普通に死んじゃう
イライラしながら睦月は怒鳴った。
「全然、説明になってませんよ! 科学的な根拠を教えてください!」
「そんな事を言ったら、死んでから生き返るのに科学的も何もないわよ」
「……まあ、それも道理ですね」
「他にもいくつかあって……まず、日のある時間は体がダルくなる。夜になると血が冷えて、体温がものすごく下がって、力がちょっと強くなる。それに、ほとんどの病気にかからないし、小さな傷くらいはすぐに治るわ。水さえあれば生きていける。毒で死んだ場合、次に生き返った時に耐性ができる。……あと、ここにいる限り、成長も老化もしない」
「それって、不老って意味ですか?」
華音は強く首を振って言う。
「いいえ、違うわ。これもオーナーが言ってたんだけどね。ひと月もここの霧を吸い込まないでいれば、体は成長するし、老化もゆっくりと進んでいくんだって」
「じゃあ、外で何十年も生活してれば……?」
華音はこくりと頷いた。
「老衰で死んじゃう。……普通に」
睦月はホッと息を吐く。まったく慰めにはなっていないが、『普通』という単語で、幾分か気が楽になったからだ。




