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ガリア戦記異聞 とある計算屋の活躍  作者: 奪胎院
第二部幕間

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幕間:長い冬  第一章:十五日間の感謝祭と、計算屋の絶望

北方ベルギーでの激戦を終え、軍団は冬営のため、セクアニ族の領地にある拠点へと移動した。


兵士たちは誰もが、ようやく掴んだ平穏な日々を過ごしていた。

もう戦はない。

故郷へ帰れる日も近いだろう。そんな甘い期待が、野営地全体を支配していた。


その日、ローマ本国からの公式の使者が到着した。

使者が、カエサルの本陣の前で、元老院からの決定を高らかに読み上げる。


「――ガリアにおける、ガイウス・ユリウス・カエサル総司令官の輝かしい功績に対し、元老院は、十五日間の感謝祭を布告することを決定した!」


その瞬間、野営地は爆発した。

兵士たちは、兜を天に放り投げ、互いの肩を抱き合い、故郷の名を叫んでいる。

十五日間の感謝祭。それは、彼らの流した血と汗が、共和国の歴史に永遠に刻まれたことを意味する。彼らの苦闘は、報われたのだ。


俺、レビルスも、仲間たちと共に、その熱狂の渦の中にいた。ボルグが、その岩のような手で俺の背中を叩き、ガレウスが獣のような歓声を上げている。


だが、俺の頭の中は、別の計算で満たされていた。

(十五日間…これは、ただの栄誉ではない。カエサルが、ローマの民衆から絶対的な支持を得たという証明だ。そして、それは同時に、元老院のポンペイウス派に対する、強烈な牽制となる…)


その瞬間、俺はすべてを悟った。 俺が巻き込まれたのは、もはやガリア平定という、分かりやすい戦争ではない。


カエサルと、ローマの元老院との間で繰り広げられる、底なしの権力闘争だ。


そして、第二部の最後、あの男に直接声をかけられてしまった俺は、その巨大な盤上の、名前を与えられた「駒」になってしまったのだ。


戦争なら、まだ計算ができる。損耗率を出し、リスクを予測し、生き残るための最善手を導き出せる。だが、政治は違う。そこには、裏切りと陰謀と、俺の計算では決して導き出せない、非合理な感情が渦巻いている。


これまでで、最も厄介で、最もたちの悪い、面倒事に巻き込まれてしまった。


周りの歓声が、遠い世界の出来事のように聞こえた。兵士たちは戦争の終わりを喜んでいるが、俺だけが、これから始まる本当の地獄の始まりを、静かに悟っていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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