 礼儀礼節のきちんとした青だった。

 ただ、僕の問にはシャワーの先後という以前に、そもそもこの家のシャワーを使っていいのか――という意味も含まれていた。何度も何度も同じような葛藤でいい加減うんざりだが、やはり僕は自分が男だという自覚がある。

 そうした自意識がある以上、つまりは彼女を女の子だとして意識してしまうのは仕方ない。友達のようだと言ったけれど、けれども女友達だ。男友達に対してするのと同じように振る舞うことは、僕には出来ない。

 もちろん青は、女の子としても十分魅力的だ。

 というか、一緒に過ごすうちに彼女を意識する気持ちが強くなっているのは間違いなくて――そんな彼女のシャワーを借りるというのは、どこか後ろめたい気持ちがあるのと同時に、一方ではちょっと高揚してしまう、低俗な自分がいる。

 しかし青はそんなことは意識してないのかもしれない。

「洗いっこする?」

「するか」

 なんて、さすがに冗談だと分かる青のフリを冷静に交わしつつ(心中は穏やかじゃなかったけども)、僕はバスルームに入り、服を脱ぐ。

 意識してしまうといえばこれも意識せざるを得ない。高校生男子にとって、自分の体が女の子だというのは憧れのシチュエーションの一つではあったが、自分自身だと思うと複雑な感情も湧いてくる。

 だって、自分の体に欲情するって――なかなかの危険人物なのだから。

 とはいえ、一応は確認タッチしてみる。

 ふにふに。

 ……ふむ。

 もいっちょ、ダブルふにふに。ふにふに。

 そこにノックもなく、

「ナル、タオルこれ……」

「あ――――」

 青は、無言のままドアを閉めた。

「違う! マ、マンモグラフィーです! いや触診です!」

 僕の叫びは届いただろうか。まあ、もう諦めてるからいいんだけどもさ。

 青に対して、今更僕のパーソナリティを隠し立てする気はあまりない。

 釈明することは諦めて、僕は魔法の力で沸かされているらしい温水で、身体を濡らす。


 そういえば、僕はこれまで、どれくらい自分のことを他人に――友達に対して開示してきただろうか。嘘や隠し事がないなんてとても言えない。

 でもそれはきっと当たり前のことで、僕だって例えば塔也のすべてを知っているわけではないし、塔也だってそうだろう。

 僕は塔也に何らかの異変があったと決めてかかっているが、もしかしたらそんなことはないのかもしれないのだ。あれが本当の塔也なのかもしれない。

 もしもそうだとして、僕はその現実を受け入れられるのだろうか。友人の見えなかった部分まで受け止めることが出来るのだろうか。

 ――そうするのが友人なんだろうか。

 考えたところで答えなんて出るはずもなく。

 僕は結局、出たとこ勝負でしか勝負の出来ない、無計画な人間なのだ。


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