聖女様は解読中
休み明け、子供達に西の国の蜂蜜を味見させたミリーは、おいしいと言って顔を輝かせる子供達を見てにっこりした。
と、ローラが思い出したようにポケットからごそごそと小さな紙を何枚か取り出した。
「せんせー、これ読めますか?」
差し出された紙を手にとってミリーは驚いた。
「え、古代神聖文字じゃない。どうしたの、ローラ?」
「んっとー、お父さんがなんだかわかんないって言ってたから、持ってきたの」
「…もしかして、事件の証拠品?」
「うん、そう!しょーこひんって言ってた~」
にこにこ笑うローラに、ミリーはひきつった笑顔を返す。
「ローラ、お父さんのお仕事の物は、持ってきたらダメよ?お父さん、無くしたと思って探してると思うわ」
ローラは、それを聞くとしょぼんと肩を落とした。お目目がうるうるだ。
「お父さん、おこるかなあ」
「ちゃんと謝れば大丈夫よ。ローラはお父さんのお手伝いがしたかったんでしょう?先生も一緒に謝ってあげる」
「ほんと?せんせー」
「ええ」
「ありがとう」
キラキラお目目でにっこり笑うローラの愛らしらにミリーがきゅんきゅんしてると、ベンに現実に引き戻された。
「先生、古代神聖文字って?」
もう興味津々だ。
「神官や魔術師の使う神聖文字の更に古いものよ。でも、わかる人は限られるわ」
「せんせー、読めるの~?」
ヒューが問題の紙を除きこみながらミリーに聞く。
「読めます。とりあえず騎士団長にこの紙がここにあることを知らせないと」
「先生、あたしとマックでいってくるわ」
「お願いね、クレア。私が読めることも伝えてちょうだい」
マックを引きずっていくクレアを見送ると、ミリーはさてと考えてた。ベンに他の子を見てもらって解読したいところだが、それは古代神聖文字を食い入るように見ているベンに酷だろう。仕方がない。
ミリーは、適当な紙にいくつか単語を書くと、ヒュー、ノア、ローラを呼んだ。
「クレアとマックが帰ってくるまで、これを書き取りしててね」
「「「はーい」」」
ノアがみんなをまとめるだろうと一安心し、期待の眼差しのベンを手招きする。大喜びで駆け寄るベンの後ろには、ブンブンふられるしっぽが見えるようだ。
「読み上げるから書いてくれる?」
「はい!」
しばらくミリーの読み上げる声、ベンの書く音が交互に続いた。
「…5の月13日、ブラウン商店、1500、○」
「……はい」
「…4の月28日、エリス商会、2800、○」
「…はい。先生、規則的ですね」
「そうね、何かの記録かしら。でも、これから先の日付には金額と○がないわ」
「計画ですか?」
「それは、騎士団のお仕事よ」
「…はい」
ベンは残念そうにうなづいたのを見て、ミリーは解読を再開した。
「せんせー、騎士団長連れてきたよ~」
マックが勢いよく帰ってきた。後から呆れ顔のクレアと、強面の騎士団長がやってくる。騎士団長はローラが駆け寄り抱きつくと、その強面を盛大に緩めた。
「ローラ、ダメだよ、お仕事のもの持ってっちゃ」
「ごめんなさい、ミリー先生に読んでもらおうとおもったの」
「そうかそうか。お久しぶりです、ミリー様。娘がお世話になっております」
「お久しぶりです。怒らないであげてくださいね。ローラはお父さんのお手伝いがしたかったんですから」
「はい、わかっています。ところで、ミリー様はその文字を読めると子供達から聞きましたが」
「ええ、古代神聖文字ですわ。いまでは、神官の中でも限られた者しか読めません。こちらが、解読したものです」
「ありがとうございます。実は、まだ他にもあるのですが…」
「ご協力しますよ。あと少しで授業時間が終わりますから、その後騎士団へうかがいます」
「よろしくお願いします」
強面の騎士団長は、娘にいってらっしゃいのキスをしてもらってデレデレな顔で、帰っていった。
子供達はと見ると、もう授業を終わったような気でいる。これはしょうがないなとミリーは苦笑した。
「さ、じゃあ授業の続きね」
時間もないことだしと、子供達からの質問コーナーにして、その日の授業を終わらせたミリーであった。