親王櫓
私の母校が閉校と…妻の同級生の娘さんがその高校卒業と同時に無くなるらしいと、妻から聞かされた。
その高校は私が通う頃は、山間にあるため、隣接する山林のハイキングコースがあり、そこを使ったクロスカントリーと言う名の山道走破マラソンが開催されて、全長五キロ程度のそのコースはジャージ着た学生が常に走り回る謎のハイキングコースとして有名だった。
廃校になってしまったのであれば、そんなクロカンもコースごと失伝してしまったろうな…と言う学生の間では少し有名な話があった。
因みに最寄りの駅名は「神武寺」
その名前を冠する寺があったか覚えていない。
そんなに興味なかったからだが、クロカンコースの途中に石畳の階段があって、走るには危ない箇所(正しく段になっていない、湿っていて苔が生えていて滑る)があったので、社的なものは合った気もするが、何せはるか昔のことなので覚えていない。
まぁ、そこまで重要な話ではないので置いといて…
学生の間で有名だったのは「親王櫓」の伝説だった。
曰く「親王櫓に近づく者は呪われる」と言うシンプルなモノ。「行ったらタヒぬ」とも言われていた。
そもそも親王櫓と漢字で書いているが、当時学生の間では「口伝」だったので、音として「シンノウヤグラ」として語られていた。
一度だけ「本当かどうか行ってみない?」と強く同級生の佐藤くんに勧められて、噂の場所を尋ねたことがある。
クロカンコースから少し外れたその細い道はさして進まないうちに行き止まりになった。
文字通り行き止まりで良くあるフェンスが建てられ、工事用のあの三角の行き止まりも更にその前に置かれ、更に黄色黒のロープで絶対行かせないと言うような意志を感じるグルグル巻きにされたバリケードは、興味本位で近付いた高校生をブロックするには充分な威圧感を放っていた。
私は佐藤君の顔を見て「コレは無理だろ」と言った。
私は早くそこを立ち去りたかった。嫌な予感しかしなかった。
佐藤君はよく調べていて、今ならGoogleマップだが、当時は地域の地図が役者とかで手に入ったが簡単では無かったのに持っていて「あと少しなのに」とぼやいていた。
何故親王櫓に行くと呪われるのか?も伝説を知っていて、なんか教えてくれていた気がするが、それも忘れた。
廃校のニュースをキッカケに少し思い出したけど、今はどうなっているのか…後で調べてみよう。
改めてGoogleマップ開いたら、母校の跡地すらわからないし、山は削られ宅地になっていてオカルトの入る余地無しな感じが何とも時代の流れの残酷さを感じますな。




