脱皮
娘二人が私の両脇に座り、私の腕を持ち何をするかと思えばバリバリと私の皮膚を引き剥がす。
私の皮は薄い膜となり、焼き芋の皮剥きの様に娘たちは楽しそうに私の皮を引き剥がす。私は動けない。
引き剥がされた皮の下は当然の様に脂と体液が吹き出す。金縛りで体が動かない。悲鳴を出せず、うわうわと喉を引き絞って声を出そうとするが、音は出ない。
すると娘達はゲラゲラと笑いながら引き毟る行為を加速する。
先日の墓参りで山道を通った時に、カナヘビを見つけた。
娘が驚くのが面白くてつい捕まえようとしたところ、尻尾を切って逃げてしまった。
カナヘビは子供の時によく捕まえたが、尻尾を切ってまで逃げた個体に会ったことがなかった。
なので大いに驚いたが、尻尾だけ娘に渡したら大層怒られた。
既に動かなくなった尾を脇の雑木林に捨てて帰った。
そう言えば、そのカナヘビはよく見れば脱皮しかかっていた個体だった気がする。成長の兆しを人間のおっさんに邪魔されて嘸かし驚いたのかも知れない。
悪い事をしたと思ったが…
夜熱中症で参って寝付けなかったが、そんな事思いながら寝たらこんな罰が…
と言うところでハと起きた。
娘が先日のプールで焼けて剥け始めた日焼け後の皮をゲラゲラ笑いながら「お父さん剝き」と言いつつ薄皮を剥いてた。ヒリヒリして痛いのだが。