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うちの契約精霊ハムちゃんは天才魔法使い様らしい

作者: あらいサラ
掲載日:2026/10/02

もふもふふわふわ。ブチ模様が付いた白い体を揺らしながら私の宿題をチェックする、小さくて可愛い契約精霊。


「――阿呆娘!ここにその式を入れるな。今度は化物を喚び出す気か?その小さい頭に脳みそは入ってないのか!」

「も〜。ハムちゃん、もっと優しく言ってよぉ」

「誰がハムちゃんだッ!ジーク様と呼べ」


黒い腕輪のついた短い手を振り上げて、短い足でぺちょりと机を踏みつけ怒りをアピールするハムちゃんは、今日も超絶に口が悪い。ひまわりの種をあげると顔に投げ返された。


どうやら名前は『じーくさま』らしいけど、どっからどう見てもハムスターだ。ハムスターは『ハムちゃん』と名付けるに限るとばあさまも言っていた。だからハムちゃんだ。


――ここ、ヴェルトバウム魔法学園では、入学して二ヶ月の間で精霊を喚び出す陣を学び、召喚そして契約を行う。そしてその精霊に学年末まで魔法の使い方をサポートしてもらうのだ。


でも、落ちこぼれの私は精霊を喚び出す事が出来ず、あわや退学の危機!それはマズい。ばあさまに頭かち割られる。

そんなわけで追試の追試、泣きのワンチャン追試でようやくハムちゃんを召喚することが出来たのだった。


「精霊召喚にハムちゃんが応えてくれて良かったよぉ〜もふもふもふ」

「止めろ、モフるな!大体俺は精霊じゃなくて人間だと何度も言っているだろう!」


そうなのだ。どうやら私は召喚陣の作成をちょろっと失敗していたようで、ハムちゃんを召喚した陣では対象を人間に指定してしまっていたらしい。後々チェックしたハムちゃんにしこたま怒られた。


召喚が失敗した他の陣もちょこちょこミスが発生しており、どおりで何回召喚の儀式をやってもウンともスンとも言わないわけだ。


(多分先生は気付いていたけど、才能無しとして切り捨てるつもりだったんだろな…。世知辛いなぁ…)


――本来、精霊以外が召喚される事なんてあり得ない。ハムちゃん曰く、再現性のない事故のような召喚だそうだ。


人間を無理やり精霊召喚の陣から引っ張ったせいで、ハムちゃんはハムスターの形に変化してしまったらしい。まぁ精霊って小動物の形のが多いし、可愛いので私的にはこれで良いと思う。


何か思う所があったのか、ハムちゃんも契約に同意してくれて、晴れて私たちはパートナーとなった。


ハムちゃんには魔法の心得があるようで、私の座学のテスト答案を見てたっぷり一分間固まったあと、

「このド阿呆がッ!!この十ヶ月間でお前を使えるようにしてやる!」

と他の精霊と同じようにサポートしてくれている。


「はぁ…またどうせ赤点追試だろうし期末テストやだなぁ。

 …座学もダメ、実技もダメ。なんで才能ゼロの私が、名門のヴェルトバウム魔法学園に入学出来たんだろう…」


受験した私自身まさか受かるとは思ってなかったよ。


「……確かにお前は阿呆だが、才能が皆無というわけじゃない。

 優秀な魔法使いにおいて重要な点は、知識・技術、そして魔力量だ。お前は阿呆で学びが全く身についていない。それに技術に関してもド素人だ。

 ……だが、学生にしてその魔力量は目を見張るものがある。こ(・)ん(・)な(・)状(・)態(・)とは言えこの俺様を喚び出せたんだからな。…まぁ、呆れるほどの阿呆だが」

「ハムちゃん…」


慰めてくれるのは嬉しいけど、なんで阿呆って繰り返した?

指でそのもふもふのお腹をつつくとハムちゃんはコロンと後ろに転がり、ギャーギャーと文句を言う。それを聞きながらテーブルに広げていた宿題を片付けカバンに仕舞った。


「よし、今日の勉強おしまい!お風呂に入って寝よ〜」

「ハッ!?待て、何故俺を持ち上げる!??」

「だからお風呂だって。ハムちゃん、今週まだ1回も入ってないでしょ?」


本当のハムスターや精霊ならお風呂に入る必要は無いのだろうけど、『召喚されてハムスターになっちゃった人間』ってどうなんだ?気分的には洗っときたい。

そう言うと私の手の中でハムちゃんは暴れだした。


「ふっ、ふざけるな!!そんな物に入らなくても浄化魔法で…!」

「でもちょっと臭うよ?」

「におっ…!??」

「冗談だけどね。……あれ?固まっちゃった。もしもーし?

