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プロローグ
僕は他人とは違う。違うと思っている。
別にそれは、他人よりも優っているとか、特殊だとかいう意味ではなく。
言葉のとおりに、僕は僕だ――という意味だ。
では僕は、何をもって他人との間に境界線を引いているのだろう。
僕を証明するもの。
たとえば生徒手帳。
もしくは保険証。
家族なら証明してくれるだろうか。
友人も証言してくれるかもしれない。
恋人……は、いない。
先生。
先輩、後輩。
または顔だろうか。
声とか。
話し方も。
文字の形も。
指紋。
一重まぶた。
くせっ毛。
首のほくろ。
そしてもちろん――