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悪気
深央は続ける。
「睦月君がイライラするのもわかるよ。でもね、彼女、秘密にしてたのは悪気があったわけじゃない。僕らの誰も、君が死ぬだなんて思わなかった。その身体のことだって僕たちのことだって、君が目覚めて落ち着いてから、ちゃあんと順番に丁寧に説明して、ゆっくりわかってもらうはずだったんだ」
「それは……わかります! 先輩に悪気があったなんて、俺、これっぽちも思ってません!」
睦月は、右手でこめかみを強く揉む。
冷静になって考えると、少々、華音に強く当たりすぎたかもしれない。