 …まぁいいや。今のうちに入れればいっか」


(落ちこぼれに対する風当たりは強いし、授業とか意味わかんないし、挫けそうになる事もたくさんあるけど…)


なんやかんや面倒見の良いハムちゃんとならもう少し頑張っていけるかな、なんて考えながら、パートナーを大切に抱えながら部屋を後にした。


◇


「――あら、リーン・ベネットさん?」


次の授業の教室に移動していると、後ろから名前を呼ばれた。知らない声に振り返ると、同じ学年の女生徒が三人立っていた。

全員名前は知らない…というか覚えてない、けど、真ん中の子は伯爵家のお嬢様だった気がする。


何の用事だろうと首を傾げていると、お嬢様はクスリと唇を歪めて笑う。


「貴女まだ居らしたのね。精霊さえなかなか喚び出せなかったと小耳に挟みましたので、わたくしてっきり…」


そう言いながら、私に見せつけるように首に巻いた小さな水色の蛇の頭を撫でる。青い瞳の珍しい蛇で、胴体に豪華な金色のリボンが巻かれていた。


「こんにちは、変わったペットですね。私も蛇は平気な方ですけど、首に巻くなんてなかなかに爬虫類愛に溢れてますね!」

「なっ!これはわたくしの契約精霊ですわ!!ただの蛇と一緒にしないでくださいませっ!」


精霊だったのか…。角が生えてるとか羽が生えてるとか個性的にしてくれないと、正直見分けがつかないよ。


蛇呼ばわりされて怒っているのか、蛇もシャーと威嚇してきた。いつぞや森で見かけた蛇と全く一緒だなぁ…。


「…まぁ、リーン・ベネットさんは精霊への知見が乏しいようですし、精霊と小動物の見分けがつかなくとも仕方ないですわね」

「もしかしたらベネットさんが召喚したという精霊も、本当はただの小動物なのではありませんこと?」

「やだ、そこまでして退学されたくないのかしら」


クスクスと笑い合う女生徒三人組。ばあさまに頭かち割られるから退学したくない私としては、なるほど、その手が有ったか!という感動が生まれたのだけど。


当の契約精霊ハムちゃんは気に入らないようで、私のポケットからもそもそと出てきて肩によじ登ってきた。


「やだっ、ネズミ…!」

「ネズミじゃない、ハムスターだ!いや、ハムスターでもないがっ!!」

「「「喋った!??」」」


ハムちゃんから発せられた男性の声に女生徒三人組が驚く。


そうでしょ、そうでしょ。このふわもふラブリーボディからこんな低音ボイスが出てくると思わないよね。すんごいギャップだよねと頷いていると、ハムちゃんに「そこじゃない」と突っ込まれた。


「本来、一年生が召喚するような低級精霊は人間の言葉を発しない。契約者だけに伝わる思念で意思疎通を行うからな。力をそこまで有していないから、見た目も小動物そのものだ」

「へー、それじゃ喋れるハムちゃんってすごいんだね!」

「俺は元々人間の言葉を喋るぞ…」


そっか、人間だったっけ。ふんふんと納得しているとハムちゃんの説明でプライドが刺激されたのか、お嬢様が顔を赤くして声を荒げた。


「は、話せるからって何だと言いますの?所詮落ちこぼれの契約精霊ではありませんか!

 シャーロット!あの生意気なネズミの首でも噛みついて、分からせてさしあげなさい!!」


あの蛇シャーロットっていうのか。蛇とネズミだなんて、自然界ならそのまま丸呑みされちゃう組み合わせだ。

お嬢様に命令された蛇は「えっ!?」みたいな反応をしながらも、渋々とこちらに鎌首をもたげて…


「――精霊は本来とても平和主義だ。それを命令して噛みつかせる、だと?」


ハムちゃんが黒い腕輪のついた短い手を振り上げれば、どこからともなく現れた人間の拳大の炎が宙を舞う。


(ハムちゃんが生活魔法を使えるのは知ってたけど、火の魔法も使えるんだ!?一気に五つも火球を操っててすごいね!でもちょっと私の顔に近すぎて熱いんだけどっ!?)


「…召喚に応えてもらえたからといって驕るなよ?彼らは優しさで力を貸してくれているだけだ」


炎が狙いを定めるかのように空中で止まった。ハムちゃんのプリティボディから放たれる圧倒的な魔力の圧に、三人組は驚き顔を蒼白にしてヘタリと床に座り込んでいる。あ、蛇は口を開けたまま硬直してるね。


「精霊にサポートされている分際で偉そうに命令などと、分かってないのはどちらだろうなぁ、小娘ども」


鋭い眼光で睨みつけられ、誰かが短い悲鳴を上げたのを合図に、三人組は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。待って、シャーロットを置いていかないであげて!あ、窓から逃げてった!!さすが蛇!


