第12話 怪物は適応する
ヒカリの声と同時に各々が、魔法を展開する。
ある者は重力を重くし、ある者は斧を持って駆け出す。
光の閃光が放たれ、黒い影が怪物を覆う。風を切るような音が宙を駆け、同時に刃のように鋭い風が怪物を襲う。
今この場にいる魔法少女10人が、同時に魔法を繰り出す。
しかし、レンの重力操作をはじめ、魔法少女全員の攻撃を怪物は捌ききってしまった。
「ちっ、くそが……」
レンが身をひるがえした怪物に向けて指先を向ける。
しかし、魔法が発動する時には怪物は横に避け、その場には地面がひしゃげる音が響いた。
どこからともなく、大木の枝が伸びるものの、怪物の生みだす炎によってなすすべなく焼き尽くされてしまう。
「やっぱりだめか……どうすれば……!」
ミライが悲痛な声を上げると、怪物はぎょろりと目玉を動かし魔法少女をみつめた。
炎が、吹きあがる。
「っ!」
ヒカリの光によって防がれたものの、一直線に炎が魔法少女のもとへ向かってきている。
しかし、ヒカリは防御に徹していたせいか、疲労の顔色を見せていた。この壁もいつまでもつかはわからないだろう。
「なにあいつ! もしかしてあたしが切った時は本気じゃなかったってこと!?」
感情をあらわにするヒメカ。それに呆れたようにエルザがため息をつく。
「貴方が慎重じゃなかったからじゃないかしら。初手でしとめておけばいいものを」
「あ? あんたほんっとに可愛くないわね」
「お前ら、喧嘩してる場合じゃねえよな?」
先程から機嫌の悪いレンが舌打ちを打つ。
ヒメカは不満そうに顔をしかめエルザはため息をついた。
「ルイとアオイは夢と模倣だから、今のところ何も動けてないんだろ? 戦えるあたしらの攻撃は全部通用しない。あたしら、ここで死ぬ未来なのかもな」
レンの諦めにも似た呟きに、ミライが反応した。
「私が死なせない! 絶対に!」
「わかってるよ。あたしだってここで死ぬ気はねえんだよ。ただ、ミライ。お前の魔法が一番ここで使えてない」
「せ、先輩! ユキ先輩がくるまで持ちこたえましょう! わたしがおとりになっても良いですよ! 先輩のためなら!」
「だからお前は馬鹿なことを言うな、ルナ」
レンはため息をつく。そこへ、カノンが話に入った
「ユキさんならすぐ向かうって連絡来てました。私たちはそれまでに何としてでも、踏ん張らなきゃいけないですね……」
『そうだね……。ヒカリも限界だし、あとはサラの時間停止でちょこちょこ行くしか──』
「……ごほっ」
『ヒカリ!?』
ヒカリの口元から赤い液体がこぼれ出す。それと同時に、光の防御も力弱くなっていく。
「ああちくしょう、あたしがおとりになってやるよ。解除しろ。怪物がこっち見た瞬間に重力かけてやる」
「一旦時間止めるから、安心して」
レンが半ば強引にヒカリを押しのけた。
ヒカリの光が解除された瞬間、魔法少女はその場から消えた。
否、サラの時間停止魔法。
時間が戻る時には魔法少女たちは別の場所に立ち、炎から身を守ることができた。
しかし、これも何度も連発はできない。
「おい、怪物! あたしの方に来いよ!」
魔法少女のいた場所の反対方面からレンの声が響く。
怪物は目玉だけを動かすと、レンの方へ向けて炎を放つ。
「そこだ!」
その一瞬の隙をついて重力魔法が発動。怪物の頭上から見えない圧力がかかる、が。
「効いてない……!?」
炎が重力を押し返すように、うねる。
怪物は、気にも留めない様子で炎の勢いを強くした。
「レン!」
サラの叫び声。懐中時計を掲げるものの、炎の勢いが勝っている。
レンの目前に地獄の業火が迫る。
「……っ、くそがよおおお!」
死に際の抵抗か、がむしゃらに、レンは片手を伸ばした。
重力が、炎を押しつぶせるか。答えは否。
しかし、レンはそれでも真っ向に立ち向かい、魔法を発動させる。
かすかに、炎が揺らぐ。
「お前らあたしの死を無駄に──」
すんじゃねえよ、と叫ぼうとした刹那。
レンの目前で炎が青白く固まった。
炎は凍った。
「みんなーお困り?」
目の前で、またたく間に炎がそのまま凍っていく。
『縺上◎縺‼』
「困ちゃったね、怪物さん」
その声の主は、レンに向けて笑いかけた。
「大丈夫?」
「ああ、おかげ様でな。ありがとう。ユキ……とハンナか」
「は、私は何もしてない……ですっ……」
「したわよ~私のことをここに連れてきたのは、ハンナが、移動させてくれたから」
魔法少女ユキ、ハンナが、ここに12人の魔法少女が揃った。




