第三章:副司令官の期待
会議の後、俺は一人、自室への道を歩いていた。
その背後から、ラビエヌス様が静かに追いついてきた。
「レビルス」
その呼びかけに、俺は立ち止まり、敬礼した。
「見事な仕事だった。この冬、お前の計算がなければ、我々は春を迎えることさえできなかっただろう」
「…恐縮です。それが、私の仕事ですので」
「謙遜するな」
ラビエヌス様は、冬の夜空を見上げ、静かに続けた。
「正直に言えば、お前が初めてこのガリアに来た時、俺は、お前をただの計算屋としか見ていなかった。後方勤務上がりの、戦場を知らぬ若造だとな。だが、お前は、俺の期待を良い意味で裏切り続けてくれた」
その声には、意外なほどの温かみがこもっていた。
「お前は、ただの計算屋ではない。兵の心を読み、戦場の流れを読み、そして、勝利への最も確実な道を導き出す、本物の指揮官へと成長した。焦土作戦での、あの非情なまでの完璧さ。そして、キケロを救った、あの神速の判断力。見事だった」
ラビエヌス様は、俺の肩に、その手を置いた。
「クラッススが死に、共和国の未来を憂いていたが…お前や、アントニウス、デキムスといった若い力が、こうして育っているのを見ると、頼もしく思う。これからも、その力を、カエサル閣下のために、そして、この共和国のために振るうのだ。期待しているぞ」
それは、副司令官から副将への、純粋な激励だった。
俺は、その言葉の重みに、ただ、深く頭を下げることしかできなかった。
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