「わー……何の用だったんだろ…?」


後には静まり返った廊下に佇む私と、小さな手をキュッと握りしめ火の魔法を消す可愛いハムスターだけが残される。


「…ハムちゃんって知識だけじゃなくて、攻撃魔法も使えたんだね…」

「ふん、当たり前だろ。俺様は天才魔法使いジーク様だからな!」

「フーーン」


じーくさま、ジーク様?ハムちゃんは魔法の知識が豊富で実際に魔法も使える『天才魔法使い』??本当に?いや、そもそも天才魔法使いってなんだ。そんな人物を落ちこぼれの私なんかが召喚出来るのか?


(うーん…私、ハムちゃんの事何も知らないなぁ…)


口が悪くて、でもたまに優しくて、見た目は物凄く可愛いハムスターで。


「フーンとはなんだ!ちょっとは敬え!この阿呆娘!!」なんて言いながらプンプンと頬を膨らませて怒るハムちゃんを、私は人差し指でそっと撫で移動を再開した。


◇


「うぅぅ……」


夜中に男性の小さなうめき声が聞こえて目が覚める。ここは女子寮なのだから男性なんている筈が無い。

体を起こしキョロリと見渡すと、サイドテーブルの上に置いてある藤カゴの中から聞こえるようだった。


「ハムちゃん……?」


そっと近寄ると、カゴの中でハムちゃんはタオルを布団にして丸まり、苦しそうにうなされていた。


「…くそっ……こんな…汚い…を……!」


そう、うわ言のように紡がれる言葉。


汚い?まさかお風呂に入っていない夢でも見ているのだろうか。

確かに三日に一回くらいしかお風呂に入れてないけど、本人曰く浄化の魔法を使っているから別に汚れては無いし、ハムスターにも精霊にもお風呂は不要な筈だ。


うーん、お風呂に入れる為に『臭う』って言ったのを気にしてるのかな?ごめん、私が悪かった。そのもふもふボディはいつもお日様の良い匂いがしてるもんね。もう言わないから許して。


「…う……この…腕輪が……」

「……」


踠く様に動かされたその小さな腕に、召喚された時から着いている黒い金属の腕輪が鈍く光っている。

ハムちゃんはこの腕輪が嫌いみたいで、召喚の直後には腕輪を抜こうとしたり壊そうとしていた。


(…この腕輪が原因なのかなぁ…?)


小さな黒い腕輪を指でツンと突付く。ひんやりと冷たいだけで普通のアクセサリーにしか見えなかった。


(何かの魔法具?痛いの?苦しいの?)


ハムちゃんの正体は『天才魔法使いのジーク様』。私が分かるのはそれだけだ。ハムちゃんは召喚される前の事は語ろうとしない。

魔法具についての知識も無いし、詳しい事情はわからない。だけど、ハムちゃんにとってこの腕輪が良い物ではない事だけは伝わってきた。


「痛いの、飛んでいけー……」


そっと指先でハムちゃんの頭を撫でる。

今の私は落ちこぼれで、ハムちゃんが抱える困難を解決出来る力なんてない。だけどせめて、一緒に悩める様なパートナーになりたい。


「………私、もっと勉強頑張るからね。ハムちゃん」


私の指に擦り寄るようにして、ハムちゃんは少しだけ安らかな寝息を立て始めた。


◇◇◇side ジーク


――俺は王宮魔法使いの一人。平民の出自でありながら、膨大な魔力とセンスで他者を蹴散らし、この地位まで上り詰めた男だ。


その黒い髪色からか、国から与えられた称号は『ナハトムジーク魔法伯』。……『夜の音(ナハトムジーク)』って少しカッコつけ過ぎじゃないかと思うが、多少それっぽい方が一般ウケするのだろう。

同期には『雷鳴』を意味する称号の金髪の男もいるし、案外髪色で決めた適当な命名なのかもしれない。


その俺が、今……


「ハムちゃん気持ち良い?」

「力が弱い。もっと強くしろ」


ハムスターの姿で年若い娘にブラッシングをされている。


このリーンとか言う女は本当にけしからん。

魔法の名門校に入学しておきながら僅か数ヶ月で退学されそうになる阿呆だし、魔力量は『雷鳴』に近いくらい有しているくせに、知識も技術も無くヘラヘラした態度で周りに舐められまくっている。


あまつさえ、この俺様を『ハムちゃん』等というペットのような名で呼び、ふ、風呂にまで一緒に…!!


俺が自身に目隠し魔法を使わなければ、とんでもない痴態を晒していたんだぞ!わかっているのか?

こんなナリでも本来は成人男性だ。そのちっぽけな頭に『ハムちゃん=人間』だとインプットされてないのか!?されていないんだろうな!!


(能天気に「毛がふわふわ〜」なんて言いながら腹に鼻を沈めるな…ッ!)


