第6話 生を搾取する影
「ミライー!」
ミライの聞きなれた声が耳に入る。
水色の光が、横から差し込む。
影とミライとの間に、一人の少女が滑り込んできた。
「その子を守っていてくれてありがとう!」
ミライが目を見開くと同時に、彼女は両手を突き出すと、目前に光り輝く透明な膜のようなものが展開された。
青のドレスをまとった少女の長い髪が揺れる。
「ユイカ……!?」
魔法少女ユイカ。彼女の浄化の魔法が発動する。
それは、怪物の生命を脅かす黒い影すら浄化し、霧散した。
『縺ィ繧√i繧後◆?』
先程までの余裕とは一変、怪物の反応が変わる。
「ミライ! 今のうちに!」
「わかってる! ユイカ! ありがとう!」
「こちらこそ」
怪物が影を伸ばす。しかしまたもユイカによって浄化された。
その間に、ミライは扉を蹴破ると、植物の力を借りて受付があるであろう場所まで走る。
──いた。
「そこの職員さん! この子をお願いします!」
先程まで避難を促していたのか、丁度去ろうとしていた職員に出くわす。
「あ、あのもしかして魔法少女……」
「そんなことどうでもよいです! とにかく、避難を!」
半ば強引に職員に男の子を引き渡すと、ミライは背を向ける。丁度、ユイカが止めていた怪物が、扉を突き破っていた時だった。
「はやく!」
「は、はい!」
ミライに急かされた職員が、外へ向かって走り出す。背を向けているミライの耳に、男の子のありたっけに振り絞った大声が聞こえた。
「おねえちゃんー!!! たすけてくれてありがとう……! まけないでー!」
その声を背に、ミライは笑顔を浮かべる。
「そう言われたら、やるしかないよね! ねえ、ユイカ!」
「うん!」
ミライの前にユイカが着地した。扉を破壊した怪物が迫ってくる。
「わたしたちなら止められるよね!」
「もちろん!」
魔法少女ミライ、ユイカ。
二人の少女が、影をまとう怪物と対峙した。
「ミライ、何か策はある? 今のところ私の魔法しか効かなそうだけど」
「強いて言えば、あるよ。ただ、成功する確証はない」
「おっけー! じゃあ、全力でアシストするから、任せて!」
ユイカが両手を突き出す。浄化の光が、迫りくる怪物と衝突。
粒子を放ちながら輝く光が、闇に包まれる怪物を文字通り「浄化」していく。
怪物は苦しむかのように身をねじらせると後退した。
『縺ェ繧薙↑繧薙□繧医♂‼』
「ユイカ、ありがとう!」
「こちらこそ!」
ユイカの魔法は、浄化。悪の穢れを払いのけ、清める能力だ。
怪物自体が「悪」なので、真っ向から対抗できる魔法である。
このまま、機会をうかがってユイカの魔法を使う。
「裏口の方の外に出たい!」
「了解! 後ろは任せて!」
ミライが先にある扉へと駆け出す。
ユイカは浄化の光を形成すると怪物めがけて放射。少しでも、時間を稼ぐ。
『縺ォ縺偵■繧?≧縺ョ繝シ?』
怪物の不気味な声が響き渡る。ユイカの浄化の力は、確実に怪物に効いている。
しかし、完璧にはとらえきれない。
ミライが何を考えているかはわからない、が。
ユイカ自身が、魔法少女としての付き合いの長い、今までずっとみんなの先頭に立ってきたミライを信用した上での、行動だった。
ミライの足音が遠のく。あと少し、あと少し耐えればミライは外に出れる。
──と思ったその時。
怪物がひとまわり大きな影を形成した。ユイカの後ろ、ミライに向けて一直線に放つ。
「させない!」
ユイカは慌てて浄化の壁を作り出す。
しかし、間に合わずになすすべもなく影に飲み込まれてしまう。
「ユイカ!」
振り向いたミライが声を上げる。その瞬間、黒い影がミライを覆った。
『縺ェ縺√s縺?繧?i繧後■繧?▲縺』
怪物は嘲りを含んだ不気味な笑い声を上げた。
怪物の、黒い影は生命力を徐々に奪う。愉しそうに怪物は身をよじらせた。
黒い影は色濃く、少女たちを包み込んだ。




