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食券
同時に、空腹を覚えて立ち上がる。
なるほど、こんな身体でも腹は減る。やはり、生きてはいるようだ。
華音は食べなくても平気だと言っていたが、本能的な欲求には耐えられそうになかった。彼女も中華を食べていたし、どうやら、“生きていける”と“腹を満たす”は、必ずしもイコールではないらしい。
部屋の中に、睦月の私物は見当たらない……が、財布がなければ食堂は利用できない。困っていると、机に上に置いてあった食券が目に入った。
これを使うのはどうにも癪だが……この際、背に腹は変えられない。