…それもこれも、こ(・)い(・)つ(・)のせいだ。

ハムスターの屈辱的に短い腕に着けられた、黒く冷たい腕輪を睨む。


(これさえ無ければ、この阿呆に召喚される事もなかったのに…!!)


◇


――遡ること数ヶ月前。


「ジーク、君は弟子を取らないのか?」


珍しく『雷鳴』…ドンナークラング魔法伯が魔法塔の俺の研究室にやって来た。

こいつは同期だが生まれつきの貴族で、平民出身の俺を見下している。同じ仕事を割り当てられた時以外に関わる事はほぼ無いんだが…。


(上から『そろそろ次世代の教育をしろ』とせっつかれているから、状況でも確認しにきたのか?)


「…俺に師事したがる奴なんていないだろ」


王宮魔法使いと言えば子供が一度は憧れる人気職だが、愛想は無く、口の悪い俺に寄ってくる人間は少ない。

対する『雷鳴』は貴族らしくスマートな男で物腰も柔らかく、様々な人から慕われている。俺とは違い弟子希望者が後を断たないだろう。


そう告げると『雷鳴』は薄い唇をくっと歪めて笑った。


「そうだろうね。あえて平民に教えを乞う物好きもいないだろう。おっと、失礼。元(・)平民か。ナハトムジーク魔法伯?」

「ふん、魔法を使うのに血筋は全く関係ないがな」


平民のくせに自身と同じ魔法伯に上り詰めた事が気に入らないのだろう。生粋の貴族である事を誇りに思うのは結構だが、それで俺を目の敵にするのは止めてもらいたい。


「…そもそも、平民ごときが王宮魔法使いになると言うのが烏滸がましいんだ。王宮にあがるのだぞ、分不相応が過ぎると思わないのか?」

「はっ。それがどうした。それを決めるのは国だろ。

 それに、いくら血筋を誇っていても純粋な魔力量で元平民に負けてたんじゃ話にならんな」


そう鼻で笑うと『雷鳴』はその端正な顔を歪めた後、盛大なため息と共に、持っていた紙の束をこちらに突き出してきた。


「…レーゲン様からの指示書だ。僕の手を煩わせずに定期的に自分で受け取りに行け」


…珍しい。自分のついでだとは思うが、わざわざ持って来てくれたのか。

件(くだん)の推奨弟子候補なのか名前リストが書かれた一番上の紙を見ながら、片手でそれを受け取り…


ガチンっ


「…は??」


『雷鳴』によって、その腕に黒い腕輪が嵌められたと気づいた時には、魔力の吸収が始まっていた。


「なっ…!これは…魔法具!?なんのつもりだ『雷鳴』ッ!!?」

「ハッハッ!魔力量しか取り柄のない平民め!!絶望に沈めっ!」


どうやって手に入れたのか、これは犯罪者にしか使用が許可されていない魔力吸収の魔法具だ。勿論腕力では外すことは出来ない。


急速に魔力が吸い取られ思わず片膝をつく。八割程が吸い取られただろうか、これでは『雷鳴』よりも遥かに少ない。


「魔力量が少ない者の気持ちも味わってもらおうか」


そう言って『雷鳴』の右手に構えられた杖が、その名を表すように雷を帯びてバチバチと音を立てている。今の魔力量でどれだけの防御魔法が使える!?


(これは、シャレに…ならないぞ…!!!)


嫌な汗が頬を伝い、思わず屈んだまま後退をした。その時――


「ん!?」

「え??」


俺の足元に謎の召喚陣が現れて、風で指示書が巻き上がる。そして二人が驚いている間に、俺の体は光と共に吸い込まれたのだった。


◇


(まさか殺すつもりは無かっただろうが、『雷鳴』の魔法を受ける前に召喚されたのは幸いだったな…。

 この姿は癪だが、腕輪の解除が出来るまでは、奴の前から姿を消しておいた方が賢明だろう)


ハムスターの小さな手をギュッと握り締める。

リーンに召喚されて早五ヶ月。腕輪の解析を行なっているが、この調子なら後ふた月程で解除出来るだろう。


「解除したらすぐに魔法塔に戻って『雷鳴』をボコボコに…」

「ハムちゃん、何プスプス言ってるの?鼻詰まった?ちょっと見せてごらん」

「詰まってない!鼻を覗き込むな!!」


俺を持ち上げ鼻を覗き込もうとする小娘から逃れようと手足をバタつかせる。


いくら学生にしては魔力量が多いとは言え、俺の魔力が万全だったなら、この小娘程度に召喚される事も無かっただろう。

いつまで経っても俺を敬わずハムスター扱いなのは不服だが、この伸びしろしかない阿呆娘を指導する生活は存外悪くはない。


(……腕輪の解除が出来ても、契約通り今学年中は見守ってやるか)


