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光を散りばめた人

小鳥たちの鳴き声、風で緑が揺れる音。

どう考えても先程の場所とは程遠いここ。私は大分困惑した。


え、え?

女神様は?白い空間は?聖具は?世界は?

それよりも彼女が言ってた運命って?


ぐるぐると回る思考は答えをはじき出せない。

心のなかでそんな風に考えながらも、冷静な部分は確かに気づいていた。

ここが異世界であり、彼女の言っていたミドレイア、なのだと。


ガサ、

近くで草の揺れる音がする、誰かいるのだろうか。

それとも獣だろうか、まさかファンタジーではお約束のモンスターとか?

盗賊も考えられるし、いい人っていう可能性はかなり低い。

突如現れたナニカ、に対する警戒心が芽生える。

私はそのナニカが現れるのを構えて待つ。


それは一瞬の出来事だった。

目にも止まらない早さで剣を突きつけられる。

光にあたって美しく輝いているはずの刃が禍々しく思え、ぞっとする。

視線を上げた先には、逆光で顔は見えないが、刃と同じ美しい銀色を持つ人間が居た。


「・・・女?」


怪訝そうに潜められた声は正直美声だと思う。剣さえ突きつけられてなければ聞き惚れてたと思うのだが、それは到底無理な話だ。

目の前の人物が私を殺すのはとてもたやすい。

静まり返った森の木漏れ日が指す中、穏やかとはとてもいい様のない雰囲気が私達に流れてる。


「コレ、離してくれない?」

「・・・・・・・・・」

「私は貴方を殺す気ない、よ・・・?」


不意に光が弱まった瞬間、人物の顔が露わになる。私はそれに激しく動揺し、目を揺らした。

少し長めの銀髪を紐でまとめた男。彼はとても綺麗な人だった。きっと、アレよりずっと。

透き通るような肌と薄めの唇。そして何よりも私が目を惹かれたのはその美しい金色の目。

琥珀のような、金のような、とても綺麗な宝石。

あ、月みたいだな。静かに輝く月は昔から大好きなものの1つ。


「・・・綺麗な目だね」

「・・・は?」

「え、だって月みたいに金色の綺麗な目」


そっと手を伸ばして頬の触れる。彼の体が一瞬ピクリと動くが、それだけ。

金の目に触れるように手を動かすと、まぶたが閉じられて見えなくなる。

それと同時に無意識的に寄せていた体も遠ざけられて、少し残念に思った。

折角、本当に綺麗な物の近くにいられたんだけどな。


「で、お前は何なんだ」

「私?私は泉刹那。・・・それしか言うことがないなぁ」

「・・・それしか言えない、じゃねぇのか?」


ニヤリと笑う彼に私もにっこりと微笑み返す。

でも本当に私が自分から言えることなんてこれくらいだよね。別世界から来た、とか言っても信じなそうだし。

後は好物とか?いやでもここにあるとは限らないし、嫌いなものでもそれは一緒。女神様に会ったことがある、ってのも信じれないだろうし、男性歴とか?いやそもそも嫌われ中学時代と女子高校時代だし。

あー、これくらいかなー?


「頭は結構いい方。運動神経はそこそこ。視力や聴力も人並み以上にあって、でも親が居ない。義理の母と父なら居たけどね。あととあるモノに二度と会いたくない」

「・・・んだソレ」

「私なりの自己紹介だよ。ちなみに私の世界では相手が自己紹介したらそちらも返すのが礼儀、ってのがあるんだけど・・・ここではどう?」

「・・・ジン。知能も運動も人並み以上にはあるつもりだ。特に戦闘能力には自信がある。家族構成は義父」


一瞬で無表情に戻り、マシンガンのように言葉を紡ぎだす。

人形みたいだと思う。感情の起伏が少ないとことか、声が平坦なとこ。あと無駄に顔がいいところ。

満足か、と述べる彼はあまりにも面倒くさそうで笑えた。


「ふ、貴方すっごく面白い」

「言われたのは初めてだ」

「私も貴方みたいなタイプ、初めてだよ。いいね、頭がいい人は好きだ」

「俺も嫌いじゃねぇよ」


一瞬普通の会話に見えても、コレは駆け引きだ。

どちらがより相手の情報知り、優位に立てるか。今のところ彼が圧倒的に優勢なんだけども。

しかし困ったなぁ。彼がすごく面白い、すごくいい。正直に言ってしまえば欲しいくらいに、いい。

綺麗で面白くて頭のいい人。ついでに強くてまさにパーフェクト。


「ね、お兄さん」

「あ?」

「人に刃を向けていい人はどんな人だと思う?」

「んなもん殺す覚悟と殺される覚悟のある人間だ」


あー、やっぱいいなぁ。

即答ってところがまたいいよね。アレとは大違いだ。

アレだったらきっと、「正義を持つ人間だ!」とか言うんだろうな。付き合いが長いせいか、想像できちゃう自分に嫌悪するわ。


「お兄さ「ジンだ。俺はお兄さんって名前じゃねぇ」・・・ジン、貴方は人生謳歌してる?」

「さぁな」

「・・・そういう答え、嫌いだなー。じゃあ聞き方変えるね。生きてるの、楽しい?」

「どうだと思う?」


ニヤリと笑われて少し苛ついた。

まぁでもいっか。確信得たいがためだし、ほぼ予測はできてるし。

でもやっぱ駆け引きに負けた感があって悔しいな。


「つまんない、と見たね。かなり実力があって、命の駆け引きを楽しめる相手がいない。別にやることも無ければ目標もない。・・・っと目標はあるかもだけど今はそれを達成することができない。あとあんまり人が好きじゃない。総合的に見ればとりあえず今は暇してる、ってとこ?」

「・・・ふ、」

「その笑みは正解と見た。・・・だったらさ、私と一緒に行かない?」

「俺にメリットは?」

「楽しませて鮮やかにしてあげる。貴方がつまらないと思ってる世界を全部ぶち壊してみせるよ」


にっこり極上の笑みで微笑んで、彼を見上げる。

彼は一瞬無表情に戻って、次の瞬間面白いとでも言いたげに笑った。

もうそれで、答えは十分だった。少なくとも私達の間では。


「お前についてってやるよ。だが条件がある」

「んー、無理じゃなければ大抵のことは飲んだげる」

「まず自分の本名を明かすな、そうだなセツとでも名乗れ」

「いいよー。それは私もおいおい考えてたし」

「あと、俺はお前が本当に俺を楽しませれんのか疑惑があるんでな。とりあえずお試し期間ってことで一月だ。俺がつまらないと判断したら俺はお前から離れる」

「おっけー、まぁ一月だけでもありがたいわ。私、この世界のこと何にも知らないから。万が一、貴方がいなくなってもその間に知識だけは備え付けてみせるよ」


こうして私達二人の時間は始まる。

私達の相性がかなりいいと気づくのは、ほんの少しあとのお話。

少し遅くなりました。

正直難しいです。どちらも正確がひねくれてる設定ですので。

こんな風に亀更新ですが、次も見ていただけると嬉しいなぁと思います。

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