第24話 折れた刀
前回のあらすじ
飛んできた弾の方向を見ていると、急に紗夜が走ってきて愛を斬ろうとしてきた。洩夜は自分の刀で愛を守り、紗夜と洩夜の刀による攻防戦が始まった。
洩夜「はあ・・・はあ・・・。」
紗夜「はあはあ。」
互角に戦い結果は、2人の声が荒くなっただけであった。しかし、刀の斬り合いはそれと真逆で、激しさを増すばかりであった。どんどん刀の刃のぶつかる音が、大きくなっていった。
愛「ここまで来たら、もうどちらかの刀が折れるまで、終わりませんね。」
翔子「えぇ。」
美歌「私達も手伝った方が・・・。」
翔子「いや。邪魔しない方が良いかも。ヘタしたら、洩夜が死ぬかもしれないから。」
簡単に言うと、何もしないのが1番。という事だ。しかし、現在洩夜が押されている状況であった。
洩夜(このままだと・・・負け・・・ん?これは!)
紗夜の刀を押し切り、最初の距離に戻った。
洩夜(このまま上手くいけば、勝てるかもしれない!!)
紗夜(何?あの顔。何か確信した様な顔をして・・・。まさか!)
自分の刀の刃の部分を見ると、ヒビが入っていた。しかも、かなり大きなヒビであった。
紗夜(こっこのままだと。)
洩夜(あいつの刀は。)
紗・洩(折れる!!)
隙を狙って紗夜を斬ろうとした。
紗夜「ぐっ!」
避けようとしたが、間に合わないと思い刀でガードした。その時だった。まるで何も無い所を斬ったかの様な感覚になった。そして、妙に手が軽くなった。そう、刀が遂に折れてしまったのだ。
紗夜「マズイ!」
離れ様としたが、足を滑らせ転んでしまった。右の腰に掛けてあった、ハンドガンを掴んだが、ホルスターから出そうとした時刀を首元に当てられた。2人は息を大きく吸って吐くの繰り返しで、何とか呼吸が落ち着いた。呼吸が完全に落ち着くと、洩夜が口を開いた。
洩夜「さあお前の負けだ。死んでもらおう。」
紗夜はこんな時に、左腕に付けてある腕輪を見た。
紗夜「残り30を超えたわ。もうすぐでゲームが終わるのに、私は死ぬのね。さあ殺したら?」
殺したら?と言われても、斬ろうとしたら銃を撃ってくる。刀で手は出せず、刀を振った時の勢いで弾を避ける事が出来ない。簡単に言うと、紗夜を殺そうとすると、逆に殺されるという事だ。
洩夜(かといって、刀を離すとどんな方法で攻撃してくるかわからない。銃なら避けれるかもしれんが、手榴弾となったら死は、十中八九避けられない。どうすれば・・・。)
悩んでいる時だった。パンッ!と音がして、紗夜のこめかみに何かが当たり、そのまま貫通していった。ビクッとして、弾の音と飛んできた方向を振り向いた。そこには、銃を震わせながら構えている愛が居た。愛は目からは涙を流して、手の力を抜き銃を落とした。すると突然、両手で頭を抱え込んだ。
洩・翔・美「愛!」
愛「2人も殺した・・・。私も人殺し・・・。犯罪者・・・。」
2人も殺した事によって、これまでに無い恐怖が愛に襲ってきた。この島に来て、人が死んでいくのを何度も見た愛だったが、その恐怖は洩夜や翔子が居た御陰で、そこまで恐怖というものは感じなかった。しかし殺したとなれば、どうしても恐怖を感じてしまう。やはり恐怖と一言で言っても、別の種類の恐怖なのであろう。人を殺した者にしか味合わない恐怖。この恐怖が愛を襲った。
愛「怖い・・・2人が私の周りに・・・。」
美歌「2人?」
洩夜「多分銃撃戦の時に殺した奴と、今の奴の残像が見えているんだろう。」
翔子が愛の背中を撫でながら
翔子「でも仕方のない事よ。この子は無実の罪でここに連れて来られたんだから、人を殺した事も無い。私も始めて人を殺した時は、吐き気や目眩に襲われたわ。」
皆は座ってまたこの場所で、休憩をする事になった。そしてその日の夜、翔子と美歌はぐっすり眠ったが、愛は眠れず起きていた。
洩夜「寝なくていいのか?」
愛の側に近寄って言った。愛は洩夜に凭れ掛かり、顔を肩に当てて
愛「私は人を殺してしまいました。その所為か寝れないんです。銃撃戦が終わった時は、疲れが溜まっていて、何も考えず寝る事が出来ましたが、今日一気にその日の恐怖と、今日の恐怖が襲ってきて、とても・・・。」
洩夜「じゃあ起きてろ。」
愛と顔を合わせず、優しい声でそう言った。
洩夜「無理に寝ようとしなくても、自然にいつか眠くなる時がある。その時寝れば良い。無理に寝ようとしたら、余計に眠れなくなるからな。」
この日は起きたまま過ごそうと思った。静かな時が過ぎていた。2人は何も喋らずに夜を過ごした。
〜翌朝(16日23:49:58)〜
いつの間にか愛は寝ていた。洩夜が言った通り眠くなって、自然に寝ていたのだ。洩夜も隣で寝ていた。ここまでほぼ一睡もしなかった洩夜は、かなり深い眠りについていた。
翔子「ううん!ふぅよく眠れた。ほら起きなさいよ。」
パチンと美歌の頬をビンタした。
美歌「痛!!もっとマシな起こし方は無かったの?」
翔子「ごめんごめん。さて今度はリア充を起こしましょうか。」
美歌「そうね。」
せーのと声を合わせて、同時に2人を叩いた。2人は倒れて頬を抑えながら、周りをキョロキョロ見ていた。
愛「え?え?何ですか!?」
洩夜「敵でも居たか!?」
翔子「違うわよ。2人共。」
美歌「私達あの時寝た振りをして、聞いてたのよ話を。ラブラブな雰囲気を出していたから、殺そうかなと思ったけどね。」
そんな雰囲気だった事に両方気付かなかった。そんなほのぼのとした空間を、打ち消すように腕輪が締め付けてきた。
現在状況
[愛・生存][洩夜・生存][翔子・生存][巽・生存][紗夜・死亡][美歌・生存]




