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雪女
そちらを見ると、和服姿に大きめのパーカーを羽織った少女が、ポテトチップスの袋に手を突っ込んでかき回していた。初日に見かけた、雪女のキャストだろう。
可愛らしい顔立ちに丁寧に化粧をしているが、首筋の白さは隠せない。
ダンベルを止めずに、イフリート役が反論する。
「鍛えるためじゃない。習慣だからやってるだけだよ」
少女は鼻を鳴らすと、睦月の食べかけの丼を無遠慮に覗き込み、椅子に座りながら言う。
「なんだい? 月見そばかよ……それ、食堂の券だろ? ケチの華音が気前よく十枚も置いていったんだから、ステーキでも食べればいいのに」
机の上に放り出してあった食券を指差す。




