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社会人の独り言  作者: 黒船雷光


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事故と渋滞

 朝バスに乗車して通勤中、自己渋滞に巻き込まれた。


 首都高を使う高速バスだが、その高速道路の上で遅々として進まない状況に、車内が段々雰囲気が悪くなる。


 大抵の人はスマホ画面から顔を上げないが、チラチラと顔を上げたり周囲を見渡したり、メッセージを送ったり…遂には「あの、スイマセン…渋滞に巻き込まれちゃいまして…」と会社なのか通院先の病院なのかに小声で電話を掛ける声が聞こえ始め、サラリーマンが足踏みしたり「ちっ」と舌打ちしたり、それを睨む人が居たり…とドンドンストレスというオーラが陽炎のように周囲に漂い始める。


「んだよ…」「何があったのかしら」「…げんにしろ」「すいません…はい」

「ンダクソ!!おい、運転手!どうなってんだよ?!」ついに一人の男性が声を上げる

「うるさい」「んだと!!いつまでこんなトコロに…ってられっか!!」「騒いだら解決するわけじゃないでしょう」「黙れクソ!!」「はぁ…」「んだこら!言いたいことあったら言えや!!」「いい加減にしろ」


 バスのエンジン音が止まる。

「この先100m先で起きた事故の影響で只今前に進むことが困難になっております…お客様には大変な不自由をおかけいたしますが、何卒冷静にお待ちいただくようお願い申し上げます」


「いつになったら動くんだよ?!」「事故なんだ、現場が落ち着かなければ動かないよ」

「こっちは急いでんだよ!おい、降ろせ!歩くわ」「高速道路は人は歩けないですよ」「今は非常時だろうが!」


 もはやカオスだ。


「前を見てごらん…煙がまだ上がってる…サイレンの音もしている」一人の老婦人が淡々と語る。

「事故ってんだから当たり前だろうが!」「人が死んだね」「え?」

 その瞬間に社内に渦巻いていた怒り苛立ちの空気がスンと外の空気に全部入れ替わったのか如く鎮まる。


「騒ぐのは止めんかね?…連れていかれるか、憑いてくるよ」


 全員が黙った。


 みんなスマホを見たり座ってる客は目を瞑って口をへの字に閉じた。


 その後30分誰も何も語らなかった。

 バスはその後走りだし、騒然とした事故現場の横を通り過ぎた。

 事故現場は、大きな鉄骨構造体を運ぶ大型トラックが車線変更に失敗して分岐帯に突っ込んで燃えていたが、人が死んだかは分からなかった。


 私は終点で降りる時にその老婦人が後ろに並んだので思わず聞いた。

「あの、ご婦人…本当にどなたか?」

「さあね…そげんこつ知らんちゃ」


 正論ではなく、最も関心を引く言葉で周囲を圧倒する言霊の強さを感じた今朝の出来事。

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