召喚当初は知識も乏しくやる気も無い様子だったこいつが、最近はやる気が芽生えたのか上達するスピードが上がっている。


その成長の手助けを途中で投げ出すのが惜しいと思うのは魔法使いの性だろうか。


(仕方ない…。ボコるのはもう少し後に取っておいてやる)


寿命が延びて良かったな、『雷鳴』。


◇◇◇side リーン


私の手の中の杖が強い光を放つ。先生や生徒達に見守られる中、肩に乗ったハムちゃんの「集中しろ」という声に頷いた。


(――学年末実技試験、的当て。およそ三十メートル先の空飛ぶ的に向かって魔法を当てるだけ)


的から外した生徒もいた。途中で魔法が霧散していく生徒もいた。


魔法の精度を磨け、飛距離を伸ばせ、この一年間の集大成を見せろ。名簿を片手に合否判定をする先生の目からはそんな想いが伝わってきた。


狙いを定め呪文を唱えると、拳大の石が二十個程生み出され、私の周りを囲む。

その数に先生は目を見開き、生徒達はざわついていたけど、その事を気にする余裕は無かった。


(…ハムちゃんとたくさん練習したけど、結局、精度とか良く分かんなかったんだよね…!)


通常は一つの魔法で的を狙う?そんな繊細な調整はちょっと無理ですねぇ。

だから私は、魔力に物を言わせて圧倒的な質量で勝負する!!


「…リーン、ぶちかませ」

「いっけぇぇぇ!!!」


私の声と共に二十個の石達が的に向かって放たれ、激しい音を立てて的にぶつかった。

砂煙が落ち着くとそこには壊れた的と、その背後には、たくさんの石がめり込む壁があった。


「やったぁ!何個かは当たったよ!!」

「三個ってところか…。相変わらず命中率は低いな」


とにかく的に当たりさえすれば合格のはずだ。

他の生徒も同じ様に数で攻めれば良いのにと思ったけど、ハムちゃんに「同時に複数生み出せるのは豊富な魔力の成せる技だ」と言われた。


浮遊魔法で浮かぶハムちゃんの小さな手とハイタッチをする。その腕から黒い腕輪が消えたのは何ヶ月前の事だっただろうか。あの腕輪が何かしらの制限をしていたのだろう、今のハムちゃんは以前よりもガンガンに魔法を使っていた。


(結局私は相談にも乗れなかったけど、ハムちゃんが清々しそうだからまぁいっか)


そんな事を考えていると、先生がゆったりとした足取りでこちらへ近づいてきた。その表情はなんとも複雑そうだ。


(あれ?合格じゃないの?でも、一つしかぶつけちゃいけないなんてルールは無かった、よね?)


何を言われるのかとヒヤヒヤしていると、先生は小さく溜め息を吐いた。


「…もっと繊細な調整も学んで欲しくはありましたが、……これだけの数を一度に操る能力は認めましょう」


そう言って一枚の紙を渡してきた。先生の判が押された合格証だ!


「リーン・ベネットさん。合格です。二年生でも頑張ってください」

「――はいっ!!」


合格!二年生に上がれる!

感極まってハムちゃんをギュッと抱きしめると、その小さな口からは「ぐえっ」と苦しそうな声が聞こえたけど、無事に一年生最後の試験は終了したのだった。


◇


――今日の為に実家から呼び寄せた侍女を下がらせて、姿見の前でクルリと回る。柔らかな黄緑色のドレスが動きに合わせてふわりと広がった。


「……ドレスなんて用意出来たんだな」

「これでも一応、貴族令嬢だからねぇ」

「お前、貴族だったのか…!?」

「あれ?言ってなかったっけ?地味な男爵家なんだけどね」


田舎の方に小さな領地があるだけの貴族だ。貴族らしい豪華な生活は送れないけど、こうしてドレスをたま〜に新調するくらいなら可能なのである!


「……私、令嬢としても落ちこぼれでね、良い縁談も期待出来そうになかったから、十六歳になったらどっかの何とか様の後妻になるって話があったの」

「はぁ!?」

「でもその前にばあさまが父様の事、殴っ……蹴り………説得してくれて、『この子には魔法の才能がある』ってヴェルトバウム魔法学園の入学試験を受けさせてくれたんだ」


その結果無事に入学は出来たものの、たったの二ヶ月で退学になるところだった。危うくばあさまに頭かち割られて、何とか様の所にドナドナされるところだった。ハムちゃん様々である。


