店主と苺飴
「服買うぞ」
「は?」
「お前のその服装。何処のものかは知らないが正直悪目立ちする」
ああ、そういえば私セーラー服だったっけ。
ただでさえ物珍しいであろう服に藍色のベールは目立つだろうね。納得納得。
ジンがいきなり言い出した言葉に少し考え、頷こうとして考えた。
あれ?そういえば私お金持ってきてないよね?
─セツ様、女神様からの餞別があります
カナリア?
─さすがにセツ様を一文無しで放り込むのは酷だろうということで、通貨です。一枚セツ様の出身地で言う百万円?だそうです。
頭にカナリアの声が響くことに一瞬疑問を持って、すぐに四散した。
そういえばジンには女神関連のことを教えてなかったよね・・・話すべきだろうか。
・・・というか百万円?女神様が太っ腹すぎて逆にびっくりなんだけど。
ポケットが一気に重くなる。
取り出すと、そこには白銀色に菫が描かれた硬貨があった。少し探ると残り四枚ほどあるようだ。
まさかの五百万円。なんか怖いけどありがたいっちゃありがたいなー。
ここの世界の硬貨って綺麗な上に結構凝ってるね。札とかでいいんだけど。
「上級白銀貨か。まぁ大抵のものは揃えられる」
「あ、私投げナイフがほしいんだけど」
「・・・服とナイフ程度じゃ釣りはある」
呆れたような視線を向けられた後、ぐいっと腕を引かれる。
町中に入ってから強くなった視線が動揺するように動くけど、私はあんまり気にならなかった。
ジンに引かれるがまま、流れを任せる。
視界に入ったジンの顔が少し顰められた気がしたけど、しっかりと彼の袖を掴むとそれはなくなった。
「折角良い物を貰ったんだ。そこそこの店にはいくからな」
「別に古着屋とかでいいんだけど」
「あ?」
「ナンデモアリマセン」
「ん。・・・お前に古着が似合うわけ無いだろう」
それ褒め言葉なんだろうか・・・古着が似合わない、って。
まぁ自分の素材がいいことは自覚してるし、古着が似合うって言われても困るからいいんだけどさ。
『セツ様に他の人間が既に着た服など絶対ダメです・・・!』
「わかったから」
こっちもこっちで結構排他的だよね。
精霊ってそんなもんなんだろう。あとでジンに聞けば詳しいことがわかるかな。
目をギラギラと危なく輝かせたカナリアと、少し眠そうなジンを見て私は少し苦笑いを浮かべた。
「色は」
「はい?」
「藍、白、黒、灰、銀・・・どれがいい」
「いやなんでその選択肢なの?明るい色は好きじゃないからいいんだけど」
「おい精霊」
ちっ、と舌打ちをされた。
いや答えなかった私も悪いんだけどさ、なんか妙に張り切ってないかな?
『精霊って・・・まぁいいですけどね。私は水色とか金色がいいです!』
「それてめぇの色だろ・・・まぁいい。白と黒」
『断然黒ですね!勿論セツ様には白も似合いますけど、せっかくの見事な黒髪ですよ!』
「分かった」
そのままずるずると引きずられて行く。
いや全く痛みはないんだけどさ、気分的に微妙だよね。
というか私的にカナリアとジンが仲良しなことが結構意外なんだけど。
**
「いらっしゃ・・・ジンが女の子連れてきた!?」
「うるせぇ。賭け相手だ」
「賭け相手・・・まさにって感じだね」
なぜか遠巻きにされていた、妙に空いた道を進んできた私達。
しばらく歩くと路地裏の中にその店は在った。
妙に小奇麗なその店から出てきた人はこれまた美形のあんちゃんだった。
「どうも。セツと申します」
「セツちゃんね。俺はキリヤ」
キリヤ、キリヤ。
心で名前を往復して、もう一度彼を観察してみる。
赤い髪に茶色の瞳。温和そうな爽やかなイケメンだ、ジンと類友。
「服買いに来た。頭にかぶってんのと似合うやつ」
「ジンが女の子を連れてくるのも珍しいけど、世話するなんて・・・」
「・・・・・・・・・」
「あっはい」
無言の睨みに圧されたように急いで店にかけていくキリヤさん。
私はなぜか在った椅子に座らせられて、ぼんやりと店内を見渡している。
見た感じ結構上等だと思う。ただ気になるのは、なぜか服が光ってるって言うこと。
勿論全部ではない。
目に見える範囲で、いくつかの服が光っている。いや、青い光を帯びている・・・と言ったほうが正しいかな?
「ジン、服が光ってる」
そう言うと一瞬目を見張ったように開き、そして笑う。
「お前、魔力が見えるのか」
「・・・魔力」
「青い光だろ?潜在的に魔法のセンスがある奴の中で、膨大な力を持つ奴には見えるらしい」
「魔法・・・だよね。つまりあの服には魔法がかかってるってこと?」
「ご名答」
それだけ言うとまた服に視線を映し、吟味している・・・と思う。
正直読みづらい。ジンってポーカーフェイスだ、心理戦もできるんだろうなー。
「ただいま!ほら、色々持ってきたよ!」
「・・・暖色はいらねぇ」
「えっ」
「戻してこい」
底冷えする視線に、戻ってきたかと思えばすぐに去っていくキリヤさん。
その背中は哀愁を漂わせていて、哀れみの目線で見てしまった。
けれどジンはそんな彼をスルーして、ぱっぱと服に目を通し始めた。
ちなみにその服たちは全部が光ってる。見る目はあるのか、キリヤさん。
「言っとくけどあいつに魔法のセンスはない」
「・・・へぇ」
「面白いだろ?」
目利きがよっぽど優秀ってことか。
骨董品屋でもやればいいのにねー。ま、でも私にとってはありがたいことこの上ない。
『あ、これいいですねー!セツ様にすごく似合います!』
「精霊、それ候補にいれとけ」
『わかりましたよー』
「お前、藍と水色どっちがいい」
「え、水色」
まぁ私達はこんなふうにがやがやしながら適当な服を数十枚買う。
黒や水色が多かった。しかも全部魔力を帯びてる奴。
「はい、可愛い女の子にはおまけ」
「・・・飴?」
「そうだよ。甘いモノは嫌いかな?」
「・・・すきだよ」
帰りにキリヤさんから飴をもらえた。
ニコニコ微笑んでいるキリヤさんに笑い返して、私達は店を去った。
『セツちゃん、はいこれ!』
『?』
『苺の飴だよ!甘いもの好きだよね?』
『雨・・・?』
『えっ!確かに飴が降って来たら素敵だけど痛そうだよ?』
口に入れられたそれはとても美味しくて、思わず笑みが溢れる。
馬鹿な私。あの子はもう居ないのに。
苺味おいしいですよね。
文面がおかしい部分もありますが、これからも精進していきますのでどうぞよろしくお願いします。