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社会人の独り言  作者: 黒船雷光


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言霊妖怪

言葉と言うのは時として恐ろしいもので、特定の事象やその関係者に向けられた悪意や否定というのは、当事者をどうしようもないくらいに傷つける見えない刃になる。


会社の若い優秀なスタッフが、突然「辞めます」と言って来た。

優秀で将来性のある彼を引き留める言葉を私は持てなかった。


…一番は直接の関係者では無かったからなのだが、傍から見て目立つ子だったので他部署ながら期待していた。


新人の研修では話すこともあったので、最後の去り際に少しだけ話を聞くことが出来た。

「私は…何のために、そこに必要とされているのか分からなくなっちゃって…」

絞り出した彼の言葉が苦しそうで胸が締め付けられた。


私には救う言葉も助ける言葉も、何も無かった…彼は心を壊していた。


彼を殺した言葉は「じゃあ、コレもやっといて」という簡単な上司の言葉だった。

コレも…のコレは、彼の仕事の範囲では無かった。ただ、関連していなくはなかった。

そしてそれは彼にとっては凄く頑張る必要があった。得意分野では無かった。


「君の才能に期待している」


肯定の言葉。だが、強制力、否定を許さない諸刃の剣。

彼は何故それまでも自分でやらなければならないのか分からなかった。

だが、彼の上司はそれを「当然だ」と言った。


ベテランなら、その範囲までを作業するなら別工数とあっさり言えただろう。

仕事を学びながら成長して行く新人は、その範囲を分からない。

そしてその相談をすべき上から、強制されたら出来ない自分がおかしいと錯覚する。


最後に「え?何で出来てないの?」

結果、彼はその上司の言葉に壊されてしまった。


言葉には力があり、時と場合によっては特級呪言になるのだ…と


私は…誰かを呪い殺していないか…殺されないか…先ずはマスクをして迂闊に言葉にしない努力から再開しないといけない…と、思った次第。

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