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霧
睦月は大声で叫んで、ベットの上に立ち上がる。
「そんなの俺だけじゃない! みんな吸い込んでるじゃないか! 一体なにを混ぜてるんだ!?」
その剣幕に、華音は慌てて否定した。
「ご、誤解よ! 霧自体は、ノクターンの湖から汲み出した水を、濾過して機械で噴霧してるだけなの! メンテだって業者が時々入るし、変な物を混ぜてるわけじゃないわ! 吸い込んだって、生きてる人とか動物には、まったく影響しないから大丈夫なのっ!」
「……本当ですか?」
華音は頷きながら言う。
「本当よ。生きてる人は霧が身体に入っても、すぐに吐き出しちゃうから平気なのよ。でも、死んだ人の体には、霧が染み込んじゃうからこうなるみたいね」
「ん。……まだ、よくわかりません。つまり、俺は死なないって事ですか?」
「ううん。死なないってのとは違うわ。死ぬけど、生き返るのよ」
「どう、違うんですか」




