第11話 重力を司る少女
どこを見ているかわからない大きな目玉が光った。
その瞬間、炎がどこからともなく現れ、燃え盛る。
ヒカリの出現させた光で守れながら魔法少女たちは顔を強張らせていた。
「あの怪物、どこをどうみてもやばくない?」
橙色の髪をした少女が呟くと、他も神妙な様子で頷いた。
ここにいる魔法少女は、現在9人。
それぞれ、緑、紫、茶、橙、黄、青、赤、白、ピンク色の髪が風になびいている。
『ユイカかユキが来てくれればこちらに勝ち目はあるはず……!』
「そうだね、メルル。それまで私が食い止めるから!」
「ありがとうヒカリ……。本当は私が行くべきなのに……」
先頭で防御を張るヒカリに対して、ミライが申し訳なさそうに呟く。
いたたまれなくなったのか、地面に手をついて何かを探るかのように首を傾げた。
そこへ、前に出る者が一人。
「あたしが出る。あたしがあいつをあの場所に食い止めるからお前らはその間に攻撃しろ。代わってくれ、ヒカリ」
「えっ、レンちゃんでも火の勢いまで止められないよね? 大丈夫、私が──」
「どけって言ってんだよ。どのみち、ここでお前一人の負担になっても意味ない。いいか? あたしの能力は重力操作だ」
レン、と呼ばれた青色の髪を短くバッサリ切った少女が、指を怪物へ向けて突きつける。
「あいつに向けて重力をかける。火を出そうとしたらもっと重くしてやる。その間に、お前らは殺せ。あたしの努力を無駄にするなよ。殺れなかったら──」
殺す。
その気迫に押されたのかヒカリの光の壁が解除された。
その瞬間、怪物が目を光らせる。炎の勢いが強まる、その時怪物は何かに押しつぶされた。
片手を突き出すレン。レンの魔法、重力操作だ。
炎の勢いが、徐々に弱まっていく。
『縺弱c縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠‼』
怪物の金切り声を聴くと、レンは口角を上げる。
「ははっ、効くじゃねぇか」
その言葉を皮切りに、一人の魔法少女が駆け出した。
少女は、赤色に輝く長い髪の毛を振り乱し跳躍すると、大きな斧を振り上げる。
「あんた気色悪い見た目してるから消えてちょうだいー!」
怪物は避けようとするが、重力で地面に縫い付けられて動けない。
怪物に刃が触れた瞬間、爆発した。
先程までの炎が消え去り、爆発による煙に辺りが包まれる。
辺り一面が陥没し、怪物はもう塵となっただろう。
煙が晴れるころには、爆風を受けたに関わらず、可愛らしい顔立ちに勘違いするかのような可愛い笑みを浮かべて、斧を杖にして立つ少女の姿があった。
「貴方たち、残念だったわね。あたしの手柄よ!」
『ヒメカ、けがは大丈夫かい?』
「大丈夫よ! こういうことなら言ってちょうだいね! あたしの得意分野よ」
「あら、貴方って自爆が趣味だったのね」
ヒメカの背後から人影が現れる。
遅れてやってきた、黒髪をなびかせる、魔法少女エルザだ。
「あ、でた! 可愛くない女! あんた来るの遅かったわねーあたしが活躍しちゃって悔しい?」
「……貴方の魔法が頭おかしいといったのよ。それと」
エルザがヒメカの足元に目線をやる。
「今すぐそこから離れた方がいいわよ。火傷したくないならね」
その言葉と同時に、辺り一面が赤色に染まった。
──と思った時には、ヒメカとエルザの立っている場所が先程までの魔法少女の集まりに戻っていた。
否、変わっていた。
「え、なにこれ!?」
「時間停止して、慌てて連れ戻したの。良かった、間に合って」
隣には懐中時計を握り締めたサラが立っていた。
「礼をいうわ、サラ。ありがとう」
「いいえ。それより、怪物よ」
エルザの礼を受け流すとサラは先程まで、二人が経っていた場所を指さした。
「あのきしょい怪物は復活したってこと? 気持ち悪ー」
爆発で仕留めたはずの怪物が、バラバラになった身体から炎を吹き出し再生していた。
「怪物って……再生能力あったっけ?」
『ない……はずなんだ!』
ヒカリの問いにメルルが狼狽えたように答える。
『これはまずいことになっている……』
「うるせぇな、メルル。あたしがまた止めるしかねぇだろ。あと3人がくるまで持ちこたえてやるよ。おい、お前ら」
怪物をにらみつけながらレンが一歩前に出る。
「全力で殺せって言ってんだろ」
「は? あたしは殺す気だったわよ」
「仕方がないわヒメカ。貴方の能力ははっきり言ってあの怪物に向いてないわ」
「エルザ! あんたもうるさいわね、爆発したい?」
「お前ら、黙れよ。死にたいのか?」
レンのどすの利いた声に両者に沈黙が流れた。
怪物の身体が、元通りに復活していく。大きな目玉が再び現れ魔法少女の方へ、向いた。
「じゃあ、みんな! 今は全力であいつを、倒そう!」
ヒカリの声と同時に各々が、魔法を展開した。




