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髑髏(しゃれこうべ)
通勤電車に乗っていると、偶に床に死体が転がっている。
白骨化していないが、ほぼ骨と皮で落ち込んだ眼窩に見える目玉は黒目まで白濁になって生命の光を宿してはいない。
だが、今日の死体は動いていた。ハズレかかった顎はカラカラと音を立てて揺れる。その顎に歯は殆ど残っていない。
周囲には強烈な死臭と悪臭が立ち込めている。
主にアルコールだが。
シャツやズボン越しにも分かる骨しかない体だが、奇跡の様に動いて歩いている。
何でこの髑髏は私と常に目線が合うのか?
ふとスマホを確認すると自撮りモードになっていた。