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矛の精霊と愛しき銃

「そういえばここってどこなの?」


開けた場所から離れ、鬱蒼とした森の中を抜けていく。

ふとした疑問が浮かんだ時、それはいつの間にかこぼれていた。

見上げると怪訝そうな顔。


「知らねぇのか」

「ココに来たのは初めてで、いつのまにかいたからね」

「此処はエイル森。気ィ抜いたら迷うぞ」


少し面倒くさそうにボヤくジン。

そういえば彼はどうして此処に居たのか、合理的そうな彼がわざわざ此処にくる理由がわからない。

もしかしてよくある小説みたいにギルドがあって、依頼を受けてきたとか?


「ジン、この街ってギルドあるの?」

「ある。俺も一応冒険者だ・・・今日は依頼受けてねぇがな」

「簡単に身分証明書作れそーだね。入るのに条件とかある?」

「十三歳以上ってのと、少しは戦えるかどうかってのだけだ。死んだら損すんのはギルドだしな」


ふむ、ジンは依頼を受けてないと。

まぁなら特別な理由があるのかな?詮索は好きじゃないからしないけど。

それにしてもギルド、ね。

戦闘能力って言われても私は射撃くらいしかないんだけども。多少の体術の心得はあるんだけど。


正直正義くん、ってやつの人気をなめてはいけない。

そばにいる人もそれ相応の能力を持ってなくちゃいけないし、妬みに耐えるための力と精神だっている。

私も小母さんや小父さんが機転を利かしてくれなかったら死んでたかもだし。


「ジンは銃って知ってる?」

「は?」

「んーと、なんかこんな形で、玉を打つやつ」


身振り手振りで簡単な銃の形を作り、試しにジェスチャーで撃ってみる。

納得したように頷いた後、ジンは言った。


「あの使えない武器のことか」

「へ?」

「攻撃方法がわからないから使えない上、構造も摩訶不思議だから世界でも十数個くらいしかない。射程も短いから鈍器に使うくらいだ」

「えー・・・」


なんってもったいない。

でもこの世界にも銃があるのかー・・・使ってみたいな。

AK─47とかは耐久度に信頼性があるし、弾だって多少の汚れや崩れが起きても使えるし。

あーでもリボルバーも持ちやすいしいろんな弾使えて頑丈だしね。装弾数が少ないことが欠点。


─・・・ナ様!セツナ様!


「ふぁいっ!?」

「・・・どうした」

「い、いやなんか声が・・・」


─こんにちは、セツナ様!私は貴女の矛となるために生まれた存在です!


い、いや私がなんか変な人っぽくなるからジンにも聞こえるように話して欲しいんだけど。

ほら滅茶苦茶不可解そうにこっち見てるし、こっち見てるし!


『これでいいですか?』

「!?」

「あ、ありがとう・・・君は誰?」

『私はセツナ様を守るために生まれたんです!そんな存在です!」


うん、それさっきも聞いた。


「・・・精霊の一種か」

「精霊?この世で唯一の主を守るために生まれ、裏切ることはありえないという小さな魔法使いのこ、と・・・?」

「・・・?ああそうだ」


いやいやいや。

なんで私はこの世界の精霊について知ってるんだ。

あっちの世界の精霊なんてお伽噺の中の世界で、一つ一つ設定が違ってて。

・・・女神様、コレも私の魂の影響何ですか?


『そうなんです!私は精霊なんです!』

「へー、っていうか君どこにいるの?見えないんだけど」

「精霊は基本目に見えない。それこそよっぽどの上級精霊じゃないと、な。だがこいつはそれに近しい力を持っているだろう。魔力を込めれば見える」

「・・・集中しろってことでおっけー?」

「ああ」


魔力とか言われても困るというかなんというか。

でもでも要は集中しろってわけで、今までの人生で集中することには慣れてるんだよね。

というか魔力=集中って私が知っていることも魂のなんちゃらかんちゃらなんでしょうかね?


目に力を込めてあたりを見渡すと、視界にぼんやりと青が掛かる。

透明な青いベールをかぶった視界の中、私は小さな影を見つけた。


「・・・君が精霊さん?」

『え・・・?』

「あれ、違った?」


小さな影は綺麗な水色の髪に黄色の目の女の子・・・いや男の子?

性別不詳なその子は声をかけるとびっくりしたように目を大きく見開いた。


『い、いえ!私がセツナ様の精霊なのです!ただ、見つけてもらえたのにびっくりしただけなのです』

「嬉しいの?」

『はい!主に見つけてもらえるのは精霊としての誇りなんです!』

「そうなの?ジン」

「どっかの文献でんなこと書いてたな」

「そっか・・・はじめまして、精霊さん。私はセツだよ。泉刹那じゃなくてセツだ」


そう言うときょとんとした後一瞬で笑顔になった。

くるくる私の頭上で飛び回って、ぱちりと手をたたく。

セツ、セツ様。セツナ様じゃなくてセツ様、となんども繰り返す声が喜色にあふれている。


『私は精霊。セツ様のために生まれ、セツ様の矛となり分身となる存在。私は貴女様の武器なのです』

「武器、ってことは何にでもなれるの?」

『いえ。我が創造神が貴女様にピッタリの武器を作る時、私は生まれた。貴女が一番望む武器が私の真の姿』

「もしかして、銃?」


はい!と元気に笑う精霊さん。

瞬く間に光に覆われて、ポトリと落ちるはアサルトライフル。

フルオートとセミオートに分けることのできるアサルトライフルの89式。

命中精度が高いコレは精密射撃にとても向いてる。


『私はそのらいふる、と後3つ。ましんがんにしょっとがん、はんどがんという4つの武器に変われます』

「コレ、弾は?」

『貴女が望めば魔力がたまとなるでしょう』


こうして私はこの世界での武器を手に入れた。

これから知らされる凶報に慄くことを知らずに。

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