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ガリア戦記異聞 とある計算屋の活躍  作者: 奪胎院
第一部前半:さすらいのエルフ氏族との戦い
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第一部前半 第四章:最初の実戦

壁が完成した直後の、静寂。 兵士たちが、ようやく掴んだ休息に身を委ねようとした、その時だった。


対岸から、鬨の声が上がった。


さすらいのエルフ氏族の一部隊が、俺たちが築いた壁の強度を試すかのように、攻撃を仕掛けてきたのだ。


「敵襲! 持ち場につけ!」


野営地に、緊張が走る。


だが、俺の部隊だけは、慌てなかった。


「慌てるな! 持ち場は、計画書通りだ!」


俺の声に、兵士たちは即座に反応した。俺の計画では、壁の建設と同時に、この防衛戦のための人員配置も、すでに計算済みだったのだ。

弓兵は土塁の上の、最も射線が通る場所へ。投槍兵は、そのすぐ後ろに。そして、ボルグが率いる重装歩兵は、敵が乗り越えてくるであろう、最も手薄な区画で盾の壁を形成する。


敵は、俺たちが疲弊しきっていると高を括っていたのだろう。何の工夫もなく、ただ正面から壁をよじ登ってくる。


「射て!」


俺の合図で、無数の矢と投槍が、壁に取り付こうとする敵兵に降り注いだ。

それは、もはや戦闘ではなかった。ただの、作業だった。 俺たちが築いた、圧倒的な高さと角度を持つ壁が、敵の攻撃を無力化し、俺たちの攻撃を一方的なものに変えていた。


小一時間後、敵はおびただしい数の死体を残して、退却していった。 俺たちの損害は、ゼロだった。


兵士たちの間に、歓声が上がる。 だが、俺は、笑えなかった。 俺は、自分が作り上げたこの完璧な「殺戮の機械」を、ただ呆然と見つめていた。

カエサルの命令は、狂気の沙汰ではなかった。それは、敵の戦意を、最も効率的に、最も少ない損害で削ぐための、冷徹な計算だったのだ。


俺は、あの男の恐ろしさの一端に、改めて触れた気がしていた。

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