「何者なんだ、お前のばあさん…」

「ばあさまは魔法使いだよ。もしかしたら天才魔法使いのハムちゃんも知ってるかもね。

 五十年前の戦争では敵兵に岩石の雨を降らせた魔女として恐れられてたらしいよ。今でも怒らせたらすっごい怖いんだぁ」

「岩石の雨…?…おい、それってシュタイン…」

「あ、もう時間だ!ホールに行かなきゃ!!」


急がなければ一年生の学年末パーティーが始まってしまう。話を切り上げて、机の引き出しに仕舞っていた物を取り出し、ハムちゃんの首に着けた。黒のミニミニ蝶ネクタイだ。夜空をイメージした金色の刺繍も入っている。うんうん、今日もうちのハムちゃんは超絶可愛い。


ハムちゃんは「なんだこれは」と不機嫌そうに引っ張っていたけど、最後なのだしお洒落をさせて欲しい。


(……最後…だし…)


少し淋しい気持ちを胸に、ハムちゃんを肩に乗せてホールに入る。

学年末試験の合格を噛みしめる者、不合格で今後の追試に暗い顔をする者、いずれも思い思いに着飾っており、その傍らには十ヶ月間支えてくれた契約精霊の姿があった。


(…あ、シャーロット、と名前忘れた、シャーロットの契約者のお嬢様)


ハムちゃんに火の魔法で脅されてからも、事ある毎に私に絡んできていたシャーロットの契約者。伯爵令嬢らしく豪華なドレスに身を包んでいるけど、いつもの強気な表情は無く、今はシャーロットを抱きしめ涙をこぼしている。


…このパーティーは一年の頑張りを労う場であると同時に、契約精霊との別れの場でもある。


周りを見渡しても同じ様な生徒ばかりだ。せっかくの美しい音楽にも美味しい料理にも、誰も見向きもしていない。

ただ、自身の契約精霊との最後の時間を噛み締めていた。


「……ハムちゃん」

「…なんだ」


契約当初から変わらない、そのぶっきらぼうな返事。その事に笑いながらハムちゃんを手に乗せて、お互いの額を合わせる。


「十ヶ月間、本当にありがとう」

「……」

「ハムちゃんが居てくれたから、私ここまで頑張ってこれたよ」

「当たり前だ。俺様じゃなければお前はとっくにばあさんに頭かち割られていただろう」

「うわぁ、本当だね」


クスクス笑いながら額を離す。ハムちゃんの黒くつぶらな瞳には、泣きそうな顔の私が映っていた。そっと指で頬を撫でる。もふもふだ。


「――ねぇ、天才魔法使いのジーク様」

「……今更お前にそう呼ばれると痒いな」

「えへへ…。…また会えるかな?私がもっと勉強頑張って、上手に魔法使えるようになったら、ハムちゃんに、ジーク様に会いに行けるかな?」


きっと彼は私なんかじゃ手の届かないような場所にいる人なのだろう。彼が契約精霊(ハムちゃん)としてここに居て、私に魔法を教えてくれるなんて、まさに奇跡だったんだ。


「ハムちゃんが居なくても、がんばって…勉強して…繊細な、操作も……できるように……」

「泣くな、リーン…」

「すごい、魔法使いになって…会いに、行くから…。…だから待っ――」


待っていて、その言葉を言う前にハムちゃんが私の鼻に小さくキスをした。え、可愛い。


「――お前一人ですごい魔法使いになれるわけがないだろう。暴走して校舎でもぶっ壊して退学だ、この阿呆娘」

「え、ハムちゃ…」


全く信用されてない!

ガーンとショックを受けるが、ハムちゃんの短い手が励ますように私の頬をペチペチ叩く。その手は僅かに透けてきていた。


周囲を見渡すと他の契約精霊達も光の粒子となって消えていっている。


(もう、時間が来たんだ…!せめてハムちゃんに安心して帰ってもらわないと…)


「は、ハムちゃん、でも私も少しはしっかりして……」

「俺が」

「えっ」

「…俺が、迎えに行ってやるから……余計な暴走せずに大人しく予習復習しとけ。

 ――待つのはお前の方だ」


そう言って、ハムちゃんが最後に触れた頬がふわりと温かくなる。何かの魔法が施されたのだと理解した時には彼は光の粒になって消えていた。

その消えていく光を目で追いながら、私は思わず呟いてしまった。


「ハ、ムちゃ………えっ……え……もふもふなハムスターなのに……カッコいい…!?」


――こうして私と天才魔法使いハムちゃんの契約は終了したのだった。


ちなみに最後にハムちゃんがした魔法は浄化魔法の応用だったようで、涙で崩れたはずの化粧が蘇っていた。最後までなんて有能ハムスター。


◇


時は流れ二年生――


「…リーン・ベネットさん?貴女いつまで決めかねているのかしら?二年生では実際の魔法使い様に教えを請うのですわよ?」

「あ、シャーロット…」

「シャーロットではありませんわ!いい加減わたくしの名前を真面目に覚えなさいな!!」


『蛇型契約精霊シャーロットの契約者のお嬢様』改め『シャーロット』と同じクラスになった私。

え?シャーロットじゃないって?何回聞いても覚えられないから仕方ない。


シャーロットは何故か私によく話しかけてきて、うるさく言いながらも世話を焼いてくれる。

今もこうして、なかなか師匠を選べない私の尻を叩きにきたようだ。あ、もちろん物理じゃないよ。


(二年生では魔法使いに十ヶ月間の弟子入りしなきゃなんだけどぉ……)


