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終焉の魔法少女 ~ひび割れた13のウィッチ~  作者: キハ
Fate1 少女は微笑み返した
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第14話 人質には向いていない

「あははー困ったなー」


 ユキは軽く笑いながら、魔法を発動させた長髪の男を睨んだ。


「どうせ私が動いたら刃でぐしゃ! っていう感じなんでしょ? 怖いねー」


「……よくわかってるね。理解が早くて助かるよ」


「ユキちゃん……っ!」


「口を出さない方がいいよ。君らも、動けばこの子が死ぬ」


 ヒカリが手を伸ばそうとした刹那。

 より一層、ユキの首元の刃が光を帯びた。


「無駄な抵抗はやめた方がいいよ。君たちも仲間を殺したくないよね」


「くそがっ……」


 レンの悪態。魔法少女一同の顔色が変わる。


「で、君たちに教えてあげよう。ここに、魔法少女ユイカは来ない。だから君たちは、僕への対抗手段がないね。可哀想に」


「ユイカちゃんは、来る! ユイカちゃんは今まで集合に遅れたこともない! いつだって」


「君は、魔法少女ユイカがいつまでも君のそばにいると思っているんだね。魔法少女ヒカリ。願望で動けば死ぬよ」


 男は淡々と、まるで事実だけを述べるかのように語る。


「君が桜岡高校で倒した怪物。あれは以前、魔法少女ユイカが始末するといって始末しなかった怪物だ。わかるよね?」


 メルルの持った疑惑が、ルイが口にした疑惑が、エルザが後をつけて感じた疑惑が。


「魔法少女ユイカは、裏切ったんだよ君たちを。彼女は、ここにこない。このまま君たちを見殺しにする」


「そんな……こと……」


 ルイが口ごもり、目を伏せる。彼女の言った疑惑が、本物になろうとしている。


「ユイカちゃんは私たちを見殺しにするなんて、誰かを見捨てるなんてできない! 大体あなたは何者なの? 何も知らない癖に適当なこと言って、私たちがそれで動揺するって?」


「……いいことを教えてあげるね、魔法少女ヒカリ」


 気づけばヒカリの目前に、男が迫っていた。


「は、速い……!?」


「僕もユイカも、君の敵だよ」


 男の伸ばした手から光る刃が出現する。

 一直線にヒカリの方へ向かう。


「……っ!」


 とっさに身をよじらせて回避。彼女の頬に赤い線が走った。


「僕は本気なんだよ。殺される覚悟を持たなきゃ」


「自分は人質とっておいて自由に動き回んのかよ! 卑怯者じゃねえかクソ野郎!」


 男の真上の空気が重くなる。

 しかし、男は身軽に避けると、レンの方を一瞥した。


「いいの? 魔法少女ユキが、死ぬけど」


「誰が死ぬってー?」


 ユキの軽々とした口調と同時に、レンが男に掴みかかる。


「君たち、見せしめを作りたいみたいだね」


 レンの拳を避けると男は、指を鳴らした。

 ユキの首元の刃が輝きを放つ。その瞬間、回転が始まる。

 威力を上げた刃が首輪が閉まるように、首元に向かう。


 しかし。

 魔法少女ユキは口元に笑みを絶やさず男の目を直視すると、おちゃらけたように笑って見せた。


「君は立場が分からないの?」


「あいにくねー私は人質向いてなくてね」


 その場には似合わない明るい声。


 違和感を覚えた男の目の前で勢いのあった刃が軋む音を立てて、止まった。


「どう? 悔しいよね」


 かすかに目を見開く男に向けてユキは笑いかける。


 ユキの首元で刃は回転し続ける。

 しかし、首元の氷の薄膜に阻まれ、ぴたりと止まっていた。

 摩擦音を鳴らしながら氷がひび割れていく。

 しかし、冷気があふれ、さらにその膜を氷が覆っていく。


「でも、それだと防御一方だ」


「それはどうかな?」


 ユキが片手を掲げる。

 何かを察したのか、レンが一歩後ろに引いた。


 男が刃を発動させようと手を上げようとしたその時、足元の草が男の足に絡みついた。


「……!」


 草に気を取られた刹那。

 ユキが片手を伸ばし、男へ向かって氷が迸る。


「あそこで首ちょんぱすべきだったねーもしかして手加減していたのかな?」


 氷に覆われ、男は身動きをとれなくなる。

 彼女が魔法を発動したその瞬間も、首元の刃と氷の膜の格闘は続いていた。


(この女……イカれているか)


 氷の中で男は目を見張る。


 同時に二つの魔法を展開する。

 これには神経をすり減らす上に単純に魔力消費が激しい。

 防御も攻撃も兼ね備えてなお、この威力。


 魔法少女ユキは、この場にいる誰よりも魔法の扱いでは優れている。

 そう見極めると男は笑顔をたたえる彼女を睨む。


 どう、彼女を封じ込めるか。


「交渉しよっか? 私が貴方の氷を解く代わりに、貴方はこの首のやつ、消すの」


 ユキは首元の回り続ける刃を指さす。「ね、いい案でしょ?」


 男は仏頂面ながらも面白くない顔を見せた。

 同時に、ユキの首元の刃が消滅する。


 それを確認したユキは、氷の魔法を解いた。

 魔力を失った氷が、存在を保てずに白い霧となって形を失う。


「……どうやら君を低く見積もっていたみたいだね」


 足にまとわりつこうとする草を刃でいなしながら男が口を開く。


「そっちこそ、解くのが早かったね。もしかして思ったより弱いのかな?」


 自由になったのをいいことにユキは挑発の笑みを浮かべる。

 ユキの目には、これを機に魔法を発動しようとする魔法少女たちが映っていた。


「あれが最適解だからだ。そのうちわかるよ」


「ごちゃごちゃうるせぇな! まずはその生意気な顔叩きのめしてやるよ!」


 ユキという人質がいなくなったからこそのレンの動き。

 彼女の魔法は重力を操る。拳を握り締め、自身を重くする。

 渾身の力を込めた飛び蹴りが、男に炸裂する。


 しかし、男は涼しい顔で片手で受け止めただけだった。


「軽いね」


「は、あたしは重くしたはず──」


 レンの動揺。しかし、魔法少女側の追撃は終わらない。


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― 新着の感想 ―
???? ミライちゃんの援護かな? それともアオイちゃんのコピー魔法かな? とにかく緊迫の状況ですね。 そんでそれゆえに下手にみんなの動きを描写できない……群像劇って難しいですよねぇ。 果たして相…
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