第一部幕間 第二章:計算屋の家族
長い冬が始まった。 共和国軍の冬営地は、もはやただの野営地ではなかった。
俺の故郷の、どの田舎町よりも速い速度で、それは一つの街へと変貌しつつあった。
そんなある日、俺の百人隊に、新しい仲間たちが配属されてきた。 一人は、ルキウス。
本国から送られてきた補充兵で、まだ十代の若者だった。共和国の栄光を信じて疑わない、きらきらとした瞳で俺に敬礼する姿は、どこか眩しく、少しだけ胸が痛んだ。
そして、もう二人は、他の補助兵部隊から転属してきたという、経験豊富な兵士だった。
一人は、ガレウス。狼の民の獣人で、その全身は、まるでしなやかな鋼のバネのようだった。 もう一人は、シルウァヌスという名のエルフだった。彼は、ただ静かに、森の木々がそうするように、そこにいるだけだった。
俺は、この寄せ集めの部隊を前に、頭痛を覚えながらも、俺にしかできないやり方で、彼らを一つのチームへと変えていった。
俺が立てた、緻密で合理的な訓練計画。それを、ボルグがその不屈の精神で部隊の盾となり、体現する。
古参兵のセクンドゥスが、その経験で新兵のルキウスを指導し、ガレウスとシルウァヌスは、それぞれの種族の特性を活かして、この「群れ」に不可欠な一員となっていく。
ある日の夕方、訓練を終えた俺の天幕に、仲間たちが集まってきた。 ボルグが焼いた肉、ガレウスが仕留めた兎、シルウァヌスが森で摘んできた薬草の茶。それは、寄せ集めの、しかし確かに一つの「家族」の食卓だった。
俺は、この厄介で、しかしどこか頼もしい仲間たちを率いることに、面倒くささと同時に、これまでに感じたことのない充実感を覚え始めている自分に気づき、心の中で小さく悪態をついた。
平穏に任期を終えて、後方勤務に戻る。 その、俺の唯一の目標が、日に日に遠ざかっていくような気がしていた。
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