「それだけ師匠候補が居ながら、なに選り好みしておりますの。贅沢ですことよ」

「うーん…」


そう言ってシャーロットが私の持っているリストを突付く。有難い事に、学生にしては多い魔力量のおかげか師匠になっても良いと声を掛けてくれた魔法使いが複数人いる。


「さすがにドンナークラング魔法伯様のような素敵な方はいらっしゃらないけれど、名の知れた方もいらっしゃいますわよ?

 ほら、こちらの方は魔力調整がお得意な…」

「うーん…」

「…こちらの方は学園を首席で卒業された…」

「むーん…」

「…こちらの方はとにかくルックスが良いと有名な…」

「もふもふしてなきゃヤダ……」

「いい加減、ハムスター離れしなさい!!」


小気味いい音がして頭を叩かれた。

わかってる。わかってはいるんだよ。でもハムちゃん以外の師匠(パートナー)を選びたくなくて。でも選ばなければまた退学の危機で。期日ギリギリまでウジウジと悩んでしまっている自分が嫌だ。


「もう期日も迫ってますし、わたくしが勝手に選びますわよ!?」

「――余計な世話だ、シャーロット」

「だからわたくしはシャーロットではッ……って、え??……どなたですの?」


低く落ち着いた声が耳に入り、ピクリと肩が揺れた。

突如教室に現れた人物にシャーロットは不審な目を向けるけれど、私は、この声を知っている。


「大人しく予習復習していたか?阿呆娘」

「ハム、ちゃん…?」


長い黒髪に切れ長の金色の目、薄い唇を上げてニヒルに笑うその男性は、王宮魔法使いのローブを羽織っている。

もふもふの白い体にオレンジのブチ模様があった愛らしいハムちゃんの面影は一切無い。だけど私の事を『阿呆娘』と呼ぶその声は、かつてのパートナーと全く同じで。


「ハムちゃんだ…!!」


その胸に思い切り飛び込むと男性は危なげなく受け止めてくれた。

ハムちゃんだ!人間だけど、大きくなってるけど、ハムちゃんだ!!嬉しくなって、かつてハムちゃんにしたように、思い切り匂いを吸い…


「ハムスターの匂いがしない……」

「…人間だからな」

「なんか色っぽい匂いがする…!」

「本人に言うな…!」


「ガキのお前にはまだ早い」と剥がされてしまった。

残念、お日様の匂いのするもふもふ可愛いハムちゃんではなくなったようだ。それでも再会が嬉しくてニマニマと笑ってしまう。


「ハムちゃんが会いに来てくれて嬉しい!」

「『雷鳴』をボコって、抜けていた分の仕事を振るのに少し時間が掛かったがな。…ほら」


ボコ?なんか変な言葉が聞こえた気もするけど、ハムちゃんに渡された紙に視線を落とす。推薦状と書かれているが、何の推薦だろうか?

上から目を通していくと知った名前が出てきた。


「うん?『シュタインレーゲン魔法伯からの推薦』?シュタインレーゲンってばあさま??」

「レーゲンばばあは俺の上司だからな」


ばあさまがハムちゃんの上司!?

意外な繋がりがあったものだと驚きながら続きを読み進めていけば、今度は自身の名前が出てきた。


【以下の者を孫娘リーン・ベネットの師匠に推薦する】


「ナハトムジーク魔法伯…」


文字をなぞり名前を呟くとハムちゃんが頷き、そして私の左手を取る。


「…俺の弟子になれ、リーン。俺が『すごい魔法使い』に叩き上げてやる」


ナハトムジーク魔法伯。情報に疎い私でも知っている、王宮魔法使いの名前だ。

そんな誰もが憧れる魔法使いが、本当に私の師匠になってくれるのか。また一年生の時のように教えてくれるのか。


「……ハムちゃん…いいの?私…まだまだ変なことしでかすけど、弟子にしてくれるの?師匠だからって責任取らされるかもだよ?」

「この天才魔法使いの俺様以外に、お前に魔法を教えられる奴はいないだろ?」

「ハムちゃん、大好き…!」

「…お前は俺が人間になった事をちゃんと理解しろ」


そう呆れながら言って、ハムちゃんの長い指が私の親指にスルリと触れる。「ひぇっ!?」と驚いているとそこに光が集まり、小さな黒いリボンのついた指輪になった。よく見ると夜空の様に金色の小さな宝石が付いている。


(これ…あの時の蝶ネクタイみたいなデザイン…)


その事に気付き指輪とハムちゃんの顔を見比べていると、ハムちゃんが金色の瞳を細めてフッと笑い…


「ッ―――!?」


何だその顔。大人の色気が凄すぎる…!

表情の変化があまり感じられなかったラブリーハムスターの時と違い、年上の男性のオーラが半端ない!!


「うわぁ…心の平穏の為にハムスターに戻ってほしい…!あの白いお腹をもふもふしたい…!!」

「何を言ってるんだ?」


赤くなった顔を隠すように押さえつつ、つい願望が口を出る。すると側で硬直していたシャーロットがフルフルと震えだした。


「な、ななな、ナハトムジーク魔法伯様…!?本物…!?

 それにリーン・ベネットさん…貴女、あのシュタインレーゲン魔法伯様のお孫さんって…!??」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「聞いておりませんわーーーッ!!!……ふぅ…」


令嬢らしからぬ声量で叫んだ後、力が抜けたように倒れ込むシャーロットの体を慌てて支える。

うーん、軽いな。貧血かな?お昼ご飯ちゃんと食べた?


「相変わらずやかましい小娘だな」

「とりあえず…シャーロットを保健室に運ぼっか」


ハムちゃんが杖も使わずシャーロットの体を浮遊魔法で浮かせ、一緒に歩き出す。

今まで私の肩やポケットに入っていたハムちゃんが、今では私の隣を歩いている。あんなに小さかったのに、見上げなくてはその顔も見えない。


(ハムちゃんだけど、ハムちゃんじゃない…)


だけど私の歩調に合ったスピードで歩いてくれるのは、十ヶ月もの間一緒にいてくれたハムちゃんで。

その事を少しくすぐったく感じて私は小さく笑った。

大人の男の人になっても、やっぱりこの人は私の大事なパートナーだ。


「改めて、これからよろしくね、私の天才魔法使い様。――ううん、ハムちゃん!」

「いい加減『ハムちゃん』を止めろ!ジーク師匠と呼べ!!」


――うちのお師匠様ハムちゃんは天才魔法使い様らしい!


◇おまけ◇


「お前を教えるには骨が折れそうだ。助手として改めて精霊と契約しろ」

「わかった!精霊でてこーい」

ぴかー

「ハッ!?ここは…!?なぜ僕の体が雀になっているんだ!??」

「あれ?なんかまた喋る精霊出てきた…。なんか黒い首輪してるね」

「…おい、この召喚陣また人間を指定してるじゃないか!阿呆娘!!」

「なっ、お前はジーク!?どうしてここに!?」

「……嫌な予感がするぞ…。おい、雀。お前まさか…」

「ち、違うぞ!?僕はお前にボコボコにされたドンナークラング魔法伯ではないぞ!??」

「最悪だッ!!!」

「ハムちゃんの知り合い?じゃあ、名前はチュン太郎ね」

「センスが無い!美しくない!!あと現状把握が追いつかない!!」

「…諦めろ『雷鳴』」


戻ったジークにボコボコにされた後、魔力吸収の首輪を着けられて懲罰中だったドンナークラング魔法伯が、次の契約精霊になった!!


「うーん、うちの契約精霊チュン太郎は懲罰中の魔法使い様らしい」

「レーゲンばばあには連絡いれておいてやる」

「こんなの嫌だぁぁぁぁ!!!」


◇おしまい◇

◇リーン・ベネット(16)

 能天気な阿呆。学生にしては魔力量が多く、ジークの4割くらい。土属性が得意。

 祖母のシュタインレーゲン魔法伯と同じく、質量に物を言わせる魔法を使う。


◇ナハトムジーク魔法伯(24)

 平民出身の天才魔法使い。その称号からジークと呼ばれる。全属性得意。

 ハムちゃん入浴中は目隠し魔法使ってるから、見てないったら見てない!!


◇ドンナークラング魔法伯(26)

 ジークの同期で伯爵家の次男。魔力量はジークの5割くらい。雷属性が得意。

 「雀は砂浴びが風呂だ」というジークの言葉によって、リーンに砂を掛けまくられている。なにこの女、怖い。


◇シャーロットの契約者(16)

 何回か名前聞いたけど忘れた。伯爵令嬢。


溺愛系ラブコメ長編『オマケ召喚されたモブですが、公爵令息に外堀埋められてました』が全47話・完結済です。

こちらも併せてよろしくお願いします。


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ラスト、元ハムとか雀とか絵面は可愛いのに中身はオッサン同士の会話と思うとおもしろい。
とても面白かったです♪ ナ「ハ」ト「ム」ジーク魔法伯…やっぱりハムちゃんだw
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